「…なるほど。新型特有の感応現象が起きたようだね。それでリンドウ君が生きていると。」
「昏睡状態だったアリサを呼び起こした新型特有の不思議な力だったか…俄かに信じがたいが。」
「ともあれ誰にも話さず最初に我々に話したのは良い判断だ。……期待して裏切られる絶望をまた味わうのは酷だからな。」
ライからリンドウ生存の可能性の経緯を聞いたサカキとツバキはそう評した。
「うん。確証が取れるまでこの件は誰にも話さないように。いいね。」
「そうですね。あくまで僕が感応現象で見たのは過去ですから。」
「その通り。腕輪が壊れてかなりの日数が経っている。それはアラガミ化が進んでいるのも同義だろう。」
「ツバキ君。念のため、調査隊に廃寺方面の調査の指示を出してほしい。何かリンドウ君に繋がるものが残っているかもしれない。」
「わかりました。」
ツバキは返事を返すと踵を返した。
その際にライの肩に手を置き一言呟いた。
“ありがとう”と…
「さて、ツバキ君がいなくなったことだしもう少し詳しく教えてくれるのかな?」
「ええ。“あの子”にオナカ…スイタを教えたのはリンドウさんのようです。」
「……なるほど。確かにツバキ君がいる前では話しにくい内容だね。」
ライはサカキにもう一度感応現象で見た内容を話した。
今度は包み隠さず全てを…
「シオがそんなことを…実に興味深いな。」
「だけど特異点の力でもアラガミ化を完全停止させることは不可能だろう。だけどアラガミ化の進行をまだ遅らせているならば…希望はある。」
「君にもリンドウ君の“痕跡”を探してほしい。なんでもいい。リンドウ君に連なるものを持ってきてほしいんだ。」
「わかりました。」
「そっち行ったよ!!」
「アリサ!!ソーマの援護に入って!!」
「コウタは牽制!!」
ライの指示がとぶ。そして指示どおりに動くアリサ、ソーマ、コウタの面々。
討伐対象はコンゴウの堕天種2体とオウガテイル1体。ライの復帰戦にしては比較的簡単なミッションだ。
「これで!!」
「終わりだ!!」
ライとソーマが同時に別々のコンゴウに一撃を与える。それが致命傷になり、コンゴウはその活動を停止した。
「あー、やっぱリーダーの指示があると動きやすいわ。」
「久しぶりの実戦でしたけど大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ。リッカの整備がよかったのか前より扱いやすい。」
アリサの心配にそう返すライ。ちなみにソーマはコアを回収している。
「あまり無茶しないでくださいね。言っても無駄だと思いますが。」
「そういえばさ。新しく新人入ってきたよね。」
「アネットとフェデリコに会ったんだ。」
「うん。なんだか後輩ができたってのは変な感じだよな。」
「極東支部だと僕とコウタが1番下だったからね。」
ライとコウタがゴットイーターになって以降新人は入ってこなかった。故に2人にとっては始めての後輩となる。
「アリサはロシア支部でゴットイーターになったのは昨年なんだっけ?」
「ええ。そうですけど。私にとっても始めての後輩ですよ。」
「僕とアリサと同じ新型だから時折一緒に組むことがあるだろうね。」
「そうなんですか?ちゃんと教えられるかな…」
心配そうにそう言うアリサ。以前の高飛車のアリサならともかく今のアリサなら心配ないと思うが…
「そろそろ迎えが来たぞ。」
「今行く。」
「リーダー、行きましょう。」
ソーマの言葉に返事を返し歩を進めるライ達。
その際、ライは足下に黒い何かを見つけた。
「羽根?」
手に取ると、それは黒い羽根だった。
「鴉…いや…」
ここは鎮魂の廃寺。雪で一面真っ白だ。そこに黒い羽根があれば目立つだろう。
「……一応回収しとくか。」
何故かその黒い羽根が気になったライはその羽根を回収した。