知世の野望 ~The Magic of Happiness~ 作:(略して)将軍
ビルダーズ2プレイ以降、創作意欲が落ち気味な気がする……
「なのは! 私が悪かったってば!
だから、いい加減出てきなさいよ!!」
アリサは目の前の段ボール箱に対して、先ほどからずっと謝り続けている。
先ほど彼女が何気なしに言った一言が、想像以上になのはを傷つけてしまったのか……
それとも、どこから遠い所から落ちてきたように感じた言葉の刃っぽいなにかのせいなのか……
「………………」
なのはは、暗い表情でどこからともなく、身を丸めれば十分中に納まりそうな大きさで、側面には青い屋根と白い壁の描かれた段ボール箱を取り出すと、そのまま中に引きこもってしまったのだ。
「ちょっとは反応しなさいよ、なのは!!
そもそもどっから出したのよ!? こんな段ボール!」
アリサの言葉に対して、段ボールは微動だにしなかったけれど……
「なのは、アリサも悪気があっていったんじゃないんだし、なんだったら、また今度別の魔法を教えるから……」
僕がそう言ったとたん、一瞬段ボールがピクリと動くが、なのはは外に出てくることはなく、すぐにダンボールは動きを止めてしまった。
「このぉ……私の謝罪より、魔法の方が大事ってか!?
なのは! アンタ最近キャラ変わったわよ!?」
あからさまな怒気をあらわにし、アリサはついにダンボールに手をかけ揺らし始めたが、どうやって抑えているのか、やっぱりダンボールは微塵も動く気配がない。
「なんだか……あなた達も大変みたいね……。」
「アハハ……」
僕達のやり取りを見ながら、マリさんは苦笑いをしながらそう言っていた。
こころなしか、笑いをかみ殺しているようにも見えるけど……
「まぁ、なのはちゃんの事はアリサちゃんにお任せするとして……そう言えば、マリさんに伺いたいことがあるのですが。」
そう言って、知世さんは二人のやり取りをよそに、マリさんに話しかける。
……確かに、あの二人はしばらくあのままにしておいた方がいいのかも、下手に横やりをいれたら、余計こじれそうな気もするし……
「私に聞きたい事って……?」
「……ジュエルシードという宝石についてですわ。
入り口にいた井出君から、マリさんに聞けと言われたのですけれど……」
「ジュエルシード!?」
そして、ジュエルシードの名を聞いた途端、マリさんは……
いや、彼女だけじゃない、周囲に居た子達も、僕達に向かって不安げな表情で同じように身構え始めたのだ。
「え……?」
「あなた達、どこでアレの事を……?」
「……ご存じなのですね?」
がらりと変わった周囲の雰囲気にさくらさんは戸惑っていたけれど、知世さんは対照的に、みんなの放つ圧力をものともせず話を進めていった。
「私達は、理由があってみんなに危険が無いようあれを回収しているんです。
……もし、所在をご存知であれば、教えていただけないでしょうか?」
やさしく、されど強い意志を感じる知世さんの言葉に対し、マリさんは最初、敵視するような視線を崩さなかったけど……
「はぁ……どうも、あなた達はアイツ達とは違うみたいね。」
大きく息を吐いたと思うと、表情を緩めて腰掛けながらそう言った。
彼女の言うアイツ達とは、いったい誰の事なんだろう……?
「あいつ達……?」
「これまで、率先してジュエルシードを回収してた奴等の事よ……もちろん、コクエンも含めてね。」
「え!? それじゃあ、他にもジュエルシードを集めてる奴が……!?」
コクエンがジュエルシードを集めていたのは、フェイトに頼まれたからだ。
理由は、あいつの丸見えの下心だったけれど……
「変なモンスターに変わったり、色んな事件を起こしてるのは知ってるけれど、コクエンを含めて、どういうわけか近辺のロッドマイスターの集団が、アレを奪いあってた事があったのよ。
アレが、元々いくつあったのかは知らないけれど、捜索には全部含めてかなりの人数が動いてたから、もうこの近辺に残ってる可能性はないと思うわ……」
まさかの事態に、僕は思わず息を飲んだ。
何故、そいつらもジュエルシードを集めようとしているのかは知らないけど、そいつらもコクエンと同じようにフェイトに頼まれてジュエルシードを回収しているのなら、すでにかなりの数が彼女にわたったはずだ……
でも、もしそうでないのなら彼女の手に渡る前に回収しなければ……
そんな事を考えながら、なのはとアリサの方を向くと、そこでは段ボールから出てこないなのはにアリサが業を煮やしたらしく、力づくで段ボール箱を引きはがそうとしていた所だった。
アリサは歯を食いしばっており、下からはが引きはがされまいとして、段ボールを抑えようとするなのはの手だけが見える……。
「……では、残るジュエルシードの持ち主は、そのロッドマイスターの方々が?」
「ええ、最もコクエンが持っていた分だけは、どこに行ったかはわからないけど……」
後ろで、知世さんの問いかけに対して、続きをマリさんが語ろうとした瞬間。
「見つけたぞ!」
「!?」
どこからともなく聞こえてきた大声が周囲に響き、僕も、知世さんも、さくらさんも、争ってたなのはとアリサも手を止め、みんな一斉に声のした方向を向くと、逆行でよく見えないが、高い所にある給水塔のてっぺんに誰かが立っているのが見えた。
「この数……間違いない、宵闇コクエンを倒したのは貴様らだな!!」
そう言って、声の主は僕達の方を指さす。
「え……!? 知世さん達が!?」
マリさん達は、驚いた顔で知世さん達の方を向いたが、僕達は彼女の口にした別のことに驚く。
「な、なんでその事を!?」
僕達が、コクエンを倒したことを知っている人はごく僅かのはずだ。
僕は、山茶花町の誰かが喋ったのかと考慮したけど……
「ふん、愚問だな。
ジュエルシードとか呼ばれていたエネルギー物質、アレを探知するためのレーダーを使えばそれくらいの推論はすぐ立てられるわ!」
「ッ!?」
更に想像しなかった答えに、これ以上ない位心臓が跳ね上がった……
ジュエルシードを探知する為のレーダーだって!?
「そ、そんなもの、いったいどうやって手に入れたと言うんだ!?」
「手に入れた……? 違うな、サンプルのデータをもとに造り上げたのだよ……この私が!!」
「!?」
これまでに集めたジュエルシードは、全てレイジングハートの中に封印された状態だ。
これを探知する方法は、僕の知る限り存在しない……
それを、彼女は作ったと言ったのだ……!
「とうっ!」
僕達が驚いて声が出なくなっているところに、彼女は給水塔からプールサイドへと飛び降りてきた。
なんだか、降りてくる時の起動が少し変な感じだったけど……それは今問題じゃない。
改めて彼女の姿を確認すると、スクール水着に、リコーダーの袋が飛び出している赤いランドセルを背負った髪の毛の癖が猫の耳のようにも見えるこれでもかというくらいに、あからさまな小学生をアピールしている少女だった……
こんな子が、ジュエルシードを探知するレーダーを作っただって?!
「さて、それではお前たちの持つジュエルシードを献上してもらおうか……この天才きら様になッ!!」
仁王立ちの状態で腕を組んでいた彼女、きらはそう言うと、なのはの方に向かって掌を差し伸ばした。
こうもストレートに持ち主のなのはを選んだという事は、彼女の造ったレーダーはかなりの精度みたいだ……
「……あなたも、フェイトちゃんに頼まれてジュエルシードを集めているの?」
ダンボールから出てきたなのはは、きらの行為に対し、ここから見てわかるほどに拒否する態度を表に出し、彼女の関与を尋ねる。
「フェイト……誰だそれは?
私は、誰かの命令で動くのは大っ嫌いなのだ。
……そいつには、個人的な興味があってな、私が詳しく解析してやるから、さっさと寄こせ。」
「断る! ジュエルシードは、人の手に余るものだ!!」
フェイトは関係ないようだけれど、彼女のあの態度、ジュエルシードを目的はどうであれ、私欲で扱おうとしている事だけは分かる……。
そんな相手に、ジュエルシードを渡すわけにはいかない!!
「アンタ! なにを言ってるのか知らないけど、ここでのルールは、他人に迷惑をかけない事よ!
人からものを巻き上げようとするなら、今すぐここから出て行って!!」
「マリさん!」
彼女と一戦交える事を覚悟していたが、周囲ではすでにマリさんと彼女の仲間達がマギロッドを構えてきらを包囲していた。
「……なんだそれは?」
「アンタが何者かは知らないけれど、これだけの人数を一度に相手できるかしら……?」
敵意を露にして徐々に包囲を狭めていくマリさん達、しかし、きらは余裕の表情を全く緩める事が無く……
「そんなおもちゃで、このきら様を相手にしようとは笑えるな……
……よし、お前たちに特別に面白いものを見せてやろう。」
「面白いもの……?」
そう言って、きらは背中に手を回すと、すぐさま青い液体が入った瓶を取り出し蓋を外して瓶を逆さにして液体を足元に溢す……
すると、地面に落ちた液体はすぐさま盛り上がった形になり、そこから徐々に膨らんで……
「なに、その瓶……!? 物理法則どうなってんのよ!?
あれもマギロッドなの!?」
「馬鹿め、そんなおもちゃと一緒にするな!
これは貴様の常識など遥かに超えた、このきら様の最高傑作……」
そうして、さらに大きくなったそれは、彼女の下半身をすっぽりと包み込むと、表面には目と口のような模様が浮かばせた。
なんだか、気の抜ける表情だけれど……
「私の気分ひとつで自由に変形!!
世界最強の兵器、きら様スライム(仮)だッ!!」
「ッ!?」
きらが身にまとったスライムは、いきなり横に筋骨隆々な形をした腕を生やすと、その巨体からは想像できない速度で突っ込んできて腕を水平に振り払った。
「「「「「「うわぁっ!?」」」」」」」
「み、みんな!?」
サイズがサイズなだけにかなりのリーチと破壊力で、包囲していた皆はあっという間にプールまで弾き飛ばされてしまい、残るはマリさん一人だけになってしまった。
「ふん、他愛ない……先ほどの大きな態度はどうした?
この程度では、スライムの性能テストにもならん……」
そういって、きらは余裕とばかりに鼻息を強くした。
マリさんは、歯ぎしりしてきらの事を睨みつけたけれど、すぐさま振り返り……
「あなた達! 私が足止めしているうちに逃げて!!」
「マリさん!?」
額に冷や汗を浮かべながらも、僕達にすぐこの場を離れるように言ってくれたのだ。
「コイツの強さ、普通じゃない……!
なんで、あなた達がジュエルシードを集めてるのか知らないけど、こんな奴に渡すよりよっぽどマシなはずよ!
大丈夫、逃げるくらいの時間は……」
「出来ると思っているのか? 馬鹿め!!」
そんな彼女の行為を無駄だと言わんばかりに、きらはマリさんに対して、スライムの拳を振り上げ、叩きつけようとする。
「「いけないっ!!」」
僕と……そしてなのはは、すぐさまそれを止めようと前に駆け出したけれど、想像以上の速さに出遅れ、止める事が出来ず拳は振り下ろされてしまう。
「マリさん!?」「マリちゃん!?」「マリ!?」
周囲の子達の悲痛な声があちこちから響く……
その声と目の前の光景で、僕達は愕然としてしまったけれど……
「な……バカなッ!?」
「あなたは……!?」
彼女は、僕達よりも早くマリさんの所に駆けつけていた。
「……許さないよ、自分勝手なわがままで、みんなの事を傷つけて……!」
「バカな……!? スライムの攻撃を受け止めた!?」
その光景が予想外だったのか、きらも、マリさんも、ビデオ撮影をしている知世さんを除くみんなは驚いた表情のまま、目の前の出来事を眺めている……。
両手持ちした星の杖で、スライムの攻撃を受け止め、きらに対し、これまで僕達が見た事のないほどに怒りを露にしている彼女は……
そのまま杖でスライムの拳を振り払うと、体格差からは絶対に想像できない勢いでスライムが後ずさっていった。
「き、貴様……なんだその力は!?」
この出来事は流石に予想外だったらしく、先ほどまで余裕だったきらの表情から、余裕の表情が消えていた。
「……あんまり人の見てる前で、このカードを使いたくなかったけど……」
そんなきらに対し、さくらさんは杖を向けると……
「もう許さないよ!
私が、思いっきり叱ってあげる!!」
怒りの表情を見せたまま、強い口調でこう言ったのだった。
冒頭、なのはがありえん方向でいじけてしまってるのは、流れの変わった事による心境の変化が主な原因です
前にも書いたと思いますけど、今回と次の章はなのはが主軸になる予定なので
(主役になるとは言ってないけれど)
そして、きらの相手はなのは&ユーノで行こうかなと思っていたのだけれど
設定的には、きら+スライムは結構な強キャラ(漫画版準拠)なので、さくらが相手をする事になりました
……後は、レンジがかみ合わなさすぎる事とかもかな
投げキャラと砲撃キャラじゃ、流石にタイマンでの描写が難しい……