知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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加筆修正したら、一部大きく増えてしまったので分割
てか、分割ポイント考えたら新しい挿入話になってしまった

ほぼ純然たるユーなの話
ただ、なのはの性格はさくらとの出会いで微妙に変化し始めています


ゆびきりげんまん

さくらさん達との話が一通りついた後、さくらさんの家を出た僕達は

とりあえず人気のない所で、元の姿に戻って結界を張るため、

なのはと二人で、先ほどの神社へと向かう。

 

 

久しぶりに二本の足で踏みしめる地面の感覚

そこから、フェレットであった時より遥かに高い目線

横には、一緒に歩いているなのは……

 

 

そう言えば、これが初めてだっけ。

この姿で、並んでなのはと歩くのは……

 

 

「これで、よかったのかな……?

 結局、さくらさん達も巻き込むことになって……」

 

 

「ユーノ君?」

 

 

様々な覚悟をして、ジュエルシードの回収にやってきたけど、

ジュエルシードがこの世界にばらまかれたのを聞いたときに、

無謀な事をしないで、管理局に任せていれば、

なのはやさくらさんを巻き込まないで済んだのかもしれない。

 

 

今さら、答えが出ないのは分かってる。

……だけど、こうして元の姿に戻れた今なら

また、一人でジュエルシードを回収することも……

 

 

「……ユーノ君、もしかして

 また一人でジュエルシードを集めようって考えてたりしないよね?」

 

 

「えっ!?」

 

 

ほんのわずか、頭に浮かんでいた考えを指摘されて、僕は思わず答えに詰まってしまう。

 

なのはは、その答えが当たっていたことを察して、少し暗い表情になった。

 

 

「……ダメだよ、それじゃあまたユーノ君、

 大けがをして倒れちゃうかもしれないよ……」

 

 

「……だけど、僕はまた関係なかった人を巻き込んで……」

 

 

ジュエルシードがばらまかれてしまってから、

アレを発掘したことを、後悔しなかった日は無かった

 

 

なのはを巻き込んだ事も、海鳴市の人達に迷惑をかけた事も……

そして、今回さくらさん達まで巻き込んでしまった事も……

次々と、重い後悔が積み重なっていき、今でもそれで溺れてしまいそうな感覚に陥る事がある。

 

 

「……もし、この先なのは達が傷つく事があったら

 僕は、どうやって責任を……」

 

 

「……それは、私だって同じだよ。

 こうして、仲良く話している人が居なくなって、

 ……どこかで、傷ついて倒れてたって後で分かったら、

 私だって後悔するよ、なんであの時ああしなかったのかって……」

 

 

「なのは……」

 

 

なのはは、少し暗くなった空を見上げると、そのまま続きをしゃべり始める

 

 

「ジュエルシードがばらまかれたのは、ユーノ君のせいじゃないし、

 ユーノ君が来てくれなかったら、もっとひどい事になってたと思うよ。

 チームの子達も、すずかちゃんのネコも、

 ……もしかしたら、私だって」

 

 

「……でも、それは僕じゃなくてなのはが……」

 

 

きっかけは、確かに僕だったかもしれない。

だけど、本当に頑張ってたのはなのはで、なのはと出会えなかったら、そんなにうまくは……

 

 

「ユーノ君が来てくれたおかげで、私達は出会えて

 みんな、無事に済んで……

 そして、さくらさんとも出会えた。

 

 みんな、ユーノ君の決心から始まったんだよ」

 

 

「なのは……」

 

 

……そう言うと、なのははこちらの方を振り向き、僕の目の前へと歩いてくるとこう言ってきた。

 

 

「ねぇ、ユーノ君約束しよう。

 ジュエルシードを全部集め終えるまで、そんな後悔はしないって!」

 

 

「えっ!?」

 

 

唐突な提案に、僕は思わず驚きの声が出てしまった。

 

 

「だって、ユーノ君何かあると、すぐ自分のせいにするんだもの。

 ケロちゃんから、初めてあった時に芸人とか言われたけど……

 それ、ユーノ君のせいかも、自虐ネタ芸人って……」

 

 

「いや、そんな受けを取ろうとしてるわけじゃないから!!」

 

 

先ほどの落ち込みはどこへやら……

イタズラっぽく笑う、なのはのあまりの言いように、僕は抗議の声を上げた。

 

 

なにさ、自虐ネタ芸人って……

 

 

「……その代わり、私も約束するから

 全部終わるまで、ユーノ君を悲しませたりするような事はしないって」

 

 

「! なのは……」

 

 

「こうでもしないと、ユーノ君いつか出ていっちゃいそうだもの。

 ……はい、約束するから小指だして、こんな感じ。」

 

 

なのははそう言うと、僕の方に小指を立てた手を差し出してきた

 

 

「こ……こう?」

 

なにをやるのかわからなかったけど、

言われたとおり、なのはと同じように小指を立てた手を差し出した

 

するとなのはは、僕の小指に自分の小指を絡めてきて……

 

 

「ゆーびきーりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます……ゆびきった!」

 

 

そんな短い歌を歌いながら、手を上下に動かしはじめた。

 

 

「……これ、こっちの約束のおまじないだよ

 破ったら、今度は針を飲ませちゃうからね」

 

 

「ちょっと! そんないきなり……!?」

 

 

思わぬ罰則に、またしても抗議の声を上げてしまったけれど、

この約束はイヤじゃなくて、なのはの小指の暖かさは指を離した後もまだ暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうか

 ユーノ君、フェレットに変身して肩に乗って」

 

 

「うん……やっぱりこうなるんだ」

 

 

身体が完全に元に戻ったので、今はもう、自分で飛ぶことはできるのだけれど……

 

 

向こうに戻ってから変身したのでは、誰かに見られたら誤魔化しようがないと言われて、

僕はフェレットの姿に戻って、なのはの肩に乗っていくことになった。

 

 

なのは、僕が人間だってわかったのに、抵抗感とかないんだろうか……?

 

 

 

……どうも、僕の扱いに関して、さっきの指切り以外で変わった事はなさそうだし……

もしかして、男として意識されてない?

 

 

 

そんな考えに悩みながら、周囲に人目の無い事を確認して

魔力を使いフェレットの姿に戻ろうとした……けれど

 

 

「……ユーノ君? どうしたの」

 

 

ちゃんと、変身魔法を使ったはずなのに姿が変わらなかったので、

なのはが、不思議そうな顔で声をかけてきた

 

 

「あれ? おかしいな、もう一度……」

 

 

そう言って、先ほどよりも集中して変身魔法を使ったけれど、

やっぱり、フェレットの姿になる事が出来ない。

 

 

「ど……どういう事!?」

 

使い方は間違ってないし、体に異常があるようには感じられないけど、

だけど、何度やってもフェレットになる事が出来なかった。

 

 

「……ど、どうしよう!?」

 

 

このまま元に戻れなかったら、流石になのはの家で厄介になる訳にはいかない。

 

 

フェレットの時も、喫茶店だから難色示されてたのに

実は男の子でした……なんて言ったら、どんな事になるか……

 

 

間違っても、歓迎されることだけはありえないだろう

 

 

「と、とにかくさくらさんに聞いてみよう!

 さくらさんなら、いい方法知ってるかも……」

 

 

そう言って、すぐさまさくらさんに電話をかけると……

 

 

「なんや、ついさっき帰ってったと思ったら、こんなに早くに呼び出しおって……」

 

 

さくらさんは、文字通りに飛んできてくれた。

帰っていった直後と言っていいタイミングだからか、

ケルベロスが、雰囲気が台無しだと言わんばかりの顔をしていたのだけれど、

とりあえず、事情を話したところ……

 

 

「ほえ……フェレットさんに戻れなくなっちゃったの?

 ケロちゃん、これって……」

 

 

「エリオルの事件と、同じかもしれんな

 ほなさくら、あのカードで……」

 

 

2人には、何か思い当たることがあったのか、

さくらさんは1枚のカードを取り出すと、杖で突いて魔法を発動させた。

 

 

出てきたのは、翼の細工がついた大きな盾。

この間、僕たちを守ってくれた『盾(シールド)』のカードだ

 

 

「防御魔法? どうしてこの魔法を……」

 

 

「ユーノ君、この中でもう一度

 フェレットに変身してみてもらえるかな?」

 

 

さくらさんにそう言われて、僕は盾の内側へ移動した。

……よく見てみれば、盾の周囲にはプロテクションの様な光の膜が見えたけど、

とりあえず、さくらさんに言われた通り、そこでフェレットに変身してみると……

 

 

今度は、これまでの苦労が嘘のようにあっさりとフェレットに変身できてしまった。

 

 

「なんで、防御魔法で変身が……?」

 

 

「変身魔法って、隠し事をするため……秘密とかを守る為のもんやろ

 せやから、『盾』のカードで、その守る力を増幅させたんや

 

 まぁ、ちょっと理不尽に思っても仕方ないやろ。

 さくらも、届け物のカニ見て、思い浮かんだ言うとったし」

 

 

……それは、こじつけと言うのではないだろうか?

まぁ、こうして戻った以上、信じる他なかったけど……。

 

 

 

こうして、僕たちは海鳴市に戻ったのだけれど

試しに一度、元の姿に戻ってまた返信しようとする戻ることが出来ず

結局、さくらさんの力無しでは戻れなくなったことが判ったのでので、

さくらさん達が居ない時は、よほどの事がない限り、フェレットの姿のままと言う話になった。

 

 

案の定、なのはのプロテクションでは効果はなかったし……

もし、うっかり元の姿に戻ってしまったら、どうなることか……

 

 

トホホ……どうしてこうなったんだろう。

 

 

 


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