アラガミ侵入の事件が起きてから数時間。
アナグラ襲撃の報を受けたゴットイーター達は続々とアナグラに戻ってきた。
「皆さん。お疲れ様です。」
「そんなことより大丈夫だったの?アラガミに襲撃を受けたと聞いたけど。」
「見たところ対した被害は出てないようだけど。」
討伐に出ていた第1部隊も報告を兼ねてヒバリに問う。
「はい。幸い、神機保管庫で倒されましたので、人的被害はリッカさんが頭をぶつけたくらいです。」
「誰が倒したんだ?その時には神機使いはいなかったはずだ。」
「それは…」
ソーマの問いにヒバリは口を噤む。その姿にアリサ、コウタ、サクヤも首を傾げる。
「実は倒したのはライさんなのですが…」
「え!?リーダーが!?」
「どうやって…リーダーの神機はまだ…」
「それが現場にいたリッカさんによるとリンドウさんの神機を使ったそうです。」
ヒバリの予想外の返答に驚愕する第1部隊。
「今は医務室で寝てるようですが、検査によると少量ですがリンドウさんの偏食因子がライさんに取り込まれたそうです。」
「あのバカ…」
「でも‥俺が同じ状況になったら同じことをしたと思う。」
「コウタ…」
「だってここは俺たちの家なんだぜ?帰るべき場所を守れるなら俺は今回のリーダーと同じ行動をとるよ。例え危険なことでもやらなければ守れないなら俺はやる。」
とはいえ今回のライの行動は結果的にはよかったとはいえ褒められる行動ではない。
「コウタの気持ちはわかりますけど私は怒ります。」
「…アリサ。」
「リーダーはアナグラの中で1番働いています。神機の消耗に気づいていても討伐に出るほどです。」
「私たちと一緒でもリーダーが1番危険な役割を担っています。新型神機の使い手ですからやれることが多いのは私も新型ですのでわかります。」
「だからでしょうか。リーダーは生き急いでいるように見えて心配してしまうんです。」
『今回の件だって一歩間違っていたらリーダーは死んでいたかもしれません。そんな危険を犯したリーダーを同じチームである私達が叱るべきです。」
「……でも私もリーダーやコウタと同じ行動をすると思いますが。」
最後に目を泳がせてそう呟くアリサ。第1部隊の彼らはライがなぜそうしたのかわかっているのだろう。
なにせ、彼らライと同じ…
“神を喰らう者”なのだから…
同時刻
医務室でライは目を覚ました。
「あ…起きました?」
「起きた!?良かった〜〜」
耳から援護してくれた少年の声とリッカの声が聞こえた。
「ここは医務室か…」
そう言いながら身体を起こすライ。
すると少し涙ぐんだリッカがライに抱きついた。
「本当に良かった…」
「ごめん。心配かけた。」
「本当だよーもう二度と他人の神機を使わないで…」
「適合してない神機を使うと拒絶反応で捕食されちゃう。そうなったらもう助からない。だから絶対に他人の神機は使わないで。」
「……わかった。」
リッカの懇願にライは頷いた。
ライ自身も拒絶反応による激痛はもう受けたくないと思っている。
「約束だよ?」
「ああ。」
「よし、じゃあ私は君が起きたことを伝えてくるね。」
そう言うとリッカは医務室を出て行った。
「リッカさん。良い人ですよね。神機のことをよく理解している。」
「そうだな。えっと…」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。本日付で極東支部所属となりました“レン”と言います。」
黒髪の少年はレンという名前のようだ。
「配属は医療班ですが一応新型神機のゴットイーターです。専門はアラガミ化の抑制の研究をしています。」
「アラガミ化の抑制…」
「はい。でも研究はしてますが成果はまだまだなんですけどね。」
「そうなのか。あ、僕は…」
「皇ライさんですよね。この極東支部で最強と謳われる第1部隊の隊長を務める極東初新型神機使い。」
「……かなり過大評価してるね。僕はそんな凄い人間じゃないよ。」
「強ち間違ってはいないと思いますよ。神機使いとしてまだ1年も経ってないのに極東の皆に認められるのですから。」
スピード出世で隊長職についたライだがそのことに文句をいう者はいなかった。そういう意味ではライは極東支部の人間に認められていると言えよう。
「あ、すみません。話し込んじゃって。」
「いや、こちらこそすまない。あの時の援護は助かった。ありがとう。」
「どういたしまして。」
ライの感謝の御礼にそう返して笑うレン。
「また横になってください。まだ疲れがとれてないみたいですし。」
「いや、もう大丈夫。」
そう言って立ち上がったライだがすぐにふらついてレンに支えられた。
結局もう一眠りして医務室を出たがサカキやツバキを筆頭にいろんな人から説教を受けるライの姿が見受けられたとか。