適合試験の準備があるとかの諸事情によりライが試験を受けるのは翌日となった。
そしてその適合試験の当日。
ライは広い部屋の中にいた。
広い部屋のちょうど真ん中には剣のようなものがあり、さらにその頭上には何やら焼印を入れるような機械があった。
「これよりゴッドイーター適合試験を行う。準備ができたなら中心に向かうといい。」
放送ながらヨハネスの声が響く。部屋の奥にはガラス張りになっていてその奥にヨハネスの他に数人の人が見受けられた。
「……ふぅ…」
一呼吸置き、中心に足を運ぶライ。
そして安置されている剣…神機に手を伸ばした。
直後、
突如神機に手を伸ばした腕を固定され、上にあった機械が腕に落ちてきた。
「っ………!!!!!!!」
激痛が全身に走る。それだけじゃない。体内に入れられた偏食因子が暴れているのかライは声にならない程の叫びをあげる。
しかし痛みは徐々に薄れていき、上の機械が外れる頃には痛みは感じることはなかった。
ライの腕には赤い腕輪がついていた。これがゴッドイーターの証になり、二度と外れることもできない代物である。
「おめでとう。適合試験は成功だ。改めて歓迎しよう。君は極東支部初の"新型"神機使いとなった。」
ヨハネスの賛辞の声を聞きながらライは自身の手にある神機を持つ。これがライの神機であり、これから共に戦う相棒である。
「この後は榊博士の検査を受けるように。また気分が悪いなどの体調不良を感じるならすぐに伝えるように。」
ヨハネスからこのあとのことを聞きライは部屋を後にした。
試験を終えて、一度エントランスに戻ってきたライ。
そこには黄色の服を着た赤い髪のライより1つか2つ下くらいの少年がいた。
「あ、もしかしてアンタも新しいゴッドイーターの人?」
「あ、ああ。そうだよ。」
「うーん。見た感じ俺より年上っぽいけど数分の差で俺の方が先輩ということで。っても同期には変わらないけどな。」
「俺は『藤木コウタ』。アンタは?」
「皇(スメラギ)ライだ。」
記憶を失っているライの体は当然自身の苗字も忘れている。
しかし流石に苗字がないのは変なので昨日のうちに適当に決めたのだ。
「へぇ。珍しい苗字だな。よろしくな。ライ。俺のこともコウタって呼んでくれ。」
「ああ。よろしくコウタ。」
共に自己紹介をして拳をぶつけ合う2人。その2人に近寄る女性が1人。
「藤木コウタと皇ライだな。私は『雨宮ツバキ』お前達が実践で使えるようにするまでの間、面倒を見る。いわば教官だ。私の言葉には全て、はいかイエスで答えろ。反論は許さんいいな?」
「は…はい!!!」
ツバキの威厳に怖気付いたのか敬礼までして返事をするコウタ。それを見て苦笑いを浮かべながらもライも頷く。
「では榊博士のカウンセリングだが皇ライ。お前からだ。1200(ヒトフタマルマル)までに榊博士の研究室に行くように。」
「了解です。」
「それまではアナグラないを回るといい。迷子になりたくなければな。」
言うだけ言ってツバキは去って行く。その後ろ姿を見送ると脱力したかのようにエントランスのソファーに座り込んだ。
「こえー。あんな威厳がある人初めてあったわ。」
「大丈夫か?」
「ああ。でもお前もスゲーな。あの教官で平静保ててさ。」
「そうか?」
「ああ。俺からは堂々としてるように見えたぜ。」
「それはツバキ教官も僕らの為を思って言ってることだからね。僕達がゴッドイーターとして長く活躍できる為には今のうちに厳しく鍛える必要があるんだよ。」
「ふーん。俺たちのために厳しくか…」
「さて、僕は時間にはまだ早いけど研究室に行くよ。」
「ああ。じゃあな。」
榊博士の研究室に入るとそこにはヨハネスとペイラーの2人がいた。
「約束の時間よりまだ早いね。感心感心。だけどすまない。まだ準備ができてないんだ。ヨハン。君の用事から済ませたらどうだい?」
「はぁ…博士。公私の区別をつけてもらいたい。さて改めておめでとう。そしてようこそフェンリル極東支部へ。まあ昨日も言ったことだし割愛しよう。」
「これから君がゴッドイーターとして為すべきことを説明する。それは全て『エイジス計画』に起因する。」
「エイジス計画?」
「エイジス計画とは旧日本海近郊に建設中の人工島でね。そのエイジス島の外部装甲をアラガミ装甲壁とすることでアラガミの脅威から人類を護る計画だ。君達ゴッドイーターはアラガミと対峙そ捕食することでそのアラガミの素材を得ている。」
「要するにそのエイジスという人工島に人類を避難させてアラガミの脅威から逃れるということですか?」
「その通りだ。君は賢いね。」
ヨハネスの言いたいことを簡単に要約してみせたライにヨハネスはそう賞賛する。
「エイジス計画成功のために君の力を貸して欲しい。以上だ。」
「話は終わったかい?こっちも準備ができたよ。」
このあとペイラーによる検査でライは眠らされた。ライが目覚めるのは3時間後のことである。