神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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戦闘開始

「う…ぐ…グアアアアアァァァアアア!!!!!」

 

偏食因子による拒絶反応によるものかオオグルマは踠き苦しむ。

 

血管は浮き上がり、脂汗も止まらない。眼球も徐々に紅く染まっていく。

 

「変貌する前に終わらせる。」

 

アラガミと化する前に神機でトドメを刺そうと動き出すライ。

 

ノヴァの偏食因子を取り込んだ以上、仮にアラガミ化すれば苦戦は必須。だが変貌前ならまだ“人として”処理できると考えたライは神機を捕食形態にしてオオグルマを喰らわせる。

 

勢いよく飛んでいく神機の顎。

 

しかしオオグルマを喰らう寸前、一歩先にオオグルマは膨張し、その身体を人から異形のアラガミに形を変えた。

 

見た目はヨハネスが乗ったアルダノーヴァの男型に似ていたが女型の存在はない。しかし大きさはアルダノーヴァよりも大きい。

 

当然だが狭い部屋に膨張する巨体は入れない。そこが地下ならば自然と上が盛り返される。

 

「アナグラに地震が起きてそうだな。」

 

そんな呑気なことを言っているライだが少しばかり焦っていた。このままここに残れば生き埋めになりかねない。

 

そう判断したライは急ぎ地上へと離脱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃アナグラはライの予想通り、大きな揺れが起きていた。

 

極東地域は地震が多いことで有名な地のため、地震はアラガミが蔓延っていた現在も時折起きていた。

 

故に極東支部に長く在籍している者や極東出身の者にとってはいずれは起きるものとして達観している。

 

「な…なんですか今の揺れ…!!?」

 

「そっか。アリサは初めての経験よね?地震。」

 

「じ…地震?」

 

サクヤの部屋で談笑していたサクヤとアリサだったがいきなりの地震でアリサはサクヤにしがみついていた。

 

「この地域ではたまにあるのよ。アラガミとは別の自然現象だから慣れるしかないわ。」

 

「でも震源地が近かったのかしら。すごく揺れたわね。」

 

「うう…地震怖い…」

 

アリサがロシア支部から極東支部に編入してまだ数ヶ月程度。初めての地震は刺激が強かったようだ。

 

だが突如としてアナグラに緊急放送が流れた。

 

『外部居住区にアナグラ出現!!!外部居住区に新型アラガミ出現!!!』

 

「居住区にアラガミ!!?」

 

「急ぎましょう!!!」

 

地震の怯えはどこへやらアリサは一足先に出入り口にいた。

 

しかし、緊急放送はまだ終わってなかった。

 

『なお、新型アラガミは極東支部第1部隊隊長と交戦中!!ゴットイーターは至急援軍に向かえ!!!」

 

途中からツバキの放送にかわり、指示が出された。

 

「え?」

 

「リーダーが?」

 

何故ライが既に戦闘を行なっていることに驚くアリサとサクヤ。しかし立ち止まってる時間はない。ライの強さを理解しているとはいえ、相手は得体の知れない新型。最悪の場合“前リーダー”のようなことが起きるかもしれない。

 

「行きましょう!!」

 

「はい!!」

 

アリサとサクヤは勢いよく、飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「集落から離れてるのは不幸中の幸いだな。」

 

目の前に降り下ろされる巨腕の一振りをかわしすかさずブラスト弾を放つライ。

 

しかしたいしたダメージは与えられてないようで次は目の当たりからレーザーを放ってくる。

 

「サリエル種のレーザーか。まぁ一直線なのが有り難い。」

 

サリエルのレーザーは曲がったりするが目前のアラガミの放つレーザーはサリエルのレーザーより火力はあるが一直線にしか放てない。それが分かっただけで攻撃による威力の衝撃があれどダメージには至らない。

 

「そして近づきすぎると…」

 

接近し胴体に斬りこもうとするライ。だが目前になってシールドを展開する。

 

展開が終わると同時にアラガミは放電した。

 

「ヴァジュラとハガンコンゴウの放電。まるで近づくなと言いたげだな。」

 

不適な笑みを浮かべるライ。別に余裕があるわけではないが自分の想像通りにことが動いてることに自然に笑みが零れたのだ。

 

オオグルマは優秀な医師だろうが戦う存在ではない。

 

戦えない人間を前線に出したところで平常心では戦えるはずがない。

 

故にオオグルマだったアラガミはがむしゃらに暴れているに過ぎないようにライには見えた。

 

「いくらノヴァの劣化品とはいえ乗り手が素人なら宝の持ち腐れだ。……前支部長のアルダノーヴァ戦の時も思ったけど…」

 

 

とはいえ相手は腐ってもノヴァ。ダメージは与えられてはいるとはいえあらゆるアラガミの偏食因子を得ているためか異なるアラガミの攻撃を次々としてくる。

 

「リーダー!!」

 

「これは…!?」

 

「どうなっていやがる!!?」

 

「あ、アリサ達も来たんだ。」

 

次の一手を考えていると後方からアリサ、サクヤ、ソーマの3人が合流した。

 

「あれって前支部長が乗ってたアラガミよね?」

 

「ええ。ノヴァの偏食因子を取り込んだオオグルマダイゴの成れの果てです。」

 

「あれが…オオグルマ先生…?」

 

「おい!!なんでソイツがノヴァの偏食因子を持ってたんだ!?」

 

「前支部長に隠れて秘密裏に摂取したようだ。だけど機動力はないがいろんなアラガミの攻撃をしてくるから気をつけろ。」

 

3人の問いに淡々と答えるライ。しかしその表情は険しい。

 

「とにかくアレを倒すことに専念しましょう。コウタも防衛班と一緒に居住区民をアナグラに避難させたら防衛班の皆と一緒に合流するそうよ。」

 

「とにかく早く倒しましょう。今ならまだオオグルマ先生も救えるはずです。」

 

「……救えたらいいけどね。」

 

アリサにとってオオグルマは操られていたとはいえ辛いときも一緒にいてくれた信頼してた医師だ。故に助けたいと思うのは自然だろう。

 

だがライはその願いは恐らく叶わないと思っている。

 

とにかくオオグルマだったアラガミを倒すのは必須条件。オオグルマを救えるかはその後だろう。

 

 


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