神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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人に近しい神

白い少女を連れてアナグラに帰投したライ達第1部隊。

 

少女は他の人には見つからぬように注意しつつサカキの研究室に連れ込まれた。

 

そしてサカキからこの少女の正体を聞かされた。

 

「はぁっ!!?」

 

「え!?ちょっ…!!…えええ!!!?」

 

「は…博士…今、なんと…?」

 

「何度でも言ってあげよう。この子は“アラガミ”だよ。」

 

サカキから聞かされた少女の正体。

 

驚くべきことに人の形を模ったアラガミということだった。

 

「安心していいよ。この子は君たちを喰らったりはしない。」

 

「『偏食』ですか?」

 

落ち着かせるように言うサカキにライがその理由を答える。

 

「その通り。アラガミには偏食というモノが存在していて個体独自の偏食傾向がある。神機使いの君たちにとっては常識だね。」

 

「それにこの子の偏食はより高次の存在に向けられている。つまりアラガミからすれば人類は既に範疇にないんだ。」

 

そう言い悟すサカキだがどう言い繕うともアラガミには変わりない。故に警戒は解けない。

 

「アラガミは捕食を通してその姿、形状を変える。この子はいくつものある変化の可能性の中で我々『人類』に近い変化(進化)を遂げたといえる。」

 

「さっき軽く調べてみたんだけど頭部神経節に相当する箇所が人間の脳のような働きをしているようなんだ。学習能力も高いみたいだからもっと発達すると思うよ。」

 

「要するにこの子の構成する2割が人であると。」

 

「そうだね。比率は分からないけどそう言っても過言じゃないね。」

 

「リーダー?」

 

「この子は単純に言えば僕達ゴットイーターに近いんだ。僕達ゴットイーターも偏食因子の投与を怠ればアラガミ化が進む。ゴットイーターの比率が8割人類、2割アラガミとしたら、この子はその逆といえる。」

 

「その通りだ。リーダー君。やっぱり君は賢いね。それにこの子を研究することで“アラガミ化”を阻止する方法を見つけられるかもしれない。」

 

「はい!先生!!」

 

「なんだね?コウタ君」

 

「話を聞いて分かったというかまぁよくは分からなかったんだけど、コイツの『ゴハン』とか『イタダキマス』とかはなんなんすかね?」

 

「リーダーは『オニイチャン』と呼ばれていますし…」

 

「ゴハン!!」

 

「コイツが言うとシャレにならないんですけど…」

 

「誰から学んだ…もしくは聞き耳を立てて勝手に覚えたとか?」

 

「それは追々分かることだと思うよ。」

 

遠回しに研究、調査が続けばと言うサカキ。

 

「とにかく、これからは博士がこの子の面倒をみるんですか?」

 

「そうだね。だけど君たちにも度々この子に会いに来てくれると助かる。あとこの子については私と君たち第1部隊だけの秘密にしてほしい。」

 

「ですがせめてツバキ教官と支部長に報告はしないと…」

 

「サクヤ君。君は天下に名だたるゴットイーターがアラガミ討伐の最前線たるアナグラにアラガミに連れ込んだと報告するつもりかい?」

 

確かに捕食される心配がないとはいえ、アナグラにアラガミを連れ込んだ時点でそれは大きな軍規違反とも呼べる。

 

「我々は既に共犯なんだ。そのことを忘れないでほしいね。」

 

「っ………」

 

「さて、今後もこの子を気にかけてくれ。ソーマ。君も頼むよ。」

 

「ふざけるな!!」

 

「どんなに人間の真似をしようともソイツがバケモノには変わりない。」

 

そう言い残し、ソーマは出て行く。

 

ソーマの言う通り。白い少女は如何に人に近しいアラガミだとしてもアラガミということには変わりない。

 

それは第1部隊全員が理解していることでこの先の不安を拭えない。

 

「よろしく。」

 

一人を除いて…だが…

 

「え!?リーダー!!?」

 

アリサが少女に手を伸ばすライに声を掛ける。

 

「やらかしてしまったことには仕方ない。なら最後まで面倒をみるしかない。」

 

「オニイチャン!!」

 

「うわっ!!!」

 

アリサ達にそう言うライに少女は勢いよく抱きつく。

 

同時にライは感応現象のような錯覚が起きた。

 

 

 

 

 

 

目の前には白い少女ではない少女。

 

顔は見えないが高貴なドレスを着ていることから少女だと分かった。

 

その少女がライの手を引っ張りながら言った。

 

“お兄様”

 

その言葉を耳にしたライは自身の心が何故か罪悪感に呑まれる感覚に陥った。

 

そして自身への怒りも芽生えた。

 

“何故生きている?”

 

“苦しめ”

 

“地獄に堕ちろ”

 

耳に入るのはライに向けられたであろう怨嗟の声。

 

その怨嗟の声を聞く度にライは自身が何かに蝕まれる感覚に陥った。

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減離れろって!!」

 

「ヤー」

 

「リーダー!!大丈夫ですか?」

 

意識が現実に戻ると白い少女を引き剥がすコウタと心配そうに自分の顔を覗き込むアリサの姿があった。

 

「アリサ?顔近い。」

 

「あ…すみません。」

 

間近にあったアリサの顔が離れて行く。一歩間違えれば口付けできるくらい近かった。

 

「とりあえず今日はこれで解散しよう。また明日からも頼むよ。」

 

サカキの一声で解散となった。ライから離れるのを嫌ったアラガミの少女だったがライが優しく頭を撫でると笑顔になって見送ってくれた。

 

……少女の頭を撫でてるライを不満げにそれでいて羨ましそうな表情で見ていたアリサがいたらしいがコウタとサクヤは苦笑いを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1部隊を見送ったサカキの研究室に残るのは部屋の主のサカキと少女だけ。

 

「さて、『人が神になるか』『神が人になるか』競争の始まりだ。」

 

不敵な笑みで呟くサカキ。その呟きは虚空に…

 

「ハジマリダー」

 

消えることはなかった。サカキは少し笑みを深め優しく少女のサカキ頭を撫でた。

 

 




明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

昨年のうちにもう1話投稿するつもりでしたができず申し訳ないです。

さて、今年は戌年。アラガミでいえばガルムやマルドゥークか?

3が今年のうちに出るのかな?スマホアプリの方も早くやってみたい。

スマホアプリの方はレイジバーストから3年か4年後のフェンリル本部の話だしクレイドルもブラットも出るから楽しみ。

3の厄災のアラガミというのも気になるし禁忌領域についても気になる。血の力にかわるゴットイーターの力も出るのかな?

なにはともあれ楽しみです。

I Sの方の復活はまだないと思いますがその分此方で頑張るつもりです。

以前少しだけ、Fate作品にライ君参入作品を書きましたが再び執筆意欲が湧いたり湧かなかったり。

ギアス世界に英霊の座があるならライは英霊の座に行けるのでしょうか?仮にも英雄視されてるだろうし。

もしゼロが英霊召喚されたらなんだろう?セイバー?

ついでに英雄伝説の閃の軌跡シリーズにライ君参入も面白そうと思っています。

まぁ気が向いたら短編集として書きましょうかね?

それでは今年も今作をよろしくお願いします。

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