いろはすハッピーバースデイ!

最近俺ガイルから離れ気味でしたが、何とか一時的に舞い戻ってきました。

私の投稿小説、「折本──」さて、この後に続く言葉は──
ですが、最近俺ガイル離れが著しく、作品に力を入れられないので、長期の休業という事で、休ませて頂きます。
勝手ではありますが、ご理解よろしくお願いします。

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八幡は、静かで淡い一色に染まる。

「せんぱーい!」

「……また来たのか」

 

 奉仕部部室。

 いつも通り由比ヶ浜は来るのが遅いし、今日は珍しく雪ノ下が遅れるという事で、今この部屋には俺しか居ない──いや、居なかった。

 故にさっきまで静かだったこの空間の雰囲気は、俺にとって最高の場所だった。

 図書館の様に張り詰めた雰囲気があるわけでもなく、ただただ静かなこの雰囲気が、俺は好きだからだ。

 

 そして、そのシンとした雰囲気のこの部室に、最近連日足を運び続けている当人が、雰囲気をぶち壊しながら今日も例外なくやって来た。

 

「先輩先輩、今日何の日か分かりますか?」

「…今日?」

「はい、そうです。今日は何の日でしょう!」

 

 唐突にやって来てこれまた唐突な質問だな…。

 しかも今日が何の日かと言われてパッと思い浮かぶものなんざ──あった。

 

「…あー、分かった」

「え!?」

 

 ──と、答える前にガララッと引き戸が引かれる音が響き、由比ヶ浜と雪ノ下が入って来る。

 

「やっはろー!いろはちゃん」

「また来ていたのね…」

 

 テンションの高い由比ヶ浜と、少し呆れ気味の雪ノ下。

 こいつらもいつも通り。特に変化は無い。

 一色も二人に挨拶を返すと、顎に手を当てて考える仕草をした後、何かを思いついた様な顔をし、そして雪ノ下に振り返る。

 

「先輩を借りて行きますね!すぐ返しますんで!…ほら、行きますよ先輩!」

「えっ?あっ!一色さん!?」

 

 雪ノ下に断った、と言う体裁だけを整えると、何も理解してない俺の腕を引っ張って奉仕部の部室から出た。

 

 

 

* * *

 

 

 

 一色に引っ張られながら歩みを進めていくと、目的地は生徒会室だった。

 俺が先に中に入り、次いで一色も入る。

 

「…普通に生徒会の用ならそう言えよ……」

「…いえ、今日は生徒会ありませんよ?」

 

 一色のその返事と共に、ガチャッという音。

 

「……ねぇ、先輩」

「………な、何だよ…」

「奉仕部での続きです。…今日、何の日か分かったんですよね…?」

 

 一色は、ゆっくり、ゆっくりと俺の方に歩いて来る。

 その仕草は妙に妖艶で、いつもとは違う雰囲気を纏って居る。

 

「…いっ…し…き……。…いや…」

 

 思わず、唾を飲む。

 それ程に、今の一色に気圧されていた。

 適当に答えようとしていた先程の俺を少し恨む。

 目の前の一色は、ふざけることなど許さない、と迫力を妖美さに変えて伝えてくる。

 

 …トスッ。

 

「…へ………」

 

 必死に頭を巡らせている間、気付けば一色が俺の胸元にいた。

 

「…やっぱり、分からないんですね。……今日は──」

「…お、おい……」

「…今日は、私の誕生日ですよ?…先輩」

 

 精一杯背伸びをして、俺の耳元でそっと囁く様にそう言う一色は、言い終わると同時に、トッ、トッ、トッと後ろに三歩下がる。

 

「…ま、そんな訳なんで、先輩祝って下さい!」

「…………は?」

 

 ──まぁ、こいつの唐突さには慣れたし、百歩譲って誕生日なのは良いだろう。

 …でも、それを俺に祝えってなれば話は別だ。

 俺と一色はそこまでの仲じゃない。…いや、そもそも俺が他人の誕生日を祝えないのはこいつもよく知ってる筈だ。戸塚は別だし、小町も別だが。

 

「…葉山にでもやってもらえよ」

「葉山先輩忙しそうにしてますしー」

「さっき三浦と歩いてたぞ」

「ぐむむ…。い、いや、でもー…」

「…それに、三浦にばっか葉山取られてるとそのうち本当に取られるぞ」

「…あー、もう!」

 

 俺が必死に否定を繰り返していると、一色は急に何かに吹っ切れた様に、声を上げる。

 

「先輩、単刀直入に言います。私は今、プレゼントが欲しいです。先輩から」

「………おう」

「だから、プレゼントを下さい。…先輩が考える中で、一番のものを」

「……………」

 

 ──俺が考える、一番のプレゼント…か。

 正直、俺は一色を全然理解してない。行動も、言動も、好き嫌いも、人付き合いも、全然分からない。知らない。

 だから、一色が何を望んでいるかも、分からない。

 

(…ってか、何で俺、さっき否定しなかったんだ?)

 

 少し考えて、その疑問に辿り着く。

 今までの俺だったら、こんな事絶対に拒否した筈だ。なのに…。

 ──もしかして、これも奉仕部に居た事で変わった、一部なんだろうか。

 

「先輩?…女の子の前で他の女の子の事を考えるのはあんまり良くないですよ?」

 

 物凄く冷えた目で、無感情に言い放つ一色。

 

「それじゃあ、ヒントです」

「私が欲しいものは、用意するものはありません。既にここにあります」

「ここにあるものなら、別にいらな「せーんぱい?」……」

 

「…それじゃあ、もう一つ、ヒントです」

 

 一色は、そう言うと、再び俺に近付いて来る。

 

「お、おい、一色…」

「…誕生日くらいは、私も大胆になりますよ…」

「……は?お前、何言って──!?」

 

「好きです。…先輩が」

 

 

 

* * *

 

 

 

 ──一色いろはサイド──

 

「……………………」

 

 ついに、言ってしまった。

 

 あの先輩に、自分から言ってしまった。

 先輩が好きだと。自分の気持ちを伝えてしまった。

 

 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…

 

 心臓の鼓動がうるさい。

 これじゃ先輩に聞こえちゃう…。

 顔も真っ赤で…、恥ずかしいところだらけで、今すぐ立ち去りたいけど、逃げる訳には行かない。

 

「…先輩は、どうですか?」

「……お、俺…は…」

 

 耳まで真っ赤にした先輩は、少し下を向いていた。

 

 ──私を見て欲しい。

 ──私だけを、見続けて欲しい。

 

 そう思ったら、自然と口に出していた。

 

「…先輩……。…私に、先輩を下さい」

 

 

 

* * *

 

 

 

 ──比企谷八幡サイド──

 

「…私に、先輩を下さい」

 

 震える声と、今にも決壊して、零れそうな涙を目に溜めて、一色いろははそう言った。

 決意と、覚悟を持って。

 俺は──

 俺は本当に、一色いろはの事が好きだろうか。

 

 一色は妹みたいな奴だ。

 小町に似てはいるが、全然違う雰囲気をもっていて、いつも俺を困らせる。

 

 でももし、例えば、こいつが居なかったら…。

 

 ──ゾワッ。

 

 考えただけで、寒気が奔った。

 それと同時に、飽きれもした。

 ──俺はいつから、こんなに他人に依存する様になったんだろうな、と。

 

「…なぁ、一色」

「…はい……」

「確か、お前を生徒会長にした奴は、責任を取らないといけなかったな」

「……へ…?」

「………あー、まぁ、その、なんだ。…その責任、取らないとな」

「!…じゃあ!」

 

 今の俺には、こんな遠回しな言い方しか出来ない。

 でも、それでも、今目の前で嬉し涙を流して居る彼女を、こんな俺でも受け止められるなら、受け止めよう。

 

 ──この淡い色をした彼女と、静かな空に誓って。




いろはす誕生日おめでとう!
という事で生誕祭SSを上げました。

それから、Twitter始めたので報告します。以下、アカウントです。

Tsukui_Haruta


※以下は本編関係ありません。

あらすじにも書きましたが、私の投稿小説、

「折本──」さて、この後に続く言葉は──

の件で、お知らせがあります。

最近、少し前の事ですが、卒業して、入学したりと環境が変わり、俺ガイル及びその他アニメから離れ気味で、正直執筆に身が入りません。
なので、長期の休暇という事で、しばらく休みます。

この話については、書く前にいろはすのSSを読みあさってある程度感覚を戻して書きましたが、やはり身が入らないので、勝手ではありますが、ご理解のほどよろしくお願いします。


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