神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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お兄ちゃんの謎

シオとの外食という名目のアラガミ討伐はあの後も数度に渡り、行なわれた。

 

しかし、その討伐にはソーマが加わることはなかった。

 

最初の際にできたソーマとシオのわだかまり。あれ以来、ソーマの方がシオを避けている節があった。

 

最初こそシオの方も構ってもらおうしていたが会うたびに成長しているのか最近では雰囲気を察して距離を置くようになった。

 

そうした小さなわだかまりがあるものの、いつもの殺伐とした平穏な日常を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日のこと、サカキの部屋でいつものようにシオの面倒を見ていたライ、コウタ、アリサの3人。

 

特にこの3人がシオと積極的にコミュニケーションを取ろうとサカキの部屋に訪れる頻度が高い。ライに関してはサカキの依頼の報告を兼ねてという面もあるが。

 

ふとシオはアリサの目の前に立つ。

 

「どうしたの?シオちゃん?」

 

「………」

 

「シオちゃん?」

 

黙って自身を見るシオに少し困惑するアリサ。

 

次の瞬間

 

「ヒャア!!」

 

「ムニムニ。」

 

いきなりのことだった。

 

じっとアリサを見ていたシオが突然アリサの胸を揉んだのだ。

 

いきなりことで驚きと多少の羞恥から悲鳴を上げるアリサ。しかしシオは気にすることなくアリサの胸を揉む。

 

「うーん。」

 

「な…なに!!?」

 

手を離し、なにやら考え込む仕草をするシオ。対しアリサは羞恥のあまり普段色白の顔を紅潮させていた。

 

「ん?どーした?シオ。」

 

次にシオが近づいたのはコウタ。アリサ同様、まるで観察するかのようにコウタを見ると次はバシバシとコウタの両腕を叩く。

 

「イテっイテッ」

 

「カチカチ。うーん。」

 

最後はサカキとなにやら雑談しているライに背後から抱きつくシオ。

いきなり背後からの衝撃に驚くライだが衝撃の正体がシオだと分かるとしばらくされるがままになった。

 

「ムニムニ、カチカチ、おかしーなーおっかしーなー。」

 

「おかしいのはお前だよ。シオ。」

 

「どうやら個体差の違いに気づいたようだね。」

 

「個体差の違いですか?」

 

シオの一連の行動にそう評するサカキ。

 

「そう。人は同じ個体でも形状はまるで違う。男女で筋力の付き具合も違うしね。例を出すとアリサ君のような色白の人もいればソーマのような褐色肌の人もいる。そのことに気づいたことで今までは気にしなかったことが気になり始めたのだろう。」

 

「本当に人に近づいてるんですね。やはり環境でしょうか?」

 

「そうだね。だいぶ前の研究だけど異なる動物…例えば犬が豚を育てたらその豚は犬のような習性が身についたらしい。やはり育った環境がそうさせるのかもしれないね。」

 

「人の知性を持ったアラガミか。」

 

もし、今後も人の環境でシオの知性が成長したらシオは世界で唯一の“人のアラガミ”となるだろう。それが良いことなのかは定かでないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、

 

「シオが逃げ出した?」

 

「はい。」

 

本日を終えて自身の部屋で休んでいたライ。そんな時に部屋に飛び込んできたのはアリサだった。

 

「それまたなんで?」

 

「それが…私とサクヤさんでシオちゃんに服を着せようとしたら嫌がって…」

 

「まぁ人に近いとはいえアラガミだし。服は着ないよねぇ。」

 

「そうですけどいつまでもあの布切れのままでいるのも…一応ですが女の子ですし。」

 

「そうだね。わかった。コウタやソーマは?」

 

「もう出てます。コウタとソーマは廃寺方面で、サクヤさんは地下街の方に。私たちは贖罪の街だそうです。」

 

「そっか。じゃあ行こうか。」

 

「すみません。連日迷惑かけて。」

 

そう言い落ち込むアリサに帽子越しに撫でるライ。

 

「気にするな。これでもじっとしてると落ち着かない質だから。」

 

そう言うライだが本音はまたアラガミと生死を賭けた世界に行けることに分かりにくいが気分が高揚している。

 

ライは結局のところ冷静沈着な戦闘狂なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって廃寺。

 

その最奥地にソーマはいた。

 

「いるんだろ?」

 

「いないよー」

 

周囲には影すらない。しかしソーマの問いかけに答える声があった。

 

「遊びは終わりだ。帰るぞ。」

 

「チクチクやー」

 

「フッ…所詮はどこにでもいるアラガミと同じか。」

 

「シオ。ソーマといっしょか?」

 

「違う。」

 

「よっと。」

 

ソーマの雰囲気を察してか姿を見せるシオ。

 

「帰るぞ。」

 

「ソーマ、おこってないか?」

 

「あん?」

 

「シオ、ソーマ、おこらせた。だからソーマこなかった、シオ、さびしかった。」

 

シオは拙いなりに自分の気持ちを伝える。

 

「ああ、もう怒ってない。俺も悪かったな。」

 

「ソーマ、またあいにきてくれるか?」

 

「暇があればな。」

 

照れ隠しのつもりか軽く頭を掻きながらそう言うソーマ。

 

「落ち着いて考えてみると俺たちは遜色ないのかもしれないな。」

 

ソーマはずっと考えていた。

 

アラガミに近い自分と人に近いアラガミであるシオ。

 

そしてアラガミと渡り合える戦闘力と身体能力を持つゴットイーターについて。

 

アラガミ化のリスクを抱えるゴットイーターは偏食因子の過剰投与や腕輪が破損によりアラガミ化の危険性がある。

 

アラガミ化すればもう人に戻れないし人としての人格も失われる。残るのは捕食衝動の本能のみ。

 

「救われねぇな。」

 

もしかしたら別の支部のゴットイーターがアラガミ化して他のゴットイーターに倒される。例えばリンドウが生きていたとしてアラガミ化してそうとは知らずに第1部隊に討伐されたら?

 

これほど悲しくて救われないことはないだろう。

 

「そうだ。お前、なんでリーダーを兄貴と呼ぶ?」

 

「あにき?」

 

「お前のにーちゃんのことだ。」

 

ライを兄と呼ぶことについてソーマは気になっていた。

 

そもそも初対面なのにシオはライに懐いていた。

 

それは前から知っていたかのように。

 

考えられるのはライの身体を改造した組織にシオも囚われていた。

 

そこでライとシオが心を通わせていたならば話の筋が通る。

 

だがライは記憶を失っている。

 

しかし、シオが覚えているならその組織が分かる可能性がある。

 

しかしシオはまったく別のことを答える。

 

「おにーちゃんは“中”にいる。」

 

「は?」

 

「おにーちゃん、いつも腹ペコ。まだ“前”にでれない。」

 

「おにーちゃんがまんぷくになったらきっとでてくる。シオ、ソーマにおにーちゃんと会わせたい。」

 

「お前…なに言って…」

 

「あ!!コウタ!!」

 

遠くからコウタの声が聞こえたのか声の方へと向かうシオ。

 

しかしソーマは立ち尽くしたままだった。

 

「どういう意味だ?」

 

シオの言葉の解読ができない。

 

唯一わかったのは…

 

ライの中に“お兄ちゃん”がいること。

 

つまりシオの言うお兄ちゃんはライを指していないのだ。

 

恐らくシオがアラガミである以上、シオの言うお兄ちゃんもアラガミに違いない。

 

腹ペコの意味は不明だが、シオが言うには腹ペコが満たされたら前に…つまり表に出てくると言うことだろう。

 

もし、その『お兄ちゃん』が姿を見せた時、

 

ライはどうなるのだろうか?

 

そして『お兄ちゃん』はライの中で”何“を満たそうとしているのか。

 

ソーマの問いは謎が謎を呼ぶ結果となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




少し投稿が遅くなりました。

なんとなくですが久しぶりに今作の読者の皆様に描かれた感想を読み返してみました。

オリジナル神機やアラガミ化、さらには血の力など、いろんなご意見や感想がありいろんな方に読まれてると改めて実感しました。

今後とも頑張ってまいりますのよろしくお願いいたします。

さて、その感想を読んで新たに芽生えた案というかできないかなというものが浮かびまして…

ズバリ『感応現象』による『未来予知』

感応現象は過去と記憶をみることができるならその逆、曖昧な『未来予知』は出来ないかと思いまして。

完全な未来予知は無理でも曖昧な…多少差異がある未来予知ならギリセーフかなぁと思っています。

あとギアスをアラガミ化抑制に使うのはいかがでしょう?

現在のライは記憶がないためギアスのことも忘れています。

でも記憶が戻ってギアスを取り戻したら暴走を恐れてアナグラ逃亡エンドになりそう。

もしくはギアスをライの支配下に置くことに成功したとしてスザクにかかった生きろのギアスと同様にライ自身にリミッター解除型のギアスをかけてリミッター解除時にアラガミ化発動可能にするとか。

そうすれば極東の外にでてもリミッターを解除しなければ普通のゴットイーターとして活躍できる…かも?

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