インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士 作:武御雷参型
シャルロットが新たな剣であるラファール・ドラグーンを手に入れた頃、ある組織では極秘会談が執り行われていた。
「それは本当ですか? 委員長」
「ええ、既にあそこに潜伏させている諜報員からの報告では、今の戦力では抗えないと言う事が判明しました」
「では、どうするのですか‼ このままあそこにすべての権力を集約させる訳には行かないでしょう‼」
「なら、貴様には良い案があると言う事なんだよな?」
「ウグッ‼ それは………」
「無いのであれば黙っておけ‼」
暗く誰の顔も判らない部屋に男女十名の人間が罵りあったり罵倒したりしていた。しかし、それを止める人物がいた。
「皆さん、どうか落ち着いてください。今は争っている場合では無い事はご存じのはずです。ここで争っているだけでは、何もいい案が思い浮かばないだけです。ここは冷静に話し合いをしましょう」
「そうだな……すまない」
「いやこちらこそ、申し訳ない」
一人の男性の言葉により場は争いの連鎖は無くなる。
「で、貴方がそう言うのであれば、何か案があると言う事ですな?」
「ええ、私に良い案があります」
机に肘を置き顔を伏せていた男性が顔を上げた。そこに映し出される瞳には野望の塊であった。
「私は此処に宣言します‼ 今、すべての敵を一つに纏める。そこは………IS学園です‼ これをご覧ください」
男性が立ち上がると同時にモニターが降りて来て、そこに一隻の艦を映し出す。
「これが我々、ペインが潜水機能を持たせ航空機の運用、そして戦艦として建造した最新鋭の戦闘艦“ミネルバ”です‼」
男性の声に、場にいた全員が感嘆の声を上げるのであった。
この戦闘艦がIS学園に刃を向けるのも時間の問題であった。
一方、IS学園ではシャルロットの部隊任命式が厳かに行われていた。
「これより、シャルロット・デュノアの部隊任命式を執り行う」
部隊の隊長を任されているキラを始めアスラン、アークエンジェルのクルーが並び立ち、壇上の上にはIS学園の理事長である笠松が立っていた。そして、クルーの後方には生徒会のメンバーが立っていた。
また、進行役は織斑千冬である。
「隠密武装隊“アークエンジェル”隊長、キラ・ヤマトから挨拶です」
千冬の言葉でキラは壇上の上に上がりマイクの前に立つ。
「キラ・ヤマトです。この部隊はIS学園の防衛として成り立っていますが、正確には世界が戦争に向かって行くのを阻止する為の部隊でもあります。今、世界は戦争への道を一歩づつ歩んでいる最中です。これは避けられない事なのかも知れません。しかし、僕達は出来るだけの事はするつもりでいます。その為の準備をしてきました。そして、今日。シャルロット・デュノアさんがこの部隊に任命される事になりました。嬉しく思う気持ち、悲しく思う気持ちの半分を自分は感じ取っています。そこで、今ここでシャルロット・デュノアさんに質問します。貴女は人を殺せますか? この答えを今、答えてほしいです」
キラのいきなりの質問にシャルロットは驚く。しかし、その瞳には既に決まっているかの様な瞳をしていた。
「僕は、致し方が無い時には人を殺します。でも、復讐からの気持ちではありません。最初は復讐心が強くありました。でも、キラやアスランから僕の新しい剣を貰って改めて感じました。復讐ではこの機体が悲しむと。
だから、僕は人を殺したくはない。でも、そんな綺麗事で済む話で無い事は重々、承知しています。これが僕のキラに対する答えです」
シャルロットの真っ直ぐな気持ちを感じたキラは一回頷くと、言葉を締めくくった。
「判りました。正式に部隊に任命します。これで、僕からの挨拶を終わりにします」
挨拶を終えたキラが壇上から降りる。それと入れ替えに理事長である笠松がマイクの前に立った。
「この先に待っているのは戦争です。ロゴスを始め某国企業、女性権利団体、そして、国際IS委員会までもが敵になろうとしています。既に四つの団体は屈託する形で、この学園を更地へと変貌させるための作戦を組んでいると言う情報を掴みました」
笠松の言葉に誰もが真剣な表情で聞いていた。
「ここに私、笠松東二が宣言します。我々、国際IS学園は完全にどの国家にも属さず、中立である事を。武力を持って対峙するのであれば、それ相当の覚悟をしろと。そして、正式にアークエンジェルをIS学園の専属艦にします。それに伴い、アークエンジェル隊は現時刻を持ってIS学園専属特別武装隊と言う名称に変更します。人事については追ってお知らせします」
笠松はそう言って壇上から降りて行く。
「これを持って、すべての任命式を終えます。各自、戻る様に」
最後に千冬の言葉で締め括られるのであった。
キラ達が食堂に戻ると、そこには沢山の生徒達でごった返しになっており、全員が見る先には大型のモニターであった。
そこに映し出されている物に、キラ達は驚愕する。
『只今、入ったニュースです‼ フランスが何者かの襲撃により、壊滅状態に陥りました‼ これにより国際IS委員会は緊急事態宣言を発令し、各国家の代表、代表候補生を臨時部隊に編入させるとの事です‼ また、イギリス、ドイツも軍を派遣し対応に当たると言う事です‼』
このニュースは学生たちに大きな衝撃を与える結果となった。また、フランスのデュノア社が先日にも襲撃に遭い壊滅に陥った矢先であった。
「キラ‼」
「判ってる‼」
アスランとキラは直ぐに学園長室へと向かった。
「キラ、アスラン‼」
シャルロットも急いでキラ達の後を追う。
それを陰から見つめる一人の少女がいた事にキラ達は気付かなかった。しかし、その少女が敵なのか味方なのかは後々に判る事であった。
キラ達三人は学園に隣接された建物内部に入る。しかし、そこは許された者達だけが入れる場所でもあった。
しかし、キラとアスランはそれを知ってか、建物内部に入って行く。だが、誰も止める者はいなかった。それはキラ達が専属武装隊と言う事を知らしめている結果であった。
「キラ‼ アスラン‼」
「シャルロットは楯無さん達のとこで待ってて。僕達が状況を確認後、直ぐに連絡するから‼」
キラはシャルロットの悲痛な声に安心させるかのような音色で指示を出す。
「キラ………」
シャルロットは建物内部には入らず入り口で祈るかのように手を合わせるのであった。
学園長室内部では既にキラ達が到着する前に、織斑千冬と山田麻耶が笠松と緊急会議を行っている最中であった。
「学園長、委員会からは何か達しはありましたか?」
「いえ、今の所は何もありません。しかし、妙ですね…」
「妙、と言うと?」
笠松の言葉に千冬は尋ねる。
「よく考えて下さい? 先日にもデュノア社が襲撃に遭ったばっかりです。立て続けに襲撃などあり得ますか?」
「そう言われてみればそうですね………何者かが、この襲撃に関与していると学園長はお考えですか?」
「そうとしか考えられないでしょう………ですが、判っていますね、織斑先生?」
「………ええ、先日のデュノア社の襲撃と今回の襲撃について篠ノ之束は関与はしていない筈です」
笠松の言葉に千冬は、親友である束が関与していない事を断言した。
「あいつにとって、今回の襲撃やデュノア社の襲撃にメリットが全くと言って良い程にありませんから」
「………ですが、それを委員会が判っているかは、判りませんが」
「そうですね」
千冬がそう言うと、学園長室の扉が強い力でノックされる。
「誰だ‼」
『IS学園専属特別武装隊“アークエンジェル”隊、隊長のキラ・ヤマトと副隊長のアスラン・ザラです。お話したい事があります‼』
千冬の怒声にキラ達が扉越しで、自分達の事を名乗った。
千冬は一度、笠松の方を向くと一回頷いた為、内部へ入れる事にした。
「入れ‼」
「「失礼します」」
千冬の言葉でキラ達二人は敬礼をしながら学園長室へと入る。
「どうしましたか?」
「どうもこうもありません。我々の出撃を許可を願います」
笠松に具申するキラに、笠松はやはりかと言う思いであった。大々的にニュースとなった今回のフランスの襲撃は既にキラ達も知っていると踏んでいた。その為、いつ来ても良い様に待ち構えていたのだった。
「やはりお二人は今回の事を知ってしまいましたか………」
「任命式の後、僕達は食堂に戻ると全員がニュースを見ていました」
「これにより、大規模な混乱が起きると思われます」
「学園長、我々の出撃の許可を‼」
「ただ、指を銜えて見ているだけでは武装隊の名が泣きます‼」
笠松は二人の言葉を聞き、少し考えだす。それもその筈である。学園は武装隊を持つ必要性が無い。もし、持つと言う事になればそれは委員会に背く結果になってしまう事が、目に見えているからである。
しかし、キラ達の言い分も判る。
「もう少し、待って下さい。情報がまだ揃っていない状況で君たちを危険に晒す事は避けたいのです」
「それは百も承知です‼ ですがこのまま見ているだけと言う事になれば隣国である、イギリス、ドイツ等が襲撃に遭う事は目に見えています‼」
「学園長‼ もしこのまま見逃す結果となれば、全世界が混迷の闇に包まれるのも時間の問題です‼」
キラとアスランの剣幕に誰も反論出来なかった。
そして、学園長である笠松は決断をした。
「判りました。国際IS学園所属特別武装隊の出撃を認めます。ですが、出撃は敵がそのくらいの規模なのかが判り次第です。それは譲れません」
「「………判りました」」
笠松の言葉にキラ達は頷くのであった。
シャルロットの故郷であるフランスが何者かによって襲撃に遭った。
それは、誰による陰謀なのか………
キラ達、国際IS学園所属特別武装隊“アークエンジェル”は準備を整え、出撃できる用意をしていた。
次回~陰謀者
闇を切り開け‼ フリーダム‼
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