新型と旧型の確執から数日。
神機使いはいつもと変わらない日常を送っていた。
神機使いの仕事であるアラガミ討伐には連携が第一。
無闇に戦えば命を落とすことは神機使いは百も承知だ。
だからこそ多少のギクシャクがあろうとも任務中には新型旧型関係なく協力し合っていた。
贖罪の街。
そこにはライとアリサがいた。
何故2人が此処にいるのか。それは当然、任務だからだ。
「ヴァジュラ相手なら私1人でも倒せるのに…」
愚痴るアリサにライは内心溜息する。
例の確執からライは基本的にアリサと共に任務に出ていた。
正確にはリンドウの指示でアリサと共に任務に出ていた。
確執のおかげでライも一部を除く旧型神機使いとの任務はいけなくなっており、単独でもいけるがそれはそれで陰口を叩かれる要因になり兼ねないと判断され、リンドウからアリサの相棒(お目付役)に抜擢されたのだ。
勿論基本的にはアリサはリンドウと行動するのだが、リンドウがいない時やアリサが独自に任務に取り組む際にはライがリンドウの代わりに入る。
アリサも最初こそは抵抗したが一応上官の指示には従うので渋々ながらも任務に行く際にはライを誘う。
単純に言えばライはアリサの暴走を防ぐ枷であり、監視なのだ。
「おっと今日は新型2人とお仕事か。」
「リンドウさん。」
2人に遅れて姿を現したのはリンドウだった。今日はこの3人で行う任務らしい。
「頼もしい新型2人とお仕事か。足引っ張らないよう気をつけるんでよろしくな。」
「……旧型は旧型らしく任務を行ってればいいと思います。」
「はは。期待に添えるよう頑張るさ。」
相変わらず高飛車な発言をするアリサを流すリンドウ。
そう言いながらリンドウはアリサの肩に触れる。
その時だった。
「キャア!!!」
リンドウに触れられた瞬間、アリサはまるで拒絶反応を起こしたかのように後ろに距離を取る。
「おーおー。随分と嫌われたみたいだな。」
「あ…す…すいません。大丈夫です。」
リンドウの言葉に謝辞を示すアリサ。だが頭を押さえる辺り、大丈夫には見えない。
「うーん。そうだな。よしアリサ。混乱したら空を見ろ。そして動物に似た雲を探せ。落ち着くぞ。」
「それまで此処で待機。これは命令だ。それをしてから合流しろ。」
「な、なんで私がそんなこと…」
「いいから探せ。な?」
「よし。先行くぞ。」
これで話は終わりだとばかりにリンドウはライを連れて歩き出した。
「アリサのことなんだがどうやらいろいろとワケありみたいでな。」
ある程度歩いたあと、リンドウはライにアリサについて語り出した。
「このご時世だ。誰もが暗いものを持っているのは当たり前だ。お前もそうだしな。」
「え?」
「なに驚いた顔してんだ。記憶だよ。お前記憶喪失だろ?」
「あ、そうでしたね。」
「本気で忘れてたみたいだな。」
「まぁ毎日生死の境の日常を過ごすならお前のように気にしないようにするのがいいのかもな。」
「どうでしょう。忘れることがいいことではないでしょうから。今はいいでしょうけどいづれは向き合わないといけない事案ですからね。そのまま忘れるのはただの逃げですよ。」
「今迄忘れてた奴のセリフじゃないな。」
「僕も言ってて気づきました。」
「まぁ話をアリサに戻すが同じ新型のよしみだ。あの子の助けになってやってくれ。」
「さて、その当人が合流する前にやれることをやっておきますね。」
「はい。」
結局今回の任務はアリサが合流するときにはほぼ勝敗を決していた。
アリサは不服そうではあったがリンドウに窘められ今回の任務は終了した。