知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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ケルベロスは逃さない?

突如どこからともなく現れた、奇妙な魔法具を持った悪ガキ共……

 

 

ワイらがあいつらと戦っとる時に逃げてきた金髪娘・アリサは、

最近関係が悪くなったっちゅうなのはの友達やったそうや。

 

 

かなりの金持ちの家の娘で、家のつながりから知世とも知り合いやったそうやけど、

なんともまぁ、世間は狭いもんやなぁ……

 

それにしても、わざわざこうして友枝町まで来てくれたっちゅうことは、

ケンカしてても、なんやかんやでなのはの事を気にかけてたみたいや。

 

まぁ、それで事件に巻き込まれたのはアンラッキーやったけど……

 

 

とりあえず、知世がこれまでの経緯を説明してくれたので

一応は事情を理解して落ち着いたみたいやけど……

 

この先、いったいどうなる事やら……

 

 

……ま、ワイには関係あらへん、流石にこれはなのはの問題や

 

 

とりあえず、ワイはワイの仕事をせんと……

 

 

この悪ガキどもがどっから来て、何を目的にしてるのか聞き出さんとあかん。

 

そんなわけで、ついでにとっつ構えた悪ガキどもを脅しとったんやけど、

その最中にさくら達が上手い事やってくれたみたいで、

町中を覆ってた結界は消えて、周囲の雰囲気が元通りになったんや。

 

 

さくら達も帰ってきたんで、めでたしめでたしと思ったんやけど、

帰ってきたさくらの話で、とんでもない事がわかった。

 

 

この悪ガキ共の仲間に襲われた女の子の中には、

さくらの友達の梨花と千春ちゅう子も居って……

 

 

あの悪ガキどもに囲まれてあわやって所に

さくら達が駆け付けておっぱらったおかげで、この二人はさらわれずに済んだそうや。

 

 

まぁ、さくら達が魔法使うた事には、めっちゃびっくりしておったそうやけど……

 

 

……せやけど、二人と一緒におったもう一人の友達、

奈緒子だけは、逃げる際に出遅れて悪ガキどもに捕まってしもうたそうや。

 

おまけに、神社まで逃げてきた女の子達の中には、

なのはのもう一人の友達、すずかっちゅう娘もおらんかった。

 

 

恐らく、その子も奴らに連れ去られてもうたみたいやな……

 

 

アリサは、すずかを巻き込んだことについて、ぼそっとなのはに謝っとったみたいやけど……

 

とにかく、このまま放っておくわけにはいかん。

 

 

……とりあえず、今は神社に逃げてきた

女の子達の事を何とかせな……

 

 

さくらが魔法使うとこや、ワイの本当の姿を見られてる訳やし、

誰かが口滑らせて、さくらの話が下手に出回ってしもうたら、

ワイら、友枝町に居られんようになってまう。

 

しゃべるぬいぐるみとして売られるのだけは、ホンマ勘弁やで……

 

そういうわけで、逃げて来た子達から一通り情報を聞いた後は、

さくらの友達含む、逃げてきた女の子達全員に『(イレイズ)』のカードを使うて

誰に助けられたかっちゅう記憶を消したんや。

 

 

「あのカード……記憶を消すこともできるんだね。」

 

 

「まぁ、なんでもかんでもっちゅうわけやないけどな……」

 

 

この時ユーノは、改めてカードの力にえらく驚いておった。

 

……まぁ、ユーノの使う術とは性質がまるでちゃうから、

そう思うんは無理もないけどな……

 

 

……ちなみに、さくらの友達からも事件の記憶は消したんやけど、

なのはの友達のアリサっちゅう娘からは記憶を消さんかった。

 

ホンマは、消そうと思っとったんやけど……

 

 

「イヤよ! すずかがさらわれてるってのに

 私だけ全部忘れて帰れっての!?

 絶対に嫌だからね!!」

 

 

そこまでの様子を見ていたアリサから、すごい剣幕で拒否されてもうたから、

流石にさくらもカードを使う事ができひんかったし……

 

 

「……さくらちゃん、ケロちゃん

 アリサちゃんの記憶を消すのは

 ひとまず待っていただけないでしょうか……?」

 

さらに知世からもお願いされたんでは、ワイら強制も拒否も出来ん。

 

 

巻き込んでしまう事になるけど、とりあえずアリサの記憶に関しては後回しや。

 

 

……で、肝心の悪ガキやけど、聞き出したところによれば、

こいつらは誰かの命令で女の子を連れ去ってたそうや。

 

 

「お……俺たちは命令されただけなんだ!

 俺達のボスから、あっちこっちの学区から、かわいい女の子を連れて来いって……」

 

 

こいつら、他所でも似たようなことやってたんか……

こら、話は友枝町だけでおさまりそうにないわな。

 

 

「それにしても、ずいぶんな数がやったな、

 あれだけの使い手を送り込んで来るやなんて……」

 

 

「と、友枝町はかわいい子が多いから、

 ボスも本腰を入れて攻めろって……

 

 ま、まさかこんな強い魔法少女がいるなんて……」

 

 

まったく、何考えとるんやこいつらのボス。

 

ま、友枝町にはさくら達が居ったんが運の尽きやな。

 

 

他にも色々と話を聞き出そうとしたけど、

持ってる道具は怪しい女にもらったとかで、詳しいことは分からんし、

ボスの居場所や名前とかは、いくら脅しても吐こうとせんかった。

 

 

こいつ等のビビりよう……

どうやらボスは、相当おっかないヤツみたいや。

 

 

ワイも、唸って脅し付けたりはしたけど、

流石に、子供相手に傷つけたりしたらあかんしなぁ……

 

 

 

 

 

「……それではケロちゃん、後の事はよろしくお願いいたしますわ」

 

 

記憶を消した女の子達が、それぞれの家に帰って行った後。

 

 

 

とりあえず、さくらに月峰神社の裏で『(メイズ)』のカードを使うてもろうて、

ワイその中で、悪ガキどもを見張る事になった。

 

なのははそのまま帰れば問題ないけど、

運転手と一緒に来たアリサはそうもいかん。

 

 

……そんな訳で、アリサは家に連絡して知世の家に泊まる事になったそうや。

一応、話の上ではすずかも一緒っちゅうことになっとる。

 

 

みんなが帰っていく際、不良達はしょんぼりしながら俯い取ったけど、

帰り際に知世が言った一言……

 

 

「ケルベロスという名前は、ギリシャ神話の地獄の

 逃げようとする亡者を食べてしまう番犬の名前からつけられた名前ですわ……

 逃げようとしたらどうなるか……お判りですわね?」

 

 

流石に、友達をさらわれて怒ったのか

目が全然笑ってへん笑顔で、妙に腹に響く声を出しながら

さらりととんでもない脅し文句を言いよった。

 

 

ワイも便乗して、そのセリフの後に唸ってみたら、

悪ガキども、めっちゃビビりまくっとったけど……

 

 

ワイいややで、こんな悪ガキ食わされんの、

こんなん、絶対腹壊してまうわ。

 

 

 

 

そうして、ワイはしばらく悪ガキどもを見張っとったんやけど、

こいつら、ワイがしっかり見とる内は

ガチガチになって、微塵も逃げる様子は見せんかった……

 

 

……せやけど、みんなが帰ってから何時間か経った頃、

ワイがうつぶせになって、目を瞑って寝息を立てた途端、

みんな顔を見合わせてとヒソヒソと相談しだしよった。

 

 

……どうやら、あと一押しみたいやな。

 

 

気づかれへんように、横目で悪ガキどもを確認してから

ワイは寝がえりをうって、前足で腹の辺りを書くしぐさを見せた。

 

 

すると……

 

 

「ライオンって、うつぶせで腹かいて寝たっけか?」

 

 

コラそこ、細かい事は気にするんやない。

 

 

「しっ、起きたらどうすんだよ……

 これはチャンスだ……いいか、物音立てるなよ。」

 

 

細かい疑問を投げ捨てて、悪ガキたちの一人がそう言った後、

悪ガキどもは物音を立てん様に気を付けながら、

抜き足、差し足、忍び足で、ワイから遠ざかって……

 

 

そのまま、すんなりと『(メイズ)』の出口までたどり着いて、

そこからは全力で走って、逃げていきよった。

 

 

……しめしめ、思う壺や。

 

 

ワイは悪ガキどもに気付かれんように仮の姿に戻って、

カードに戻った『(メイズ)』を回収すると、

そのまま空高く飛んで、悪ガキどもを見失わんように見はりながら

電話を取り出して知世に連絡を取った。

 

 

「もしもし、知世聞こえとるか?

 あの悪ガキども、まんまと逃げていきよったわ。」

 

 

「ごくろうさまですわ、ケロちゃん

 引き続き、追跡をお願いいたしますわね。」

 

 

そう、あの悪ガキどもを逃がしたんは作戦や。

 

 

こうすれば、あの悪ガキどもは黒幕の所まで逃げ込むはずやし、

そこには、きっとさらわれた子達も居るはず……

 

 

見逃さんように、そのまま悪ガキどもを追跡してると、

友枝町の外れの人気のない所までたどり着くと、悪ガキどもを回収しに来よったのか

道具を持った悪ガキの仲間が現れよった。

 

 

「バカ! しくじりやがって!!

 なにやってんだよ!!」

 

「だって、あんな強い魔法少女が居るなんて……」

 

 

「シッ、今はそれどこじゃないだろ!!」

 

なんか口論してたみたいやけど、一人が仲裁に入ると、

逃げ出した方の悪ガキ共は、後から来た連中から、

予備の物らしい杖を渡されて、全速力で走って行きよった。

 

 

中々のスピードやけど、ワイと比べたら大したことあらへん。

ケルベロス(地獄の番犬)の名前通り、絶対逃がさへんからな。

 

 

そしてそのまま、友枝町の市街から離れた場所に来ると……

 

 

突然、悪ガキども周辺の空間が歪んだように見え、

直後、ワイの目の前で悪ガキどもの姿は消えてしもうた。

 

 

決して、見落としたり逃げられたりしたわけやない。

 

アレだけの人数や、一人二人ならまだしも、

全員まとめて見逃すなんてあり得へん。

 

 

「この気配……どうやら、この先にいるみたいやな。」

 

 

見えなくなった原因は……消えた場所から感じる異様な気配と、その中のもの。

 

消えたように見えたんは、これのせいやな……

 

 

 

---

 

 

 

 

 

「ええ……判りましたわ、

 準備が整い次第、すぐに向かいます。」

 

 

月峰神社で、ケロちゃんに彼らの事を頼んだ後、

私達は、一旦それぞれの家に帰る事にしました。

 

 

そして、頃合いを見てあの子達を追いかけたケロちゃんからの連絡を待っていたのですが……

 

 

今回の事件は色々と異様な雰囲気がしたので

これまで以上に、準備しておくべき……

 

 

そう思って、ケロちゃんからの連絡が来るまでの間、私は私の出来る事をしていました。

 

 

「知世さん、電話あのライオンから?」

 

 

「ええ……」

 

 

そうそう、先ほど起こった事件で、友枝町は大きな騒ぎとなったため、

アリサちゃんの乗ってきた車の運転手さんは、アリサちゃんが消えた件で

警察の方から事情聴取を受ける事になり、

一人で帰るのは危険と言う事で、お母様やアリサちゃんの家に連絡し、

アリサちゃんは今回、私の家にお泊りする事になりました。

 

 

 

「友枝町から、少し離れた山中まで追いかけて……

 そこから、彼らの姿が見えなくなったそうです。

 

 どうも、その近辺に何かがあるようなのですが……」

 

 

「なんですって……!?」

 

 

それを聞くと、アリサちゃんは逃がしてしまったのかと

不安そうな表情を浮かべましたが……

 

 

「大丈夫ですわ、魔力の気配は残っているそうなので、

 追跡は可能とのことです。」

 

 

「そうですか……よかった」

 

 

そう言って、ほっと胸をなでおろしました。

 

 

攻めてきたあの子達には、まだ仲間がいらっしゃるようですし、

奈緒子ちゃんやすずかちゃん達が連れていかれた彼らの本拠地には、

どれだけの相手が待ち受けてるのかはわかりませんが……

 

 

連れ去られてしまった子達がいる以上、

さくらちゃんも、なのはちゃんも、きっと助けに向かいハズです。

 

 

 

「……ならば、私もそれを出来る限り、

 サポートさせていただきますわ!」

 

 

その為、私も私のやるべきことをしなくては……

 

 

「で……知世さん。

 それでどうして、そんなコスプレ衣装を作ってるんですか?」

 

 

ジトっとした目で、アリサちゃんが見つめているのは、

ついさっき出来上がった、さくらちゃんの為の新しい衣装……

 

 

この間、森近さんのお店で仕入れてきた、弾幕ごっこ用で使う、幻想郷の生地……

それで作った、これまでのバトルコスチュームより、高性能な進化した(アドバンスド)バトルコスチューム……

 

 

「さくらちゃんは、なのはちゃんのバリアジャケットと違って、

 魔法で衣装を造り出す事が出来ませんから……

 特別な時に着る特別な衣装は、私の担当なのですわ。」

 

 

「……知世さん、なんかすごく楽しそうですね。

 それにそっちの衣装……

 さくらさんが着るにしては小さすぎるような……?」

 

 

そう言うアリサちゃんの視線の先にあるのは、

先ほどまで造っていた衣装とは別の、もう一着作った衣装。

 

 

ある事情で、この新型バトルコスチュームを作る前に、

この一着を用意していたのですが……

 

 

こちらは、人間ならば幼稚園児の洋服程度のサイズなので、

さくらちゃんには小さすぎますし、ケロちゃんには大きすぎます。

 

 

「ええ、こちらの衣装はさくらちゃんに来ていただくものではなくて……」

 

 

―――どうやら、出来上がっているみたいね。

 

 

「!?」

 

 

衣装に関して説明しようとした所で、突如部屋の中に響いた不思議な声。

アリサちゃんは驚くと同時に、声の主を探るように周囲を見回しました

 

 

すると、部屋の壁に両端が赤いリボンで結ばれた

不思議な線の様なものを見つけ、それを指さそうとした瞬間。

 

 

「な、なにこれ……!?」

 

 

その線がゆっくりと開いていくと、そこから赤いいくつもの目が覗き見えて

その異様な見た目に、アリサちゃんがうめき声を漏らして後ずさると……

 

 

「いよっと……」

 

 

その中から、見覚えのある帽子をかぶった金髪女性の上半身が、

力ない感じで垂れ下がりながら現れました。

 

 

「おつかれさまです、紫さん

 わざわざ来てくださってどうもありがとうございます。」

 

 

「ご丁寧にどうも、知世

 どうやら、こっちは大変な事になってるみたいね

 ……あら?」

 

私が軽く挨拶すると、上半身を起こした紫さんは、

そのまま視線を移動させ私とは別の方向を見つめました。

 

 

そこには、突如姿をあらわした異様な紫さんと、彼女と親しそうに話している私達を、

アリサちゃんがもう何も言えないといいたそうな表情で、

やや放心した感じで見つめており……

 

 

「……驚かせてしまったみたいね、

 初めまして、オテンバなお嬢様。」

 

 

そんなアリサちゃんに、紫さんは何か含むものがあるような感じで挨拶をしたのでした。

 

 

 

 


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