神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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贖罪

 

「すまない。迷惑かけた。」

 

「いえ、無事でよかったです。」

 

ライとグボロから離れ、近くにアラガミのいない場所まで移動したフェデリコとブレンダン。そこで持参していた救命道具でブレンダンに応急処置をする。

 

「アネットとカノンは無事か?」

 

「はい。2人とも無事で既に復帰してます。」

 

「そうか。だが俺がこの体たらくじゃ世話ないな。」

 

「何を言ってるんですか。ブレンダンさんがアネット達を逃がしてなければ2人は死んでいたかもしれないんですよ。」

 

「こんなに怪我してるのに生き残ってたんですから尊敬します。」

 

「……俺は…尊敬される奴じゃない。」

 

「え?」

 

肩や足に包帯を巻くフェデリコにブレンダンの呟きは聞こえなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、ライとグボロ・グボロの戦闘も続いていた。

 

「いつものよりも動きが速い…よく見ると少し大きいな。」

 

攻撃を加えつつ、いつものグボロ・グボロと違うと感じたライ。

 

実際、動きも速く、砲塔から放たれる衝撃波は辺りの瓦礫も吹き飛ばすほどの威力があった。

 

「特殊なコアでも食べたのかな。」

 

脳裏でそんなことを考えながらライはグボロの攻撃に対応していく。いかに強くなろうともライは少し時間をかければすぐに対処できる。

故にライが強いと言われる所以はこの対応力だと言えるだろう。

 

「先輩!!」

 

「アネット。」

 

グボロの攻撃を避けているとアネットが合流した。

 

「援護します!!」

 

「……大丈夫?」

 

「はい!!やります!!」

 

「そうか。言っとくがいつものグボロより強力だから気をつけろ。」

 

「了解です!!」

 

アネットが加わり攻勢に出る。アネットの動きも本来の持ち味の超猛攻によりグボロの牙を砕き、砲塔と胴体を潰した。

 

程なくしてグボロは倒された。

 

「セクメトの時も今くらいやってほしかったね。」

 

「すみません。」

 

「でも復活したならいいよ。さて、フェデリコに連絡しないと。」

 

「そういえばフェデリコはどこにいるんですか?」

 

「ブレンダンさんと一緒だよ。」

 

「アネット。」

 

アネットに説明しているとフェデリコに肩を借りながら歩くブレンダンと合流した。

 

「……ブレンダン…さん…」

 

「すまないな。心配かけた。」

 

「ブレンダンさん!!!」

 

アネットがブレンダンに抱きつく。フェデリコに支えられているものの態勢が悪く地面に倒れた。

 

「こちら、ライ。討伐完了とブレンダンさんを保護したから医療班の準備させといて。」

 

そんな3人を他所に通信機でアナグラに連絡するライ。この後、ヘリでアナグラに戻り、ブレンダンは医務室に収容された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ライはタツミと一緒に医務室を訪れていた。

 

「よう。怪我してるけど案外元気そうだな。」

 

「ああ。心配かけた。」

 

「通信機は持ってなかったそうですね。」

 

「ああ、通信機は落とした時に故障したみたいでな。」

 

医務室に訪れたのは当然ながらブレンダンの見舞いである。昨日は検査などがあり、面会謝絶だったのだ。

 

「本当にすまない。リンドウさんの捜索してたのに俺が行方不明になるなんて本末転倒だ。」

 

「まぁ通信機が使えなくなったんだからそれは仕方ないって。」

 

「そうですよ。無事に戻ってきたんですから今は喜びましょう。」

 

タツミとライが慰めるもブレンダンの表情は冴えない。

 

「正直言って俺は多分死のうと思ったんだと思う。」

 

「俺はアーク計画の際、自分は生きるべきか悩んだ。そして生きたいと決めて方舟に乗った。」

 

「だがアーク計画は第1部隊に阻止されてその経緯をタツミから聞いた。自分が恥ずかしかったよ。最低で情けない愚かな男だって。」

 

「ブレンダンさん。」

 

ポツポツと呟くブレンダンの独白。

 

「だから俺も償わないといけないと思った。俺は神機使いとして俺自身が許せない選択をした。その償いを。」

 

「だから新種アラガミと出くわしたとき、少しだけ嬉しかった。償う方法が見つかったと思った。」

 

「だが、いざ死を直前にすると怖くなった。死にたくないと生きたいと強く思ってしまった。」

 

「気がつけばスタングレネードを使って逃げ出してたよ。この怪我も逃げた時に他のアラガミに襲われてできたものだ。」

 

「自分で決めたことも実行できないなんて本当に情けないよな。」

 

「……死にたくない。生きたいと思うのは普通の感情だと思いますよ。」

 

自嘲気味に言うブレンダンにライはそう返した。

 

「それに償わないといけないのは僕の方です。」

 

「アーク計画を否定して現状維持を選んだのは第1部隊です。だから僕達は証明しないといけないんです。」

 

「証明?」

 

「はい。僕達の選択は間違っていなかったと皆を納得させられるように証明しないといけない。それが僕達の贖罪です。」

 

「だからブレンダンさんには生きてもらわないと。生きて僕達の贖罪を受けてほしいです。」

 

「だから死んで償うなんて安易な選択をしないでください。職業柄死ぬことは楽にできるんですから。」

 

「……そうだな。すまない。」

 

「まぁ難しいことは怪我を治してから考えろ。怪我が治ったらリンドウさんの捜索で考える暇はないけどな。」

 

「そうだ。新種アラガミはどういうのでしたか?」

 

「ああ、前に映像で見たハンニバルだったか?あれに似てたが…」

 

話題はそれてブレンダンが遭ったという新種アラガミの話になった。やはりハンニバルの変異種らしい。

 

ともかくブレンダンが無事に戻ってきた。あとはアラガミ化の懸念があるがリンドウの行方のみ、新型変異種のハンニバルも気になるが頭の片隅に置くしかない。

 

 


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