リンドウとの初の実地演習の翌日の実地演習の相手はサクヤとだった。
そこでサクヤから遠距離神機使いとの作戦行動の仕方を学んだライ。
さらにその翌日はソーマと組んで任務に向かった。
その際、エリックという神機使いが目の前でアラガミに喰われる光景を目にした。
ソーマと共にアラガミを倒したもののエリックは既に死に絶えて居た。
「お前はここに何しにきた?」
エリックを失った直後、ソーマはライにそう問うがライは答えることができなかった。
否、敢えて答えなかったのかもしれない。
実地演習が始まってから周囲にはわからないだろうがライは妙に高揚感を得ていた。
自分の生死を掛けた戦いに身を置きアラガミを実際に手に掛けることでさらに高揚感を得る。
そんな自分に少なからず戸惑いを覚えたライ。
命を掛けることになんの躊躇いのない。むしろそれが当たり前で自身が死ぬことにも関心がない。
リンドウに死ぬなと命じられたがライはきっと自分は仲間を助けるなら自身の命を躊躇なく差し出すだろうと思った。
記憶が失っていようとそれが自身の本質と理解して入るかのように…
「ヒバリさん。」
「あ、ライさん。また訓練ですか?」
「はい。お願いできますか?」
「そうですね。訓練室は空いてますので大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
ヒバリに御礼を言って訓練室に向かうライ。
「ヒバリちゃん。」
「あ、タツミさんお帰りなさい。ブレンダンさんもお疲れ様です。」
ライを見送るヒバリに声を掛ける男が2人。
赤い服を着た男はフェンリル極東支部第2部隊隊長を務める『大森タツミ』そして青い服を着た外国の男は『ブレンダン・バーゼル』といい彼もタツミと同じ第2部隊に所属している。
彼等の所属する第2部隊と第3部隊は通称『防衛班』と呼ばれ主に外部移住区のアラガミからの防衛任務を主としている。
「今のって例の新型だよね。また訓練?」
「はい。ライさんは任務の後、さすがにすぐとはいきませんが訓練をしていますね。」
「関心するな。俺は実地演習の後は生きて帰ってこれたことに安心して部屋でぶっ倒れてたよ。」
「ああ。あそこまでストイックというか向上心があると新入りでも尊敬できるな。」
タツミもブレンダンもライには悪い評価はしていない。むしろ好印象を持っている。
その理由はリンドウとサクヤにある。
まだ人数が少ない新型神機使いということもあり、やはり気になるのかライの実地演習に同行した2人に興味本意でどうだったか聞きその評価が良かったのだ。
勿論他者の評価だから全てを信じたわけじゃないがリンドウもサクヤも極東支部1のゴッドイーターのため2人の評価は他のゴッドイーターにとっても信憑性があるのだ。
「……やっぱエリックのこと気に病んでるのかな。」
「そうだな。『死神』と同じでアイツもその場にいたみたいだからな。」
死神とはソーマの悪名である。
実はソーマと任務を同行したゴッドイーターで死んだのはエリックだけじゃない。
複数人から十数人もソーマとの同行任務で命を落としている。
そのことから極東支部のゴッドイーターの間でソーマを死神と呼び敬遠してるゴッドイーターも少なくない。
無論、タツミもブレンダンも少なからず思っている。
「ヒバリちゃん。あの新型も死神の話を聞いてるんだろ?」
「はい。なんでもシュンさんに教えられて私にも聞きに来ましたから。」
シュンとは極東支部の第3部隊に所属する『小川シュン』という名のゴッドイーターである。
神機はロングソードで剣の腕前はあるようだが基本的には奇襲がメインらしい。しかしミッション成功率は低いとか…
「あんまり喋るようには見えないけどヒバリちゃんとは話すんだ。」
『私はオペレーターですから任務(ミッション)の発注や報告の為の会話ですけどね。」
「それでアイツはなんか言ってた?」
「はい。表情が変わらないからどんな気持ちだったかはわかりませんが…」
"アラガミは怖くないのに死神は怖いんだな"
"僕達もある意味では化け物なのに…"
「と言ってました。」
「………」
「なるほどな。」
ヒバリから伝えられたライの伝言とも呼べる言葉。それはタツミもブレンダンも納得できるものだった。
ゴッドイーターはアラガミと戦える存在だ。現に今までも人類の為に戦ってきた。
しかしその人類から見ればゴッドイーターはどう見えるだろう。
アラガミと戦える力を持った人外、即ち、化け物。
ゴッドイーターだって腕輪が壊れたり適合する偏食因子の投与を怠ればアラガミ化が始まる。
きっとソーマの話を聞いたライは実にくだらないと思っただろう。
死神だろうがアラガミだろうが結局自分達も結局は人外(化け物)なのだから。
「そうだな。なにくだらないことを気にしてたんだ俺は…」
「ああ。それに仲間を悪く言うのは良くない。」
何か憑き物が取れたかのように反省するタツミとブレンダン。
そして2人は少しだけライを理解した。
「アイツ無表情だけど仲間思いのいい奴だな。」
「ああ。できれば一緒に任務に出てみたいものだ。」
「それいいな!!俺、リンドウさんに掛け合ってみるよ。」
本人不在なのに勝手に盛り上がる。2人。
ライは知らぬ間にまた自身の評価を上げた。
因みにその本人は…
「ヘックシュン!!!!」
訓練室でくしゃみをしていた。
本人の知らないうちにライの評価が上がりました。
まだ一緒に任務に出たこともないのに馴れ馴れしくしてくるタツミ達にライは多分引くと思います。それか怖がるかもな。
今のライは余り構って欲しくない猫みたいなタイプだよ思いますので