やはり俺の青春ラブコメは間違っていたのだろう   作:未果南

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ちょっと前に投稿したはずの話が何故か消えている…?
まぁ、どうせ自分がミスったんでしょうということで、今回は2話分まとめて1つの話にしました。
正直書き直しの時心折れそうでしたけど。


この再生がもたらすものは
先輩の誕生日


8月8日は先輩の誕生日。

今までは急に連絡しても変だからと何もしてこなかったけど、今年は同じ会社だし日頃お世話になっているしお祝いすることは何らおかしなことではない。

ただ…、先輩の誕生日を祝うのは初めてのことになるんだけども。

何渡せばいいんだろう…。

先輩の趣味と言えば読書とゲーム…だと思う。

私はどちらも詳しくないし、そもそもプレゼントとして渡した物を先輩が持っていないという保証もないわけで。かといって先輩がお洒落な雑貨とかカワイイ系の小物類とか貰って喜ぶ姿も思い浮かばない…。

 

…先輩の家にあからさまに似合わない可愛い小物類とかあるとちょっといいかもしれない。先輩の家に私的なアイテムがある、みたいな。

 

いやでも、やっぱりせっかく贈るなら先輩が喜ぶ物の方がいいよね。

 

ついこないだ、あんな話を聞いたり話したりしたばかりだし。

先輩にも考える時間というか休む(?)時間が必要でしょうしね。

 

…結局何をプレゼントすればいいんだろう。

 

このまま延々と考えていても絶対に結論は出ないと思う。ので、心強いアドバイザーを仲間に付けることにした。

 

携帯のアドレス帳のカ行を探す。社会人になってやっと先輩の連絡先がインプットされることになったこの携帯には先輩の妹ちゃん。つまり小町ちゃんの連絡先なら昔からあるのだ。私が卒業してから全然会ってないし突然連絡するのもアレかな…

 

『一色いろはです。急にごめんなさい、少し相談したいことがあるので連絡をとりたいんだけど、もし良ければ連絡お願いしまーす』

 

小町ちゃんは私の次の生徒会長をしてくれてたりする。

奉仕部の部員でもある。残念ながら奉仕部の方では正式な先輩じゃないんだけど。そう言えば一緒に奉仕部で活動してたK『いろは先輩お久しぶりですー。今日はどうされましたー?』

小町ちゃん返信早いね…。

『ちょっと長くなっちゃうから出来れば電話がいいんだけど…、今大丈夫?』

メールを送信するとすぐ電話がかかってきた。本当に早いなぁ…、私は助かるんだけど。

「もしもし?小町ちゃん?」

「いろは先輩ー、お久しぶりですー!どうしたんですか急に」

あれ、先輩から聞いてないのかな。

先輩の事だから小町ちゃんには何でもかんでも話しているくらいに思ってたんだけど…。

「私今、先輩…じゃ伝わらないか。八、はち…。小町ちゃんのお兄ちゃんと同じ会社に務めてるんだけどさ。」

 

…ええ、呼ぶのに照れが出ましたけど、何か?

 

「今明らかな葛藤と妥協が見えた気がしますが私は空気が読めるので触れない方向で行きます。うちの兄と同じ会社に務めてるんですねー、あの愚兄は何も言ってこないんですよ…」

 

空気読めるっていうなら完璧なスルーの方が私的には嬉しかったかななんて

 

「あー、小町ちゃんには何でも話してるものかと思ってたよー。まぁ私は今年入社してまだ半年も経ってなおんだけどさ。先輩に教育係とかしてもらったりしてます。」

 

「え…。教育係、ですか?」

「え、うん。」

「あのゴミいちゃんは本当に…」

小町ちゃんは何やら先輩に悪態…?らしきものを呟いていたけどよく聞こえなかった。

 

「えっと…」

「あ、なんでもないんですよ。こっちの話です。それよりいろは先輩のお話を」

「ああ、うん。それで先輩もうすぐ誕生日だったよね?」

「はい、よく覚えてますね…というのは無粋ですかね。兄の誕生日は今度の8月8日ですよー」

「それで、日頃お世話になってるし何かしらプレゼントしようかなーって思ってるんだけど…。先輩何をプレゼントしたら喜ぶのかわかんなくて」

 

小町ちゃんには先輩に対しての私の気持ちというのは知られている。

まぁ、いろいろ聞いたりしたしね…

 

「兄なら何貰っても喜ぶと思いますけどねー。」

「それは小町ちゃんからだからでしょー?私がプレゼントする場合なんだよねー。」

 

「アレですか、やっぱアピール大事ですか?」

「いやー、先輩の事情というか奉仕部のこと聞いてるからさ…。当分はそういうの無しで接しようかなって。今回のも本当に日頃のお礼ってことなんだー。」

 

「兄が奉仕部のことについて話したんですか?」

「うん、こないだ、やっと、嫌々ね。」

「その、いろは先輩。兄のことよろしくお願いします。兄は本当にその危ういというか…」

 

小町ちゃんは少し言い淀んた後、ハッキリとした口調で私にお願いしてきた

 

小町ちゃんは本当によく出来た妹だと思う。先輩と血が繋がっているとは思えない。

 

「あはは…、私としては先輩に体良く近づいてるだけなんだけど…。うん、先輩が無茶しないように見とくね。」

「いろは先輩ー…。本当にありがとうございます。」

その後は少しずつ先輩のことについて話して終わった。

 

いやー、やっぱ小町ちゃんに電話して良かったー。

 

…。…?…!

 

結局プレゼント決まってないじゃん!!

⭐⭐⭐

8月8日。先輩の誕生日だし、会社には先輩はいないだろう…なんて思っていたんだけど。

 

「おはよう一色」

「おはようございます先輩」

 

…誕生日くらい休めばいいのに。先輩は自分で言う様に社畜への道を進んでいるようだった。

 

しかし、これは予想外。てっきり先輩は休みだとばかり思っていた私だから(シフトを確認しておけば良かった)帰りに先輩の家にでも寄って渡そうと思ってプレゼント渡す準備が出来てない。

といってもプレゼントの品物自体は用意出来ているのだ。私の心の準備が出来てないだけで。

 

…よし!渡そう。

仕事終わったら。

 

そんな結局尻込みした決意をしながらカバンの中に潜ませた丁寧にラッピングされた小箱を確認した。

日頃のお礼ということなのだし、上司に贈るプレゼントといった方向でまとめてみたのだけど。

ちょっとお洒落な感じのハンカチを買ってみた。

ただ、ハンカチだけというのもどうなんだろうと思ってキーケースも一緒にしてみた。

先輩の家の鍵はむき出しそのままで財布に入れているところを見たことがある。恐らくキーホルダーとかキーケースの類は持っていないはず。

小町ちゃんに大丈夫か聞いてみたところ

「実用性のあるものなら素直に持ち歩くはずです。だいたいハンカチを実家から持っていってないし、前に家に遊びに行った時もハンカチなかったですし、身だしなみくらいしっかりして欲しいですよホントに」

とのこと。持ち歩くってのが結構ポイント高いですね。

とも言っていた。

我ながら問題ない物を選んだと思うので、そんなに不安に思うことはないはずなんだけど…。

 

先輩にプレゼント贈るなんて初めてのことだし、やっぱり緊張するもの。

 

チラと先輩の方を見るとパソコン相手に凄い睨みつけていた。

 

…何してるんだろうこの人。

 

「何してるんですか先輩。腐った目がより一層酷いものになってますよ。」

「あー、ちょっと目が悪くなったのかもしれん。目を凝らさないと見えねぇ…。」

「その目付き相当ヤバいですよ。殺し屋とかそっち系のご職業の方ですよ。」

 

正直私でもちょっと怖い。

 

「うるせぇな…。帰りに眼鏡でも買いに行くか」

 

あれ、それは不味いのですが。帰りにプレゼント渡す予定なんですけど。先輩の予定が大丈夫ならそのままご飯行くつもりなんですけど。

 

「せ、先輩。私ついて行きましょうか?」

「え?いや、いいよ。そもそもお前眼鏡してないから分からんだろうよ 」

「いやいや、眼鏡のデザインって大事ですよ。眼鏡は似合ってないとだいぶ変な印象持たれますから!」

「それは暗に俺が変な眼鏡選ぶって言われてます?」

「自分で言うのもなんですがセンスはあるほうだとおもうんですよ。」

「本当に自分で言うのもなんだな…。あー、じゃあまあお願いしようかな。」

 

とりあえず、なんとかなった…。

 

⭐⭐⭐

大変なことに気づいてしまいました。

今から私は先輩と眼鏡を買いに行き、その後プレゼントを渡してご飯に行きます。

 

…デートかな?

今までもご飯行ったり飲みに行ったりはしていた。

ただ今回は間に買い物がはいるのだ。

これはデートと言えるのでは?

 

…どうせなら、しっかり待ち合わせして服もしっかりしたの着てきたかったけど。

 

まぁ、先輩と並んで会社出てから歩くの嫌いじゃないっていうかむしろ好きなんでいいですけどね。

 

「この辺眼鏡屋とかあったっけかな…?」

「私は知りませんけど…。駅前行ったらあるんじゃないですかね?」

「んー、まあ駅前に1個あったような気はする。」

 

先輩の言う通りメガネ屋さんは駅前にあった。

先輩が視力検査してる間に適当に見て回っているんだけど…。私眼鏡よくわかんないんだよね。どれが先輩に似合いそうかな。

暗い色が合うのは絶対として…

 

いろいろと見て回っているとお客さんが私たちしかいなくて暇なのか店員さんが1人近寄って来た。

 

「彼氏さんのメガネ選びですか?」

えっ。

「いっ、いえ。あの彼氏じゃなくて会社の先輩なんですけど…。」

そう見えてるってことですか。

…うん。男女2人組で来ていたらそう見られてもおかしくないのか。

「社内恋愛ですかー。いいですねぇ」

…推しが強い店員さんのようだ。

ちょっと、なんというか、顔が赤くなるのでやめてもらいたい。

そんなこと話してたりすると視力検査を終えた先輩が戻ってきたようで。

 

「あっ、先輩この辺とかいいんじゃないですか。」

 

先程の店員さんを撒くためにも、顔の赤さを誤魔化すためにも無理やり話しかける。

「これか…。どれどれ」

そう言って眼鏡をかける先輩

「ああ、はっきり見えるわ」

 

「…。」

「一色?おい、どうした?」

先輩が眼鏡かけるとヤバい…。腐った目がいい感じに隠されるせいか、イケメンに見える。

いや、普段から本人の言う通り顔はいい方なのである。

ただ、腐った目が相殺していたのに、その腐った目が隠れているので普通にイケメンなのである。

ちょっと混乱して語彙力が低下してしまったけども。

 

…これは眼鏡萌えというやつなのかな。

 

「あ、いいですね似合ってますよ」

混乱を誤魔化すように先輩に返事をするけれど心中穏やかではなかった。

 

眼鏡をつけてる先輩なら、またモテてもおかしくはない…!

モテたからと言って先輩がどうにかなることは無いだろう。でも周囲と言うものは勝手な時はとことんまで勝手に振る舞うものなので。

先輩は気にしないでしょうし、気にするのは私だけなんだけど…。

 

うーん、悩ましい。あのメガネを付けた先輩は私だけのものにしたいレベル。

 

しかし仕事に支障が出て困るのは私ではなく先輩。

コンタクトは面倒だから着けないなんて言うし眼鏡の先輩非公開はできないようだ。

でも、本当に格好良いなぁ。これは不味いですね、ちょっと興奮しすぎてる私

 

なんて考えているといつの間にやら先輩が購入を済ませていた。

「おう、待たせたな」

「あれ?先輩眼鏡はどうしたんですか?」

「ん?眼鏡は仕事中にしか着けないぞ」

「…すごくおじいちゃん感ありますね、それ」

「おいそんな事言うなよ…、折角買った眼鏡なのに掛けづらくなるじゃねぇか」

 

先輩の顔面戦闘力が下がってますね。やっぱり先輩は目が腐ってないと…。

「そうだ、眼鏡選び着いてきてくれたからな飯でも行くか」

「あ、はい。でも意外ですね。先輩なら即解散なんて言いそうなのに」

「ん?あー、嫌、なんだ。嫌なら別にいいんだが…」

嫌なんてことあるはずもなく。むしろプレゼント渡しが控えている身からするとありがたい申し出です

「いえ、嫌なんてことありませんよ」

2人していつも行く居酒屋に向かって歩いていく。

「あー、それでだな。一色、」

「はい。どうしました?先輩」

歩きながら先輩と話しているとなんだかもの言いたげな感じになっていた。

「あー、嫌、なんでもない」

「はぁ…?変な先輩ですね」

⭐⭐⭐

ご飯を食べて居酒屋を出る。

先輩の誕生日なんだし私が払いたかったのだけれど、頑として先輩は払わせてくれなかった。

…いつもなら嫌々支払うのに、どうしたんだろう。

「あー、一色。ちょっと話があるんだ」

「話ですか?」

「あ、あのさ」

そこで先輩は迷うように何かしら口をもごもごさせていたが少しすると私の目を見て…

 

…これなんか告白みたいですね。

えっ、まさか。そういう系ですか!?

 

「一色。」

「は、はいっ」

声が上擦ってしまう。心臓がドキドキする。

そして先輩は私の目を見つめて…

 

「今日さ、俺の誕生日なんだけど、小町がメールも電話もくれなくてな…。毎年電話がかかってくるのに…。この場合って自分から言ったりしてもいいもんだろうか?」

 

た だ の シ ス コ ン だ っ た

 

「は?」

自分でも驚くくらい冷たくて低い声がでた。

私こんな声だせたんですね

「あ、いや。別にお前になんかねだってるとかそういうわけじゃなくてだな」

「先輩、バカなんですか?これどうぞ」

「あ?なんだこれ」

「先輩の誕生日プレゼントですー!おめでとうございますバカ先輩」

「え?いや、え?」

私のドキドキを返してほしい。小町ちゃんが誕生日に関してなんにもしてないのは私が終わったらって言っていたからだろう。

なんだろうか。結構前から考えてこのオチは…。

今も理解できないみたいでちょっとキョドキョドしてるし

「お前が俺に誕生日プレゼント?」

「そうですよ、私はそれを渡すために先輩に着いてきたというのになんですか小町ちゃんがって」

「お、おう。あ、ありがとう」

「いーえ、どういたしまして!小町ちゃんなら電話したら出ると思いますよ」

「あ、ああ。いや、本当にありがとな。家族以外からなんてほとんど貰ったことないわ」

「ちょっと悲しくなること言わないでください…。」

先輩は何故かトウモロコシが…なんて言っていたけど私としては脱力しきっていた。

はぁ、これが先輩だもの。仕方ないよね

喜んでくれているようなので良かったということにしようかな。

先輩が喜んでくれているので頑張って考えた甲斐があったなんて大分チョロい私なのでした。

 

 

 


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