ヴァジュラ討伐の成功を機にトラウマから解放されたアリサのその後の活躍は目覚しかった。
以前の高圧的な態度は鳴りを潜め、また単独行動もしなくなった。
その変わりように大きな溝があった旧式神機使い達にはしばらくの間、戸惑いが感じられたようだが今となってはその献身的な行動を評価されアリサを悪く言う者はごく一部となっていた。
…まぁアリサ自身黒歴史として時折自己嫌悪に陥ることが多々あるが…
因みに裏でライやサクヤがいろいろ手を回していたのはアリサは知らない。
とある日、ライ達第1部隊全員がエントランスに集合していた。
「全員集合って珍しいけどなんかあったの?」
「知りませんよ。知ってても貴方には教えませんけどね。」
「ひでぇ。」
変わったとはいえコウタやシュンのような性格の者には相変わらず辛辣な言葉を吐くアリサ。
「サクヤさんも何か知りませんか?」
「いえ、私も何も聞いてないわ。」
「ライとソーマも聞いてないよな?」
「うん。」
「………」
コウタの問いにライは同意し、ソーマは沈黙。2人も知らないようだ。
「全員揃っているな。」
そんな会話をしているとツバキがエレベーターから出てきた。
「お前たちを呼び出したのは上層部の決定を伝えるためだ。」
『上層部決定ですか?」
「そうだ。」
そう言い、ツバキはライの方を向く。
「皇ライ上等兵。貴官を本任務完了を機にフェンリル極東支部保守局第1部隊隊長に命じる。また同時に准尉に昇進を命じる。」
「………」
「す…すげぇ。」
しばらくの沈黙の後、最初に口を開いたのはコウタだった。」
「出世じゃん!大出世じゃん!!これってなんていうんだっけ?下克上!!?」
「……それ、裏切りですよ。」
騒ぐコウタに冷ややかに突っ込むアリサ。そんなアリサにライはアリサが下克上という言葉知ってたことに関心していた。
「ともあれおめでとうございます。貴方になら安心して背中を預けられます。ね、サクヤさん。」
「………」
「サクヤさん?」
「あ、いえ、なんでもないわ。そう、少し見ないうちにもう隊長か。おめでとう。」
「気がはやいぞ。そいつの隊長就任は今回の任務を終えてからだ。」
ツバキの一言でまた全員がツバキの方を見る。
「確かにリーダーともなれば相応の権限を与えられる。同時にそれ相応の重責を負うことにもなる。」
「神機使い(ゴットイーター)としての職分だけではない。部隊員全員を生きて帰すという重責がな。」
「死ぬな。必ず生きて帰れ。」
「とはいえそれを隊長(リーダー)1人で背負い続ける必要はない。その為の部隊員だ。自分を生かし、味方(仲間)を生かせ。そして誰も欠けることなくここに帰ってくる。それができて初めてリーダーの職分が成せたことになる。」
「そいつなら1人でも背負い続けることができることだろう。それくらいの潜在能力(ポテンシャル)を持っているとの判断されての任命だろうが1人ではいずれ潰れかねん。それ共に支えるのがお前たちだ。」
ツバキから激励とリーダーの務めを話される。
「さて、ボサッとしてないで任務に行くといい。」
『撃ち落とせ!!!」
鉄塔の森にて浮遊する一見魔女のような姿のアラガミ『サリエル』の討伐に挑む。ライ、コウタ、アリサ、サクヤ達第1部隊。
サリエルのレーザーのような遠隔攻撃と自身を中心に一帯にオラクルの壁に苦戦するも宙に浮いている間は全員で射撃。地に倒れた時はライとアリサの新型2人の近接攻撃という作戦で初討伐ながらもサリエルを追い詰めていった。
そして時間が掛かりながらもサリエル討伐に成功。同時にライの第1部隊隊長就任が決まった。
「呼び出してすまない。こうして顔を合わすのは久しぶりかな?」
「そうですね。」
アナグラに戻り任務の報告をするとヨハネスに呼ばれたライ。
「まずは祝辞を述べさせてもらおう。リーダー就任おめでとう。」
「どうも。」
「さて、君を呼び出したのは他でもない。リーダーとしての権限の強化と義務について説明をしようと思ってね。」
「まずは権限の強化だが、君にはリーダー専用の個室が与えられる。前リーダーのリンドウ君が使っていた部屋を使うといい。」
「その際、ターミナルにアクセスして利用者権限の更新を行なっておくように。今まで閲覧できなかった情報が開示されているはずだ。」
「情報の開示、共有するということは我々フェンリルが君を認め、信用したという意味だ。………願わくば裏切らないことを願うよ。」
「……まるで、前に裏切られたような口ぶりですね。」
「………」
少しばかり不穏な空気が流れる。
別段、ヨハネスとライは仲が良いわけではない。ただ、お互いに腹のなかが読めない、読みにくい相手との会話が何故か楽しいと感じていた。
だからこそなんとなく呟いた一言に反応したライにヨハネスはまるでカウンターをくらった気分になった。
「フッ…どうだと思う?」
「さぁ?どうでしょう?」
売り言葉に買い言葉。喧嘩ではないがこの言葉が相応しい。
『話を戻そう。次は義務についてだ。」
「君には通常任務とは別に前リーダーのリンドウ君が取り組んでいた“特務”を引き継いでもらう。特務については…」
そこで連絡が入ったのか耳を傾ける仕草をするヨハネス。
「話は次の機会にしよう。君も今日は疲れているだろうからね。」
「僕は別に構いませんが?」
「……そうだな。では特務の話ではなく少し謝罪をしようか。」
そう言うとヨハネスは引き出しから『注射器』と『鍵』と『メモリスティック』を取り出した。
「リフレイン」
「そうだ。君が今は行方不明になったオオグルマ博士から受け取ったリフレインを私が回収したんだ。」
「君が注射器を見てる姿を職員が見てたらしくてね。秘密裏にマスターキーを使って回収させてもらった。」
注射器はリフレインだった。そしてライの部屋から無くなった経緯を話すヨハネス。
「確かにリフレインを使えば君の記憶が戻るかもしれないがそれはひと時のものでそのひと時の為に再びリフレインを使う依存性が出る。現にアラガミが出る前からリフレインは禁止薬物だったそうだ。君の記憶を取り戻す可能性の1つを奪ったことに申し訳ないと思うが君という優秀な人材を失うわけにはいかなかった。」
『いえ、別に使うつもりはなかったんで気にする必要はないですよ。」
謝罪するヨハネスにそう返すライ。リフレインの話はこれで終わりと次は『鍵』と『メモリスティック』の方を見る。
「ありがとう。では次はこの鍵とメモリだが、これは君が保護された時に持っていたものだ。メモリ内のデータを見ようとしたがロックされていてね。解除にはパスワードが必要らしくてね。」
「それで諦めて僕に返すと。」
「そんなとこだ。あくまで君の持ち物だが君はある意味では得体の知れない記憶喪失者だ。そんな不審人物を抑えるつもりで返さなかったが今回のリーダー就任を機に君に返そう。」
「どうも。リフレインは?」
「こちらで処分しよう。」
「わかりました。では僕はこれで。」
「ああ。今後も君の活躍に期待する。」
「了解。」
そう言い支部長室を出るライ。
ライの元に戻ってきた鍵とメモリ。
この2つが役割を果たすのはまだ先のことである。
ツバキはリンドウの前の第1部隊隊長だったんでしょうかね?
まぁそれはさておき気づけば12月ですね。
あと一月もしないうちに年越しか。
本作を4月に描き始めて2ヶ月ほど休筆して再び書き始めましたが休まず書いてたら無印は終わってたかもしれませんね。
ぶっちゃけ無印に比べるとバーストとリザレクションは話数が少なくて済みそう。
ご感想により極東支部が神奈川県にあると知り、ライを上京?させる話が出来そうです。
もしかして贖罪の街が東京だったりしませんよね?
そこら辺どうなんだろう?
あとアラガミには属性があるけどアラガミ化したライって何属性でしょう?
氷か雷か神でしょうが寧ろ何もなしでも良いだろうか。
ついでにKMF型アラガミに近いのはヤクシャですかね?
紅蓮に関してはレイジバーストにヤクシャ・ディーブラという炎撒き散らすアラガミもいるしヤクシャ・ラージャもいるし。
とりあえずアリサの話は一区切り、次はソーマとシオか…
無印って結構内容濃いな。