インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士   作:武御雷参型

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お久しぶりです、皆さま。覚えていて下さっていますか? 武御雷参型です。
活動報告をご覧になられている方は、お判りだと思いますが、この作品に関しては消去しずに、このまま進めて行きますので、今後もよろしくお願いします‼


第三十六話

モニターにシャルロットの父親であるアドミラーフと義母が映し出されていた。

 

『………先に謝らせてほしい。シャルロット。申し訳なかった‼』

 

アドミラーフは頭を下げた。それと同時に後方にいる女性も一緒に頭を下げていた。そして、顔を上げると今までの事を静かに話し出すのであった。

 

「ど、どう言う事………」

 

『私達にはお前を守る他にこの方法しか思いつかなかったんだ。女性権利団体から………』

 

“女性権利団体”。ISが世界に配備される前から活動している団体である。本来の活動は男性からの不条理な暴力から女性を護る為の団体であった。しかし、ISが発表され世界中に配備されたころから本来の活動から脱していた。ISは女性しか扱えない兵器と知った女性権利団体の幹部は、これを良しと思い男性を下に見る様になった。最初の頃は、誰もそれを認めなかった。

しかし、モンドグロッソでの織斑千冬の強さによりそれは覆されてしまった。男性よりも女性が優位に立ったと言う事である。

これにより徐々にではあるが、女尊男卑の世界に変わってしまったのだった。そして、今回のシャルロットとの因果関係は何なのかと言う事になるが、フランスの女性権利団体はIS学園にいる一夏は兎も角とし、キラやアスランがいる事が良い様に思っていなかった。その為、デュノア社に脅しを掛けシャルロットを男性として隠蔽して送る様に指示を出した。しかし、これに異議を唱えたのはシャルロットの父親であるアドミラーフと義母であるセイリーンであった。一度は引いた女性権利団体ではあったが、政府の中にも女性権利団体の息の掛かった者達がいた。その結果、政府から非公式ではあるが通達が送られてきた。そして、内容の最後には“この要望を呑まない限り、政府としてはデュノア社に対して援助金の打ち切り”を突き付けて来たのだった。

そして、政府は未だに第三世代機の開発が遅れているフランスはもう一つの指示も出していた。それは“男性操縦者の排除と共に第三世代機の情報の略奪”であった。

 

『もし。これを呑まなければ会社にいる者達に給料が払えない。それに、この会社はお前の母親であるシルヴィアが望んでいた事だった。私は路頭に迷う社員達を見たくは無かった。それはセイリーンも同じだった』

 

「…………それだけの理由で僕をIS学園に送ったのですか? 結局のところ、貴方は会社を護りたいが為に僕をこの学園に送った。そう言う事じゃないのですか?」

 

『………』

 

シャルロットの言葉にアドミラーフは何も言えなくなる。その通りなのだから。だが、本当の気持ちは違った。会社の為では無く、シャルロットの為であると。しかし、今シャルロットに言っても聞いてもらえれるような状況では無かった。

そこに助け船を出したのはキラであった。

 

「シャルロット。君は大いに勘違いをしているよ」

 

「勘違い? 何を勘違いしているって言うの?」

 

「よくよく思い出してみて、アドミラーフさんが言っていた言葉を……“女性権利団体から君を護る”。この言葉の意味が判るかい?」

 

「………判らない」

 

シャルロットの言葉を聞いたキラは一度モニターに写るアドミラーフを見た。彼は一つ頷くともう一枚のモニターをシャルロットの前に出した。

 

『これを見てほしい。シャルロット。ここに写っている言葉の意味が判るかい?』

 

「………これって……」

 

シャルロットが目に移したモニターには、シャルロットが帰国した後の計画書であった。そこにはシャルロットが空港に到着後すぐに拘束し処刑する内容であった。

 

『もしシャルロットが各国の第三世代機の情報を持ち帰っても持ち帰らなくてもシャルロットを殺すと言う事に変わりは無かったのだよ。そして、デュノア社も巻き込んだ形で………これを見た時、私は愚かであったと思ったよ。シルヴィアから君を守ると言っていたのに、結局、シャルロットを巻き込んでしまい最終的には殺されてしまう。こんな形で終わらせる気は無かった。だから、私達は極秘裏にIS学園にこの文章を送って君を守ってもらえる様に取り計らった』

 

シャルロットからすれば初耳の事であった。まさか、両親がこんなにも自分を愛してくれているとは露にも思わなかった。

 

『シャルロット……今更かも知れないが謝らせてくれ。申し訳無かった』

 

アドミラーフと共にセイリーンも頭を下げるのであった。

 

「………本当に今更じゃないですか………謝られて、それでお終いなんて出来ませんよ………でも、もし僕がそっちに帰れるようになったら…………これまでの事を話してください。それが僕が望む事です」

 

『判った。もしシャルロットが帰って来た時には沢山、話をしよう。シルヴィアの事やこれからの事を』

 

「はい‼」

 

シャルロットとアドミラーフの話は蟠りも無くなった。しかし、この約束が果たされる事は無かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、全世界が緊急で報道した。

 

『緊急ニュースです‼ 昨日未明にフランスの大手IS企業、デュノア社が何者かにより壊滅しました。壊滅したのは本社ビル、製造工場、試験場の三か所になります。尚、現在入っている情報で、死亡が確認されているのは

 

 

 

 

 

 

 

 

社長のアドミラーフ・デュノア氏とその妻のセイリーン・デュノアの二名との事です』

 

 

このニュースを受け、シャルロットは地面が無くなる感覚に陥り、落下する様な気持ちになった。折角、分かり合えた親子であったが、それは儚く、無残にも散ってしまった。

 

 

だが、キラとアスラン、マリュー達にはこの襲撃の犯人が判っていた。なぜならば、写真の一部に見慣れた機体が写っていたからである。

 

「もしかしたら本格的に動き始めているな………ロゴスが」

 

「そうだね。僕達も本格的に動けれる体制にしておかないとね」

 

「ああ、マリューさん達もアークエンジェルの準備をお願いしますね」

 

「判ったわ。でもそう簡単に動けるの? 私達って秘匿部隊の筈ではないのかしら?」

 

アスランの言葉にマリューは、自分達の部隊はIS学園内での活動を許されているはずだと認識していた。

 

「いえ、秘匿部隊は秘匿部隊です。ですが、それはIS学園所属と言う意味での秘匿部隊となります。現に、俺達の今の機体であるイージスとストライクに関しては、学園内での活動を視野に入れていますが、本来のジャスティスやフリーダムはそれに値しません。ですので、俺達の事がばれる心配は無いんです」

 

アスランの説明にマリュー達はなるほどと感じていた。

 

「それにしても、この機体がここにいるのは何かの縁を感じるわね」

 

「はい。僕もそう思っていました」

 

マリュー達が見つめるのは、ロゴスの機体であろう物が写った写真であった。

 

「ですが、この機体がこの世界にある。それだけで判っただけでも良いんではないんですか?」

 

「そうとは限らないわよ。私達の部隊で実戦向きの機体はキラ君のストライク・フリーダムにアスラン君のインフィニット・ジャスティス、アストレイの後継機であるストライク・アストレイ四機、ムウのアカツキ、ドム三機の計十機しかないわ。これだけの精鋭が集まれば、国家に戦いを挑むことも簡単だけど………」

 

「その分のリスクが大きいと言う事ですよね」

 

「そうよ………私達は戦争がしたい訳では無いわ。でもね、それが許される世界でもないのが、今の現実よ」

 

マリューは、アークエンジェルやキラ達がこの世界に来た本当の意味が判らなかった。

 

「今はそれを考えている暇はないわ。一刻も早く戦争が起きない様にしなくては」

 

「そうですね」

 

「はい」

 

マリューの言葉にキラ達二人は頷くのであった。

 

「それで、シャルロットさんは………」

 

「今はそっとしておいた方が良いと思います。まだ、気持ちの整理が出来ていない筈です。そこに俺達が入って行っても、逆にシャルロットに負担を掛けるだけになってしまいます」

 

「そうね………せっかく和解できたと思った途端、こういう結果になったもんね………それにしても、この世界にあの人達が居るとは思いもしなかったわ」

 

マリューが言っている人物は、過去にキラが殺め、最愛の人と共に散った者達の事を指していた。

 

「敵……なのか味方なのかはまだ分かりません。ですが……」

 

「俺達は、何かを護る為であれば、この手を血に染める事も覚悟しています」

 

キラとアスランの瞳には、厳とした意志が籠っていたのであった。




シャルロットは実の父親と義母との間を修復させる事が出来た。
だが、非情にもシャルロットは両親と会話する事がそれっきりになってしまった。
その裏で動く者達、戦争に巻き込もうとする者達。
それぞれの思惑で、IS学園を、キラ達を巻き込んで行くのであった。

次回、『復讐』

復讐の念を断ち切れ‼ シャルロット‼




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