「状態はどうだ?」
「……レベル3といったところでしょうか。ですが依存性はかなりのものかと…」
「そうか…」
ベットに横たわる男を見ながらツバキは医療班の人間と話し込んでいた。
「公安が現場に潜入した時にはまだ打つ前だったんだがな。我々の想定以上に根が深いな。」
「ですが禁止薬物である“リフレイン”を大量に所持できるものでしょうか?」
「このような世界だ。完成されたリフレインは数少ないだろう。恐らくリフレインの構成物質を調べて自らの手で製造したものだろう。」
「そんなことができますかね?」
「できるから今こんな状態になっている。」
「ともかくこの男が目覚めて落ち着いていたら呼んでくれ尋問を行う。」
「了解。」
医務室を出るツバキ。相手には見せないがその表情に疲労の色が色濃く出ていた。
「リフレインの件。恐らく医療関係者と見るべきだろうな。…それに。」
公安からの報告書には居住区の住人の“声”もあった。正確に言えば噂であるが…
「アーク計画を阻止したのは第1部隊という噂が“悪い”方向に広がっている…か。」
しかし第1部隊全員が悪く言われているのではないらしい。
「第1部隊隊長が特に悪く言われてるな。まぁ隊長格が責任を負うのは正しいことだが…」
事実であるがゆえに否定はできない。だが彼等は結論しか知らずそこに至った過程は知る由もない。ゆえに噂に躍らされる。
仕方ない。だが不本意に彼等が傷つくのは許せない。
「悪いことが起きなければいいが…」
仮にも自分の教え子で弟のリンドウの部下だった者が理不尽に傷つけられるのは気に入らない。
その頃ライは支部長室にいた。
「厄介なことが起きているようだね。」
「…みたいですね。」
ツバキの不安は的中していた。
ここ最近、外部居住区の住人がライの噂を信じて極東支部に凸して来ている。
「今は抑えられてるが長続きはしないだろうね。突破されるのも時間の問題だと考えた方がいい。」
「どうしますか?僕が出てもいいですが?」
「それはやめといた方がいい。君が出たらさらに暴徒が増えかねない。」
「やっぱりそうなりますか。」
「うん。確実に。人の愚かな部分がすべて君一身に集まっている以上その君が出れば暴動が起きる。」
サカキははっきりと断言した。そして遠回しにこう言っている。
“君もただではすまない”…と
「とにかく君が表に出ることはない。こちらでなんとかする。君はこれまで通りにゴットイーターの職分を果たしてくれ。」
「………了解です。」
……ライはそう答えるしかできなかった。