「サクヤさんとコウタ、ソーマはデカブツを!!アリサは僕と女型をやるよ!!」
即座に指示を出しアルダノーヴァに挑むライ達第1部隊。
ライの指示を聞きサクヤとコウタは各自射線を確保するため移動し、ライとソーマは各標的に走る。
アリサはライ達の援護できる距離を保ちながら意識は女型に向ける。
「指示が早い。しかも的確。だがマニュアル通りだな。」
「戦ったこともねぇくせに知ったような口をほざくんじゃねぇ!!」
アルダノーヴァか発せられるヨハネスの声。しかしソーマはそう叫びながら神機を振りおろす。
「無駄だ。」
だが振り下ろされた神機の刀身は手ごたえを感じることなくアルダノーヴァから弾かれた。
「なに!?」
「言ったはずだ。アルダノーヴァはノヴァの成育の副産物でできたアラガミ。故に最もノヴァに近いアラガミである。」
「それって…」
ノヴァはあらゆるアラガミの偏食因子の集合体。アラガミ装甲壁もノヴァと似た原理であらゆるアラガミの偏食因子を混ぜてアラガミに捕食意欲を無くさせて身を守るもの。
要するにアルダノーヴァは強固の防御力を要している。
「君たちの攻撃は通じない。よって私が負けることはない。」
「決めつけはよくないですよ。」
堂々と自身の勝利を確信するヨハネスにライはそう言う。
現に女型の方は切り傷があちこちに見られる。
「ダメージが少ないなら攻撃の手数を増やせばいいだけだ。」
「なるほど。しかし攻撃を連続するなら相応のスタミナを消費する。遠距離神機も弾切れを起こせばその間戦力が下がるが?」
「試してみますか?」
「……いいだろう。君は優秀だがいささか生意気のようだ。私が君の性根を正そう。」
「それはこちらのセリフだ。」
いくら高い防御力を持っていても攻撃が通じていないわけではない。要は多少の時間はかかるが倒せない敵ではないとも言える。
とはいえ消耗が激しいのは第1部隊の方だろう。
戦いは続き、第1部隊に疲労の色が濃くなる。
アルダノーヴァのオラクルによる遠距離攻撃を避けるため走り回り、また体当たりを避けるために走り回り、巨神の叩きつけるような攻撃に衝撃から免れるために走り回る。
とわいえヨハネスの駆るアルダノーヴァも無傷とはいかず激しく損傷していた。
アルダノーヴァの弱点は大振りで攻撃をしてると背後が無防備になること。
そこを突かれた時に銃弾、時に捕食で少ないダメージと言えど蓄積すれば大きなダメージに繋がる。
「流石は極東支部最強。まさかここまで食い下がるとは。」
「だが君たちでは私には勝てん。」
「勝手なことを抜かすんじゃねぇ!!」
「ソーマ!!」
挑発にも聞こえる言葉にソーマは反発し再度攻め込む。
しかし、アクシデントが起こった。
「クッ…」
「ソーマ!?」
「スタミナ切れか。息子よ。お前は直情的過ぎる。それに反応も遅い。だから大事な時に愚かなミスをする。……エリックが喰われた時みたいにな。」
足下から崩れるように膝をつくソーマにそう言いすてるヨハネス。
「黙れ!!」
「虚勢をはるな。それに事実だ。お前は自身の能力を生かせず何人ものゴットイーターがアラガミにやられたと思っている?」
「っ……」
ソーマが死神という悪名を得た所以。それはソーマと組んだゴットイーターが次々とアラガミに殺されたのが所以であり一部の者はリンドウも死神の被害者とみるものも少なくない。
「お前が自身の能力を活かせたら多くのゴットイーターが死ぬことはなかった。」
「黙りやがれ!!」
激昂したソーマは飛び上がり神機を振り下ろす。
だが女型がソーマに立ち塞がる。
「っ……!!」
何故かソーマはそこで怯み、結局そのまま地に着地した。
「その躊躇だ。それがお前の弱さだ。その弱さが多くのゴットイーターを死に追いやった。」
「なにがお前を躊躇させるのか。やはりこのアラガミか?」
「大切なものを失えば人は変わる。私もそうだった。」
「ならば私がその弱さを断とう。」
そう言い横たわるシオに拳を振り下ろすアルダノーヴァ。
「シオ!!」
ソーマが叫ぶも拳は止まらず、シオに振り下ろされた。
……筈だった。
振り下ろした先にはシオの姿はなかった。
「……なんだと?」
「これ以上、“妹”を虐めるのはやめてもらおうか?」
不意にアルダノーヴァの背後から声がかかる。
そこにはシオを抱えたライの姿。
「さっきから聞いてたらくだらないことほざきやがって。」
シオを安全なところに下ろしてアルダノーヴァを睨みつけるライ。その眼は金色に染まっていた。
「なるほど。報告にあったリーダー君の中に巣食う特異点の亜種か。」
「時間がないようだしさっさと終わらせる。」
「自意識過剰だな。」
「お前には言われたくない。」
売り言葉に買い言葉のように神機を構えるライ。
そして尋常じゃない速さでアルダノーヴァに斬りかかった。