やはり俺の青春ラブコメは間違っていたのだろう   作:未果南

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いろはすの誕生日に間に合わせたかった…!
1日遅れだけど誕生日おめでとうということで。
いろはす誕生日記念グッズ見たけどクッションカバーの着物いろはす美人過ぎでは?
キャラものネクタイはありなのだろうか…


未だ彼らは交わらない

社会人になってまで俺は何をしてるんだろうな…。

電話を掛けながら苦笑する。

コール中の携帯に表示されている名前は『一色いろは』

この番号に電話をかけるなど高校の時以来だろう。

 

と言っても、高校の時に自分から掛けたことなんてほとんどなかったか。

 

高校の時の後輩を思い浮かべる。

女子の後輩で印象的なのは彼女くらいだろう。

 

なんせ、俺を本命としてではなく告白してきた珍しい女子だからな。

 

なんて自惚れたことを思い浮かべてしまうが、あながち間違いという訳では無いと思うほどには自分に自信があった。

 

そんな自信、邪魔にこそなれど役に立つことはないと分かってからは捨て去ったつもりでいたんだけどな。

 

また苦笑している自分に気がついて嫌になる。

 

彼が絡むといつもこうだ。

 

俺が受ける感情は呆れと諦観、そして、

 

屈辱。

 

それでも彼の全てが嫌いだった訳では無い。

むしろ自分には出来ない方法で人を救っていく彼を羨ましいと思った、妬みすらしていた。

 

あの時までは。

 

⭐⭐⭐

葉山家と雪ノ下家は古くからの付き合いである。

両家には古くから築かれた関係性があり、本人達の気質もあったのだろう。仕事上の関係性以上に仲が良かった。

当然その関係性は子供にも影響を与える。

経験したことはないだろうか。

子供たちは別に仲良くないのに親が仲がいいせいで仲良くすることを、一緒にいることを強要される。

まぁ、強要なんて言い方だと少し大げさかもしれないが無言の圧力を感じることくらいならあるだろう。

俺達の関係性はそんな親同士の繋がりから始まった。

とは言え、雪乃ちゃんだけでならともかく向こうには陽乃さんもいた。

すぐに打ち解けた。

 

いや、打ち解けさせられた。

 

俺と雪乃ちゃんの関係性は小学校まで持ち上がった。

今の俺は流石に人間誰しもが善性な訳では無いと理解しているが、それに気づけたのだって最近だ。

少なくとも小学生の時の俺は人間は皆善なる存在だと信じて疑わなかった。

 

結果。

 

どうしようもなく間違えた。

 

理由を考えても、対策を考えてもどうしようもなかった。

理解出来ないままに中学高校と時間は容赦なく進んだ。

いつの間にか自然に振る舞うということはなくなっていった。

皆に求められる理想のリーダー像。

いつの間にか葉山隼人という偶像が出来上がった。

 

俺の偶像っぷりも板についてきた頃だった。

 

彼に出会った。

 

少し接するとわかった。

俺と本質は同じだと。

どうしょうもなく人間を信じている。

彼と俺の違いは多々あれど、それでも根っこのところで似通っている。

 

俺は認めたくない頑固さ故に人間の善性を。

彼は認めた上での純粋さ故に人間の善性を。

 

全ての人間に真に悪人はいないと

 

信じていた。

 

理由のない悪意が簡単に人を襲うこともその恐ろしさも知りながら、それでいて人間は善なるものだと信じて疑わなかった。

 

その上で

 

俺は人の善意に

彼は人の悪意に

 

耐えていた。

 

その上で人を救っていく彼を、俺には出来ない、出来なかったことをやってのける彼が嫌いだった。

 

同類なのにという羨望、嫉妬。

 

深いところで同じなはずなのに

様々なところで勝っているはずなのに

どうしても感じるのは敗北感だった。

 

高校を卒業する時彼らの選択を見て、俺は一生適わないと思った。

彼を普通の人ではないと、素晴らしい人間だと勘違いした。

 

それは俺が受けた偶像扱いと同義だった。

 

その話を知った時、彼なら何とかしてくれると思ってしまった。

結果彼を悩ませた、追い詰めた。

 

そして、彼は失敗した。

 

今でもたまに思い出す、人を殴った拳の感触。

 

後にも先にも俺が人を殴ったのは彼だけだった。

最初は文化祭、最後は教会。

 

勝手に期待して勝手に失望した。

それがどれだけ残酷なことか知っていた癖に。

⭐⭐⭐

「もしもし、いろh…一色さん?葉山だけど」

 

いろは呼びそうになったがそれは流石に悪いだろうと思い直す。

一色さんなんて呼ぶのは違和感しかなかったが。

 

『葉山、先輩。なんですか?』

 

「戸部のやつが今日見かけたって言ってて懐かしくてな」

 

『それだけで電話してくるような人でしたっけ』

 

「手厳しいな…」

 

明らかに警戒している声音だった。

 

「なんでも彼氏と帰省したとか。俺の見間違いじゃなければ君の彼氏は比企谷じゃないか?」

 

『…だったらなんだって言うんですか』

 

「今比企谷は隣にいるかい?話がしたいんだが」

 

『電話すればいいじゃないですか。』

 

確かに昔番号だけは聞いている。

どうやら変えられたようでかかりはしない。

 

「俺が彼に電話して繋がるとでも?」

 

『知りませんよ。』

 

「まぁ、彼が俺と話してくれるとは思えないからいんだけどね。伝言だけでも聞いてくれないか?」

 

『伝えるかはわかりませんがそれでもいいなら。』

 

「すまなかったと伝えてくれ。」

 

向こうで息を呑むのが聞こえた。

 

『何についてですか?』

 

「さあね?彼ならわかるかもしれないし、分からないかもしれない。」

 

『そうやってまた、変に期待するつもりですか』

 

声は震えていた。

いつかディスティニーで聞いた泣き声だった。

 

「いいや、今のは失言だ。聴き逃してくれ。」

 

『このっ、「じゃあ頼んだよ」

 

彼女が、何を言おうとしたかは分からなかったけれど、罵倒される趣味なんてないし、卑怯な俺は電話を切って逃げた。

 

彼に謝罪の言葉を放っても罪悪感は消えることは無かった。

直接言ってないのだから当たり前か…。

 

また、自嘲的に呟いて俺は携帯をしまい込んだ。

 

 

 

 

 

 

 




いろはす誕生日おめでとうとか言っておいて、出番の少ないこと少ないこと。
というわけで葉山視点でした。
コイツ何がしてぇんだ…?って思いながら書いてました。自分で書いてて葉山が何したいのか分からんし何考えてるかわからん。こんなことならリア充を経験しておけばよかった…。したくてできる経験じゃないと思うけど。


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