「よかった。目を覚ましたんですね。」
目を覚ましたライ。朧気ながらアリサが心配そうな表情をしているのが見えた。
「ここは…」
「アナグラの医務室です。アラガミに吹き飛ばされたことは覚えてますか?」
「ああ。」
「そのときに頭を強く打ったみたいで軽い脳震盪を起こしたみたいです。」
「そうか…」
「まだ無理しちゃダメですよ!!」
そう言って起き上がるライを支えるアリサ。彼女にお礼を言うと周りを見渡すと寝てるコウタとソーマがいることに気づいた。
「起きたか。」
「ごめん。心配掛けた。」
「部下を守るのはいいが…前のリーダーのようなことは勘弁してくれよ?」
一言忠告するとソーマは出て行った。
「本当無事でよかったです。」
「ごめん。」
「“いえ、元はコレが悪いですから。」
そう言ってアリサは隣で寝こけているコウタを叩く。
「イテッ!!ああリーダー起きたんだ。」
「ゴメンな。俺が油断してたからこんなことになっちゃって。神機も壊れちゃったし。」
「ああ、そうなんですよ。今リッカさん達が直してるんですけど時間がかかるそうです。これを機に他の神機使いの神機のメンテナンスもするって言ってましたから。」
「ツバキさんも溜まってる有休使ってゆっくり休めって言ってたよ。ツバキさんが言ってたけどリーダーが1番出撃してたそうだから。」
「うん。そうさせてもらうよ。」
そう言うと同時に放送が流れた。
内容は例の新種アラガミ『ハンニバル』の対策を考えるため神機使いは集合しろとのことだった。
「僕も行った方がいいかな。」
「ダメですよ!脳震盪起こしたんですから。」
「そうだよ。ハンニバルの対策はこっちに任せて休んでて。あ、必要なものがあったら教えてくれたら持ってくるから。」
「…わかった。」
「じゃ、またね。」
「あとでまた来ますからくれぐれも無茶なことしないでくださいね。」
「わかってるよ。」
2人が医務室を出るのを確認するとライは再び横たわった。
「……情けない。」
その言葉は吐き捨て、再び眼を瞑った。
神機が直るまで休むことになったライ。脳震盪を起こしたものの、後遺症は残らず身体も異常は見当たらず無事に退院していた。
とはいえ、1日の大半は任務に出てるため、時間があり過ぎて暇を持て余していた。
「本当につまらない奴だな…」
エントランスにある椅子に座り自嘲気味に笑うライ。
「記憶が戻れば少しはマシになるかな…」
本人も忘れかけていたがライは記憶喪失であり、小さい頃の記憶もアナグラに保護される以前の記憶もない。
今まではアラガミ討伐やアーク計画の事後処理などで自身の記憶のことを後回しにしていたが今は神機が壊れたため時間ができたため何か手がかりを思い出そうとしていたが何も出てこない。
緊急放送がそんな時だった。
「緊急連絡!!小型アラガミがアラガミ装甲壁を突破し居住区内に侵入しました!!繰り返す!!アラガミが侵入しました!!」
「っ…!!」
職業病からか、アラガミという単語を聞いたと時にはライの身体は立ち上がって走り出していた。
「なんで来たの?君の神機はまだ直ってないよ。」
ライが神機保管庫に向かうとそこには神機のロック作業をしてるリッカがいた。
「私も神機のロックが終わったらシェルターに向かうから君も早く行って。」
突き放すリッカの言葉、ライ自身それはわかっていた。だがそれでもライがここに来たのは…
ライが“ゴットイーター”だからだ。
そしてライは1つの紅い“神機”に目を向けた。
「……ゴメン。」
最近、謝ってばかりだなと内心苦笑を浮かべながら謝罪を言葉にするライ。そしてその紅い神機の下へ駆ける。
「え!?ダメ!!それは“リンドウ”さんの神機!!」
「わかってる。」
リッカの叫びに一言答え、ライはリンドウの神機を掴んだ。
「っ………!!!!!!!」
ライの身体に拒絶反応の激痛が走る。
ゴットイーターの神機はゴットイーターに投与された偏食因子と同じもので作られている。
だがゴットイーターは自身に投与された偏食因子と適合した神機しか使うことが出来ず、仮に違うものを使うと拒絶反応により神機に捕食される可能性がある。
「早く離して!!適合外の神機を掴むと拒絶反応で君を捕食しちゃう!!」
リッカの悲痛の叫びを聞いてもライはリンドウの神機を離さない。
同時にこの神機保管庫の壁を破り、侵入した小型アラガミ『ヴァジュラテイル』が侵入してきた。その衝撃でリッカは吹き飛ばされ気を失う。
「リッカ!!」
リッカを呼ぶも返事はない。だがどうにかリンドウの神機を持ち上げることはできたライ。
しかしライの言うことは聞かずむしろライを振り回すリンドウの神機。
それでも無理矢理制御してヴァジュラテイルに一撃浴びせ、リッカとの距離を開かせる。
しかし神機による拒絶反応と捕食による侵食により膝をつき声にならない悲痛の叫びをあげるライ。
ヴァジュラテイルも無防備のライに攻撃しようとしたその時…
ライの横を1つの閃光が横切り、ヴァジュラテイルにダメージを当たった。
「大丈夫ですか!?」
背後から声を掛けられる。振り向くとそこには黒髪で金色の目の少年が神機を構えていた。
「援護します。トドメを!!」
少年の言葉に頷きライは少年のレーザーでヴァジュラテイルが怯んだ隙を狙い、一閃。
その一撃が致命傷となりヴァジュラテイルは倒れた分解された。
同時にライも限界を迎えたのか、そのまま倒れ気を失った。