知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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状況が落ち着いたので更新再開
幹部数と出演作品数いくつにするか、未だ悩んでますが


踏み入れてはならぬ領域

口を手で押さえられたせいで助けを呼ぶことができず、

なすがままに、そのまま手の伸びてきた部屋へと引っ張り込まれ

もしかして、よからぬ事を考えた輩が変なことをしようとしたのかと

警戒しながら、相手を確認しようとしたところ……

 

 

 

「ユぅぅぅノぉッ! アンタって奴はぁっ!!」

 

 

 

「あ……アリサ!?」

 

 

 

そこには、目を三角にして起こるの言葉通りに目を吊り上げ、これ以上ないくらいに激怒している

ウサオちゃん喫茶で待っているはずのアリサだった……

 

 

「ど、どうしてここに!?

 それよりも、いったい何をそんなに怒って……!?」

 

想定外の事態に、何があったのか尋ねようとしたけれど、

襟首をつかまれ、強烈に頭をガクガクと揺さぶられた為に

まともに言葉を発することができず、そのままアリサの怒りの声が耳に突き刺さった。

 

 

「見てたわよ!! 変装したアンタが

 あのチャラ男相手にやってた事!!」

 

 

「え……?」

 

 

チャラ男って……もしかしてコクエンの事!?

見てたって……いったいどこから!?

 

 

「あ、アリサちゃん、もうその辺にしておこうよ……」

 

 

 

揺さぶられ続けているため、考えが全然まとまらなかったけど、

新たにアリサを制止しようとする声が聞こえてくる。

 

 

この声だけは聞き間違えることはない。

声の主は、これまた喫茶店で待っているはずのなのはだ。

 

「なのは……!? あれ、それにさくらさんに知世さんも……」

 

 

よく見てみると、周囲にはさくらさんに知世さんも居て、

知世さんの持っているバッグからは、

先ほど外に出て行ったはずのケルベロスが、丸い頭を出していた、

 

 

「み、みんないつの間に……?」

 

 

「それは、私から説明いたしますわ。

 ユーノ君が潜入しに行った後、喫茶店にいた子達から

 コクエン君がジュエルシードを集める命令を出していたことや

 こちらの建物に、あのフェイトちゃんらしき子が

 出入りしているという話がありまして……」

 

 

驚く僕に、知世さんは申し訳なさそうに、潜入した後の情報を教えてくれた。

 

 

あの時は気持ちが急いてしまっていたし、

まさか、コクエンとフェイトにつながりがあるとは思ってなかったから、

一刻も早く助け出さなければと、すぐさま潜入に映ったわけだけど……

 

その情報と可能性は、もう少し早く欲しかったな……

 

「それで、もしばったり出くわしたら大変だと思って、

 私達も潜入して来たんだけど……」

 

 

……さくらさんの懸念していた通り、実際に応接室で彼女に出くわした時には、正体がいつバレるかヒヤヒヤしたけれど……

 

 

あの場でバレたらどうなっていたことか……

 

けど、バレなかった理由が女装がうまく行っていたからだと思うと、複雑な気分になる……

 

 

それに、こんなにあっさり侵入できるんだったら、僕が変装した意味なかったんじゃあ……?

 

 

「まぁ、その辺は結果オーライと言うことで。

 ……ただ、私達の方も、入り込んだまでは良かったのですが、

 こちらにたどり着いたときには、ユーノ君の居場所がわからない状態だったわけですから……」

 

 

「だから、ユーノ君がどこが居るのか確かめるために、アレを使わせてもらったの」

 

 

そういったさくらさんが指さした先にあったのは洗面台に備え付けられた鏡。

少し古いけど、割とこまめに手入れされているらしく、汚れや曇りはほとんどない。

 

 

「鏡……?」

 

 

「……クロウが得意にし取った術の中に、鏡やら、水面やら、とにかく姿が写るもんに離れた場所の風景を写す術があってな……

 さくらにカード使うてもろて、あの部屋の中でのこと確認してもろうてたんや」

 

 

ケルベロスが、僕に理解もつかない様な魔法について説明してくれた。

……なんというか、さくらさんの使う魔法って反則じゃないだろうか?

 

 

多分、ここにあっさりこれたのもカードの魔法のおかげだろうし、

盾の魔法で変身の補助が出来たり、迷路の魔法は全く出られなかったり……

……単なる技術の違いだけとは思えない。

 

それとも、こちら側の魔法はそう言うものばかりなのだろうか……?

いくら考えても、わかりそうにはないけれど……

 

 

「……とりあえず、僕の方は大丈夫だよ。

 幸い、あの子にも正体はバレなかったし……」

 

 

僕がそう言うと、みんなは安心した表情をしてくれたけれど、

ただ一人、アリサだけはみんなとは違う顔をしていた。

 

どうも、さっきの怒りはまだ収まってないみたいだけど、

けど、いったい何にそんなに怒って……?

 

フェレットに変身してた事や、なのはを巻き込んだ事について、後々言及される事は覚悟してたけど、アリサは今この場で怒るほど空気が読めない相手じゃないはず……。

 

 

「そうねぇー……、あのチビ男子にだいぶ気に入られてたみたいだもんね

 ねぇ、≪アリサちゃん≫?」

 

 

「!?」

 

 

そう思っていたところ、想定外のアリサの言った一言で、僕の表情は凍り付いてしまい……

 

 

「……【本物】のアリサでぇす♪」

 

 

続けて、タイミング外れの自己紹介をしてきたアリサは、

顔に友好的な笑顔を浮かべて……居るわけがなく、

表情は笑っていても、目だけはこれっぽっちも笑っていなかった……

 

 

むしろ、その表情からはさっき以上に怒気を感じられる……

 

 

 

「……あの、どこから?」

 

 

僕が、その名前を名乗ったのは、ケルベロスが一緒の時だったはずだ。

……そこで、もしやと思ってケルベロスに目を向けると、ケルベロスは居心地悪そうに眼を背けた。

 

 

ケルベロス! さては……!

 

 

「……アイツから、全部聞いたわよ!

 なに勝手に人の名前使って、ぶりっ子なんてしてるのよ!!」

 

どうやら、潜入後の事についてケルベロスは全部しゃべってしまったようだ。

 

 

そして、アリサの目の笑ってない笑顔は、

再び目を吊り上げた怒りの表情へと変わり、

アリサはさらに強く僕の頭を再度揺さぶった。

 

 

「いや、だって女の子に変装してるんだから、そのまま名乗るわけには……」

 

 

揺さぶられる中、何とか力を振り絞って自己弁護したけれど、

アリサは、一切聞く耳を持ってくれず、さらに強く僕の頭を揺さぶる……

 

 

「自分の名前でいいでしょうが!!

 背反の癒し手! この世の果てで恋を唄う少女!!」

 

 

そんな、無体な要求を僕にしてきたのだった

いや、そんな事言われたって……

 

 

「……アリサ、小学生が話題に出していい名前なんか、それ……?」

 

 

年齢的に口に出してはいけなさそうな名前をケルベロスに指摘されても、

彼女の怒りが収まりそうな気配はない……。

というか、こんなに騒がれたら誰かに見つかってしまいそうだ。

 

 

「あ、アリサちゃん、だからもうその辺で……

 すずかちゃん達の事も、何とかしなきゃいけないし……」

 

 

「……そうね、ひとまずこいつの事は後回しにしましょうか。」

 

なのはに制止された頃には、散々揺さぶって少しは気が晴れたのか

アリサは少しスッキリしたような顔で、ようやく僕の襟首を離してくれた……

 

 

うう、頭がくらくらする……

 

 

「……それにしても、よくこんな所にいて誰にも見つからなかったね……?」

 

 

「そりゃ、わざわざ好んでこんな所に入り込んでくる男子はいないでしょ」

 

 

「?」

 

 

揺さぶられ続けてフラフラになったせいか、一瞬、アリサの言ってることが理解できなかったけど、

落ち着いた所で改めて周囲を確認すると、部屋の様子を見て僕は思わず動揺してしまった……

 

 

内装は、さきほど見た鏡付きの洗面台が2つ、人ひとりが入れるくらいの個室のドアが4つ

そして、部屋全体はピンク色のタイルに覆われており、床には小さな排水溝らしき金網……

 

 

作り自体は僕がこれまでに見てきたものとは比較にならないほど古臭いし、

僕が知っているものと比較すると、あるべきものがないけど……

この部屋に広がる微妙な感じの人工のものっぽい匂いだけは、似たようなものを嗅いだ覚えは幾らでもある。

 

 

知ってはいるけど、一度たりとも入った事は無い場所……

いや、むしろこの中では本来僕だけが入ってはいけない場所……

 

 

「じょ……女子トイレ!?」

 

 

確かに、よほどヒドイ性格でなければ、うかつに入り込んだが最後、バッドエンド一直線になりかねない男子にとっての禁足地に足を踏み入れる奴はいないだろう……

 

 

「あいつら不良ぶってても、さすがにここに入ってくる勇気はないみたいね。

 それにしても、アイツら男子しかいない割に、なんでこここんなにキレイなのかしら?」

 

 

「多分、連れて来られた女の子たちが、使用する時の為に、掃除されているのだと思いますわ。」

 

アリサの疑問に、知世さんがもっともな答えを返した。

 

 

確かに、アイツらはそろいもそろって女の子に弱いみたいだったから

意外と、そう言う所はまめにやっているのかもしれない

 

 

部屋の隅に小さな赤い汚れみたいなものが見えたけれど……

その汚れがなんなのか、どうしてついたのかは大した問題じゃなさそうだ。

 

……と、そんな事を言っている場合じゃない。

僕だって、立場は同じなのだから。

 

 

「……あの、僕も男なんだから、

 あんまりこういう所にいると……ちょっとアレなんだけど……」

 

 

事情がしかたないとはいえ、認識した以上、ここの居心地は僕にとってもかなり悪いので、切実に、さりげない感じで抗議の声を上げた所

 

何故かアリサは目を細めて、僕の耳元に口を近づけて……

 

 

 

(……あら、なのはと寝起きを共にしていても、こういう所はやっぱり恥ずかしいのね?)

 

 

(!?)

 

 

突然、とんでもないことを耳打ちしてきた……!

 

 

(……いや! それは……!)

 

 

想定外の言葉に慌てる僕に対し、アリサは責めるように、そのまま言葉を続けてくる……。

 

 

(あの騒ぎでうやむやになっちゃったけど

 その辺、全部終わったらしっかりと聞かせてもらうわよ……覚悟しておきなさい。)

 

 

そして、いつの間にか、細い目はジトっとした視線へと変わっており、

先ほどとは異なる感情が込められているのだけは理解できた……

 

いや、むしろ理解させられた。

 

 

「アリサちゃん、どうしたの?」

 

 

「ううん、なんでもないわよ、なのは♪」

 

 

その直後、なのはに声をかけられ振り向いたアリサの顔は、

一瞬で黒い感情の一切感じられない笑顔へと変わっていた。

 

 

どうやら、なのはに対する怒りは解けたみたいだけれど、

その怒りは、多分この事件を解決次第、僕への追及へとむけられるのだろう。

 

 

なのはが抱えていた問題は解決できたから、それはいいのだけれど……

……何故だろう、理不尽しか感じられない。

 

 

そんな事を考えながら、憂鬱な気分に浸っていると……

 

 

―――ヴーッ

 

 

突如、何かが振動するような音が部屋に響き渡った。

この音は、誰かの携帯電話みたいだけれど……

でも、この中じゃ携帯は使えないはず……?

 

 

「……そろそろ時間ですわ、みなさん準備はよろしいですか?」

 

 

「え……もうそんな時間ですか?」

 

 

どうやら、先ほどの振動は知世さんの携帯電話のもので、

着信ではなくタイマーで振動していたようだ。

 

携帯電話を取り出して振動を止めた知世さんはそういうと

なのはは、すぐさま反応する。

 

 

「何とかして、みんなを連れ出さなきゃ。」

 

 

「気ぃつけや、何が起こるかわからへんからな。」

 

 

「うん、わかってる。」

 

 

続けてアリサ、ケルベロス、さくらさんと

僕以外の全員の表情が一転、真面目なものへと変わり、

僕一人、何が起こっているのかわからずに取り残されてしまった。

 

 

「あの……いったい何が?」

 

 

何をしようとしているのか、みんなに尋ねてみると……

 

 

「あ……すまん、説明しとらんかったな

 全く、金髪小娘がやりすぎたせいで……」

 

 

「なによ! 私のせいだっていうの!!」

 

 

ケルベロスがアリサの事を愚痴って、アリサがそれに反論し

今度はこの二人がにらみ合ってしまった。

 

あの、それよりも早く説明を……

 

 

「2人とも! もう時間だってば!!

 ユーノ君、私が説明するから、一緒に行こう」

 

 

結局、なのはは僕が答えを聞く前に二人を叱るようにそう言った後

僕に、手を差し伸ばしてきた。

 

 

……何が起こってるかはわからないけど、

どうやら、今はみんながやるべき何かを手伝うべきみたいだ。

 

 

「わかった……なのは、よろしく」

 

 

そう言って、僕はなのはの手を取ると、

そのまま手を引かれて、みんなと一緒にトイレのドアから飛び出した。

 

 

同時に、外からはいくつもの爆発音と、多くの人数が、

慌てるような声や足音が聞こえ……

 

 

 

……さらわれた子たちを救出するための作戦が始まった。

 

 




ちなみに、女子トイレ入りでバッドエンドはメダロット1ネタです
厳密にはバッドエンドではないのですが、ヒロインエンドは迎えられなくなります

……メダロット1の女子トイレ、入り口に標識ないから初プレイじゃ絶対引っかかると思う

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