「こちらサクヤ。ソーマ?聞こえる?」
ピターへの目眩しの隙に近くの廃ビル内に逃げ込んだサクヤ達。
閃光の正体はスタングレネードでそれを使ったのはサクヤだった。そしてその隙に重傷のライと放心状態のアリサを救出し、今に至る。
『こちらソーマ。リーダー達は無事か?』
「ええ。生きてはいるわ。重傷を負ってはいるけどね。」
そう説明するサクヤは視線を壁にもたれかかって気を失っているライに向ける。ここに来て止血をした後に糸が切れたように意識を失ったのだ。
「とにかく一度合流しましょう。悔しいけど撤退も考えないと。」
「了解だ。今何処にいる?」
「私が迎えに行くわ。とりあえず2チームに別れたところで合流しましょう。」
そう伝え通信を切るサクヤ。
「アリサ。」
「………」
すぐにアリサを呼ぶが当の本人は未だ放心状態のままだった。
しかしライの側を離れようとせず、ライの右手を握り、うわ言のように謝罪の言葉を繰り返している。
「アリサ!!」
「……サク…ヤ…さん。」
「私はソーマ達と合流するためにここを離れるわ。戻ってくるまでリーダーのことを任せるわね。」
サクヤがそう告げると今まで薄い反応だったアリサが大きく反応した。
「ま…待って…待ってください!!私じゃ…私じゃできません!!無力で愚かで…どうしようもない私には…私なんかじゃ何も守れません!!」
アリサの悲痛の叫び。
アリサは完全に折れていた。以前の自信喪失より遥かに深刻に。
アリサは過去のトラウマを乗り越えている。
ライやサクヤといった第1部隊が支えてくれたおかげでゴットイーターとして再び活躍できるまでに立ち直った。
寧ろ以前よりも強く成長していたことだろう。
今回のピター戦はリンドウの件と自身のトラウマと完全に決着つけるはずだった。
不安や恐怖で弱気になってもライに吐露することで不安が薄れ、精神的に余裕でいられた。
だがそれは今回、ライを神機で刺して重傷を負わせた瞬間に脆くも崩れ落ちた。
アリサにとってライは尊敬する存在であり目指す目標であり自身を導く道標でもあった。
その道標が突然音もなく崩れ去ったことでアリサは道に迷った幼子となってしまった。
行き先も帰り道もわからない。幼子が不安に駆られるのは無理もない。
今のアリサはその幼子なのだ。
「いい加減にしなさい!!!」
「っ………!!!」
そんな幼子(アリサ)をサクヤは叱咤した。
アリサの涙を流しながら絶望した表情に驚きの表情が加わる。
「いい?アリサ。貴女とリーダーに何があったかは聞かない。なんでリーダーがこんな重傷を負ったのかも貴女がなんでそうなったのかもね。」
「でもこれだけは言わせて。“起きたことは仕方ないわ“もう変えられないことなんだから。」
「あ…」
---起きたことは仕方ない---
ライの口癖のようなものでこの言葉を聞くだけで前向きに考えられるようになるライの”魔法の言葉“
「それにいつまで彼に甘えてるの?アリサ。貴女は強い。私たちが背中を任せられるほどにね。」
「私が…強い…」
「それにこれは貴女が極東に来た時にリーダーが…ライが言ってたことなんだけどね。」
”自分に自信を持っているアリサが羨ましく尊敬できる“
「リーダーが…私…を…」
確かに極東に来た当初のアリサは自信に満ち溢れていた。その姿に当時のライは憧れを抱いていた。
ライとアリサはお互いに尊敬し目標にしていたのだ。
ライはアリサを、アリサはライを、共に目標にしてゴットイーターとして強く成長していきライは極東支部の多くの仲間から信頼される存在になった。
アリサも挫折はしたものの再び立ち上がり成長していき、信頼に応えられるゴットイーターとなった。
「貴女は強い。リーダーを守れるくらいに貴女は強い。そしてリーダーを守れるのは貴女しかいないの。」
「私しか…」
「だから頼むわね。お願い。リーダーを守って。」
そう言って優しく微笑むサクヤ。そして踵を返す。
「リーダーを任せたわ!!」
そう言い残し、サクヤはアリサ達から離れていった。
「……あんな感じだったのね。」
ソーマ達との合流地点地点に向かうサクヤは取り乱したアリサをかつての自分と重ねていた。
あの時…リンドウと別れた時の自身の取り乱した姿と…
「本当に来た当初と変わったわね…かなり影響を受けたというか彼に変えられたというか。」
初対面時のアリサと今のアリサを比べると本当に別人なくらいに差がある。
それはやはりライの存在が大きいだろう。
同じ新型で感応現象という不思議な力で全てを知ってくれる理解者。
「そしてアリサはきっと…」
そこでサクヤは言葉を切る。
自覚しているかはわからないがアリサがライに好意を抱いているのは明らかだ。それは依存するくらいに大きなものだと今回の件で証明された。
しかしそれは危険を孕んでいる。
もしライが死んだらアリサはどうなる。
きっとアリサは壊れるだろう。
心が壊れ、ゴットイーターとしても機能しなくなる。
それだけアリサにとってライは大きな存在だ。
サクヤにとってリンドウがそのような存在だったように…
サクヤが居なくなって残されたアリサ。
サクヤの叱咤で先程よりは持ち直したようだが戦闘に耐えれる状態ではなかった。
「…リーダー」
縋るようにライの右手を両手で握るアリサだが気を失っているライがそれに応えることはない。
「リーダーは凄いです。どんな状況でも落ち着いて対処しますし指示も的確でそして強い。私とは大違いです。」
「そんな貴方が私を目標にしてたなんて…信じられません。」
どんなに語りかけてもライからの反応はない。
「私は弱いです。貴方より遥かに。どうしたら貴方のように強くなれますか?」
「どうやったら貴方に追いつけますか?」
「どうしたら貴方の隣に立てますか?」
返答のないことは分かっているはずなのにアリサは問い続ける。
別にアリサは答えを欲しいとは思っていない。
ただ答えが返ってこなくとも自身が抱える疑問を口に出すことで心が軽くなる気がして吐露しているだけだ。
要は自己満足である。
意識を失っているライは当然聞こえてないし聞いてない。
しかしアリサの不安も話を聞いてきたのはライである。
だからアリサは話す。聞こえてないライに自分の思いを。
そんなことを続けていると不意に外が騒がしくなった。
『……なに?」
身を隠す廃ビル近くからアラガミの咆哮が聞こえた。
アリサは恐る恐る窓に近づき外に目を目を向ける。
そこには当然だがアラガミがいた。
ヴァジュラとディアウス・ピターが喰らい争っていた。
だが一方的にヴァジュラは敗れ、コアをピターに食われた。
そしてピターは顔を上げた際、アリサと目が合う。
途端にピターの口元がつり上がる。
”そこにいたか”
と言っているかのように…
「あ…あ…」
トラウマの元凶と目が合い恐怖に駆られるアリサ。
少しもしないうちにピターが此処に来るだろう。
今すぐ逃げたい衝動に駆られるアリサだが…
その時…ライが目に入った。
「リーダー…」
今アリサが逃げ出せば、アリサは助かるだろう。
だが、ライは死ぬ。絶対に。
戦っても勝てる保証はない。
自分の命の為に、仲間の命を犠牲にするか。
仲間の命を守る為に、命賭けの戦いを挑むか。
究極の選択。
アリサが選んだのは…
アリサはライから離れ、1人ピターに挑んでいた。
アリサは仲間の命を守る為に命賭けの戦いをすることを選んだアリサ。
今はライのいる場所からピターを引き離すため、牽制をしつつ、距離を空けて逃げていた。
ピターはヴァジュラ同様電撃を使うようで度々電撃を飛ばすがそれを回避つつやはり一定の距離を開けて戦うアリサ。
また、アリサが逃げる方にはサクヤ達が合流地点がある。
アリサは1人で戦う気はない。
とにかくライからピターを引き離し、サクヤ達と合流してから迎え撃つのがアリサの作戦だった。
当然ライは今も気を失っている。その状態で1人にするのは危険だが…
アリサはライを信じることにした。
きっとリーダーなら大丈夫。…と信じて1人にした。
それにピターはアリサのトラウマそのもの。
この行動はそのトラウマに立ち向かうのと同義であった。
当然怖いだろう。
だがアリサはライを失うのがトラウマよりも恐ろしいのだ。
頑張って早めに投稿しました。
我ながらなんか遠回りしてるような描き方をしてると感じるこの頃。
サッサと書けば多分無印は終わってると思う。
まぁ書いた方がいいと思って書いてるので遠回りになるには仕方ないといえば仕方ないのでしょうか?
ともあれさっさとピター戦終わらせてアーク計画終盤にいかんとな…
とまぁ作者の愚痴と反省はここまでにして。
神機兵の武器って神機なんでしょうか?アラガミがダメージ通ってるから神機なのでしょうけど。
有人運用の神機兵ならアルタ・ノーヴァに近いですよね。神機兵も一歩間違えれば操縦者が死ぬようだし似たものか?