神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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信念とエゴ

ソーマから連絡を受けたライは至急ソーマとサカキと合流した。

 

「まさかここまで強引な手を使って来るとはね。」

 

「クソっ…!!」

 

「ソーマ。落ち着いて。シオが支部長にバレるのはある意味では時間の問題だったろうし…」

 

いくらサカキの研究室がアナグラでも独立していても場所は敵の居城内にある。見つかるのも時間の問題だっただろう。

 

「しかしアナグラ全体を混乱に陥れてまで強引な手段でシオを連れ去るとは…さすがに私の想像を超えてきたよ。」

 

サカキの言う通り、アナグラ内はアラガミの侵入を告げる放送が流れている。

 

「とにかくシオを取り戻すぞ!!」

 

「うん。エイジスにいるだろうからエイジスの侵入経路を探そう。」

 

「すまないが頼んだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

アリサとサクヤはアナグラ周辺に戻って来ていた。

 

「何か騒がしいですね。」

 

「そうね。それになんだか人も少ないようにみえるわ。おかげでここまで誰にも見つかることなく戻ってこられたけど。」

 

「エイジスの潜入はできませんでしたからね。」

 

ライ達に通信した後もエイジスへの再潜入を試みたサクヤ達だが侵入経路を見つけることができなかった。そして一度アナグラに戻ってきたのだ。

 

「きっとアナグラ内にエイジスに通じる道があるはずよ。」

 

「そうですね。」

 

これは運命か。

 

この事態に第1部隊が集まりつつあるのは。

 

しかも目的に差異があれどライとソーマ、アリサとサクヤが共通の目的(エイジス潜入)に行き着くとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだ。みつからねぇ。」

 

「支部長室から繋がっていると思って隈なく探したけどこちらも収穫はなかった。」

 

一方でライとソーマは別れてエイジス潜入の糸口を探っていたがこちらも収穫はなかった。

 

「クソっ!!このままじゃシオが…!!」

 

「シオがどうかしたの?」

 

ソーマが悪態をつくとそれに反応する声が。

 

「アリサ、サクヤさん。」

 

「何があったの?警報がなっているしかなり騒然としてるけど。」

 

「シオが支部長に連れていかれたんです。どうやらシオがアーク計画に必要だったみたいで。」

 

「え?それって…」

 

「そういうことだ。」

 

ソーマの一言でアリサ達は理解した。

 

アーク計画の準備が整ったということを。

 

「…多分あの通路ならエイジスに侵入できると思う。」

 

「コウタ。」

 

そういうのはアーク計画の全容を聞いてからしばらく休暇をとっていたコウタだった。

 

「貴方…アーク計画に賛同したんじゃ…」

 

「………」

 

「ううん。戻ってきてくれてありがとう。」

 

「時間が惜しい。案内してくれ。」

 

「うん。こっちだよ!」

 

ライに促されコウタがエイジスへの潜入経路に案内するくらい。

 

ともかく第1部隊が久方ぶりに集結した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロックがかかってる。前は入れたのに。」

 

「コウタ。貴方なんでここがエイジスに繋がってるってわかったんです?」

 

「前にサカキ博士の授業でエイジスついて聞いた時にエイジス内の移住区がどんなのか気になってさ。その道を探していた時に見つけたんだ。」

 

「貴方…授業中ずっと寝てませんでしたか?」

 

「アリサ。今はそれどころじゃないでしょ。」

 

「コウタ。ロックは解除できそう?」

 

「無理だよ。そもそもこういうのはリーダーの方が得意そうだろ?」

 

コウタに連れてこられた場所に来たのはいいもののロックがかかっているようだ。

 

「いっそ飛び込むか?」

 

「下手すれば死ぬわよ。」

 

「なんだお前たち。まだ残っていたのか。」

 

「ツバキ教官。」

 

立ち往生になっていた第1部隊にツバキが声を掛ける。

 

「今まで姿が見えませんでしたが。」

 

「少し本部にな。それでさっき戻ってきたのだが離れているうちに自体がかなり動いたようだな。」

 

「そのロックは私なら解除できる。だがいいのか?」

 

そう言うツバキはまるで試すように問う。

 

「アーク計画は別段悪い計画ではない。多大な犠牲を払うことにはなるがそれでも救われる命はある。終末捕食によってアラガミが絶滅できる可能性もあるしな。」

 

「だがお前たちがアーク計画を阻止すればそれがどういうことかはわかるな。」

 

試すように問うツバキ。

 

アーク計画によって千の人類は救える。千の人類が新たな新天地で生きることができる。

 

だが万の人類はアラガミとともに死滅する。

 

しかし全ての人類を救うことはできない。神の所業でなければ

 

アーク計画にしても用意した宇宙船に乗り込めるのは千人が限界だったからに過ぎない。または宇宙船の燃料に限界があるからだ。

 

「別に難しいことではないですよ。」

 

「リーダー?」

 

「ほう。」

 

ツバキの問いに答えたのはライだった。

 

「支部長はアーク計画が正しいから行動したに過ぎません。僕たちは僕たちが正しいと思うことに行動する。それだけのことです。たとえそれがエゴだとしても。」

 

「だがアーク計画を阻止すれば…」

 

「行動に責任が伴うのは当然ですよ。」

 

「リーダー…」

 

「そうね。」

 

「そうか。」

 

難なく答えるライにツバキは笑みを見せる。

 

「行ってこい。お前たちの信じる信念を貫いてこい。たとえそれがエゴだとしても貫き通せばそれも立派な信念だ。」

 

「はい!!」

 

ツバキの激励を受けロックを解除されたエレベーターに乗り込む第1部隊。

 

正義と悪は信念の違いとも言える。

 

自身の信念が正しいと思う限りそれは正義だろう。

 

対して相容れない信念も前にすればそれは悪だ。

 

正義と悪は表裏一体。そして人類は相対する信念を受け入れられる程利口ではなく完成された存在ではない。

 

しかしライとヨハネスは例外だろう。

 

アーク計画の問題点を突きつけたライはアーク計画を全て否定したわけではない。それでも阻止することで動いた。

 

対するヨハネスはそれでもアーク計画を強行した。

 

似た者同士で似て非なる2人。

 

この2人の信念(意地)の張り合いが始まる。




少し投稿が遅くなりました。

思ったのですが仮に終末捕食が起きた地球上でアラガミが生き残っていたら結局ゴットイーターのすることが変わらないですよね。

むしろ数千万もいた人類が千人になるから最悪の事態でしょう。

仮に終末捕食でアラガミが滅んでもまた生まれる可能性もあるだろうし。

でもレイジバーストで聖域ができた以上終末捕食の危険性は遠ざかったと言えるんですよね。

人類が真にアラガミの脅威から解放されるにはやはり全世界を聖域化させるしかないのでしょうか?

でもそれだとゴットイーターも働けなくなるんだよなぁ。

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