神喰らう無色の反逆者   作:COLD

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拒絶と幻想

ライのリーダー就任は他の神機使いからも祝福された。

 

リンドウの行方不明というアクシデントによる空席にライが座ったといえば聞こえは悪いだろうがそれでもライのリーダー就任に異を唱える者はいなかった。

 

但し、優秀な神機使いだからといってリーダーに向いているかといえばそうとは言い切れない。

 

特にライが率いる第1部隊は極東支部最強の部隊ともいえるし、それ故に一癖も二癖もある部隊員が所属している。

 

求められるのは統率力。きっとライはこれから四苦八苦することだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今さ、お前のリーダー就任のお祝いを考えてるんだ。楽しみにしとけよな。」

 

「いや、気にしなくていいんだけど。」

 

鎮魂の廃寺にて作戦開始時間を待つライとコウタ。今日の任務はこの2人と。

 

「………」

 

「あ、ソーマ。今度コイツのリーダー就任のお祝いするんだけどさ。お前も参加しない?」

 

「断る。」

 

遅れてやってきたソーマにそう尋ねるコウタに対し、ピシャリと言い返すソーマ。

 

今日はこの面子での任務なのだがこの通り既にギクシャクしている。

 

「そう言わずにさ。俺たちは同じ部隊の仲間なんだぜ。」

 

「ハッ。仲間か。」

 

まるで馬鹿にするような嘲笑うかのように言うソーマにコウタの表情が曇る。

 

「おい!そんな言い方……」

 

「少し小突かれただけで死ぬような仲間なんて最初からいない方がマシだ。……お前のようにベラベラ口が回るような奴がすぐに死ぬんだよ。」

 

「な…なんだと……!!」

 

ソーマの挑発的な言葉に怒りを露わにするコウタだが当の本人は気にする様子もなくアラガミ討伐へと向かう。

 

「お前暗くてそんなことばっか言ってるから友達少ないんだよ!!」

 

「コウタ。そこまでだ。作戦開始時間を過ぎてる。」

 

コウタを落ち着かせるようにそう言うライ。しかし内心では問題山積みで前途多難だなと嘆息していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コウタ!!ソーマの援護!!」

 

「ああ!!」

 

「いらねぇ!!」

 

「おい!!ソーマ!!」

 

ヤクシャに突っ込むソーマにライがコウタに援護を指示するもその援護を拒絶する。

 

「クソッ!!アイツ突っ込み過ぎ!!」

 

「いや、このまま一気に攻める。」

 

悪態をつくコウタにライはそう言い、スタングレネードを使う。

 

閃光により視界を奪ったことにより生じた隙をつき、ソーマがヤクシャの砲塔を斬り落とす。

 

ヤクシャの武器はブラストのような砲塔だけだ。それを失えば攻撃の術は失われる。

 

「手を緩めるな!!」

 

ライの指示のもと加減なしの攻撃を加え続け、程なくしてヤクシャが地に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい。ソーマ!!なんでリーダーの指示を無視した!!?」

 

倒した後、コウタがソーマに詰め寄る。どうやら独断行動を怒っているようだ。

 

「お前のせいでヤクシャが三体も集まったんだぞ!!ヤクシャが耳がいいのは知らされてただろうが!!」

 

「………」

 

しかし詰め寄るコウタに何も言い返すこともなくただ目を背け、その場から歩き出す。

 

「おい…!!」

 

「コウタ。落ち着いて。ソーマ。帰投時間には戻ってきてよ。」

 

コウタを落ち着かせながらソーマにそう言うライ。ソーマは返事を返すことなく歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姿を見せろ。いるのは分かっている。」

 

廃寺の再奥にある広い木造の寺院に1人。ソーマが誰もいないのに声を掛けていた。

 

「っ…!!」

 

何かを感じたのか神機を後方へと振るう。

 

「ちょっ待って待って!!俺だよ俺!!」

 

「なんだお前か。」

 

背後にいたのはライとコウタだった。

 

拍子抜けしたかのように神機を下ろすソーマ。

 

「なんだはないだろ。帰投時間になっても戻ってこないから探しにきたというのに。」

 

「……余計なお世話だ。」

 

「お…お前な…!!」

 

「コウタ。とりあえず無事でよかった。さぁアナグラに帰ろう。」

 

熱くなりつつあるコウタを制するライ。そしてソーマに一緒に戻るよういう。」

 

『……お前も俺みたいな『化け物』に関わるな。……お前もあの時……エリックのように死にたくなければな。」

 

ソーマから拒絶のような忠告を受けるライ。しかしライはソーマの言う『化け物』と言う単語に引っかかりを覚えた。

 

しかし問いただそうにも既にソーマは帰投場所へと向かっていた。

 

「なんなんだよアイツ…腕が立つからといってお高くとまりやがって……そんなに自分が“特別”なのかよ。」

 

コウタも悪態をつきながら、帰投場所へと向かう。ライも続こうとした。

 

その時だった。

 

「なんだ。」

 

歩き出そうとしたその時、ライの背後から淡く弱々しい光を感じ背後に振り向く。

 

……そこに“少女”がいた。

 

否、少女といっていいのかそれが正しいのか、ただ少女の形をした“何か”がいた。

 

全身が白く、身体を布切れで覆いながら、おかっぱ頭の少女がライを見据えていた。

 

「君は…」

 

ライが問いかける前に“少女”はライに近づいてきた。

 

そして少女はライの胸の辺りに手を添えた。

 

その瞬間、ライの脳裏に少女のものなのか、“女性の声”が聞こえた。

 

“あなたは私と同じ空っぽの存在。だから貴方が相応しい。”

 

声が聞こえた直後、ライは胸の辺りが熱くなるのを感じた。

 

胸の中心の熱さが徐々に全身に周る。それでいて自身の中に“何か”が留まっているようなそんな感覚に陥っていた。

 

「あれ?」

 

気づくと少女の姿はなく、ライ1人佇んでいた。

 

「あの子は…一体…」

 

まるで夢でも見てたのか、散りゆく雪の中に輝く月光りという光景が幻想を見せたのか。

 

「おーい。リーダー?」

 

「あ、ごめん。今行く!!」

 

遠くから聞こえた呼び声に返事を返し、今度こそライは歩き出した。

 

……その後ろ姿を“白い影“が見ていたことに気づかずに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




というわけでソーマ編の始まりです。

少しばかりですがシオとの対面も入れてみました。

多少ライとシオの関わりを作ることで最終決戦で支部長に怒りを覚える描写が出来そうですので。

今年のうちにあと何話投稿できるかわかりませんが頑張ります。

番外編というか外典という話とかも思いつく今日この頃。

TV局があるくらいだから某大陸のようなドキュメント番組にライが取り上げられて放送後各支部の女性神機使いが極東支部に転属届けを出して一波乱あるとか、秘密裏に撮ったライのカッコいい写真が裏で転売されていたりとか。

まずは無印を終わらせてからですがそんな番外編があっても面白い気がします。

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