インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士   作:武御雷参型

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第八十九話

そして、事件も無く学園では学園祭が行われようとしていた。

一般に開放していないが、各国家の首脳陣や護衛は勿論、企業の社長たちが学園祭に呼ばれていた。また、生徒一人一人にチケットが一枚だけ配布されており、誰にでも渡せれる様にしていた。

キラとアスランは来てもらえる人が一人もいないと言う事もあり、キラは一夏にもう一枚渡し、アスランに至っては簪に渡していた。簪と楯無は両親を呼び、簪が持っているもう一枚に関しては、中の良かった友人に渡していた。

 

「これより、身体検査と持ち物検査を行います。一列に手お待ちください‼」

 

キラが拡声器を手に持ち、列をなしている人々に指示を出していく。この検査を拒否し様ならば、即拘束されてしまうのである。

 

「なぜ、私がこんな検査如きに協力しなければいけないのですか‼ 私は企業代表として来ているのですよ‼ 中に入れなさい‼ 検査などする必要なぞ無いでしょ‼」

 

「ですが、これもこの学園に入る為には必要な事なのです。ご了承ください」

 

「断らせてもらいます‼」

 

「そうですか………致し方がありません。拘束させてもらいます‼」

 

ニコルが受け持つ入り口では、一人の女性が検査に拒否しようとしていた。ニコルの説得も虚しく、女性は検査を断ってしまった為、ニコルによって拘束されてしまい、そのまま車に乗せられ空港に直行したのであった。

 

「………検査を断れば、ああなってしまいますので」

 

キラは拡声器を持ちながら、先程の一連の様子を見せたのであった。これには、誰もが従う他無かった。

因みにだが、この検査を行っているのはアークエンジェル隊、ドミニオン隊、ミネルバ隊の隊長陣と隊員達である。教員では、裏で取引を行い不審者を中に入れてしまう可能性があるとして学園長である千冬自らの指示でこうなったのである。

 

「(やばいな……持ち物検査で見つかってしまう可能性がある………どうするべきか……)」

 

某国の首脳の護衛として来ている特殊部隊の隊長は、持ち物検査でボストンバックの中身を偽装する必要があると考えていた。

だが、既に列は前へと進み始め、首脳が受けていたのである。

 

「(ここは体調不良を装い、ボストンバックの中身を偽装するか………それしか無いな)すみません、大統領。少しお腹の調子が………」

 

「………良いでしょう。必ず、私の元に帰って来なさい」

 

「ハッ‼」

 

隊長はそう言うと、ボストンバックを手にトイレへと駆け込み個室でボストンバックに入っている物を偽装し始めた。

 

「(……これでバレる心配は無い筈だ)」

 

隊長はそう信じてトイレを出て、検査に応じた。

 

「…………危険物は検出されませんでした。どうぞ、中へ」

 

受付をしていたのはなんと、教員であった。これには理由があり、急遽、人の数が増えた事もあり教員の手を借りなければならなくなってしまったのである。

 

「ありがとうございます。(良し‼ 中に入れたぞ‼)」

 

隊長は大統領の元へ駆け寄った。

 

「申し訳ありません。大統領」

 

「いや、腹の調子は問題ないんだな?」

 

「はい‼ ご心配をおかけしました」

 

隊長はそう言うと、顔を深々と下げた。

 

「いや、護衛なしで学園内を歩いてはいけないと言う訳では無いのだが、話し相手がいた方が楽しめるからな。さて、行くぞ」

 

「ハッ‼」

 

大統領もこの作戦に加わっていると言う事もあり、隊長の体調不良は嘘であると知っていたのである。

 

「それで、目的の場所は解っているのか?」

 

「大丈夫です。既に確認済みです」

 

「そうか………仕事が早いな」

 

二人はそう言うと、明日菜を探し出すのであった。だが、それを表に出すのではなく露店を見回りながら、明日菜の姿を探していたのである。

すると、一人の少女が歩いているのを発見する。迷子になっているのか、辺りをきょろきょろとしていたのだ。

 

「お嬢ちゃん。どうかしたのかね?」

 

「ふぇ? あっ、うん………パパを探しているの」

 

「パパはどこにいるのかな?」

 

「正面玄関にいると思うの………パパが言ってたの。正面玄関で仕事をしているって」

 

「パパの名前は判るかい?」

 

「キラ・ヤマト」

 

「「ッ⁉」」

 

まさか二人の目の前にいるのがキラと楯無の娘であると判り驚いてしまう。

 

「そ、そうか……ならおじさん達と一緒にパパの事を探しに行こうか」

 

「えっ、でも…………」

 

明日菜は学園祭当日にキラ達から知らない人と一緒に行動してはいけないと教えられていた。その為、某国の首脳の言葉に着いて行こうとしなかったのである。

 

「大丈夫だよ。君のパパとはお友達だから」

 

この言葉で明日菜は信じてしまい、某国の首脳と隊長の後について行く事にしたのである。

 

「じゃぁ、お休み」

 

「えっ?」

 

首脳がそう言った瞬間、隊長が明日菜の口にクロロホルムを含んだハンカチを当て、数秒で明日菜は眠りに墜ちた。

 

「第一段階はこれで完了だ。第二段階へと移行するぞ」

 

「ハッ‼」

 

隊長は明日菜を壊れ物を扱うかのように大事にボストンバックに中に入れる。その際に、明日菜が怪我をし無い様にクッション材を入れるのを忘れなかった。

 

「第二段階は学園を出るぞ。だが、直ぐに出てしまっては怪しまれてしまう。だから、数店だけでも回るとしよう」

 

「そうですね」

 

そう言って、二人はある程度、学園祭を楽しむと学園を出て空港へと向かい、飛行機へと乗り込んだ。

 

「………なにか引っ掛かる」

 

「大統領もそう感じますか?」

 

「ああ………まさか‼」

 

大統領はボストンバックを開け、明日菜の体を見ると、ズボンのポケットに発信機が取り付けられていたのである。

 

「やられた‼ 奴らはすぐに来るぞ‼」

 

だが、既に遅かったのであった。悪魔は既に大統領の近くに潜んでいたのであった。


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