BLEACH 結界争闘篇   作:アルフレット

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今回も最後まで読んでいただけると幸いです

アルフレット


第三十七話

天は部屋に戻り、俺は枕元に小太刀を置く

 

「何だ?それ」

「これか?血盟者の証だとよ」

「血盟者って何だ?」

 

正直、俺もよくわかっていない

ただ約束するのに儀式したというだけで普通に約束することとの違いもよくわからない

コンに真面目に答える必要もないと思い、簡潔に答える

 

「一番信頼した人と結ぶ契約みたいなものらしい」

「ふーん…血盟者って誰が?」

 

嫌な予感がする

 

「俺がに決まってるだろ」

「誰のだ⁉」

「ハァ…天のだ」

 

真面目に答えてもはぐらかしても騒ぎそうだが、真面目に答えた方がましだと思い、真面目に答えるが後悔した

 

「何でお前なんだよ!?どう考えても俺だろ⁉」

「どこをどう考えたらお前になるんだよ⁉」

 

俺はコンの口をふさぎ、横になる

すると、すぐに眠気が襲ってきた

それに抗うことなく眠りにつく

 

俺は気付いたら真っ白な空間にいた

 

「ここどこだよ?夢か?」

「うぅむ…半分正解だけど半分不正解だね」

 

声がした方を向くとそこには巫女(男だから神主か?)姿の男が立っていた

俺に向かって手を振っている

 

「お前、誰だ?」

「オレのこと?誰だと思う?」

 

めんどくさい

男はニコニコ顔で俺に近づいてきた

思わず身構える

 

「そんなに警戒するなよ…寂しいだろ」

 

ニコニコ顔から少し悲しそうな顔になる

 

「仕方ないじゃろ

 見知らぬ者が不気味な笑みを浮かべながら近づいてこれば身構えるに決まっておろう」

「ひどいなぁ…夜一さん」

 

聞きなれた声が聞こえて振り返るとそこには浦原さんと夜一さんが立っていた

 

「浦原さん!?夜一さん!?」

「どーも黒崎サン、こんばんわ

 龍サンもお久しぶりっすね」

「そうですね…最後に会ったのはまだ父さんと母さんが生きている時だったかな?」

 

浦原さんたちは何か話しているが、そんなことよりも何かモヤモヤする

 

(龍?…どこかで聞いたような…まさか⁉)

 

『龍っていうのは兄さんのこと』

 

ようやく思い出した

天と会って間もない頃に聞いた天の兄貴の名前

弾かれたように顔をあげると、俺を見る優しげな視線と交わる

 

「一護くんは気づいたみたいだけどとりあえず自己紹介だけしておこうか

 オレは院殿龍、天の兄だよ

 いつも妹が世話になっているね」

 

予想通りの答えが返ってきた

ただ、見た目は全く似ていないから違和感がある

 

「やっぱり天の兄貴か…

 …あまり似てないんだな」

「そ、そうかな?

 ちゃんと血はつながってるんだけどな…」

「まぁ…そうっスね」

「喜助さんまで…」

 

気にしているのか少し寂しそうな顔をした

ここまで似ていない兄弟は少ないんじゃないか

俺でも遊子と夏梨と似ているところはあると思う

この兄妹は全然似ていない

天は、ストレートの黒髪で、おっとりとした印象を受ける顔立ちをしている

それに対して、兄貴の方は癖のある白髪で、顔立ちはキリッとしていて天とは正反対の顔立ちをしているように思う

何も言われずに兄妹とわかる人は皆無だろう

 

「まぁ、気にするな

 お前は勇に似ておるが、天は皐月に似ておるから仕方ないじゃろ」

「そういうものですかね…」

「それで納得しておけ」

「うぅ…そうします…」

 

夜一さんがフォローしてようやく渋々頷く

天の兄貴には天とはまた違っためんどくささがある

天は話さなさすぎてめんどくさく感じるときがあるが、兄貴の方は…とにかくめんどくさい

今までのことがなかったのかのように俺の方を見る

 

「とにかく一護くん、天の血盟者になってくれてありがとう」

「別に礼を言われることじゃねぇよ」

「そうかい?それでも言わせてほしい、ありがとう

 天が血盟を結んだことは兄であるオレにとっても嬉しいことなんだ

 それにようやくひと安心出来るしね」

 

座るように促されて腰を降ろす

天の兄貴は安堵の表情を浮かべていた

 

「ひと安心?」

「あぁ…天は人に頼るのが昔から苦手でね

 ちゃんと血盟者を作ることができるのかずっと心配していたんだ」

「たしかにそうだな…」

 

俺たちに頼ることが出来ずに一人で抱えていた天を思い出す

 

「ハハ…あいつは一人で何でも抱え込むから

 全部周りを思ってのことなんだけどね…」

「それはわかってる」

「そうかい?それならよかった」

 

始めは頼るほどの力が俺たちになくてそれで頼ろうとせずに一人で抱え込んでいたと思っていたが、今は俺たちを巻き込んで何かあったら怖くて頼りたくても頼れなかったことを知っている

それが天の優しさだということも、俺たちのことを思って頼ろうとしないことも今はちゃんと理解している

 

「昔の天ってどんな感じだったんだ?」

「昔の天か…よく笑う元気な子だったよ

 あいつの笑顔は太陽みたいだったよ」

「そうなのか?」

「うん…父さんと母さんが死んでからは無理して笑うようになったけどね」

 

太陽みたいな笑顔で笑う天…正直想像できない

今はいつも無表情で、慣れてきた今なら少し表情の変化がわかるようになった

その変化も小さいもので笑うなんてことはほとんどない

 

「見てみたいな…その笑顔」

「そうかい?」

「アタシもまた見たいっスね」

「そうじゃの

 あやつの笑顔は見てるこっちも幸せになるからの」

 

浦原さんたちは昔見た天の笑顔を思い出しているのか視線が遠くなっている

その笑顔が見れるようにあいつのことをしっかり守ってやらないとな

 

「たぶん見れると思うよ

 ちゃんと一護くんたちが天の心を受け止めて、天の心の叫びを聞いて、あいつが一人で抱え込まなくなったらね」

「心の叫び…」

「そうだよ

 少しは本人の口から聞いたでしょ?」

 

あの夜、天が消えようとした夜、ようやく本当の気持ちを聞けた

まだ笑えないということは全部吐き出していないということか…

考えていた俺の思考を停止するように天の兄貴が声をかけてくる

 

「何か他に聞きたいことはある?」

「聞きたいこと…血盟者って何なんだ?」

「それもわからず、血盟者になったのかい?」

 

今にして思えばそうだ

あいつを護るためには血盟者になる方がいいと言われて血盟者になることを目的としていた

どんなものかもあまり考えずに

 

「一番信頼した人と結ぶものだということは知っている」

「それだけ?他には?」

「盟約を破ってはいけない…ぐらいか?」

「ハァ…天は…仕方ない」

 

盛大にため息をつかれた

俺のせいではないのに…

 

「詳しく説明しよう

 まず、血盟者は君の言う通り一番信頼した人と結ぶものだ

 結ぶときには結界師側から提示される盟約…これはほとんどの場合、自分が暴走したときに対することが結ばれる

 そしてこれを破ることは許されない

 もし破ればそれ相応の罰があたる

 次に両者が提示する契り…これは結界師側からのものは破っても何もない

 少しの罪悪感が残るだけだ

 しかし、相手側からのものは破ることは許されない

 これに対してもそれ相応の罰があたる」

「つまり天の『力を悪用されたとき封印し阻止すること』は破ると罰があたるということか?」

「その通り

 天の盟約を破れば君に下される罰は“死”だろうな」

 

罰という範囲を越えていると思う

 

「どうしてそんなことがわかるんだよ?」

「言ったろ?それ相応の罰があたると

 天が暴走すれば多くの人が死ぬだろう

 それに対する罰は“死”が一番相応しいだろう?」

 

多くの人を犠牲にしてしまったことで俺には一番重い罰()があたるということか

 

「なるほどな…じゃあ、天が俺の契り『消えようとしない』を破った場合は?」

「おそらく“一生消えることが出来なくなる”だろうね」

 

消えたいのに消えることが出来ないのは罰になるだろうな

 

「もし天の契り『死なない』を破ったときは何もないのか?」

「何もないよ

 ないけど死ねば終わりだろ?」

 

死ねば何の罰も受けられない

罰があってもなくても同じだな

 

「それはそうだな

 でも、何で結界師の方は二つもあるんだよ?」

「さぁ?オレの推測では盟約は結界師本人の望みとはいいにくい

 稀に自分の望みを盟約にするやつはいるけど大半が自分が暴走したときという不確定な未来のために結ぶ

 暴走したやつなんてたった一人を除いていないしね

 だから罰なしでも契りを結ぶんじゃないかな」

 

まだわからない未来のために自分の望みを我慢する

そんなことするなら…

 

「不確定な未来のために結ぶ盟約はいらねぇんじゃないのか?

 暴走を止めろなんていう」

「そういうわけにはいかない

 血盟者でないと暴走を止めることは出来ないからね」

「どうしてだ?」

「暴走を止めるには血盟を結んだときに使用された小太刀がいるからだよ

 だから結界師は修行を終えるとすぐに誰かと血盟を結ばなければならない

 天は遅かったけどね」

 

なるほど…天が暴走したときに止められるのは俺だけということか

言い換えればあいつを助けられるのも俺だけ…

あいつは俺に命を預けてくれたということか

 

「だからね、一護くん

 天のことをよろしくお願いします」

「言われなくても、だ」

 

地面に手をついてまで俺に頭を下げてくる

天のことが大事なんだとよくわかった

今になってようやく気づく

 

「天からは兄貴は死んだと聞いていたんだけどよ…まだ生きているのか?」

 

天の兄貴は悔しげに顔を歪める

 

「たしかにオレは死んだ

 それについてはオレの血盟者が来てから話そう」

「誰だよあんたの血盟者って」

「来てからのお楽しみ

 きっとびっくりするよ」

 

さっきとは表情が一変し、いたずらを考えている子供のような笑みを浮かべている

何故か無性に腹が立つ

それからしばらくしても兄貴の血盟者が現れない

 

「それにしても遅い‼何してるんだか…寝るのが遅いからいつまで経っても背が伸びないん…」

 

突然、グチグチ言うのを止めたと思ったら勢いよく立ち上がる

顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいた

 

「お、ようやく来たな」

 

天の兄貴と同じ方向に視線を向けるとそこには見覚えのある一人の男の子が立っていた




今回も最後までお読みいただきありがとうございます
楽しみにしてくださっている方には申し訳ないのですが、次回の投稿はしばらくお時間をいただきたいと思います
中途半端なところで申し訳ありません
遅くとも二月の上旬には投稿する予定です
それまでお待ちいただけると幸いです

アルフレット



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