インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士 作:武御雷参型
一夏達専用機持ちを簡単に撃墜したキラとアスランは、次の相手を待っていた。
「待たせたかしら?」
「お待たせ」
キラ達の前に二機のISが降り立つ。一機は、キラの恋人である更識楯無。そして、もう一人はアスランに恋心を持っており、楯無の妹である更識簪である。
二人が纏っている機体の説明をするならば、楯無の機体はロシア政府が抱える技術研究所であるスフォーニ技研が開発した第三世代機“ミステリアス・レイディ”である。この機体の最大の武装としてはナノマテリアルを使った武装である。
一度、キラと戦った事がある楯無であるが、その際にはまだ性能的にも発揮できていない状況であった。しかし、キラと二人で機体を改良した事により性能的にもアップされている。
簪の機体、“打鉄弐式”は日本政府お抱えの技術研究所である倉持技研が製造したが、一夏の専用機“白式”を制作するにあたり製造がストップした物を、簪が独自に回収し自身で機体を完成しようとした。だが、個人で出来る事には、限度があり最終的にはキラ、アスラン、簪、楯無の四人で製作した機体である。
この機体の最大の武装は実弾兵器が豊富であり、また、キラが作った連装式荷電粒子砲“春雷改”である。ビーム兵器一号機として、作られたこの武装は現専用機持ちにとっては最大の敵である。
「さぁ、ちゃっちゃか終わらせましょう?」
「そうだね、お姉ちゃん。私もこの機体で勝てるかどうか判らないけど、出来る事はするから‼」
二人はそう言うと、自身の武装を構える。楯無はジャベリンを。簪は春雷改を構える。
一方のキラ達は、先程同然、何もしない。ただ構えもしていない状態であった。だが、油断するほど二人は弱くは無かった。今までもキラとアスランの戦い方を研究し、独自の戦闘技術を隠れながら行っていた。
それを発揮するのが今であると二人は考えていた。
「行くよ、簪ちゃん」
「うん‼」
二人は一気にキラ達に迫って行く。そして、楯無はキラへ、簪はアスランへと向かった。
キラと楯無の戦闘は今までの中で激しさが凄まじさであった。楯無のジャベリンに内蔵されているガトリングが火を噴く。だが、キラは油断した。楯無から見せて貰った情報は実弾を発射させるだけであった。
しかし、このジャベリンには簪と共同で製作した武器。となれば、春雷の構造を知っている簪がジャベリンを改造し、ビーム兵器へと変貌させていた。
そして、一年専用機持ちが誰一人ダメージを与えられなかったキラに、初めてダメージを与えた。
「やったわ‼ 誰も成しえなかったダメージを与えられたわ‼」
楯無はそれだけでも嬉しかった。この人に一撃を与えられるのは自分だと。誰にも判らせる為でもあった。
しかし、現実はそう甘くは無い。
キラに当てたダメージは微々たるもの。一割も満たないダメージであった。
「楯無さん。ここから本気で行きます」
「えっ?」
キラの放った言葉は、楯無を驚愕に変える言葉であった。そして、驚きの言葉を放った瞬間、楯無は暗闇へと転じてしまったのであった。
キラが楯無にした事は簡単な事である。ドラグーンをすべて射出し楯無を包囲させると一斉攻撃をしただけである。それにより、楯無の機体のダメージは極限に達し機体を維持できなくなり量子変換されISスーツを着ただけの楯無が現れ地上へ向けて落下する。
キラは楯無をゆっくりと抱えるとそのままピットへと戻り、楯無をゆっくりと降ろすと機体を量子変換させる。
「どうして……戻ったの?」
「僕は誰も傷つけたくないです。それが僕のエゴなのかも知れません。ですが、僕は貴女を………明日菜ちゃんと一緒に暮らしたい。僕はいつの間にか貴方の虜にされてしまった。だから………僕と結婚を前提にお付き合いをしてくれませんか?」
キラは渾身の自分の想いを楯無にぶつける。それは今まで一緒に暮らしてきた楯無に対する思いを、嘘偽りなくぶつけた。
「私は………独占欲の強い女よ。それでも良いの?」
「はい。僕は貴女しかいません」
「私って嫉妬深い女よ?」
「知ってます」
「私は………私は…ッ⁉」
楯無の言葉を遮る様にキラは口を塞いだ。自身の口で。
「………こんな私で良いのだったら、よろしくね?」
「はい‼」
「パパ‼ ママ‼」
ピットの入り口に一人娘の明日菜が立っていた。それの後ろでは虚が微笑みを浮かべ、明日菜を押し出した。
明日菜は押された事により少しよろけたが、すぐに持ち直しキラと楯無の元へ向かった。
二人も明日菜が来た事に驚いたが、すぐに表情を笑顔にして明日菜を抱きしめた。
「パパ‼ ママ‼」
「そうだよ、僕がパパに」
「そして私がママになってあげるよ」
「うん…うん‼」
キラと楯無、明日菜は一つの家族になった。これを見つめるのは虚だけでは無かった。千冬や真耶が微笑みを浮かべながら見つめていた。
「キラ君、私……あなたと出会えて良かった」
「僕もです」
楯無とキラはお互いに見つめると、口づけをするのであった。
アスランと簪の戦いはアスランが優勢であった。
簪の春雷の威力はキラのストライカーパックの一部であるランチャーパックのアグニに近い威力を持っている。
しかし、ジャスティスの前ではその威力を発揮する事は出来なかった。
「当たらない‼ どうして……ッ‼」
簪は攻撃が当たらない事に焦っていた。
「このままじゃ………一か八かやってみる‼ ロックオンシステム起動‼」
簪の専用機である打鉄弐式の後方に設置されているミサイル発射装置の蓋が開くと同時に、簪の網膜にターゲットリングが現れる。
「山嵐、全弾発射‼」
簪の掛け声と共にミサイルが発射される。その数96発。
アスランはジャスティスの近接防御機関砲でミサイルを破壊していき、また、ビームライフルやビーム砲で応戦していった。だが、それでも撃ち漏れは起きてしまう。アスランが撃ち漏らしたミサイルは全てジャスティスに命中した。
アスランはこの時、自分がダメージを負っている事に初めて気が付いた。
それもその筈である。ミサイルはミサイルでも、ただのミサイルでは無い。ミサイルの内部には楯無のナノマテリアルに近い成分が入っている。
それにより、炸裂した際にアスランのジャスティスにダメージを負わせたのだった。
ただし、楯無同様にダメージの数量的には一割も満たない結果であったが、それでも簪は小躍りをしそうになった。だが、相手を油断するつもりは無かった。
「簪、少し本気を出すぞ?」
「えっ?」
アスランはそう言うとジャスティスの速度を上げ、ビームサーベルを取り出すと連結させ擦れ違い狭間に斬り付けた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ‼」
簪はこれには堪らず叫び声を上げた。それもその筈である。殺気を感じ避けれたと思った瞬間に斬り付けられたのだ。
だが、アスランの攻撃はそれに止まらず、簪の後ろに着くとビームライフルとファトゥムのビーム砲で簪を撃ち抜いたのであった。
簪はこの攻撃により機体が維持できなくなり量子変換され、ISスーツを着た状態で地上に向けて落下する。しかし、アスランはそれを見越したかのように簪の元に高速で向かうと、傷がつかない様にゆっくりと抱え込み、簪の顔を覗き込む。
しかし、当の本人は気絶しておりアスランはキラと同じピットに向かう。
そして、簪を床にそっと横たわらせ、自身の機体を量子変換させた。
「う……うーん………あっ私負けたんだ」
「気が付いたか?」
「あ、ザラ君………私…負けたんだね?」
「ああ」
アスランの言葉を聞き簪は泣きそうになる。だが、アスランはそっと簪を胸に抱きしめた。
「えっ?」
「負けたが、それでも俺にダメージを与えたんだ。誇っても良いんじゃないのか?」
「ッ⁉ うん‼ うん‼」
簪は目尻に涙を溜めアスランを抱きしめた。
「簪、後で大事な話があるんだ。聞いてくれるか?」
「えっ……それって………」
「後でだ………あそこを見てみろ」
アスランが指さしたところを簪が目を向けると、そこにはキラと楯無、明日菜が抱き合っていた。
「あれを見てしまうと………少し恥ずかしくてな」
「フフフ、そうだね。でも、お姉ちゃん、嬉しそう」
「そうだな……(キラ、良かったな。お前の傷が少しでも癒える事を願っているぞ)」
アスランはキラがこれまでの戦いで心が傷ついている事を知っていた。ラクスがいない今、キラの心により添えれるのは楯無だと感じ取っていたアスランは、喜んでいた。そして、自身にも同じことが言えるのであるが、それでも護りたい人が今、胸の中でいる。
それが知れただけでもアスランは喜びを感じていたのであった。
この戦闘を見ていた笠松理事長は正式にキラ達二人に本来の専用機の使用を認め、千冬同様の指揮権を与えた。
そして、ビーム兵器の製造をお願いするのであった。
キラとアスランは漸く自分達が心からより添えれる人物を見付けた。
しかし、世界は戦争への道を歩んでいた。
世界はいつになったら平和になるのか‼
次回~世界の思惑
光りを取り戻せ‼ ガンダム‼
誤字脱字、感想、指摘、質問等ありましたらどしどし送ってください‼
「万死に値する‼」
君もお呼びじゃないです………あれ?
「狙い撃つぜ‼」
ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ‼
一部、間違っている所がありましたので修正を行いました。