神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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化け物達

「話とはなんだい?ペイラー。」

 

「単刀直入に聞こう。引き返すつもりはないのかい?」

 

支部長室にて対峙するヨハネスとサカキ。共に表情は険しく旧友として話をしにきたわけではなさそうだ。

 

「またその話か。前にも言ったが既に“計画”は動き出している。もうどうやっても止められない。止めるつもりもない。」

 

「そうかい。じゃあ君には朗報だ。」

 

「朗報?」

 

ヨハネスの“返答”を聞きサカキはしばし沈黙するとすぐにいつものテンションに戻る。

 

「これは民間のタレコミだけどね。旧イングランド領周辺に特殊なオラクル結合を持ったアラガミが現れたらしい。」

 

「特殊なオラクル結合…まさか『特異点』か!?」

 

「それはまだ分からないよ。新種のアラガミかもしれないしね。」

 

「私自身の手で調査に向かいたいところだけどあそこは本部直轄だからね。私でもなかなか手が出せなくてね。」

 

「わかった。しばらくヨーロッパに飛ぼう。留守は任せるが大丈夫かい?」

 

「構わないよ。とは言っても私は私の研究を続けているだけなんだけどね。」

 

「それもそうだな。」

 

そう言うと出張の準備を始めるのか支部長室を出て行くヨハネス。

 

「…そう。研究の障害となるものは1つでも少ない方がいい。さて、私の方も“お出迎え”の準備を始めないとね。」

 

誰もいない支部長室内で1人呟くサカキ。その時サカキの欠けている眼鏡が怪しく光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、鎮魂の廃寺では…

 

「クソっ…!!!」

 

「ワッ!!ビックリさせないでくださいよ。」

 

「なんかうなされてたみたいだけど悪い夢でもみたか?」

 

「…まぁな。」

 

「あれ?珍しく素直じゃん?これは明日は雨か?」

 

「うるさい。」

 

「うん。いつもどおりだ。任務に支障はないでしょ。」

 

アリサ、コウタ、ソーマの第1部隊の面子が揃っていた。

 

「まぁソーマがいつもどおりなら安心ですけど…」

 

「………」

 

アリサの視線の先にはもう1人。現第1部隊隊長のライが何やら考え込んでいる。

 

「リーダー。任務開始時間です。」

 

「ん。ああ、ごめん。行こうか。」

 

「大丈夫ですか?ずっと黙り込んで。話掛けてもうわの空でしたし。」

 

「いや、気にしないで。」

 

「まぁこの面子なら1人くらい不調でも大丈夫でしょう。それじゃお先に。」

 

そう言うとコウタが1番に廃寺に待機場所から出て行く。

 

「そういうことなら…リーダーはあまり無理はしないでくださいね。」

 

ライに気遣いの言葉を掛けコウタの後を追うアリサ。

 

残るはソーマとライ。

 

「フンッ…」

 

ソーマも任務に向かおうとした。

 

その時だった。

 

「………」

 

「っ……!!」

 

ライが微かな声での呟きをソーマは聞き逃さなかった。

 

否、ライが“それ”を知っていることに驚きを隠せなかった。

 

「『マーナガルム計画』」

 

ライは確かにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!」

 

特定のアラガミの討伐後、ソーマはライに詰め寄った。

 

「ちょっと!!どうしたんだよ!?」

 

慌ててソーマを止めるコウタ。だがソーマは止まらずそのままライの胸ぐらを掴む。

 

「ソーマ!!さっきの連携には何処にも不備はなかったはずです!!それよりリーダーを放してください!!」

 

「なんでお前が“それ”を知っている!?あの忌々しいソレを!!」

 

アリサも止めに入るがソーマは聞く耳を持たない。そんなソーマにライは1つ溜息すると。

 

「コウタとアリサは先に帰投ポイントに向かってくれ。それで僕とソーマは少し遅れることを伝えてくれ。これは命令だ。」

 

「っ…でも…」

 

「大丈夫ですか?」

 

「なに。少し話すだけだよ。」

 

「‥わかりました。」

 

渋々ながら納得して先に帰投ポイントに向かうコウタとアリサ。

 

「さて、ここで話すのもなんだし雪が凌げる場所で話そうか。」

 

2人を見送りつつソーマにそう言うライ。ソーマも黙ってライの後を追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、質問に答えよう。」

 

「その計画はどこで知った?」

 

『サカキ博士が落としたディスクから。」

 

「チッ…アイツか。」

 

「博士には全て見透されていたと思うよ。あの人の掌で踊らされたようなものだし。」

 

最奥地である壊れ掛けの木造小屋で問答を行うライとソーマ。

 

「これで俺が化け物ということがわかっただろ?今後俺に一切関わるな。」

 

「断る。…と言ったら?」

 

「死ぬぞ?俺は死神らしいからな。」

 

「死ぬのが怖くてゴットイーターが務まると思うか?」

 

「………」

 

ライの返答にソーマは押し黙る。

 

確かにライの言うようにゴットイーターは常に生死の境で戦い続ける職業だ。並…否、正常な精神じゃ務まらないだろう。

 

「マーナガルム計画の一環で君が生まれた。そのおかげで結果的にゴットイーターという存在が生まれた。それは誇るべきことじゃないか?」

 

「ハッ!!大怪我しても次の日には完治している。生まれながらにして尋常じゃない身体能力を持つ奴が普通の人間と言えるか?」

 

「それをいうなら僕たちゴットイーターだって普通の人間じゃない。一歩間違えればアラガミという化け物に成り下がるのだから。」

 

「何故遠ざけようとする?今の君の言い分は僕たちとなにも変わらない。共に化け物なのだから。」

 

ライは悟すようにそれでいて力強く反論する。

 

「それにそんな身体で生まれた…生まれさせた元凶が君の近くにいることはいいことだ。憎しみが生きる目的となるし希望にもなる。」

 

「なんだと?」

 

「ソーマ。君は実の親を憎んでるんだろう?ならなぜその元凶の言いなりになっている。母親への贖罪か?それとも復讐か?」

 

「っ……!!?」

 

ソーマは狼狽えた。ライの言う通りソーマは実父をヨハネス・フォン・シックザールを憎んでいる。

 

「それに死神や化け物と呼ばれる君はあの時…エリックが襲われた時…何故叫んだ。普通の化け物ならそんなことはしない。」

 

「それに本当の外道というのは“散々身体を弄った挙句、記憶を消してアラガミが蔓延る世界に棄てて命まで奪おう”とするような奴のことを言うんだ。」

 

「…なに?」

 

「僕はね。どうやら身体中を散々弄り回されている。脳も例外なくね。そして飽きたのか僕は記憶を消され棄てられた。そしてリンドウさんによって保護された。」

 

「っ…!!」

 

ライが記憶を失っていることはソーマも知っていた。だが人体改造については知らなかった。当然だ。ライの身体が弄られていることを知っているのはヨハネスとサカキ、ツバキだけだからだ。

 

「何故捨てられたのかは知らない。知りたくもない。どうでもいい。だが棄てた元凶が身近にいれば僕はここまで達観してないだろう。」

 

「ソーマ。君はなにがしたい?憎むべき相手が身近にいる君はなにを成したいんだ?」

 

「そろそろ冷えてきた。先に戻るよ?」

 

「待て。お前を棄てた存在が身近にいたらお前はどうする。」

 

話は終わりと歩き始めるライにソーマは問いかける。

 

ライが達観してるのは棄てた存在を忘れてるから。憎しみを…怒りをぶつけたくともぶつける相手がわからないなら残るのは虚しさだけだ。

 

「そうだな。とりあえずすぐには殺さない。それくらいしか考えられないな。まぁ最終的には絶望に叩き落として無残な最期にさせるだろうけど。」

 

あっけらかんに答えるライ。だがソーマからは恐怖を感じるくらいの声色だった。

 

今度こそ歩き始めるライ。残されたソーマは1人立ち尽くす。

 

「俺は…」

 

自身の行動の矛盾に悩むソーマ。しかし答えはすぐには出てくることはなかった。

 




メリークリスマス!!

イブだからメリークリスマスでいいのかわからないけど新話投稿です。

とはいえクリスマスすぎたら年越しですか。はやい。

とりあえず年内にシオ登場までは持っていきたい。

シオ登場してピター倒してアーク計画阻止…まだまだ無印は続くな…

リザレクションまで書くとしても軽く100話近くまで行きそう。

やっぱ別作品としてライ君ゴットイーター2Ver.を描くべきか?

でもそれだとクレイドルでのライの立場がな…

いっそのこと本部に招集されて作戦行動中に行方不明に…

でも極東支部に行ったら何か揉めそうな予感。

そういえばアラガミはオラクル細胞の群体だけどオラクル細胞単体の方が強いのかな?キュウビの件もあるし。

KMFは操縦者のデータがフィードバックされるからアラガミになればその操縦者の動きができるのでしょうかね?

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