落ちる。
堕ちる
陥ちる
おちる
オチル
光も届かない暗闇。
ライは存在していた。
否、存在とは語弊だろう。
漆黒の空間で光がない以上、ライは五体が満足に存在してるのかも認識できないのだから。
ただそこには在る。それだけはなんとなく認識していた。
しかし空間(世界)でライは身体を動かすことも出来ず、現在、どんな状態なのかも分からない。
平衡感覚が失われてるため意識的には下降(沈下)しているが実際は上昇(浮上)しているのかもしれない。
もしくは右へ左へと移動してるかもしれない。そんな暗闇にライは囚われている。
身体を動かすことができない以上身を任せるしかないライは抵抗することなくその暗闇の奥底に呑み込まれていく。
暗闇は夜の役割を担うようにライの意識を闇に吞み込もうとする。
意識の方も抗う術を持たず刻々と削られていく。
薄れゆく意識の中…
不意に背中であろう辺りに暗闇から息吹のようなものを感じた。
息吹を感じるということはそこに何かがいる。
しかし暗闇に削り取られたライの意識はそれに気づく前に完全に消え去った。
身を任せるしかなくなったライはそのまま闇へと引き摺られる。
そして…
ライは為す術もなく、闇に“喰われた“
「ん?」
同時刻、廃ビルでライは意識を取り戻す。
「ふむ。ああ、そうだそうだ。”宿主“は仲間に刺されたんだった。」
「おかげさまで”俺“が表に出て来れたわけだがいずれ”奪う“にしても宿主には生きてもわねーと困る。」
なにやらブツブツというライ。しかしいつものライとはまるで違う。
「さてと、とりあえず宿主の仲間は救わんとね。試してみるか。」
そう呟くと精神統一するように瞑想するライ。そして…
「南方か。」
そう呟き移動を開始するライ。…しかし
「おっと…」
いきなりオウガテイルと出くわした。すぐに戦闘態勢に入るオウガテイルに対し、
「ちょうどいい。試したいことがあったんだ。」
不敵な笑みを浮かべるライは神機で自身の右手を傷つける。
鋭利なもので傷をつければ血が流れる。ライの右手も当然のように血が流れ出る。
「血は情報の宝庫。故に俺は情報を蓄え進化する。」
訳のわからないことを呟くライだが紅く染まる右手には変化が生じる。
血は硬質化し、結晶となった。また結晶はライの右手に装着するように右腕に覆い最終的には巨大な『鉤爪』となった。
「ふむ。宿主の“記憶“を元に創り出した『輻射波動』なるものだが記憶よりも不恰好だな。まぁ偏食因子(オラクル細胞)の混じった血で形成したものだし神機として成り立つ…はず。」
まぁ試せばいいか。と呟き、目前のオウガテイルに目を向ける。
『ちょっと実験に付き合ってくれ。」
ライがいた廃ビルの廊下。
その壁や床には血とアラガミであろう肉片が飛び散っていた。
その凄惨な光景はまるで”中から爆発“しなければ証明できない光景だった。
時は少し遡り…
「っ……」
アリサはピターに追い詰められていた。
ライのいる場所からいち早く離れるため、一目散に走り回ったアリサ。
しかしピターもこの追いかけっこを楽しんでいるのかアリサとの距離を一定に保って”狩り“を続けていた。
狩りで獲物を仕留めるには獲物を疲弊させるのは定石である。さらに恐怖を煽ることで正常な判断を奪う。
アリサにとってピターは天敵。
「……パパ…ママ…」
故にアリサは恐怖に呑まれようとしていた。
獲物を追いつめるアラガミと追い詰められたゴットイーター。
皮肉にも神を狩る者が神に狩られるという皮肉にも真逆の形となった。
一歩、また一歩と歩を進めるピター。
その一歩の度に恐怖型増大し動けなくなるアリサ。
「パパ…ママ…リーダー…」
この時アリサは後悔した。
もう少しうまく立ち回れなかったのかを。
サクヤ達と合流なんて浅はかな考えだったんじゃないかと。
だが、もう後の祭りだ。
起きたことは仕方ない。
そう思うと神機を持つ手に力が入るアリサ。
今アリサが考えてるのはこの状況の打破。
生き残るために頭をフル回転させるその時だった。
ピターが突然咆哮をあげる。
同時に少し態勢が崩れた。
「え?」
いきなりのことで唖然とするアリサ。そんなアリサに声をかける声が。
「なにボサってしてやがる。早くこっち来い。」
「ソーマ!!」
アリサに声を掛けたのはソーマだった。さらにその後ろにはサクヤとコウタの姿もある。
アリサがサクヤ達との合流に成功した春季だった。
合流を果たしたことでゴットイーター達の反抗が始まった。
単体攻撃力の高いソーマを筆頭に司令塔のサクヤ。遊撃のアリサと支援のコウタ。彼らのコンビネーションはピターを追い詰めていく。
此処にライが入ればさらに総合力が上がるが彼等は極東最強の第1部隊。1人欠けようと他とは比べようもない連携攻撃を駆使できる。
「もう少しよ!!手を抜かないで!!」
サクヤの檄が飛ぶ。この敵はリンドウの仇だ。前に進む為にも絶対に倒さねばならないアラガミだ。
しかしピターも黙ってやられるアラガミじゃない。他のヴァジュラよりも強力な電撃とトリッキーな動きで翻弄するなどで致命傷は避けていた。
「しぶとい!!」
「この!!」
アリサがピターの顔面を切り伏せる。
これがピターの怒りを買った。
「っ…なんだ!?」
いち早くピターの変化に気づいたソーマは他のメンバーに距離を空けるよう指示を出す。同時にピターにも変化が起きた。
背中にある翼のような羽は破れ、赤く鋭利な刃物とかした。
「なにあれ?」
「くるぞ!!」
コウタの問いがソーマにより掻き消され、同時にピターは先の状態よりも速く、迫ってきた。
「っ…速い!!?」
あまりの速さにサクヤは牽制出来ず勢いそのままに翼刃をソーマに振るう。
「クっ…!!!」
なんとか受け止めるソーマだが勢い殺せず少し態勢を崩す。
同時に、ピターは足元に赤雷を発生させ全体攻撃。
これによりソーマは後方へと弾き飛ばす。
「この!!!」
アリサも斬りかかるがそれを下がることで避けるピター。
仕返しに再び翼刃を振るうピター。しかしアリサも距離をとって下がるがピターは赤雷の球を放つ。
その赤雷をやむなくバックラーで防ぐアリサだが防御に不安がバックラーでは防ぎきれずアリサは吹き飛ばされる。
「アリサ!!」
「サクヤさん!!」
サクヤが叫ぶがピターがサクヤに向けて赤雷をはなつ。コウタが叫ぶも間に合わず…
「キャアアアアアアア!!」
「サクヤさん!!この!!」
コウタが銃でピターにダメージを与えるがコウタもサクヤ同様の手口で倒される。
「サクヤさん…コウタ…」
「クソッタレが…!!」
アリサとソーマは赤雷の影響か、体が痺れて動けない。
一方的な展開を覆すディアウス•ピター。
これがこのアラガミの全力。
今までは遊びくらいだったのだ。
そして全力のピターはアリサへと足を進める。
「あ…あ…」
再び訪れた危機的状況。
そして再び恐怖に呑まれそうになるアリサ。
その時…
「止まれ。」
不意に聞こえた声。
その声は第1部隊誰もが聞き覚えがある声だった。
ピターもその声に従っているのか立ち止まっている。
アリサは恐る恐る振り返る。
そこには”彼“がいた。
「り…リーダー…」
「よく保った。あとは任せろ。」
アリサにそう声を掛けるのは彼等の”リーダー“だった。
「弱いもの虐めは楽しいか?」
ピターに近づきながらピターに問う。
当然答えが返ってこない。相手はアラガミだから当然だが。
しかしライが近づくたび、ピターが後退する。
まるで蛇に睨まれた蛙の如くピターはライに恐れをなしていた。
「俺は好きだぞ?徹底的に潰すのもな。」
一歩また一歩。ライが近づく。その度に一歩また一歩と後退するピター。
「これはアドバイスだ。撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ。」
そう言うと神機を振り上げるライ。
「自分より弱いやつをいたぶったんだ。お前もされる覚悟もあるよな?小山の大将さん?」
話し続けるライ。対してピターは恐怖の限界に達したのか赤雷を放ち、直後に翼刃を振るう。
『その程度か。つまらん。」
しかしその頃にはいつのまにかピターの背中に乗っていた。
「これで終わりだ。」
そう呟き、神機の刀身を首の付け根を狙い振るう。
たった一振り。
それでピターの首は跳ね飛んだ。
音も立てずに崩れるピターの胴体。
その胴体に再び神機を刺しこむライ。
直後、ピターの胴体は中から膨張し、数秒もしないうちに…
爆発した。
爆発により血飛沫と肉片が飛来する。
その中に、
”腕輪“と赤い“神機”もあった。
かくしてピター討伐は終わりを迎えた。
感応現象は新型(第2世代)神機使いなら誰でも起こせるのでしょうか?
無印では主人公とアリサ、リンドウ救出であるバーストではアネットとフェデリコ。2ではブラットとエリナとエミールにハルさん。
これだけいるのに感応現象lを起こした人が少ない気がする。
やっぱ主人公は潜在的に感応能力が高いのでしょうかね?
とまぁなんとなくの疑問はここまでに。
新年度を迎えました。
本作品も気がつけばもうすぐ1周年です。
2ヶ月サボったとはいえ1年でまだ無印も終わってない…だと…
寄り道というか1つのテーマを引き延ばしすぎたのかな?
まぁなんやかんやでようやくピター戦も終わったことだしようやく終幕へと進んだと思いたい。
しかしながらゴットイーターに新しいスマホアプリが始まったのでそっちに重点を起きそうなので投稿が遅くなりかねません。
とりあえず課金はほどほどにします。既に2回してるけど…
まぁ今後もコツコツと寄り道しながら執筆投稿していくつもりなので気長にお待ちください。