「しかし本当にアラガミの数が少ないわね。」
「そうだな。いないわけではないがこんなに少ないと逆に不気味だな。」
そんな会話をしながらも探索を続けるリンドウとサクヤ。ライと別れてからしばらく歩くが此方もアラガミとの接触は少数の小型アラガミくらいだった。
「例のKMF型アラガミがいる様子もないわね。」
「寧ろソイツ等がアラガミを倒しているからここに居ないのかもな。」
「え?」
「なんで驚くんだよ。アラガミ同士で食いあうこともあるんだからそういうこともあるだろ。」
「確かにそうだけど…」
この場所にアラガミが少ない理由をアラガミ同士の共喰いと結論づけるリンドウ。とはいえそのKMF型アラガミもいないことにも少し違和感を感じていた。
「考えても答えが出るわけないか。」
「リンドウ?」
「探索を続けるぞサクヤ。」
「ちょっと…!?」
難しいことを考えることが苦手なリンドウは思考を放棄して探索を続けることにした。
「………」
リンドウとサクヤがそんな話をしていた頃ライは学園内を探索していた。
「教室に職員室、食堂に図書室、プールに…」
学園内も多少はボロボロになってはいるものの少し修繕すれば使えるくらいには形を保っていた。
「ここは…屋上か。」
階段を登り屋上に辿り着いたライ。学園内をある程度は探索していたライは一度休息をとることにした。
「こっちは大方調べたから次は…」
事前に持ってきた軽食を食べながら次の行き先を決めるライ。
「校舎は見終えたから次は向こうの建物か。」
屋上から次の目的地に目を向けるライ。だがその目にはどこかしら暗かった。
そもそもこの学園に来た時から…否、視界に入った時から罪悪感のような暗い感情に蝕まれていた。
それは自分という“異物”がこの場にいることへの拒否反応にもみえた。
「……さっさと調べてここを出よう。」
軽食を食べ終えると次の目的地…“クラブハウス”へと向かった。
「ここは…生徒会室と客室が一緒になっているのか。」
クラブハウス内に入り、ライは一通り歩きまわる。クラブハウスの内部は生徒会室と客室のような部屋があった。
「不思議とこの場所は懐かしいと感じる。……身勝手だな。僕は。」
自身を自嘲しながらもライは生徒会室へと足を踏み入れる。
生徒会室に入るもその場には当然ながら誰もいなかった。
ただ中央にテーブルがあり、そこに一冊の本が置かれていた。
「……これはアルバム?」
本を手に取り数ページ捲る。本の中身は写真が入っていて制服を着た生徒達が写っていた。
「っ……!!?」
アルバムを捲るとある一枚の写真に目が止まった。
その写真には複数人の男女の生徒が仲良さげに写っていた。
その生徒達はライは知っている。
「……ミレイ…さん。」
「シャーリーにリヴァル…」
「ニーナにスザク」
無意識だが写真に写っている生徒の名前だろうかライはその名を呼ぶ。
「カレンにナナリー…」
「ルルーシュ。」
写真に写る生徒の名前を呼びおえるとそこでライは自身が涙を流していることに気づいた。
「なんで…」
なんで泣いているのか。ライは理解できない。
ただ、記憶のあった自分にとってはこの写真に写るこの生徒達が大事な存在であることは理解できた。
「アルバムは持って帰ろう。この写真だけ持っていくのはどうかと思うし。」
アルバムを持って帰ることを決めてアルバムを最後まで捲る。最後のページには折り曲げられた白い紙が挟まっていた。
「これは…」
白い紙を開くと手紙だろうか文章が書いてあった。
“図書室の奥の本棚を調べよ“
たったこれだけの文章が書いてあった。
「図書室の奥の本棚…」
何かの謎かけだろうかと思うライ。だがわざわざアルバムの1番後ろに隠すようにあったことがその先に何かがあると案じているのではないかとも考えた。
「調べてみるか。」
ライは生徒会室を後にして図書室へと向かった。
……その先に”とある人物“が待ち続けていることも知らずに…