闇鍋 in 幻想郷   作:触手の朔良

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紅魔勢の人気は圧倒的に流石って感じ

次はB話を投稿する予定で、基本的には交互に話を進めていくつもりです。
何卒よろしくお願いします。


A【折角なので誘いを受ける】ルート
6A話 ようこそ紅魔館


 という訳で、やってきました紅魔館。

「どういう訳よ」

「なんで貴女までいるのよ……」

 三人は咲夜の案内で、勇壮に佇む紅魔館の前までやって来た。そう、三人である。

「私は○○様を誘ったの。貴女はお呼びじゃないんだけど?」

「あら。私は彼の保護者兼監察役よ。悪魔の住む館に○○を一人で差し出すわけないじゃない」

「……ちょっと霊夢。○○様に変なことを吹き込むのは止めて頂戴。ウチのお嬢様は、それはそれはとても可愛らしいお方なんだから」

 咲夜と霊夢の間に、火花が散る。口を開く度にこうなのだから、道々アナタの気が気で無かったのは、言うまでもあるまい。アナタは少女らにバレぬよう、小さく嘆息した。

「あの~、私を無視して話を進めないで下さいぃ……」

 赤毛の中華然とした服を纏った少女が、恐る恐るといった様子で己が存在を主張してきた。

 触らぬ神に祟り無し、と踏んだアナタは門の前で所在なさ気に佇む少女に声を掛けた。

 ――こんにちは。

「あ、はい。こんにちは」

 赤毛の少女はまさかアナタから話し掛けると思ってなかったのか、驚きと警戒心が()い交ぜになった表情を向けてきた。その緊張を解すべく、アナタは努めて優しく微笑み、自分の名前を告げた。

「あ、私の名前は紅美鈴といいます。こちらの紅魔館で門番を任せられてるんです」

 そんな男の態度に若干緊張がほぐれる美鈴。

 ――悪い(ひと)じゃ、無いのかな?

 咲夜が男性を紅魔館に招待するなんて初めての事で、美鈴は自分でも気付かぬ内、必要以上に警戒していたようだ。遂に悪い虫が付いて来たかと。場合によっては心を鬼にして男を追い払う所存ではあったが、人好きのする笑顔を見ればどうやら杞憂だったようだ。

「ちょっと美鈴! 何○○様を誑かしているのっ!」

「えぇ~……」

 まさか咲夜から厳しい言葉を受けるなんて思ってもみなかった、美鈴は戸惑いを隠せない。

 それもその筈。美鈴は運命の赤い糸騒動の事なんてちっとも知らないのだから。咲夜が男にホの字なんて、事前に事情を知らなければ思いもつかぬ事だろう。

「誑かすなんて、そんな」

 そりゃぁ、ちょっとはいいかな~、なんて思いましたけども?

 美鈴がちらりと、件の男に目を向けると二つの敵意が膨れ上がった。

 えぇ~……。何で霊夢さんまで……。

 美鈴はひっそりと心のなかで泣いた。しくしく。

 二人の少女の不機嫌に、板挟みになった美鈴が気の毒になったアナタは彼女をどうにか励ます。

「○○さん……」

 人の優しさに触れ、感動に胸を震わせる美鈴。感激のあまりアナタの手をガシィと握ってきた。いや、そんな態度が悪いのだと何故気付かない、気を使う程度の少女よ。

「貴女のそういう無防備な態度が、誑かしてるって言うのよ……っ!」

「や、ちょっと咲夜さん!?」

 嫉妬に囚われた咲夜が美鈴の豊満な胸をぐわしと鷲掴みにした。咲夜の指先の動きに合わせてむにゅりむにゅりと形を変える美鈴の巨乳。アナタの目は、そこに固定されて離す事など出来なかった――。

 ガッガッ! アナタは耐え難い痛みを感じ飛び跳ねる。見れば霊夢が脛を蹴ったらしい。彼女と視線が合うとフンと不機嫌そうに目を逸らされてしまった。

「痛いっ! 咲夜さん痛いですって!」

「ふぅん、へぇ、そう! こんな牛みたいな下品な乳をぶら下げているからよ!」

 力任せの愛撫には心地よさなど一切なく、激痛を訴える。指の動きは緩まるどころか、激しさを増した。

 そうして咲夜の言い分はあんまりにも勝手過ぎて、美鈴は反射的に反論してしまう。普段の彼女であれば絶対に口にしないような言葉。痛みが美鈴から余裕を奪っていた。

「大きくしたくてなったんじゃないですよ――!」

 破滅に至る一言を口にしてしまった。

「へぇ……」

 しまった! と美鈴が思ったところで手遅れである。

 周囲の空気が冷える。咲夜の瞳がネコ科の肉食獣のように細められる。

「あ、あああのっ、ささ咲夜さ――あがっ!!」

「……ふん。失礼しちゃうわ」

 気付くと美鈴の額からナイフが生えていた。

 アナタは目の前の光景に理解が追いつかなかった。だが、人の頭からナイフが生える訳もなく、その意味を理解した瞬間アナタの顔から血の気が引いていく。

「……あぁ。アレは妖怪だから。あの程度じゃ死なないわよ」

 霊夢が興味無さそうに説明する。

 だからと言って人の、いや妖怪の頭からナイフが生えている光景は全く見慣れる気配が無く、アナタの胸中にはしこりの様に気色悪さが残っていた。

「あ――! ○○様!」

 ただ、生きているにしろ死んでいるしろ。ナイフが刺さりっぱなしというのは具合が悪い。美鈴を憐れんだアナタはナイフを引き抜く。

 傷口から噴水の如く血が吹き出す。アナタは咄嗟に躱そうとしたものの完全に、とはいかず肩口を汚してしまった。

 みるみる傷口に薄皮が張り、美鈴の出血も治まる。そうして彼女の瞳に生気が戻った。

「あ……、えっ、ええっ!? あのっ、すいません! あ、じじじゃなくてですね、その――ありがとうございますっ!」

 死んで、生き返ったようなものだ。

 状況の理解が即座に、ともいかなかった様だが、血で汚れた男を見て、美鈴は直ぐに察した。

 そうして謝罪と、感謝を述べる。

 素気無く扱われるのは慣れている美鈴だったが、純粋な人の優しさには慣れてなくて。つい、その気持を顕そうとして男の手を取ってしまった。

 自分の血が、彼を汚してしまった。申し訳ない気持ちと同時に、奇妙な興奮を美鈴は覚えた。

 美鈴の口から熱っぽい吐息が溢れる。今彼女の目には、アナタ以外映っていないようだった。

 そんな夢見心地も一瞬。

「め~い~り~ん~?」

「ふぅ。悪い妖怪は退治しなきゃよね」

「あば、あばばば! いやそのこれはですね!?」

「問答無用!」

 背後から、恐ろしい気配を感じる。

 振り向きたくない。しかし振り向かざるを得ない。

 油の切れた人形のごとく背後を確認すると、二人の修羅がいた。

 ナイフを構える咲夜、弊を取り出した霊夢。彼女らを中心にどんよりとした負の感情が渦巻いているのを、美鈴は見た。

 謝罪も弁明も許さぬ、と。そんな雰囲気を発していた。

 あ。私死ぬかも。

 美鈴が抵抗を諦めたのと同時、それぞれの得物を手にした二人の修羅が躍り掛った。

 後に美鈴は述懐する。「いやぁ、あの時は本当に死んだと思いましたね。三回、三途の川が見えましたからえぇ。親切な赤い髪のお姉さんが説得してくれなきゃ、渡ってましたよほんと」




好感度状況

霊夢:?
紫:★
魔理沙:☆☆
アリス:★★★
文:☆
咲夜:★★
美鈴:★

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