インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士 作:武御雷参型
それと、学黙の方での前書きにも書きましたが、今回の豪雨によって被災された方々の元の生活が戻ります様、祈っております。
また、お亡くなりになられた方々に対してご冥福をお祈りいたします。
キラとアスランはある場所へと来ていた。
「キラ………まさかと思うが………来たかった所ってここか?」
「うん、そうだよ」
キラ達の前にはファンタジーチックな建物が建っていた。その建物の入り口には看板が掛けられていた。
「帰る‼」
「ま、待ってよ、アスラン‼」
「なんで俺が…いや男二人でメイド喫茶なんて入らなくてはいけないんだ‼」
アスランはキラの制止も振り切って、帰ろうとするがキラがそんな事をさせなかった。
「キラ……いつの間にそんなに力が強くなったんだ………」
「さぁ? ほら、行くよ」
「断る‼」
メイド喫茶の前で二人は入る入らないの問答をしていた。傍から見れば腐女子たちの格好の的である。だが、そこはメイド喫茶である。女性そのものが少なかった。
「諦めて入るよ」
「オイ‼ 俺は入るとは言ってないぞ‼ キラ‼」
キラの力でアスランはメイド喫茶の中へと入店する。
『お帰りなさいませ、ご主人様』
二人を出迎えたのはフリフリのメイド服に身を包む女性達であった。
「お席へとご案内します」
キラの顔は生き生きしていたが、アスランはハイライトが死んでいた。
「アスラン、ほらもっと笑顔で」
「出来るとでも思っているのか?」
「…………」
キラの言葉にアスランは死んだ顔をして尋ねたが、キラはどこ吹く風であった。
「はぁ、入ってしまっては仕方が無い………早く食べて出るぞ」
「あっうん」
流石にキラも無理やり過ぎたと感じていたのである。そこは大人しくアスランの言う通りにするべきだと感じていた。
「ところで、どうしてメイド喫茶なんだ?」
「なんかね、本音さんが言ってたんだけど、メイド喫茶でないと体験出来ない事もあるらしいんだ。だから、興味があったから来てみたかったんだ………だけど、一人で行くのは心細くて…………」
「それで、俺と一緒に行こうとした。と言う事か?」
アスランの言葉にキラは頷いた。
「そう言う事なら、もっと早くに言え。俺だって心の準備と言うもんがあるんだから…………」
「アスラン‼ ありがとう‼」
キラはアスランに感謝していた。昔から友人で、何度かは敵として戦ったが、それでもキラとアスランの絆が壊れる事は無かったのである。
「何を食べるつもりなんだ?」
「決めてないよ」
「は?」
だが、キラクオリティーである。事前に決めておくのではなく、その場で決めるつもりであったのである。流石のアスランも変な声が出てしまう。
「おいおい、店に入ってから決めるつもりだったのか?」
「そうだよ?」
「はぁ~………キラ、前々から言っているだろう……事前に決めておいた方が簡単に済むって………いつになったらお前は判ってくれるんだ?」
「僕は僕なりのスタイルを貫くから」
「今、その言葉を言っても説得力皆無だぞ」
アスランはいつまで経っても変わらないキラに安心感を持ちつつも、どこか不安な気持ちもあった。
「そんな事だったら、楯無さんや明日菜ちゃんに迷惑を掛けるぞ?」
「………うん、そうだよね………」
キラの歯切れの悪い言葉にアスランも何かを感じ取った。
「楯無さんと喧嘩でもしたのか?」
「ち、違うよ‼ そうじゃなくて…………」
アスランはキラと楯無がケンカしているのでないと知ると、安心する。だが、それ以外に心配する事があるのかと頭を働かせるが、思い浮かばせる要素は無かったのである。
「じゃぁ、なんだ?」
「…………アスラン。ここだけの話にして欲しいんだ」
「……なんか訳アリの様子だな………判った。この話は俺とお前だけの話だ」
アスランの言葉にキラは微笑んで「ありがとう」と感謝した。そして、キラはその口を動かした。
「僕が心配しているのはラクス達の事なんだ………僕達がいた世界では、大きな戦争は終わったけど小さな紛争や争い事は終わってないんだ。それは、アスランも知っていると思う」
「ああ。だが、それとなにが関係しているんだ?」
「あの世界で置いて来てしまったラクスやカガリの事が心配なんだ………アスランは心配じゃないの?」
「…………」
キラの言葉にアスランは何も言えなくなる。確かに今の世界に来てキラ達は随分な時間を過ごしていた。だが、それでも元いた世界の事を忘れた訳では無かった。アスランもカガリ達の事が心配では無いのかと尋ねられたら、心配だと答えられる。
「だが、キラ。俺達は割り切ったはずだぞ? もう元の世界に帰れないと判っているんだから……」
「そんな事は判っているんだ………でも…………」
アスランはこんな姿のキラを見るのは久し振りであった。
「はぁ~、キラ。俺達はこの世界に来た理由は判らない。だが、今の情勢は俺達が抜けられるほど甘い世界では無いと感じている筈だぞ? だから、今はやるべき事をやるだけだ」
「………そうだね………ゴメン」
「いや、俺もお前の気持ちは解らなくも無い。だからこそ、時間が出来た時に考えたらいいと俺は思っている」
「そうだね」
アスランの言葉にキラも納得をした。
「それじゃぁ、注文を決めるぞ」
「うん‼」
二人はそう言ってメニュー票を見ようとした。だが、そこに思いもしない来客が現れた。
「全員、その場から動くな‼」
複数の覆面を被った男達が店内に乱入し、手に持つショットガンを天井へと向けて放ったのである。
店内はパニックに陥る。キラ達も素早くその場に伏せ、様子を覗ったのである。
「相手は五人か………どう動く?」
「僕達は一応、独立権が認められている部隊だから、ISを展開しても問題にならない筈だよ………でも店の人や客たちを人質に取られて迂闊に動けないね」
「ああ…………そうだ。キラ、楯無さんたちに連絡できるか?」
「やってみる」
キラはアスランに言われた通り、プライベートチャンネルにて楯無へと連絡する。
「さて、相手の武器は………時代遅れ過ぎるぞ………」
アスランが見たのは、覆面を被る男達の武装である。男達の武装はショットガンが二丁、ハンドガン三丁だけである。
「天井の痕から見て……ショットガンは散弾タイプだな………もう一丁の方が散弾では無い事を願うが」
アスランはそう言うと、ISに量子変換していたオーブ軍が正式採用しているハンドガンを展開させる。
因みにだが、オーブ軍が正式採用されているハンドガンのモデルは、コルトガバメントとベレッタを足して割ったような形をしている。
「アスラン、お待たせ。終わったよ。向こうでも警察と共同で動くだって」
「そうか、ならキラも銃を出しておけ」
「うん」
キラはアスランに言われ、ザフト軍が正式採用している銃を取り出す。
「さて、どうやって動くだが………」
「難しいね」
「ああ。だが、このまま手を拱いても埒が明かないからな。キラ、ショットガンの男達を頼んでも良いか?」
「判ったよ、アスランも気を付けてね」
「ああ」
二人は短いミーティングを終わらせると、行動へと移そうとした。だが、時は既に遅かった。
「オイ、そこの店員………喉が渇いたから水を寄こせ」
「は、はい‼」
ハンドガンを持った男が、近くに座りこむ店員に水を持ってこさせるように指示を出したのである。
今、ここでキラ達が動いてしまっては、水を運ぶように言われた店員の命は無い物であった。
「チッ、人質か………キラ、どうする?」
「簡単に解決する方法があると言ったら?」
「…………聞くだけ聞こう」
キラの意味深な顔に、アスランは嫌な予感しかしていなかった。
「僕のドラグーンで撃ちぬk「はい却下」………やっぱり?」
「当たり前だ‼ 確かに俺達は独立権をIS学園から渡されていても、流石にこの狭い店内でドラグーンを出すなんて出来ないぞ‼」
「僕は良い作戦だと思ったんだけどな…………」
「俺からしてみれば、どうして、そう言う思考になるのかが知りたい…………」
キラの作戦にアスランは、男達だけで済めば良いが他の関係の無い一般人までもを巻き込むつもりは無いのである。
「さて、店員が水を渡した隙を狙って動くぞ」
「うん」
キラ達は店員が男達に水を配る瞬間を待っていた。そして、その時は来たのである。
「キラ、カウントダウン………3…2…1………GO‼」
アスランのカウントダウンが終了すると同時に、席から立ちあがり店員に当たらない様に、キラの正確な射撃によって男達の持つショットガン二丁は破壊されてしまう。
また、アスランも3点バーストを使ってハンドガン三丁を華麗に撃ち抜き、破壊したのである。
「動くな‼」
「IS学園所属特殊武装隊だ‼ 大人しくその場に手を付け‼」
「無駄な抵抗はしない方が身のためだよ?」
キラ達二人の登場にその場にいた全員が驚いていた。なにせ、IS学園の生徒であり、最近になって新たに設立されたIS学園のガーディアン達が居たのだから、仕方が無い話である。
「クソッ‼ こんな学生風情にやられてたまるかよ‼」
一人の男が上着を脱ぎすてると、そこには体一面にダイナマイトを括りつけていたのである。そして、男の手にはダイナマイトを起爆させる為のスイッチが握られていたのであった。
「ほら、立場が逆転したな………そこを退きやがれ‼」
「チッ……」
「………」
アスランはまさかダイナマイトを体に巻き付かせているとは、考えていなかったのでこういう展開になるとは想定していなかった。だが、キラは違った。既にダイナマイトの起爆スイッチのどこを撃ち抜けば無効化されるのかを考えていた。
「オイ、聞こえねぇのか‼ 銃を下げて退くんだよ‼」
男はキラがこちらに銃を向けている事に気に喰わなかったのか、スイッチをあからさまに見せつけた。
しかし、男はそこで油断してしまった。ダイナマイトの起爆スイッチを見せれば、流石にこちらを撃たないであろうと思っていたのである。
「チェックメイト」
「なに?」
キラは静かにそう言うと引き金を引いた。放たれた銃弾は男の手を掠め、壁に減り込む。だが、キラの狙いはそれだけで十分であった。
男は手をかすめた銃弾の痛みで、起爆スイッチを離してしまったのだ。だが、運が悪ければ墜ちた拍子に起爆スイッチが押されて、ダイナマイトが爆発してしまう恐れがあった。だが、そこはアスランである。起爆スイッチの動きを見て、引き金を引きスイッチが押されない様に軌道を変えたのであった。
「チェックメイト………無駄な抵抗は止してね?」
「…………はい」
男は静かに地面に膝を落とすのであった。
それから間も無くして、警官たちが突入して男達を取り押さえて連行した。だが、それで終わりでは無かった。
「君たちも一緒に署まで着てもらうよ」
警官の一人がキラ達を署へと連行しようとする。
「お断りします。僕達はIS学園から正式に独立権を頂ている身です。また、今回の事件で僕達が貴方方について行く理由が見つかりません」
「………銃刀法違反で所まで連行すると言っているのだ。ついてこい‼」
「お断りです」
警官の言葉にキラはきっぱりと断った。だが、警官はそんなキラの態度が癪に障ったのか、キラを殴りつけたのである。
「黙ってついてこい‼ IS学園の生徒だろうが関係ない。銃刀法違反で逮捕すると言っているのだ‼ 大人しくついてくればいいんだよ‼」
「…………それが警察の態度ですか…………」
「なに?」
キラは警官に殴られた跡を摩りながら、尋ねる。
「だそうですよ、織斑学園長?」
「はぁ? ここにIS学園の学園長が着ている筈が無いだろうが‼ ほら、さっさとついt「オイ、貴様……私の生徒に何をしている?」へ? ブ、ヴリュンヒルデ⁉」
警官もまさかの第一回国際IS大会“モンドグロッソ”の優勝者である織斑千冬が来ているとは思いもしなかったのである。
「もう一度、尋ねるぞ? 私の生徒に何をしている?」
「え…いや………その…………」
「国家の犬如きが、今回の事件の解決者に対しての暴行。並びにIS学園の生徒に対する暴行………録画させてもらった。警視庁に抗議文を提出させてもらう。また、政府にもな」
「……………」
警官は顔面真っ青を通り越して真っ白へと変わっていた。千冬は警官の肩を軽く叩くと、警官の耳に静かに語り掛けた。
「貴様の人生は終わった。自分の手柄欲しさに動いたのが裏目に出たな………それと、警察官だからと言ってなんでも言う事を聞かせれると思い上がるな」
千冬はそう言うと、キラとアスランを連れて行くのであった。
それから数日後、警視庁と政府から謝罪文と慰謝料がキラとアスラン、IS学園へと振り込まれた。
そして、キラを殴りつけた警官はと言うと、自分の家で首つり自殺をしているのを発見されたのであった。
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