ライは久方ぶりに”夢“を見ていた。
ライが最後に夢を見たのはフェンリルに保護された時…
自分の中から”色のついた球”が黒(闇)に呑み込まれていく夢を見て以来の夢だった。
久々に見た夢は以前の夢とは対照的で“真っ白の世界“が広がっていた。
”やはり貴方は空虚(空っぽ)貴方には何もない“
不意に聞き覚えのある”女性“の声が聞こえた。
しかしライはその声の主を思い出せないでいた。
”楽しみ。『あの子』と貴方。共に空虚(空っぽ)の器が満たされた時、貴方達がどうなるのか。そして何が貴方を満たすのか。“
”あの子はあの子の“意思”で自身(器)を満たす。貴方は貴方の“意思”で貴方を満たす。
”貴方にはあらゆるもの”が混じっている。私もその中の1つとなって貴方の行く末を見守りましょう“
”貴方が満たされた時、貴方の中にあるこの広大な大地がどう“色付く”のでしょうね?“
女性の声はまるで楽しげでまるで詩を歌い上げるようにライの耳に響く。
そこでライが意識が浮上する感じがした。
「あ、起きました?」
目を覚ますとアリサの顔があった。
「アリサ?どうして僕の部屋に?」
「どうしてってリーダーの様子を見にきたんですよ。部隊内ブリーフィングの時間になってもリーダーが来なかったので。」
アリサにそう言われライは設置している時計を見る。いつもの起床時間より1時間経っていた。
「ごめん。寝過ごした。」
「風邪じゃないんですか?昨日リーダーが行った廃寺は雪が降るくらい寒いですし。」
「いや、体調は悪くない。少し夢心地が良かったからかな。」
でも見た夢はもう忘れてるんだけどね。と苦笑するライ。
それと同時にあることに気づく。
「あれ?」
「どうしました?」
「あ、いや……なんでもない。」
「やっぱり今日は休んだ方がいいんじゃないんですか?」
「いや、行くよ。悪いけどもう少しかかるって伝えてくれないか?」
「わかりました。」
アリサが部屋を出るのを確認するとライは何やら考え込んだ。
「……何かがあった筈なのに…思い出せない。」
「コウタとソーマとヤクシャを倒した。そのあとソーマを探しに行った。ソーマと合流したまでは覚えてる。だけど帰投するまでに何かあったはずなのに…思い出せない。」
ライが気づいたのは一部記憶の損失。どうやらライは白い少女との記憶を失ったらしい。
「印象深いことだったから忘れることの方が難しいことのはずなのに…」
再び思考の海に呑み込まれそうになるライ。
「まぁいいか。いづれ思い出すだろうし。」
軽く頭を振り、軽く深呼吸する。
「よし。」
頭が冴えてきたのを確認したのか立ち上がり、軽く腕を回し凝りをほぐすライ。そして今日も神機使いとしての1日をスタートさせた。
「これで!!!」
今回はライとアリサ、サクヤの3人でアラガミ討伐に出た。
3人の連携がうまく決まり、苦戦することもなくコンゴウとその堕天種を2体討伐に成功した。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
「アリサから調子が悪そうとは聞いてたけどたいしたことがなさそうでよかったわ。」
ヘリが来るのを待っているとサクヤに話しかけられたライ。
「すみません。心配かけたみたいで。」
「気にしないで。リーダーになって貴方の周りの環境が変わったのも分かってるわ。きっとその疲れが出たのよ。」
「それにリーダーになる前から貴方には負担をかけてたからね。こっちこそごめんなさい。」
そう謝罪するサクヤ。確かにライがリーダーになる前からアリサのメンタルケアやリハビリ。サクヤが休んでいる間、第1部隊の屋台骨を担っていた。
「気にしないでください。体調管理も神機使いの務めですから。」
「ところでなんでアリサを起こしによこしたんです?」
「最初はコウタに任せたんだけどなんかバツが悪そうな顔してたから。よくわからないけど責任感じてるみたいよ?」
「ああ…」
昨日のソーマとの件かと納得したライ。
「昨日はソーマとも一緒だったんでしょ?知ってると思うけどソーマは馴れ合いを嫌うから。」
「そうですね。確かにそんなところがありますけどそれには何か理由がある気がするんです。」
「理由?」
「根拠はないんですけどね。」
そう言って笑うライ。だが距離を取るのは何かしら理由がある。そのことについては確信していた。
それからもライは神機使いとしての日々を過ごすていたある日、再び”あの者“に呼び出された。
「失礼します。」
「やぁ、よく来てくれたね。」
ライが来たのは支部長室。ライを呼び出したのはヨハネスだった。
「君の活躍は聞いている。リーダーとして部隊をよく取りまとめているようだね。就任して間もないにも関わらず統率が取れるとは新型の面目躍如かそれとも君自身の能力なのかな。」
「お褒めに預かり感激です。……とでも言えばよろしいですか?」
「フフ…やはり君は面白い。それでいてとても優秀だ。……君みたいな存在がいればここまで人類が衰退しなかったのかもしれないな。」
「どういう意味ですか?」
「なに。私が生まれたのはアラガミが現れる前でね。まだ我々人類が世界の支配してた時代を知っているのさ。」
「当時の世界はとある”組織と憲章“の下に1つになっていた。小さな諍いはあれど戦争はなく平和といっていい世界だった。」
いきなり昔の世界の話を始めるヨハネス。記憶のないライにはそれが興味惹かれる話で少しづつのめり込んでいった。
「国家が組織に入るには条件があった“所属国家は武力を永久に放棄する”すなわち軍事力の放棄だ。当然だ。武器を失えば戦争は起きない。起きても原始的な殴り合いくらいだろう。だがアラガミが出現した時にはそれが仇となった。」
アラガミには同じ細胞を持つ神機でしか攻撃は効かない。しかしいくら効かないとはいえ、銃ならある程度の牽制にはなる。しかしそれを放棄したということは…言うまでもない。
「当然組織にも頼るべき武装集団はあった。だがその集団はアラガミに負けた。負け続けた。そして壊滅した。」
「国家を担う官僚どもは我先にと逃げ出したようだ。まさに無能者達だったよ。もしその時に君のような有能で優秀な存在がいれば人類がここまで追い詰められるとはなかっただろうね。」
「私としても尊敬する“博士達”とここで(フェンリル)で研究したかった。もう死んでしまったがね。優秀な頭脳は人類の財産だ。失われるのは惜しい。」
「博士達?」
「長話してしまったね。本題に入ろう。エイジス計画だがもうすぐ実行されるところまできた。」
話はここで終わりとばかりに本題に入るヨハネス。少し不可解に思いながらもライも聞くことはしなかった。
「君のおかげだ。君が活躍してから実行予定が大幅に短縮できた。多大なる被害も出たがもう少しだ。……もう少しだけ君の力を貸して欲しい。」
そこでヨハネスのパソコンから音が鳴った。
「どうやら来客のようだ。君との話は楽しい。また機会があれば語り合おう。」
笑みを見せながらそう言うヨハネスにライはまたの機会にと答え、支部長室を後にした。
支部長室を出てエレベーターを待つライ。
ようやくきたエレベーターの中には“珍客”がいた。
「やぁ。君か。」
「サカキ博士。どうも。」
エレベーターから出てきたのはサカキだった。基本的にサカキは自分の研究室から出てこないのでこうして顔を合わせることは珍しい。
「そういえばヨハンから聞いたけど、君、リーダーになったようだね。今頃になって申し訳ないけどおめでとう。」
「いえ、単に空いた空席に座っただけですので。まだまだ未熟ですよ。」
「謙遜しなくていいと思うよ。私から見ても君は“優秀”だからね。」
まるで含みのある言い方と感じ眉を顰めるライ。しかしサカキは気にする様子もなくライの隣を通り越していく。
ライもエレベーターに乗った時ふとサカキがライの方を向いた。
「そうだ。君は好奇心は旺盛な方かい?」
「え?」
しかしライが答える前にエレベーターの扉が閉まった。
「どう言う意味だ?ん?」
サカキの意味深な言葉に首を傾げるライ。何か含みのある言い方に思考の渦に呑まれかけたその時、ライの足下に何かが落ちていた。
「これは“ディスク”?」
足下に落ちていたディスクを手に取り、サカキの物かと思案する。同時にサカキの問いも耳に反響する。
“君は好奇心は旺盛な方かい?”
「博士。どうやらそのようです。」
虚空に消える呟きを吐きながらライはディスクを手に自分の部屋に向かった。
今週はすごく寒いですね。
風邪やインフルエンザには気をつけましょう。
さて、最近思うのはエイジス計画ってぶっちゃけ進撃の巨人のような大きな壁に隠れる計画なんじゃね?と思いました。
でも実際にエイジス計画が計画どおり行われても新型アラガミが出てきたらアラガミ装甲壁破られるよねと思う作者は心が汚れてるのでしょうか?
それはさておき、ギアスの扱いをどうするかノープランだと言うこと今になって気づきました。
ライからギアスを取ったらなにが残る?何も残らな……くはないな。
あとこれもなんとなく浮かんだ疑問何ですがギアスキャンセラーでギアスを無効化された人物には再び絶対遵守のギアスは通じるのでしょうか?
1人1回という制約だから効かないのか無効化されたことで1回が取り消されるのか。
シャーリーが死ぬ時にルルーシュが『死ぬな』というギアスを使ってたけどあれはもう大量出血で助からなかったから通じなかったのか。死にかけだったし。
まぁナナリーが命令系ギアスには逆らえないけどシャルルの記憶操作のギアスによる盲目は自力で解けることを証明してくれたからなぁ。