知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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コクエン編に一区切りついて、今回より新章
戦後処理っぽいやりとりと、新エリアボスの導入章です


第5章:砂漠の底に眠るモノ
幻想からの贈り物


友枝町が、亀山小学校から来た子達に襲撃され、さらわれた子達を救出するために、クラスターと呼ばれている抜け道を使って山茶花町まで向かった、コクエン君の事件が終わった翌日のこと……

 

 

事件が終わったすぐ後、気を失ったままのユーノ君を、店長さんに預ける事になったなのはちゃんは帰ってからも、浮かない様子で、翌日に月峰神社で合流すると、すぐに迎えに行こうと急かしていらっしゃいましたが……

 

 

その直後、池の方で大きな音が聞こえたので

なにかと思い駆けつけてみると、そこには、池に落ちて濡れ鼠になりながら、何故か不機嫌な顔で空を睨みつけているユーノ君の姿がありました。

 

 

「ユーノ君!!」

 

 

「なのは……!

 あの……ただいま……」

 

 

なのはちゃんは、ユーノ君の姿を見ると、安心したような顔をして彼の名前を呼び、ユーノ君もなのはちゃんの顔を見るなり、心配をかけた事を気にしてたのか少しばつの悪そうな顔で、そう返しました。

 

 

 

聞けば、紫さんに送ってもらった結果、池に落ちたそうですが……

果たして、このユーノ君にとっては迷惑だったであろう送迎は、ただのイタズラなのか、それとも心配するなのはちゃんを気遣ってくれたからなのか……?

 

 

ともあれ、コクエン君の事件は、ユーノ君の帰還ですべて解決となりました。

 

 

その後、ユーノ君から地下の方で起こった事情を聞き、そこで見た赤く輝く液体の事や、コクエン君の力が増した事、そしてユーノ君がこれまでの魔法を使えず、これまでとは完全に違う力の使い方をした事を聞きました。

 

 

今はフェレットに変身する魔法以外は、全て元通り使えるようになったようですけれど……

 

その赤い液体は、私達の前に現れた機械人形と、なにか関係があるのでしょうか……?

 

……ちなみに、あの機械人形は私達が脱出した直後、洞窟が崩れ始めたのと同時に、そのまますぅっと消えて行ってしまいました。

 

 

ケロちゃんは、それを聞いて何か思う事があるような表情をしていらっしゃいましたので、何か知っているのかと尋ねると……

 

 

「……機械人形についてはワイもわからん。

 今んとこ、異常が起こってないなら問題ないやろ、あそこで見た光景は気にせんとき。」

 

 

そう言って、はぐらかされてしまいました……

ケロちゃん、なにか隠しごとをされているのでしょうか?

 

 

とりあえず、その日はみんなも疲れていたので、いつもの通り、ユーノ君をフェレットの姿にしてから

幻想鏡を使い、そのまま帰る事になりました。

 

 

そして、さらに一週間後……

 

 

 

「どういう事なんですか、これ……?」

 

 

ユーノ君は、ジトっとした目で目の前の光景に対し、そう溢していました。

 

 

「あの……その……ごめんなさい」

 

 

「謝る必要ないわよ、すずか。

 アンタ、そんなに私達を仲間外れにしたいわけ?」

 

 

その発言に対し、すずかちゃんは申し訳なさそうに謝り、アリサちゃんは、不服そうな顔でそう返し……

 

 

「……さくらさん、この二人からは記憶を消さなかったんですか?」

 

 

「そうしようと思ったんだけど……

 二人とも、とっても嫌がってたから、悪いかなと思っちゃって……」

 

 

さくらちゃんはユーノ君の質問に対して、ヘアブラシを片手に申し訳なさそうに答えたのでした

 

 

あの夜、紫さんがさらわれた女の子を送り返す前に、怖い思いを残さないようにと、さくらちゃんは『消』のカードを使って、みんなから、事件の記憶を消したのですが……

 

 

「イヤよ! こんな大事な事を忘れさせられて、知らなかったことにするなんて、絶対に嫌!!」

 

 

「………………」

 

 

自身の記憶を消される事を、アリサちゃんが猛烈に嫌がり、すずかちゃんも不安そうな顔をされたので……

 

 

「知世ちゃん、ケロちゃん、どうしよう……?」

 

 

「……こら、しゃーないわなぁ……」

 

 

結局、迂闊に他言をしないことを理由に、二人の記憶は消さない事になりました。

 

 

ただ、事件の影響で、二人ともこの一週間の間は外出できなかったので、事件の日から今日まで、お二人と顔を合わせていなかったユーノ君は、そのあたりの事情を今日まで知らず、二人が私達と一緒に居る事に驚いたわけで……

 

 

「それにしても、さくらちゃんが魔法を使えるってだけでも驚いたのに、妖怪とか、異世界人とか、不思議体験がいっぱいで、もうびっくりだよ」

 

 

一方、そんな話をよそに、奈緒子ちゃんはここ数日の体験を目を輝かせて思い出していらっしゃいました。

 

 

「……奈緒子さんも、覚えているんですね?」

 

 

「ごめん……奈緒子ちゃん、こういう話好きだし、知世ちゃんだけって訳にもいかなくて……」

 

 

まぁ、私の立場からすれば反対できませんから……

そう言う訳で、奈緒子ちゃんもお二人と同様記憶を残したままなわけで、またもやさくらちゃんは申し訳なさそうに、頭をかいたのでした。

 

 

「それに、忘れちゃうって事は、この事件であった子達の事を忘れちゃうって事でしょ?

 ……ちょっと強引な子達だったけど、また会った時に全く覚えてない態度をとったら、可哀そうかなって思って……」

 

「ん……」

 

 

ユーノ君は、奈緒子ちゃんにそう言われると何も言えなくなってしまったようで、仕方ないと言いたげな感じでため息をつき……

 

アリサちゃんとすずかちゃんは、それを見て、なにか、思いつめたような表情をしていらっしゃいました・

 

最も、私は奈緒子ちゃんに参加していただくのは大歓迎ですけれど……

 

 

「ところで奈緒子ちゃん……実は今度撮影するビデオで、脚本面で相談したいところがありまして……」

 

 

「……知世ちゃん、詳しく話を聞かせてもらえるかな……?」

 

 

さくらちゃんの台本無しの活躍は、この間存分に撮影できましたが、それはそれ、これはこれ。

予定調和の映像を撮影するのも、また重要な訳でして……

 

 

今後の活動を想像し、思わず口がにやけてしまっている私と、メガネを輝かせて、話に乗ってくれている奈緒子ちゃんは向き合って今後の事を相談しはじめると……。

 

「ほえぇ……。」

 

 

他の皆は、そんな私達の様子を見て大きく一歩引いていました。

 

 

「……あ、そう言えばキャサリンさんだっけ? あの子も、記憶はそのまんまなんだよね?」

 

 

「うん……とは言っても、あの子の場合、消さなかったんじゃなくて、消せなかったんだけど……」

 

 

「キャサリンって……あの赤い競泳水着のバニーガールの?」

 

 

そう、彼女も今回の事件を怖がっていたわけではなく、最初の段階で(イレイズ)のカードを使おうとしたのですが、何故か彼女にはカードの力は効きませんでした。

 

それを見て、さくらちゃんは不思議がっていましたが……。

 

 

「……ま、ウチにも事情があるっちゅうことや

 安心せぃ、みんなの事、うかつにばらしたりせぇへんから

 ……名刺渡しとくから、なんかあったら連絡してや、ほな……!」

 

 

キャサリンさんは、当然という表情をしながら私達に名刺を渡すと、そのまま紫さんのスキマを使って帰っていきました。

 

思い返してみれば、キャサリンさんはマギロッドの使い手ではないようですが、所々で魔力を感じていらっしゃった様子でしたので、もしかしたら彼女も何らかの力を扱えるのかもしれません……

 

彼女とは、またどこかで出会う事がありそうです。

そんな予感を感じていると……

 

「あ……ところで、コクエン君の事件だけれど……」

 

 

奈緒子ちゃんが、突然事件の話題を振ってきました。

 

 

「ほえ? 奈緒子ちゃん、また何かあったの!?」

 

 

「うーん、あると言えばあるかな?

 あの事件、結構大きい騒ぎになっちゃったから、インターネットのある掲示板に色々書きこまれてるんだけど……」

 

 

奈緒子ちゃんの事ですから、その掲示板はきっと不思議な事に関するものなのでしょうね。

 

 

「まさか、誰かが事件について書いたとか!?」

 

 

「ううん、黄昏の魔法使いは、そこそこ噂になってるけど、コクエン君の事件については、詳細は書かれてないよ。」

 

 

山茶花町の子達も、マギロッドの事を含めて、私達の事を、他の方には秘密にして下さるよう約束してくださいましたし、コクエン君自身も、変な書き込みをすることはないでしょう。

 

最も、書いた所で信用してくれる方はいらっしゃらないでしょうけど……。

 

「詳細は……?」

 

 

「……うん、さらわれた子達が、記憶を消される前に写真を撮ってたみたいで……

 あんまり写りは良くないんだけど、ユーノ君、これ……後ろ向きだし、逆光でわかりにくいけど……」

 

「え……僕ですか……?

 ……ああーーーーーっ!?」

 

奈緒子ちゃんが差し出したスマートフォンをユーノ君が確認した所、彼は大きな叫び声をあげてしまいました。

一体何を見たのかと、私達もつられて画面を確認すると……。

 

「これ……メイドの恰好したユーノとケルベロス!?」

 

そこには、灯りに照らされたメイド服の子と、耳の大きなぬいぐるみっぽいなにか……いえ、変装したユーノ君とケロちゃんのハッキリとしたシルエットが写っていました。

 

 

「画像編集ソフトを使っても、何故かこれ以上明るくならないんだって……

 さらわれたこのスマートフォンに残っていたらしくって、コメントには妖怪退治をするメイド少女とお供とか、片目の妖怪少女と、ぬいぐるみになったお父さんとか書かれてたけど……」

 

 

それだと、まるでどこかできいた妖怪退治の漫画ですわね、それにしてもこんな写真を撮られていたとは……

 

 

これをみて、アリサちゃんはお腹を抱えて大笑いをし、すずかちゃんも笑いをこらえるように後ろを向きながら口元を押さえ、ユーノ君はまたもやがっくりと地面に手をついてしまい……

 

 

さくらちゃんは、縁側でそのやりとりに耳を傾けつつ、手に持ったヘアブラシで、うとうとしているなのはちゃんの髪をすいていらっしゃいました。

 

 

今、私達が居るのは、紫さんが事件解決のお祝いと、今後の活動に役立てるようクラスターの中に用意してくれた……

 

 

これから、私達の新たな活動拠点となる一軒家です。

 

 

 

 




とりあえず今回は戦後処理と、本拠地の紹介のさわりかな
原作と違って、奈緒子にもバレてしまいました
元々は、消した状態で奈緒子があの写真を見せるはずだったんですけどね
きっと、鬼太郎だと言わんばかりに

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