振り下ろされる拳を交わす。
その隙にライとソーマが腕をつたって斬りかかる。
サクヤとアリサは地上からライとソーマを射撃で援護する。
地味だが最善の連携で巨体のアラガミに挑む第1部隊。
「放電くるぞ!!」
「飛べ!!」
腕に電気が走ったのを察知したソーマが叫ぶ。ライも放電の瞬間に指示を出す。
そして放電が止むと腕に着地し、顔面に向かって走り出す。
ゴットイーター故の身体能力で空中に数十秒いることができるからこそのライの指示。
とはいえ既にこの策は10回以上繰り返している。
どんなに放電を避け、ダメージを与えても結局振り落とされる。
そしてまた1からやり直し。確実にダメージは与えてはいる。
だが倒せるまではいかない。
巨大過ぎる故にダメージが通りにくい。弱点を責めれば多少は違うだろうが肝心の弱点箇所を見つけられてない。
「クッソ!!」
「クッ…」
またも振り落とされるライとソーマ。以前としてアラガミは健在。
「埒があかねぇな。」
「状況からして対したダメージは受けてない。どうするか。」
「大丈夫!?」
アリサ達と合流して策を練る。しかし再び拳が振り落とされるがそれを避けるが衝撃が4人を襲う。
「クッ…ホント埒が明かないわね。」
「幸い足場が埋もれて動けないからこれ以上の被害が広がることはないですが…」
「少なくとも今のような攻撃は数が増えても瑣末なダメージしか与えられない。大きな一撃が必要だ。」
「………」
各々が状況の危機を把握しているが有効な決定打は見つからない。
「……少し試したいことがある。時間を稼げるか?」
「え?」
「何かあるの?」
「やってみる価値はあるかと。うまくいく保障はありませんが。」
「分かったわ。」
「もう一度俺が斬り込む。お前らは援護だ。」
「いえ、私も行きます。」
ソーマとアリサが勢いよく駆ける。サクヤも援護射撃を仕掛ける。
それを見てライも神機を強く握る。同時に“あのとき”の感覚を思い出す。
極寒の廃寺でプリティヴィ・マータを倒した時の一撃の感覚。
ライ自身はあの後倒れて記憶は曖昧だが血が騒ぐような胸の中心から熱が広がっていくような感覚はなんとなくだが脳裏の片隅に残っていた。
それを呼び起こす。
「………」
熱を感じる。あの時よりも遥かに熱い熱が身体中に広がっていく。
「……グッ…」
同時に全身に走る激痛。だが意識が途絶えれば意味がない。
自然と走り出す足。
神機の刀身は禍々しく黒く染まっている。
「ーーーーーーーーー!!!!!」
激痛による声にならない絶叫を上げながらも足は止まらない。
漆黒に染まった神機はアラガミの腕に振り下ろされる。
その一撃を見たソーマは目を見開いた。
「アイツ…まさか!!?」
ライが振り下ろした一撃はアラガミの腕を斬り落とした。
だが以前とは違い斬り落とされた腕は“焼き燃えた”
黒炎の太刀の追撃は続く。
次は胴体を焼き斬ろうと太刀を振り抜く。
だが胴体は大きく斬り落とすまでには至らない。
「ーーーーーー!!!!」
激痛をたえ声にならない絶叫を耐えるライ。だが片膝をついてしばらくは動けそうにない。
「リーダー!!」
「大丈夫!!?」
アリサとサクヤがライの救援にくる。ソーマも躊躇したが合流する。
「大丈夫。少し身体が痛んだだけだから…」
「痛んだってその手……」
サクヤに言われ自身の手を見るライ。
「すごい火傷だね。痛みが引かないわけだ。」
「そんな呑気に言わないでください!!自分のことですよ!!」
「とにかくリーダーは休んで。戦うにしても遠方からの攻撃のみ。」
「……でもそれだと…」
「おーい!!」
不意に遠くからコウタの声が聞こえ声の方を向く。
声の先にはコウタを筆頭にタツミやブレンダンといった防衛班の姿があった。
「デカイな。しかも新種。……稼げそうだ。」
「おい!!カレル!!コイツは俺の獲物だ!!」
アラガミを前にアサルトライフルの神機使いであるカレルと長刀の神機使いであるシュンがいがみ合う。とはいえ正確にはシュンが絡んでカレルがあしらってるだけなのだが。
「フフ…やりがいがあるわね。」
「あんなに大きかったら誤射も少なくてすみそうです!!」
スナイパーライフルの神機使いであるジーナとブラスト使いのカノンもアラガミに銃口を向ける。既に臨戦態勢に入っているようだ。
「あんた達は少し休め。アイツは俺たちに任せればいいからさ。」
「ああ、4人でこのデカブツをよく抑えてくれた。あとは防衛班に任せてくれ。」
タツミとブレンダンがライ達に近づいてそう告げる。
「奴は近づきすぎると放電してくる。あとレーザーも撃ってくるから気をつけて。」
「おう!!防衛班の力をみせてやる!!」
「アンタも手がボロボロじゃないか。無理はするなよ。」
ライに一言言ってから戦線に加わるタツミとブレンダン。
ここにアナグラの主要戦力が揃った。文字通り総力戦が始まる。