こう、読んでくれている方のユーザー名やら、RPGの主人公の様に入力した文字列が○○の部分へ反映される機能とか、あるといいなぁと思いましたまる。
「なぁ霊夢。どういうつもりだ?」
「どうって、何がよ」
紫が意味もなく現れて、酷く精神が不安定なアリスをどうにか帰して。
魔理沙は霊夢と二人きりになった瞬間を見計らい問い質した。
「お前のことだ。分かってるんだろ? どうして、○○を預かったのかって事だ」
「そんなこと。散々言ったじゃない。博麗の巫女としての――」
「私が聞きたいのは建前じゃない。お前の本音だ」
何年友人やってると思ってるんだぜ――そう呟いて魔理沙は、帽子のつばで表情をすっぽり覆い隠してしまった。この鋭い友人に対して、これがどれだけ己の心内を隠すのに役立つかは分からなかった。霊夢の視線から逃れるように、魔理沙は更に半身をずらした。
「普段の霊夢なら、まず面倒臭がるはずだぜ。最後には結局、面倒見るはめになってもだ」
さして隠す気も無かったのか霊夢は、拍子抜けするほどあっさりと理由を告げた。
「別に、ただの勘よ」
「勘、なんだぜ?」
「そう、勘。巫女としての勘が、○○は私と一緒にいた方がいいって囁いたの」
ただの勘と侮る事なかれ。霊夢の勘は驚くほどに当たる。から恐ろしさを覚えるほどに。
長い付き合いであるが故、魔理沙は霊夢の態度に違和感を覚えたし、その付き合い故に彼女の勘の的中率もしっている。
何の根拠にもならない理由だった。だからこそ、これ以上の理由は臨めそうも無かった。
「むしろ魔理沙。あんたの方が変よ」
――私が?
勘の鋭い友人は、そのように指摘してきた。
「だってそうじゃない。私が彼を気に掛けるのは責務があるから、勘が囁いたからだけど。あんたの方こそ気に掛け過ぎじゃないの?」
――違う。私はお前が心配で。
その言葉はついぞ紡ぐ事が出来なかった。
霊夢の厳しい視線に気圧されたのかもしれないし、或いは本当に、霊夢の指摘した通り――。
「……また来るぜ」
そう一言を絞り出すのが精一杯で。まるで負け犬の遠吠えのようだった。
「そう。じゃぁね魔理沙」
対して霊夢はいつも通りの素っ気なく、平然と別れの言葉を口にした。それが一層、魔理沙に惨めさを覚えさせた。
空に向かって小さくなってゆく友人を見送り、「……何だったのかしら」と誰もいなくなった境内で霊夢は呟く。
そうして○○を待たせている事を思い出し、神社の中へと戻ろうとする。
正にその瞬間。
面倒なヤツが来たと、霊夢は溜め息を吐いた。
「どうもどうも! 毎度お馴染み射命丸、射命丸文です!」
「あんたねぇ……」
魔理沙と入れ替わる様に姿を見せたのは、天狗の文屋だった。
「どうでもいいけど、もっと静かに現れられないわけ?」
「あやややや! 霊夢さん、我々天狗の多くは読売を生業にしている者ですよ? えぇ、真実を声高に主張することこそ我らが務め、我らが使命! それをやめろなどとヒレをもがれた魚同然です!」
「……そこは翼じゃないの?」
「まぁまぁまぁ霊夢さん。若い内からその様な細かいことを気にしてはいけません。月日と云うのは案外と早いものなのですよ。まぁ私ほどではありませんけどね?」
早口で捲し立てる文。よくもまぁ舌が回るものだと呆れを越して感心すら覚える。
早い速いと事ある毎に強調する癖に、何時まで経っても本題に達する気配が無い。霊夢は嫌な予感を覚えつつも尋ねるしか無かった。
「で、何か用なの? 用が無いんだったら賽銭だけ入れてさっさと消えて欲しいんだけど」
「おや霊夢さん、それを聞きますか聞いてしまいますか? えぇ、えぇ。よくぞ、と言いたいところですが、調べはとうっくに付いているんですよ! お天道様の目は誤魔化せても、この射命丸の目は誤魔化せませんよ!」
「おべんちゃらはうんざりよ。用向きを言いなさい」
「むむぅ。霊夢さんも中々気が早いですねぇ。えぇ、そうですね私も決して暇な身ではありませんので、長々駄弁るのはこれぐらいにしましょう」
――あんたが無駄話をするんでしょ。その言葉が喉から迫り上がるのを、霊夢はぐっと堪えた。
折角進みそうな話に野暮なツッコミを入れて、混ぜっ返しでもしたら面倒になるのは、火を見るよりも明らかだったからだ。
「では霊夢さん、お尋ねしますが――
「あぁ」
まぁ、大方予想通りの言葉だった。
しかし一日も経たずして嗅ぎ付けるとは、大した嗅覚である。
「どこでそれを?」
「その言葉は肯定として受け取ってよろしいのですね!?」
「……まぁ、隠すようなものでもないしね」
「ふぅむ。実はですね私がネタを求めて三千里。聞くも涙語るも涙の道中、遠くの空に急ぐ魔理沙さんの姿が見えた訳ですよ。記者の勘がこう、ビビッと来たわけですね! これは何かあるぞ、と! そうして後を
「要するに、偶然遭遇しただけじゃない」
「掻い摘んで言っちゃいますとそういうことになりますかね?」
本当に、よく回る舌だ。神様が見ているのなら是非引っこ抜いて貰いたい。
「それでそれで、実際のところどうなんです!?」
瞳を爛々と輝かせ、「私、興味津々です」と言わんばかりに食いついてくる文。
その姿は真実を追求するマスメディアと云うよりも、噂話が大好きな近所のおばちゃん連中のようだ。
「どうって、何がよ」
「んもう、しらばっくれないで下さいよ! 若い男女が一つ屋根の下で何も起こらないはずが無いじゃないですかー」
「あのねぇ。今日会ったばかりで、そんなわけないでしょ」
いい加減面倒になってきた霊夢が弊を取り出す。実力行使でお帰り願おうとしたその時だった。
天狗の視線が霊夢の背後に注がれる。
「――あや? あやや? もしかして、あれが、例の男性ですかね?」
「っ!」
慌てて霊夢も振り返れば、そこには部屋から顔を出した○○の姿があった。
何で出てきちゃうのよ……! 部屋で待っていろ、と言いつけたのに。それも詮無きこと。言われた通りに待てども待てども、ちっとも霊夢が戻って来ないのだ。心配になって外の様子を伺おうとするのもごく自然なことだろう。
霊夢のすぐ横を、ひゅるりと旋風が通り抜けた。「あっ!」と思った時にはもう遅い。
「どうもどうも初めまして! 私は清く正しい射命丸、射命丸文と申します! 以後お見知りおきを、えぇと――」
ご自慢のスピードで博麗の巫女を抜き去った文は、少年の前で急停止する。その慣性を無視した動きに、彼の目には突然美少女が現れた様にしか映らなかったろう。
そうして文はお馴染みの口上をする。少年――○○も倣って丁寧に自己紹介をして、頭を下げた。
「ほうほう、○○さんと仰るのですね。よろしくお願いします。えぇ、礼儀を弁えている方は好きですよ! あ、取り敢えずお近づきの印に一枚よろしいですかよろしいですね?」
「文っ! あんた――!」
文がカメラを構えると、すかさず肩を怒らせた霊夢がやって来た。
「ちょっ、やめて下さい霊夢さん! ズレちゃう! ピントがズレちゃいますって!」
天狗の肩をふんずと掴み、思いっきり揺さぶる霊夢。
流石に写真を撮れる状態でも無く、文は溜め息を吐きつつカメラを下げた。
「全く……、何をするんですか霊夢さん。何がそんなに気に入らないのですか。これは私と○○さんとの問題です。霊夢さんがしゃしゃり出て来る必要はないでしょう?」
「あのね、その写真記事に載せるんでしょう」
何をそんな、当然の事を聞くのだと文は訝しげにしている。
「だからよ。ただでさえ厄介な連中が多いってのに、そんなやつらを呼び寄せるような真似。わざわざこっちから宣伝する必要なんて無いでしょう」
「ふむん?」
確かに――文々。新聞の発行部数は棚に上げて――、記事にしてしまったら彼の存在はあっという間に、幻想郷中へと知れ渡るところになるだろう。だが、それのどこに不都合があるのだろうか? 純朴そうではあるものの、そこまでの魅力を男に見いだせない文は首を傾げる他ない。だが――。
無理を通して、霊夢さんの機嫌を損ねるのは得策じゃありませんね……。
面倒臭そうに愚痴を零す霊夢と、苦笑する少年の顔を交互に見やり文は羽ばたいた。
「……いいでしょう。今日の所は大人しく引き下がりますが、時と場を改めてきちんとインタビューは受けてもらいますからね」
「いや受けないから。受けさせないから」
「ではでは霊夢さん、○○さん! また後程に!」
「来なくていいわよ――って、相変わらずせっかちなヤツね……」
霊夢の文句もそこそこに、文は颯爽と身を翻した。凄まじい突風を残しては、彼女の姿は瞬く間に空へと呑まれて消えた。
面倒臭いヤツが面倒な真似をしてくれたと、霊夢はがしがしと頭を掻いた。
そうして己の言いつけをキチンと守らなかった○○を見やる。まぁ、自分も予想外の珍客に対応を手間取らされた部分もあるが、それはそれこれはこれ。約束を守れなかった事には変わりないのだ。
「ダメじゃない○○。私は待ってて、って言ったんだから。」
しかし、負い目もあるからか、その言葉には厳しさ以上に優しさが含まれていた。
霊夢の忠告に彼は素直に頷く。あんまり素直過ぎるもんだから、却って大丈夫なのか心配になってしまう。
すると彼の興味は自然、先の珍客へと移る。
一々と説明し余計な知識を与えたく無かった霊夢はただ一言、「天狗よ」とだけ答えた。そうして「あんまりああいう輩とは付き合っちゃダメよ?」と釘を付け足した。
ああいう輩――と云うのがどういう輩なのか○○には解らなかったが、射命丸と出会った感想をまずは一言。
――綺麗な方でしたね。
全く無邪気な笑顔を浮かべてくれる。言葉以上の含みは無いと分かってはいたものの、霊夢は面白くなかった。
だから部屋に入る前、霊夢は男の手の甲、その皮膚のみを抓り上げた。痛い!
好感度状況
霊夢:?
紫:★
魔理沙:☆☆
アリス:★★★
文:☆