「ったく!!どこにいるんだ!!」
苛立ちをぶつけるようにソーマは悪態をつく。
シオが姿を眩まして数日、未だシオを見つけられないでいた。
「落ち着け。苛立ってたらなにも見つけられないぞ。」
「チッ…!!」
ライがどうにか諭すがソーマは舌打ちをしてさらに奥地に歩き出す。
なぜソーマが苛立っているのかはライにはわからない。だが焦っているように写っていた。
「やっぱり可能性があるのは…」
ライはこれまでソーマとともに愚か者の空母や贖罪の街、煉獄の地下街や鎮魂の廃寺などまわってシオを探したが見つからなかった。
現状ライとソーマが探索できる箇所は全てまわった。残っている箇所はただ1つ。
「エイジス…か」
しかしエイジス島への潜入は厳禁となっている。故にライ達が潜入することはできない。
「仮にシオがエイジスにいるなら運が良ければサクヤさん達と会えるはず…」
サクヤ達がエイジス潜入を目指してからも数日たつ。時間的にはそろそろ報告がある頃合いだろう。
「歯がゆいな…」
現状ライにはどうすることもできない。周りは動いているのに。
それがなぜか不愉快にライは感じた。
同じ頃、サクヤは暗闇の中を歩いていた。
「ここが…エイジス?」
この数日の間、エイジス潜入の計画を練り、リンドウの“置き土産”を使ってどうにかエイジスの内部に潜入できたサクヤ。
だが潜入してみるとあたりは真っ暗でとても人類がこの“箱庭”の中で生きていけるようには思えなかった。
その時、突然照明が点いた。いきなりの光源の発生により咄嗟に目を覆うサクヤ。
同時に男の声が響く。
「まさか君が潜入するとは、リンドウくんはここに潜入する算段も立てていたようだな。」
「支部長!!」
ようやく光になれたのか声の方に目を向けるサクヤ。
そこにはサクヤを見下ろすように佇むヨハネスの姿があった。
「ここまで用意周到だったとはやはり彼も優秀な人種だったのだろう。屠ることになって実に残念だ。」
「やはり貴方が関与してたのね!!」
「まだ特異点が検知されていなかったからね。その状況下でアーク計画が公にされるわけにはいかなかった。故に実に残念だが消させてもらった。」
「そんな理由でよくもリンドウを…!!」
「案ずるな。君も今から彼の下へ召してあげよう。“彼等”には不慮の事故と伝えておくから安心してくれ。」
そう言いヨハネスは合図を送るように手を動かす。
…しかしなにも起きない。
「なに?」
「警護システムなら全て破壊しました。」
サクヤの背後から少女の声。
「アリサ!?」
「勝手に置いていって勝手に死なれたら困ります!!」
振り向けばそこにアリサの姿。
「ふむ。これは驚いた。君も潜入してたとは。」
「よし、ならば君達で“殺し合い”を演じてもらおう。」
たいした驚いた様子もなく淡々とそういうヨハネス。すると1つ人影が姿を現す。
「え?」
「久しぶりだねアリサ。あの時目を覚まさなければこんなことにならなかったのに本当に悪い娘だ。」
「オオグルマ…先生…」
人影の正体はオオグルマだった。行方不明のとなっていたはずのオオグルマがここにいるのはアリサも驚きを隠せない。
「アリサ。君は誰よりも強い。だからそこにいる”アラガミ“を倒そうね。」
「なに。私も協力してあげるよ。」
「なにを言って…」
「アジン」
アリサの言葉を遮るオオグルマ。同時にアリサの身体が硬直する。
「ドゥヴァ」
次の言葉でアラガミ(サクヤ)に神機を向ける。
オオグルマは口角を吊り上げ最後の単語を紡ぐ。
「トゥリー!!」
アリサはサクヤに神機の引き金を引いた。
放たれた”回復弾“はサクヤを癒す。
「なに!!?」
「残念だけどアリサの洗脳は解けているわ。」
「そういうことです。先生。」
アリサはそう言うとサクヤの隣に立つ。
「オオグルマ先生。貴方には感謝してます。ですが私は私の意思で強くなります。これからもサクヤさんやリーダー達と共に…」
「今までありがとうございました。さようなら。」
「まっ…待てアリサ!!こっちに戻ってこい!!」
慌てるオオグルマの声はアリサに届かず、スタングレネードを使ってアリサとサクヤは離脱した。
「面倒をかけてくれる。」
誰も居なくなったエイジスでヨハネスは悪態をつく。
「そんな…アリサ…」
「案ずるな。計画が遂行されればまた共に歩めよう。」
慰めるようにそう言うヨハネスだがオオグルマの耳には届いてない。
「アイツ…アイツのせいだ…」
「アイツさえいなければ…アイツ…アイツ…」
沸々と怒り…否、憎悪の炎を燃やすオオグルマ。
「殺す…殺してやる…」
一方的な感情で復讐者となったオオグルマ。
彼を止められるのはもう誰も居ない。
オオグルマとの戦いはすぐ書くべきかそれともアーク計画後か迷ってます。