インフィニット・ストラトス~蒼の天使と紅の騎士 作:武御雷参型
アスランと簪は現場検証に、少しだけ付き合い、IS学園へと帰っている最中である。
「アスラン君が、専用機を持っているなんて思いもしなかった……」
「すまない。俺とキラの機体は基本的に、使用が出来ない事になっているんだ」
簪はアスランが専用機を持っている事について、話をするがアスランは自分達の機体がどれだけこの世界では脅威である事を知っているので、無闇に話が出来ない事を所々、削って話をしていた。
「なら、これからどうするの?」
「それについては既に解決している。俺とキラの得意分野で量産機をIS学園から与えられる事になった。俺は日本の第二世代量産機である『打鉄』で、キラはフランスの第二世代量産機である『ラファール・リヴァイヴ』を与えられる事になったんだ」
「そうなんだ……」
「「………」」
ここで話が止まってしまい、黙ってしまう二人。
「あっ、そうだった。君に一つ報告しないといけない事がある」
「な、なに⁉」
アスランの言葉に簪は緊張した。
「そこまで緊張は……ムリかな? 今日から君と一緒の部屋になった」
「………エェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ‼‼」
アスランの報告に簪は驚いて電車の中である事を忘れて、叫んでしまう。しかし、列車の中には簪とアスランしかいなかったのが不幸中の幸いである。
「詳しい話は学園に戻り次第、織斑先生から話があると思う」
「うん、判った」
「まぁ、なんだ………これからよろしく頼む」
「うん、こちらこそよろしくお願いします」
電車の中でお互い、頭を下げているのはどこかシュールでしか無い絵であったのは、誰も知りはしなかった。
一方、キラ達家族(?)は、無事にIS学園に到着したのであった。
「さぁ、今日から君が生活する場所だよ」
「うわぁぁぁ‼ お城みたいに大きいっ‼」
キラの言葉に少女は目を輝かせながら、学園の建物を見ているのであった。
「帰ったか」
その時、千冬が校門からやって来た。
「ただいま戻りました」
「先の襲撃、ご苦労であった。楯無もお疲れさまだな」
「いえ、これもキラ君達のお陰です」
千冬の労いの言葉に、楯無も少し嬉しそうに答えるのであった。
「お兄さん。このお姉さんはだれ?」
「この人は、この学園の中で偉い人だよ」
「へぇ‼ お姉さんって、偉い人なんだね‼」
「あ、ああ。そうだ」
少女の言葉に千冬もしどろもになってしまうのであった。
「さぁ、最初にする事は何だったかしら?」
「そうだった! 私の名前は大和明日菜です。ええと……」
「織斑先生」
少女…明日菜は自己紹介を千冬にする。しかし、しっかりし過ぎている事に驚き、少し固まってしまったが、キラの言葉に気が付き、自己紹介をする。
「すまないな。私の名前は織斑千冬だ。千冬さんで良いぞ」
「はい、千冬さん‼」
明日菜は正直に千冬の名前を呼んだ。千冬の表情は、じっと見ないと判らないが、少し喜んでいたのであった。
「しかし、あれだな」
「なんですか?」
千冬は、楯無を見ながら言い始める。
「母親みたいだな」
「は、母親⁉ 私がですか?」
「そうだ。誰がどう見ても今のお前は母親にしか見えないぞ?」
「き、キラ君。私って母親に見える?」
千冬の言葉に楯無は驚き、キラに尋ねた。
「正直に言いますね。はい、見えます」
「orz」
キラの言葉がショックだったのか、膝から落ちる楯無。それを見て明日菜は楯無の頭を良い子良い子と撫でるのであった。それを見たキラと千冬はほっこりとしていたのは、その場にいた人間だけの秘密であった。
「さて、部屋に戻ったらどうだ?」
「そうですね。楯無さん、明日菜帰ろうか」
「うん」
「ええ、そうね」
そう言ってキラ達は自分たちの部屋に戻って行く。それと同時にアスランと簪も帰って来た。
「ただいま戻りました」
「ああ、大変であったな」
千冬はアスラン達にお労いの言葉を掛ける。
「いえ、大変なのはキラ達ですよ、きっと」
「そうだな」
アスランの言葉に千冬も同意した。まだ、学生の身分で既に子持ちになってしまったキラ。そして、それに巻き込まれる形で楯無もある意味で、同じ子持ちになってしまったのだ。
「さて、疲れただろう? 部屋に帰ったらどうだ?」
千冬はそういうと簪を見る。アスランもそれに釣られる形で簪を見ると、船を漕いでいたのであった。
「フフ。そうですね。ではこれで失礼します。簪、寝るんだったら部屋で寝たらどうだ?」
「……うん…そうする」
簪はそう言ってアスランに部屋まで連れて行ってもらうのであった。
「私もそろそろ考えなくてはいけなくなってきたな………まぁ、ムリか」
千冬はキラとアスラン達を見て、自分も将来の事を考えるも、ムリだと思った。千冬は『ブリュンヒルデ』と言う肩書を持っている為、おいそれと男が寄ってくる訳でもないと考えてしまうのであった。
ちなみに、キラと明日菜、楯無が部屋に戻ったころに戻る。
「ねぇ、お兄さんとお姉さんだと呼びにくいから……」
明日名が、キラ達に恥ずかしそうに切り出す。
「どうかしたの、明日菜ちゃん?」
「パパとママと呼んでも良いですか?」
「「ッ⁉ 良いよ」」
「ワーイ‼」
キラ達の返事が嬉しかったのか、明日菜は喜んで、はしゃいでいた。そして、はしゃぎ疲れて明日菜は夢の中に入っていく。
「ねぇ、キラ君」
「何ですか、楯無さん」
明日菜の髪を漉いていた楯無がキラに切り出す。
「私達って明日菜ちゃんの親代わりなんだよね」
「一応、そう言う事になっていますが?」
キラには、楯無の言っている言葉が理解できていなかった。
「本当の親にはなれないのかしら?」
「っ⁉ 難しくはないですが、その時には明日菜ちゃんに本当の事を言わないといけなくなりますよ?」
「解ってるわ。でもね、このまま明日菜ちゃんが可哀想なの。だから……」
楯無は、そこで言葉を切り泣き始めてしまう。
「僕もその時にはちゃんと明日菜と向き合いますよ」
「キラ君‼」
楯無は嬉しくなり、キラに抱き着くのであった。
そして、IS学園は入学式を終え全校生徒はそれぞれのクラスに入って行く。
「みなさん、初めましてこのクラスの副担任になります。山田真耶です。この一年間、よろしくお願いしますね」
『…………』
真耶の自己紹介に誰も反応が無かった。なぜならば空席が二つあり、そして本来であれば居ないはずの男がいたからである。
「み、みなさんに自己紹介をしてもらいますね。窓際の方からよろしくお願いします」
「は、はい‼」
真耶の言葉に窓際にいた生徒が立ち上がり自己紹介を始め、そして、順番に巡って行き男に向かうのであった。
「織斑君? あれ、聞こえてますか~? 無視ですか? 反応してください‼」
「へっ? あ、ああ。すみません何でしょうか?」
織斑と呼ばれた生徒は真耶に漸く気が付いたようで、尋ねる。
「今、自己紹介の時間なんですが、今君の順番なんです。ですから…そのぉー、自己紹介をしてもらえないかなって………ダメですか?」
「い、いえ‼ 大丈夫です‼ フゥ、は、初めまして織斑一夏です………」
一夏はそう言って一度、何を言おうか迷い言葉を止めた。その結果、クラス全員の視線を浴び頭の中が真っ白になった。そして……
「以上ですっ‼」
ドンガラガッシャーン‼
一夏の最後の言葉に期待していた女子たちは、ズッコケるのであった。それは、某大阪で芸人が劇場をしている程のクオリティーであった。
「あれ? ダメでしたk『ズバーンッ‼』フギュッ‼ ゲッ、張飛‼ 『ズバーンッ‼』アベシッ‼」
「誰が大酒のみだ。諸君、私がこのクラスの担任の織斑千冬だ。君達を立派なIS乗りにする為に教えていく。厳しい事も言うが、判らない時には気にしないで聞いて来るが良い。ちゃんと教える」
千冬は最後に微笑みながら言う。その瞬間、クラスはシーンと静かになったが、一気に黄色い狂喜に変わる。
「キャァァァァァァッ‼ 本物の千冬様よ‼」
「私、千冬様なら死ねます‼」
「私、お姉さまに会う為に北九州から来ました‼」
千冬は少しウザったそうに顔を顰めるが、すぐに表情を戻す。
「少しは静かにしてくれ。ほかのクラスに迷惑になる。それと、私には偽物はいないし、命を粗末にするな。そして、北九州からと言ったが、他にもベトナムから来ている生徒もいるんだぞ?」
『はい、お姉様‼』
千冬の鶴の一声で女子たちは返事をするのであった。
「さて、諸君たちも気になっているだろう。なぜ空席が二つもあるのか。それを今から説明する。入れ」
「「はい」」
千冬が入り口に声を掛けると、男性の声が二つした。そして、自動扉が開くとそこにはキラとアスランが入ってくるのであった。
「え、男?」
「ほかの男性操縦者が見つかったなんて情報無かったのに……」
「自己紹介を頼む」
「はい、僕の名前はキラ・ヤマトです。これからよろしくお願いします」
「アスラン・ザラだ。これからよろしく頼む」
そう言ってキラとアスランは自己紹介をするのであった。
誤字脱字、感想、指摘、質問等随時受け付けております。
ちょっと無理矢理感がありますが、明日菜の親にキラと楯無が正式になるためのフラグです。