神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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類似点

「リーダー…」

 

「よかった。目を覚ましたのね。」

 

アリサとサクヤが安堵の表情を見せる。アリサに関しては泣き顔にも見えるが。

 

2人が目を向ける先には銀髪の青年。たった1人でピターを倒したことには驚きだが前回のプリティヴィ・マータ戦でも真っ二つという離れ業をしたりといろいろと規格外の我等がリーダーなのでどんな理由でも納得できる。

 

「やれやれ。」

 

そんな視線を浴びせられてるとはつゆ知らず、ライは肩をすくめていた。

 

「呆気ない。仮にもヴァジュラの“帝王”というのに。まぁ逃亡ではなく悪あがきを選んだのは評価すべきか。相手が悪すぎたがな。」

 

「リーダー!!」

 

1人ブツブツと呟くライを呼ぶ声が。

 

振り向くとアリサ、コウタ、サクヤがライに駆け寄って来ていた。

 

だが…

 

「待て!!」

 

「え?ソーマ?」

 

それをソーマが神機で遮るようにしながら駆け寄った3人を制す。

 

「ソーマ?何を」

 

「テメェ…何者だ。」

 

サクヤの問いに答えることはせずソーマはライを睨みつけ問う。

 

「何者とは失礼だな。味方の顔を忘れたか?」

 

「いや忘れてねぇよ。だがテメェは違う。それははっきりと分かる。」

 

「そもそもアイツはペラペラ口が回る奴じゃねぇ。ましてや脇腹が血塗れの状態で普通に動き回れるのはありえない。」

 

確かにライの脇腹は止血はされているものの無理が祟ったのか紅く染まっていた。

 

「それはほら火事場の馬鹿力というか…」

 

「言い訳がましい!!テメェが本当に俺たちのリーダーならそんな言い訳はしない。」

 

「………」

 

論破されるライ。だがその表情はっきり焦っているどころか楽しんでいるような笑みを見せていた。

 

普段から喜怒哀楽の変化が乏しいライからすればありえない反応だった。

 

「っ…!!!まさかお前…」

 

「残念。」

 

ソーマが何かに気づいたのか何か問おうとするとそれをライが遮った。

 

「時間切れだ。」

 

「何を…」

 

ライは困った笑みを浮かべながらそう言うとまるで糸が切れた人形のように倒れかかった。

 

「おい!!」

 

「リーダー!!」

 

崩れるように倒れかかるライをソーマが抱き止める。

 

アリサ達もライに駆け寄るが…

 

「気を失ってるだけだ。」

 

「そう…」

 

「ソーマ。あのリーダーについて何か知ってるのか?」

 

「サカキのオッサンのところで話す。今はアナグラに戻るぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。なかなかに興味深い話だね。」

 

アナグラに帰投しライを医療班に預けるとサカキの研究室を訪れる第1部隊。

 

ちなみにシオは自分の部屋で眠っているためこの場に入っていない。

 

「まさかリーダーの中にシオのお兄さんがいるなんて…」

 

「君たちゴットイーターは偏食因子が投与された存在だから内にアラガミがいるのはなんら不思議なことではないよ。ただシオが兄と呼ぶアラガミがリーダー君の内にいると言うのがなんとも興味深い。」

 

「博士。偏食因子のアラガミが意思を持つというのはあり得るんですか?」

 

「そうだね。ないとは言えないというのが現状だ。現にリーダー君という例が出たからね。」

 

「でもリーダー君は潜在的感応能力が高い。もしかしたらその感応能力が彼の中のオラクル細胞になんらかの変化を生じさせたとすればあり得ない話でもないのかもしれないね。」

 

コウタの問いにサカキ博士はそう答える。あくまでも見識でしかないが。

 

「だけどある意味では新種のアラガミとも言えるかもしれない。“浸蝕”型のアラガミというね。」

 

「リーダーはこの先大丈夫なのでしょうか?」

 

「今のところは“お兄さん”も協力的だから大丈夫だろう。多分彼としてもリーダー君を失うのは避けたいことだろうからね。」

 

「とりあえずリーダー君にはこのことを伏せとこう。彼のことだから気づいてるかもしれないが。」

 

「君たちは今迄と変わらないように接してくれ。それが彼に為になる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1部隊を見送った後、サカキは1人考え込んでいた。

 

「シオが“特異点”であるのは紛れもない事実だ。故にヨハンより先に保護した。」

 

「だがシオの兄というのも“特異点”なのか?シオとは別にリーダー君の中で“終末捕食”の起動後の“生命の再分配”の情報を集めている?」

 

「だからリーダー君には死なれては困る…自身が特異点と完成する為に…」

 

『もしくは大替品。特異点が何かの拍子に消滅した際の同じ能力を持った類似品…いや、“類似点”とも呼ぶべきか…」

 

「ともあれ類似点の方は大丈夫だろう。いや…前に彼の健康結果を盗んだ輩がいた。その輩がこのことを知っていたとしたら…」

 

1人考察を述べるサカキ。

 

「まぁ今は類似点よりは特異点だ。完成してない類似点を“彼等”が欲するのは時期尚早だろう。」

 

そう結論づけるサカキ。そして…

 

「2つの特異点…か。世界は“彼等”に味方するのか…はたまた単なる偶然か。」

 

 

 

 




祝1周年!!

他の作品で行き詰まってなんとなく気分転換のつもりで投稿した今作。

いつのまにかメインに書くようになりましたが悲しいことに無印を終わらせられなかった…

なんというかやっぱり寄り道し過ぎなのでしょう。または道草食ってばかりともいう。

まぁあくまで作者の自己満足の作品ですのでと開き直ろうと思います。

もしかしたらこちらも行き詰まったりしたら気分転換と称してまた新作に取り組むこともあるかもしれませんが…

まぁ次描くのは短編集だと思いますので。流石に長編は辛いと見に染みてます。

もちろんライ君が主人公ですよ。

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