知世の野望 ~The Magic of Happiness~   作:(略して)将軍

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幻想とのご挨拶

 

 

なのはと、青い妖精が弾幕ごっこを初めた少し後。

 

二人の戦いをタワーから眺めていた僕たちのところに、

妖精の子が放った氷の流れ弾が降り注いで来るというハプニングがあったのだけれど、

 

 

みんな、物陰に隠れたり、防御魔法を使ったり、傘をさすなどをしたので、

被害は、着弾した一部の場所が凍った程度でした。

 

 

ただ、流れ弾は先ほどさくらさんが出した大玉にも当たり、

その結果、あの大玉の表面に氷の弾幕が散りばめられて、

まるでアイスクリームのようにも見える不思議な物体となってしまい……

 

「ほえ……どうしよう、これ?」

 

「この光の玉、いつまでこのままなのでしょうか?」

 

「さぁ、こんな弾幕は私も初めて見たから……どうなるのかしら?」

 

 

その奇妙な見た目に困惑する僕達をよそに、紫さんは頰に指を当てながら、

無意味に困った感を出して、無責任な事を言い始めた上……

 

「それにしても、見た目はすごく美味しそうね」

 

「まぁ、確かにうまそうに見えるなぁ」

 

紫さんに続いてケルベロスまで呑気な事を言い始めてしまいました。

 

 

……いくら美味しそうに見えるからって、魔力の塊が食べられるわけがないでしょ。

 

 

心の中で発言にそうツッこんだけれど、

ケルベロスは何か閃いたような顔をした後、さくらさんに耳打ちをすると

さくらさんは半分呆れた顔をしながらも、杖とカードを取り出してある魔法を発動させました。

 

 

その結果、目の前で起こった事は、先ほどの僕の予想を大きく裏切って……

 

 

「よっしゃ! 狙い通りや」

 

「まぁ……これは、すごいわね」

 

 

大玉は不思議な柔らかさを持った、なんとも言い難いお菓子になり、

突き刺さっていた氷は、アイスクリームっぽいものになってしまいました。

 

 

もしかして、今のはものをお菓子に変える魔法?

こんなの、見た事も聞いたこともないし、完全に子供向けの童話の出来事……

 

 

いや、今時の子供がこんな魔法信じるわけもないか。

 

 

だけど、そんな子供でも信じない様な出来事が目の前で実際に起こってしまった。

これまで何度も思ったけど、やっぱりさくらさんの魔法はあらゆる意味で普通じゃない……。

 

 

「常識なんて、打ち破るために存在しているようなものよ

 ……特に、この幻想郷では」

 

 

そんな僕の考えを見透かしてきたかのように、紫さんは僕にそう言ってきた。

 

 

……この世界に来てから、常識では考えられない事はたくさんあったんだけど

まだまだ、認識が甘かったのだろうか……?

この先、、こう言った事はまだまだ起こるのだろうか?

 

 

「それにしても、このお菓子の大玉……

 これだけあると、みんなで分けても、だいぶ余りそうですわね」

 

……確かに、なにせさくらさんの身長より大きな大玉が、まるごとお菓子になってしまったのだ。

 

みんなで食べても、どれだけかかることやら……

いや、甘いものこれだけ食べたら、流石に途中でうんざりしてしまいそうだ。

 

 

「これだけ多いと、雪兎さんでも食べきれないんじゃないかな……?」

 

 

さくらさんは、何故か月城さんの事を引き合いに出している……。

あの人、そんなこと言われるくらい食べる人なんだろうか?

 

見た目はすごくすらっとしてたし、おっとりとして、

少なくとも、健啖家には全然見えなかったけどな……?

 

 

「……その心配は無用よ。

 ちょうど、甘いものが欲しい所だったし、これならいいお土産になるわ。」

 

 

「お土産……?」

 

 

紫さんのお土産と言う言葉の意図が分からず、僕たちは思わず考え込んでしまったが……

 

 

「説明するより、直接紹介した方が早いわね、

 ちょっと、場所を移動しましょう。

 あの子達は、一区切りついてからにしましょうか。」

 

 

 

紫さんが意味ありげにほほ笑みながらそう言った直後。

 

いきなり、落下する感覚に襲われたと同時に

暗闇の中にいくつもの不気味な目が浮かぶ光景が見え……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、気が付いたらみんなと一緒に、ここに飛ばされてたんだ

 ……あ、これはなのはの分」

 

 

そう言って、僕は合流したなのはに、ここまでの事を説明してから

切り分けたお菓子を乗せたお皿を、なのはへと差し出した。

 

 

「あ、どうもありがとう。

 ……その奇妙な空間は私も見たよ。

 あれはいったいなんだったんだろう……?」

 

 

僕の知っている物とは大きく異なるけれど、

あの不気味な光景は、恐らく空間跳躍の為の異空間だと思う。

 

 

そして、恐らくあの異空間の入り口を造り出したのは、話の流れから考えれば……

 

 

「驚かせてしまってごめんなさいね。

 あの空間は、私の能力(ちから)で生み出した境界の裂け目……。

 私は、スキマと呼んでいるわ」

 

 

「スキマ……?」

 

 

「やっぱり、あの空間は紫さんの……」

 

 

思った通り、紫さんの仕業だったようだ。

 

あの能力、紫さんは軽く説明してくれたけれど、

考えてみると、あの力はかなり恐ろしい代物だ。

 

 

あの空間跳躍は、僕達がここに飛ばされた時も、なのはが飛ばされた時も、

発動する兆候や、発動した形跡は一切関知できず……。

 

 

僕は、その前の紫さんのセリフから、

使用者が彼女だと言う事を推測しただけに過ぎない。

 

 

効果範囲や対象が、どれだけなのかはわからないけれど、

もしあの力を悪意を持って向けられれば、とんでもない事になる事だけは想像がつく……。

 

 

この人は、いったいなんの目的があって、僕達をここに案内したのだろう……?

 

 

「警戒しないで、とりあえずあなた達に危害を加える気はないわ。

 ……ちょっと、面倒事は押し付けるかもしれないけど。」

 

 

「面倒事……?」

 

 

僕もなのはも、その言葉の真意を理解できずにいると

腰のあたりに、ふかふかした何かをたくさんつけた女性が、紫さんに近づいてきて……

 

 

「紫様、そろそろお話を始める準備を……

 あちらは、まだゴキゲンで居てくださいますが、あの子の方は、そろそろ限界かと」

 

 

「分かってるわよ、藍……

 それじゃあ、2人ともあちらの席について貰えるかしら?」

 

 

そう言って、紫さんが指差した先のテーブルには……

 

 

一足先に案内されていたさくらさんと知世さんとケルベロスが居る。

 

 

……そして一緒に、何故かさくらさんをひどく気に入り、

膝の上に乗せて可愛がっている、さくらさん以上にふんわりとした雰囲気のの女性と

その横で、呆れた顔をしているおかっぱの女性が居る。

 

さくらさんを膝の上にのせている女性は、楽しそうに彼女と話をしているけど

何故か、さくらさんは非常に困惑した表情をしており、ケルベロスは、少し呆れた顔をして……

 

そんなみんなの様子を、知世さんは構えたビデオで撮影し続けていた。

 

 

「紫さん、あの人は?」

 

 

「私の古い友人と、その側近よ……

 今回の一件に関しては、各種勢力の首魁達にも連絡を入れたのだけれど

 すぐさま都合がつくのが、彼女しかいなくて……

 ……さ、詳しい事は席についてからにしましょう」

 

 

なのはの問いに、紫さんはそう答えて席に座るよう促してきた。

 

……彼女も、紫さんの様な力の持ち主なのだろうか?

 

 

「お2人とも、こちらへどうぞ。」

 

 

今ひとつ、状況が飲み込めないまま、藍と呼ばれた人に案内され

言われるままに僕たちは席に着く。

 

いったい、紫さんは何をさせようとしているのだろうか……

 

 

……僕達が席に着くと、紫さんがふんわりとした女性に声をかけ、

彼女は名残惜しそうにしながら、さくらさんを解放すると

さくらさんと知世さんは、僕達側の席に着いた。

 

なんだか、さくらさん、だいぶぐったりしていたけれど……。

 

 

「さて、揃った所でまずは自己紹介から始めましょうか。

 では、改めて私から……幻想郷の管理人・八雲紫、妖怪の賢者と呼ぶ者もいるわ」

 

 

「紫様の式、八雲藍です」

 

 

紫さんは、先ほど色々説明してもらったから大体の事はわかるけど、

その従者だという藍さんの言った【式】と言うものが、今ひとつ理解できなかったが……。

 

すぐさまケルベロスが、小声で式についての説明をしてくれた。

 

「あの式ちゅうんは、妖獣とかに、制御する為に、式神ちゅう術を被せた存在の事や。

 あの尻尾からすると、アレの正体は妖力を持ったキツネで、

 それを紫ねーちゃんの造った式神を乗っけて、あの姿になっとるわけやな」

 

……ケルベロスが説明してくれた内容と、同じ魔法技術には覚えがあった。

僕たちは式と呼ばないけれど、同じタイプの魔法は何度も見聞きしたことがあるのだ。

 

 

「……つまり、いつものあの子が使っている

 アルフの様な使い魔の様なものってこと?」

 

 

あれも、ケルベロスの言った式と同じ、動物に魔力を与えて従者とする魔法の一つだ。

 

考え方としては間違っていなかったようで、

ケルベロスはそのままうなづいて肯定を示してくれたが……

 

 

「……せやけど力量は、全く比較にならへんで。

 あのねーちゃんの尻尾、9本あるやろ、

 あれは九尾っちゅうて、極めて力の強いキツネ妖怪やないとああはならん。」

 

 

あの腰のフカフカは、キツネの尻尾だったんだ……

 

使い魔も、普通の動物が人間の姿をするようになるけれど、

尻尾が沢山増えたりするなんて事は、聞いた事が無い。

 

 

……っていうか、この世界にはそんなキツネいるんだ。

 

 

「狐の妖怪は、特に数や種類が多いさかいな。

 九尾ともなると、普通は式にするどころか、よほどの術者でも相手にならん大物妖怪やで……

 当然、あれを式にしとるあのねーちゃんも、とんでもない力の持ち主っちゅうわけや。」

 

 

「ほえ~……」

 

 

ケルベロスの説明を聞き、恐る恐る横目で二人の様子を確認してみると、

どういう訳か、紫さんはすごくニコニコとした顔をしており、

藍さんは、その横でため息をつきながら頭を抱えていた

 

 

……こうしてみると、有能そうな人なのはわかるけど、

そんな危険な人には見えないんだけどなぁ……。

 

 

「じゃあ、次はは私の番ね

 白玉楼(はくぎょくろう)の主、西行寺幽々子よ。」

 

 

「白玉楼庭師兼・幽々子様の護衛、魂魄妖夢です。」

 

続けて、白玉楼と言うのは勢力の名前だろうか?。

そこの主と護衛だという二人が自己紹介をしてくれた

 

 

紫さんの力と、藍さんの話を聞いた後だからか、

幽々子さんと妖夢さんは、二人と比べると割と普通に見える。

 

 

しいて言えば、妖夢さんの周りに尻尾の生えた白い球の様なものが、

ふわふわと浮いているけれど……

 

 

「あ……あの妖夢さん、そのふわふわ浮いているのは……?」

 

 

さくらさんも、同じ事が気になったのか、

ストレートにそれについて質問をしたけれど、心なしか、なんか青ざめてる気がする……

 

 

「あぁ、これは私の半身の霊体……

 わかりやすく言えば……人魂ですね」

 

 

「ほええぇっ!? ヒトダマ!?」

 

 

それを聞くと、さくらさんはものすごい悲鳴をあげて後ろに飛びのいた。

 

 

「ああ、そう言えばオバケがダメダメだって言われてたわね。

 ……それにしても、ちょっとショックねぇ……

 幻想郷の実力者を前にしても、動じた様子はなかったのに、

 からかさや、半分だけの人魂を、こんなに怖がられるなんて……

 ちょっと、自信失くしちゃうかも。」

 

 

そう言って、紫さんは頬に手を当てて切なげにため息をついた。

ちょっと、わざとらしそうな感じだったけど……

 

 

「さくらちゃんは、幽霊や訳の分からないものが怖いそうですから、

 難しいものより、シンプルな怖がらせ方が効果的なのかもしれませんね。」

 

 

知世さんはそう説明すると、紫さんは、ちょっとあきれた表情になってました。

 

……スキマ通った後、さくらさんかなり怖がってましたけど。

 

 

「……あ、じゃあ今度は私の番ですね。

 木之本桜、小学6年生です」

 

「高町なのは、小学3年生です」

 

「ユーノ・スクライア、こことも、外とも別の世界からやって来て

 少し前まで、遺跡発掘の責任者をやってました」

 

「大道寺知世、さくらちゃんのクラスメートですわ

 魔力のような力を持っておりませんが

 いろんな形で、さくらちゃんのサポートをやらせていただいてます」

 

 

目の前の人と違って、僕達にはあまり語れるような事がないので、

軽く自分たちの名前とちょっとした経歴などを名乗って、自己紹介を終える。

 

 

「封印の獣ケルベロス、魔術師クロウ・リードに造られた封印の獣や。

 今はさくらのサポート役ってところかいな」

 

 

ケルベロスは、僕達より圧倒的に長く生きているから、

説明しようとすれば、もっと語れる気もするけれど、

お菓子に夢中だったので、自己紹介も僕たちと同じ控えめな感じで終わらせた。

 

 

そう言って、僕たちの簡単な自己紹介を終えると

紫さんは、にっこりと、しかしどこか怪しげな微笑みを浮かべ……

 

 

 

「どうもありがとう。

 ……それじゃあ、自己紹介も済んだところで、

 あなた達をここに呼び寄せた理由を語らせてもらうわ。」

 

 

 

僕達をここに呼んだ目的を語り始めたのだった。

 

 




思うところあって、この時点での自己紹介してくれる東方勢の数を減らしました
それに伴い文字数も1000とちょいダウンサイジング

それ以外は加筆修正したから、読みやすくなってるといいなぁ

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