神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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馳走

ライとハンニバル(リンドウ)の戦いは苛烈を極めた。

 

ライは神機で斬り、撃ち、喰らう。

 

ハンニバルは炎を操り縦横無尽に暴れまわる。時に巨大な体躯を存分に使いライを追い込む。

 

一進一退の攻防。どちらも当然ながら無傷ではない。

 

ライは炎に焼かれたのか衣服が焦げ、頰が傷ついたのか血が流れている。身体も相手の攻撃により何度も地に叩きつけられ、衣服で見えない場所や腕や足は既にボロボロだった。

 

ハンニバルも同様だ。

 

籠手は砕かれ、全身は斬り刻まれ、息も絶え絶え。最終形態というべき炎の翼を生やした姿になってもライを倒しきれず、こちらもライと同様にボロボロの状態だった。

 

「やりづらい…」

 

肩で息をしながらライは小さく呟く。

 

ハンニバルというアラガミの姿ではあるが正体はリンドウであることも関係しているだろうがそれだけでライは苦戦はしない。寧ろ時間をかければかけるほど戦況はライに有利になる。

 

では何故苦戦するのか、それは単純にハンニバルが強いからだ。

 

「骨…折れてなくとも皹が入ってそうだ…」

 

自分のことなのだがどこか他人事のように自身の状態を把握するライ。

 

改めて神機を強く握り目の前の怪物に挑む。そして弾丸を連射しながら駆け走り、跳んで神機の刀身を振るう。

 

だがハンニバルはタイミングを見計らったようにその斬撃を避ける。

 

「クッ…!!!」

 

空振りして着地したライだがまたもハンニバルがタイミングよく尻尾でライを吹き飛ばす。

 

かろうじて防具の展開が間に合って直撃は免れたが勢いまで殺せず数m吹き飛ばされる。

 

さらにハンニバルの猛攻は続く。

 

防具の展開で視界を遮った隙をつき、紫炎を吐き出す。

 

度重なるハンニバルからの猛撃にどうにか防いでるライだがついに限界を迎えた。

 

ふと足腰から力が抜ける感覚に陥ったライ。その結果、足が崩れ膝をつく。

 

同時にハンニバルの猛攻の仕上げもきた。

 

炎で槍を形成しその槍をライに振り下ろす。

 

それもかろうじて防ぐが衝撃でまたも吹き飛ばされ地に叩きつけられた。

 

「………まだ…だ…」

 

どうにかして立ち上がろうとするライだが今の叩きつけとこれまでの攻防で傷ついた身体はまとも動かない。

 

ハンニバルは次は両手に炎の剣のようなものを装着して倒れ動けないライに近づく。

 

ここは生死をかけた闘技場(コロッセオ)。当然生きてこの地を出るには相手を殺すしかない。

 

「動け…」

 

ハンニバルの足からなる振動で自分に向かっていると気づいたライは動こうと身体に力を込める。

 

 

しかし満身創痍の身体は動かない。

 

そして無情にもハンニバルの炎の剣がライを貫いた。

 

声にならない叫びを上げるライ。だがその叫びも徐々に小さくなっていく。

 

そしてライは気を失ったのか何も言わなくなった。

 

ハンニバルもライは死んだと判断したのか貫いている剣を引き抜く。

 

それでも何も返事がないライ。

 

……だがライの“中で蠢く何か”が動き出した。

 

「宿主様はやはり甘いな。非情になりきったというのに微かに甘さが残っている。」

 

「記憶の宿主は慈悲なき非情だったというに記憶を失えばそれも忘れるものなのかね?」

 

そんなことを発しながら“ライ”は立ち上がる。

 

「焼け臭いな。身体の隅々も痛い。でも良い“ハンデ”だ。」

 

「おい。クソトカゲ。まだ終わってねーぞ。ここに極上の馳走がある。それを喰らわないとはそれでもアラガミか?」

 

自らをご馳走といいハンニバルを睨みつける“ライ”。その眼はアラガミと同じような眼となっていた。

 

「逃すかよ…俺にとってもテメェはご馳走だ。」

 

「だから喰わせてもらうぞ?元人間!!」

 

まったく訳の分からないことを勝手に言うライ。そして第二ラウンド開始という意味か、ハンニバルに攻め上がった。


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