アリサの加入はフェンリル極東支部に良くも悪くも影響を与えていた。
良い面での影響は新型の噂に違わぬ実力の神機使いが1人増えたことによる戦力補強。
現にアリサの実力は実戦経験が少ないにも関わらず演習と同等の戦果をあげている。
しかし光差す所には陰も差すというように悪い面もある。
それはアリサの単独行動が目に余ることだ。
例外もあるが基本的にアラガミ討伐は複数人の神機使いがチームを組んで行う。
しかしアリサは自分1人の力でアラガミを倒そうとする。
そもそもアラガミという強大な怪物に挑むには神機使いの連携は不可欠だ。
神機使い同士が連携・協力をしてお互いをフォローしながら討伐を行う。
それにより神機使いの死亡率を下げ、討伐成功率を格段に上げるのだ。
しかしアリサはその連携を知ってか知らずかは分からないがその連携の和を乱している。
今は何も問題は起きていないがアリサへの不信感とこの行動による最悪の事態を想定すれば不安が拭えないだろう。
「というわけなんだがなんとかならないかねぇ?」
「いや…僕に縋られても…」
アラガミ討伐任務を終えて帰還のヘリを待っている中、ライは今回の任務の同行者であるタツミにアリサについて相談を受けていた。
「いやな。あの子の言う戦術理論というか考えは分からないわけじゃないんだよ。ただ、俺らいることだし協調性をな。」
「確かに1人で片をつけようとする節はありますね。」
実際、ライも第1部隊の面子での任務の際にアリサの独断行動を目にしていた。任務後、サクヤと口論もしている。
「ブレンダンやカノンはまだ協調性があるからいいけど、カレルやシュンは既にイライラしてるんだよ。ジーナはあまり気にした様子はないけど。」
「なんというか危なっかしいんだよな。今はいいけど。いつか大きな失敗をしそうで。」
「そうですね、一応リンドウさんに伝えときます。」
アリサの面倒は基本的にリンドウが見ている。故にリンドウに伝えればアリサにも伝わるだろう。
「頼むよ。あの子もアンタみたいな戦い方をすればいいのにな。」
「戦い方は人それぞれですからね。」
新型旧型関係なく神機使いはいろいろな性格をしている。好戦的の性格もいれば本来戦いには向いてない性格の神機使いもいる。だからこそその性格に合った戦い方があるのだ。
「なんだと!!?もっかい言ってみろ!!!」
アナグラに帰還したライとタツミがエレベーターでエントランスについたと同時期に語尾を荒げた声が響いた。
急いで現場に向かうとそこではシュンとアリサが口論をしていた。
「分からないなら何度でも言ってあげます。もっと状況に応じてスタングレネードを使ってください。さっきの任務では3つも無駄に消費したじゃないですか。ただでさえ資源が枯渇してるのに貴方みたいに無駄遣いをすれば本当に必要な時に酷い目にあいますよ?」
「んだと!!!」
「シュン!!落ち着け。」
アリサに詰め寄るシュンをタツミが割って入りそれを止める。
「放せよ!!コイツには1度立場というものを…!!!」
「そこまでだ。」
一触即発の状況の中、場を鎮める声が響いた。
「リンドウさん。」
その声の主はリンドウだった。
「悪いな。シュン。俺の教育がなってなかった。アリサにはあとでよく言い聞かせるから怒りをおさめてくれ。」
『……チッ!!」
渋々ながらも怒りをおさめるシュン。抑えていたタツミも安堵の溜息吐きながら抑えていた手を放す。
だが…
「事実を言われて激昂とか…ドン引きです。」
「んだとコラあ!!!」
アリサの余計な一言で再び怒りに火がついたシュン。
タツミも虚を突かれたのかシュンを止めることができず、シュンはそのままアリサに殴りかかる。
しかしそれは叶わなかった。
振り上げたシュンの腕を掴んだライによって。
「放せよ!!アイツは一発殴らなきゃならねぇ!!!」
「シュン落ち着けって。」
すかさずタツミがシュンを落ち着かせようとする。
「フンッ。」
アリサはその光景を冷めた目でみると興味を失ったかのようにその場を去る。
「チッ…放せよ!!」
アリサがいなくなるとシュンは舌打をしてライの手を振りほどく。
「どうせお前も俺達旧型を見下してんだろ!!?あの女と同じようにな!!」
「おい!!シュン!!」
「うるせぇ!!!」
ライに噛み付くシュン。それを叱責するタツミだがシュンは捨て台詞を吐いていなくなった。
「はぁ…」
「悪いな。お前まで飛び火しちまった。」
「いえ。気にしてませんよ。」
リンドウから謝罪を受けるライ。とはいえ新型のライには今のエントランスは居心地が悪かった。
アリサとシュンの喧嘩を見てたのはなにもライやリンドウ、タツミだけじゃない。エントランスである以上、他の神機使いもいる。
故に…
その場で唯一の『新型』神機使いのライはリンドウとタツミを除く周りの『旧型』神機使い達から不審の視線を送られていた。
新型と旧型。同じ神機使い(ゴッドイーター)であるのに大きな溝ができた瞬間だった。
そしてその溝がさらに大きくなる大事件が近い未来起きることになる。