インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士 作:武御雷参型
千冬の部屋では楯無、明日菜、簪、箒、鈴、セシリア、シャルロット、ラウラが座っていた。
「さて、女子会を始めるのだが………まず初めに更識姉妹。お前達はどこに惚れたんだ?」
「惚れたって言われましても………私はキラ君の目に惚れました」
「わ、私は……あの時に守ってもらった事で惚れました」
楯無と簪は顔を赤くさせながら答える。
「そうか……だが、あいつらはすぐに危険な所へと向かって行く。それをどう手懐けるかはお前達に掛かっている。それを忘れるなよ?」
「「はい‼」」
「?」
千冬と楯無、簪の会話に付いて来れなかった明日菜は顔を傾げる。
「明日菜ちゃんには早かったかもね………でも、パパを一緒に支えてあげようね?」
「うん‼」
楯無の言葉に明日菜は笑顔で答えた。楯無は、この笑顔を護りたいと思うのであった。
「さて、お前達に聞きたい。この中で一夏に惚れているのは誰だ?」
千冬は楯無達から箒たちへと顔を向けると、箒達に尋ねる。すると、鈴と箒が手を上げた。
「鈴と箒か………他の者は一夏に惚れていないのか?」
「わたくしは一夏さんに対して恋心を持っていませんわ。ですが、彼は強くあろうと努力しているのは事実。わたくしはそう言う彼に対して手助けをしたいだけですわ」
「僕は……一夏に護られたと言うより、キラに助けられました。でも、キラに対して恋心を持っていません。キラに抱いている気持ちは恩人としてだけです」
「私は、VT事件の時にキラに助けられましたが、それでもキラに対してはシャルロット同様に感謝の気持ちでしか持っていません。それに、キラ達のお陰で、今の私がいると思っています」
セシリア、シャルロット、ラウラの順に千冬に自分の気持ちを伝えた。
「だが、オルコット。お前はキラに対しては恋心を持っているのだろう?」
「……はい。ですが、いつの日か必ずこの気持ちを伝えるつもりです」
「と言っているが………楯無?」
セシリアの宣言に千冬は面白そうに楯無に顔を向けた。だが、楯無の表情は至って変化する程では無かった。
「私はキラ君の答えを信じています。どちらにせよ、彼が答えを出さなくてはいけませんから」
「ほう? と言う事は、オルコットを振ると?」
「さぁ? それは解りませんが………彼がどう言う答えを出そうと、私はそれで良いと思っていますから」
楯無は余裕そうに答えるのであった。
「それで……楯無。聞きたい事がある」
「はい、なんでしょうか?」
「明日菜ちゃんは………やはりアレの可能性が高いのか?」
「アレと言いますと………PTSDの事ですか?」
千冬は小声で楯無に明日菜の事を尋ねると、楯無は一瞬、千冬が何を聞きたいのか判らなかったが、一つの答えに導きだし尋ねた。
「ああ、やはりあの時のショックで記憶が?」
「………可能性は高いですね。検査をしてみない事には何とも言えませんが………この夏に出も実家に戻り検査を受けて貰おうと思っています」
「無理をさせるなよ?」
「判っています」
楯無はそう言うと明日菜の頭に手を置き、ゆっくりと撫でると、明日菜も母親のぬくもりに安心したのか目を細め嬉しそうな表情になる。
「ところで更識先輩。聞きたいのですが………」
「なにかな? シャルロットちゃん」
「明日菜ちゃんは………」
「ちょっと待ってて………織斑先生。明日菜ちゃんを寝かしてきていいですか?」
「ああ。すぐに戻って来い」
千冬に断りを入れて明日菜を部屋へと戻り、キラに寝かすのを頼むと戻ってくる。
「ごめんなさいね。あの子にはまだ聞かせられない話なの。それで、明日菜ちゃんの事を聞きたいのよね?」
楯無の言葉に千冬と簪を除いた全員が頷く。
「その前に聞きたいのだけど、今年の春ごろに起きたショッピングモールテロ事件の事を知っている人はいるかしら?」
楯無の質問に全員が手を上げた。この事件は大きく取り上げられ、全世界に報道されていたのである。
「そう………ありがとう。あのテロ事件で明日菜ちゃんは本当のお母さんと一緒に来ていたの。だけど、テロ事件によってお母さんは撃たれてしまった。事件後に生存者を確認していたら、明日菜ちゃんを抱いたお母さんが虫の息でキラ君に頼んだのよ。この子をお願いしますってね。それで、キラ君が承諾したもんだから、そこからは大変。キラ君はすぐに学園に連絡をしたら、私と一緒の部屋になって二人で明日菜ちゃんを大きくなるまで育てようと相談したのよ。だけど、明日菜ちゃんはあのテロ事件の事を忘れているわ」
「どう言う事ですか?」
「PTSD……聞いた事無いかしら?」
「聞いた事はあります。私も軍にいた頃に聞きました。心的外傷後ストレス障害ですよね?」
「そう。明日菜ちゃんは無意識のうちにテロ事件の時の記憶を封じ込めたのよ。克服している様に見えているけど、心の奥底では記憶を封じ込めているはずよ。それを思い出さない様に……」
楯無の言葉に全員が涙を流した。
「だから、明日菜ちゃんには言わないでね?」
『はい‼』
楯無の言葉に全員が頷くのであった。
「そろそろ就寝時間だ。各自の部屋に戻れ」
千冬の言葉で各々の部屋へと戻って行くのであった。