神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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また明日

崩れ落ちるように地に伏すアルダノーヴァ。

 

「バカな…この私が…このような愚か者共に…」

 

「フッフフ…だがアーク計画は…終末捕食は止まらない。貴様等には負けたがこの勝負は私の勝ちだ。」

 

息も絶え絶えながら勝利を確信するヨハネス。

 

それと同時にエイジスが大きく揺れた。

 

「地震!?」

 

「いや…これは…」

 

「終末捕食が始まるのか…」

 

終末捕食は世界規模の浄化システムのようなもの。それならばこの揺れも終末捕食と関連あるものと言えるだろう。

 

「まだよ!!まだ何かできることがあるはずよ…」

 

「いや、この私も断言しよう。無理です。終末捕食はもう止めることはできない。」

 

サクヤの言葉を両断したのは戦いの中身を潜めていたサカキだった。

 

「その通り…もう不可能だ。唯一君たちにできるのは…残った宇宙船で宇宙に行くことだろう。…今ならまだ間に合う。」

 

 

「支部長。貴方は矛盾している。」

 

「…なに?」

 

「貴方は僕達を敵とみなしながら何故か僕達を生かそうとする。元々方舟の船員に選ばれていたとはいえ、貴方と計画に反抗したにも関わらずに。」

 

「それに特に僕には執着してるようにもみえた。いくら極東初の新型ゴットイーターといってもアナグラ外から来た得体の知れない人間に博識な貴方が執着するのは何か理由があるのでは?」

 

「いずれにせよ貴方は助からない。それなら死ぬ前に答えてくれませんか?」

 

「フッ…単純なことだ。君が優秀だったからさ。」

 

「だが君は他の優秀な者達と比較しても群を抜いて優秀な存在だった。私とペイラーにはまだ及ばないもののその若さなら必ず私達を超える。」

 

「そして終末捕食の先に広がる新世界には君のような若い世代が必要だ。生き残った人類を率いる先導者として。」

 

「……なるほど、勝手に後継者認定してたのか。」

 

何故かヨハネスから高評価されていた理由を知り、嘆息するライ。

 

「随分と買いかぶられていたみたいですね。そんな大層な人間じゃないですよ。」

 

 

「ちんたら話してる前にこの揺れをどうにかすることに頭を使いやがれ!!」

 

「あ、ごめん。忘れてた。」

 

ソーマの指摘にそう返すライ。

 

現在進行形で激しくなる終末捕食の揺れ。できることは既にないとサカキが断言した。

 

唯一の方法はヨハネスの言う通り方舟に搭乗し脱出するくらいだろうか。

 

全員が諦めの境地に達したその時、

 

ふとノヴァに点っていた金色の斑点がエメラルドのような色に変わった。

 

揺れは収まり、同時に“聞こえるはずのない声”が聞こえた。

 

「ありがとう、みんなありがとう」

 

「シオ?」

 

「まさかノヴァと一体化しても人としての意識が残っているなんて…」

 

コウタとサカキが別々に驚きの声をあげる。

 

「シオにまかせて、シオならみんなをたすけられるから。」

 

「おそらにある、しろいのがなんかおもちのようでおいしそうだからそっちにいったらみんなたすけられるよね」

 

シオの言葉通り徐々にだがノヴァは上昇している。

 

「まさかノヴァごと自身を月に持っていくつもりか?」

 

「そんなのダメだ!!」

 

「シオちゃんやめて!!」

 

サカキがシオがやろうとしている人類救済策を導きだす。それを知りコウタとアリサは悲痛の叫びを上げる。

 

だがノヴァ(シオ)が月に行けば終末捕食は地球上ではなく月で行われ、結果的に地球は救われる。

 

ただし、シオという少女(アラガミ)を犠牲にして。

 

本来、人類にとってアラガミは怨敵であり、天敵だ。

 

普通の人類やゴットイーターならシオがしようとしていることを止めることはしない。

 

だが第1部隊はシオというアラガミと深く心を通わせてしまった。

 

それは友愛や家族愛のようなものかもしれない。

 

「でも…やらなきゃ。」

 

「ク…」

 

「シオちゃん。」

 

万策は尽きた。人類がどうにかできる事態ではない。

 

「もうじかんがない。そのまえにおねがいがある。」

 

「そこのおわかれしたがらないあたしを…」

 

「……たべて」

 

「ソーマ。おいしくなかったらごめんね。」

 

シオからの最後となるお願い。

 

それはノヴァが月に旅立つトリガーを引くこと。

 

その役割をシオが託したのは…

 

「チッ…勝手なこと決めやがって…」

 

ソーマだった。

 

最も人に近いアラガミと最もアラガミに近い人間。

 

似て非なる存在のこの2人。

 

故に他の物とは別の絆で繋がった2人とも言える。

 

「できるか?」

 

「あ?」

 

「できないなら…僕がやる。」

 

そういうのはライだった。

 

「これでもリーダーだ。ソーマができないなら部隊長として僕がシオを処理する。」

 

「それにシオ。前に教えただろ?」

 

「お別れが寂しいなら約束しようとね。だから約束だ。また“明日”必ず明日(未来)に会いに行く。どんなに時間がかかっても必ず明日君に会いに行く。皆と一緒に絶対にだ。」

 

「…うん。まってる。ずっと、いつまでもあっちで待ってるね。」

 

ライがシオと約束を交わしたあと、ソーマはシオを捕食した。

 

トリガーは引かれ、ノヴァはエイジスを壊し天へと向かっていく。天にある白く輝く餅へと向かって。

 

同時に地上には白いオラクル細胞が降り注ぐ。それはまるで雪を彷彿させた。

 

ライは掌にその雪が落ちる。同時に“声”が聞こえた。

 

“おにいちゃんをよろしくね”

 

それはシオの声だった。そしてライが首を傾げるメッセージだった。

 

ともあれ地上の滅亡は免れアーク計画は阻止された。

 

アラガミの少女が月に飛び立ったことで…

 

しかし地上は今までと何も変わらない。

 

人類がアラガミに怯える日々が続く。

 

ゴットイーターがアラガミと生死を賭けた戦いに身を投じる日々が続く。

 

果たしてこの結末は本当に正しかったのか。

 

それはこの結末を決定づけたこの場にいる者達が証明していかなければならない。正しかったと証明しなければならない。

 

ある意味では愚かな道を選んでしまったのかも知れない。

 

だが過去は変えられない。今を生きる以上明日(未来)に向かって進むしかないのだから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




約3ヶ月ぶりの投稿。

言い訳としましては夏バテによる執筆意欲の低下及びリアルでのゴタゴタなどいろいろとありまして。

無院最終話だからとか綿密に描きたいとか一切ありません。

ほんとうに申し訳ない。

しかし12月にゴットイーター3が出ますが…

聖域が広がってる様子もないみたいですね。

本部が滅びたけど極東支部とかはどうなんだろう?

とまぁ多少楽しみだけどPS4なんだよなー持ってないなー

買うしかないか。

ゴタゴタのせいであんまり金使いたくないんだけど…

まぁ今後も気まぐれに執筆していく…と思うので気長にお待ちください。

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