やはりこの恋は……   作:すのどろ Snowdrop

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カランカラン。

ドアが開く音がした。お客が来たようだ。まぁ、接客は余程のことがない限り一色任せなんだが。

 

「いらっしゃいませ〜♪カウンター席で宜しいでしょうか?」

 

一色はトビっきりの営業スマイルでお客を迎える。

 

「えぇ、カウンター席でいいわ」

 

どっかで聞いたことある声だなぁ。やだなぁ、雪ノ下とかとは会ってないからなぁ。

メガネ掛けていこう。

 

「すみません、ミルクティーと卵サンドを」

 

「かしこまりました」

 

カウンター席に座られると俺が注文取らないといけないのが嫌だ。最近は慣れてきて噛むことはなくなったが。

 

ていうか来たの雪ノ下じゃん。何してんの、こんなとこで。お前の家この近くだっけ?

 

「ミルクティーです」

 

「ありがとう」

 

メガネって偉大だな。気付かれないとは思わなかったぞ。一色はもうバレてそうだけど。

 

「貴方、比企谷君?」

 

「ち、ちちちち違いますよ?僕はせ、仙代といいましゅ」

 

噛みまくりじゃねぇか。てかメガネだけじゃ無理なのか。

 

「隠さなくてもいいじゃない。それにホールをやっているのは一色さんかしら?」

 

「んでわかったんだよ……」

 

ボヤきながらメガネを外す。

 

「知ってる?普通の喫茶店にはマックスコーヒーはないのよ?」

 

なん……だと……!?

マックスコーヒーがない喫茶店なんてただの喫茶店だ。

や、どっちも喫茶店だけどさ。

 

「まぁ、小町さんに聞いたのだけれどね」

 

あぁ、ビビって損した。そりゃ分かるわな。

 

「せんぱーい、何バレてるんですかー」

 

「小町がバラした」

 

「小町ちゃんが……。なら仕方ないですねー」

 

知り合いにバレずに運営したかった……。

 

「それにしても久しぶりね、比企谷君、一色さん」

 

「あぁ、久しぶりだな、雪ノ下」

「お久しぶりです、雪ノ下先輩」

 

話しながらも手を動かす。パンを切り、卵を焼く。

一色と雪ノ下が喋ってるなんて意外だな。奉仕部では必要なことばかりだったからな。

 

「卵サンドです」

 

「ミルクティー美味しいわ」

 

「ありがとうございます。雪ノ下様に喜んで貰えるなんて光栄です」

 

「「先輩(比企谷君)気持ち悪いです(わ)。あと違和感しかないです(わ)」」

 

酷い。久しぶりに会った雪ノ下からもいつも一緒にいる一色からも罵倒されるなんて。

 

「俺が気持ち悪いのはデフォルトだ」

 

自虐ネタを挟む。メガネを掛けてニコニコ笑顔で。

何故かメガネを掛けて笑うと顔が赤くなる人多いんだよなぁ。一色とか一色とか一色とか女性客とか。

今も林檎みたいに赤くなってる。

 

「すみませーん」

 

「一色、仕事だ」

 

「あっはい」

 

一色に仕事だと言うとすぐに復活するからありがたいんだが、他の女性客にはどうしようもないんだよなぁ。

目の前にいる雪ノ下とか。

 

「雪ノ下ー、帰ってこい?」

 

「せんぱい、ブレンドコーヒーとショートケーキを」

 

ショートケーキはケーキ用のショーケースに入ってるから一色にやらせている。だが今の俺にとってブレンドコーヒーって意外と難しいんだよなぁ。

はぁ、だる……。

 

**********************

 

雪ノ下が停止してから5分、ようやく雪ノ下が復活した。

 

「おぉ、ようやく復活したな、雪ノ下」

 

「おかえりなさい、雪ノ下先輩」

 

「え、えぇ」

 

雪ノ下が動揺するなんて珍しい。レア度が高いな。そこまで高くないわ。一色のトビっきりの笑顔の方がレア度高い。写真集にしたいまである。一色の笑顔撮ったことないけど。

 

「卵サンドも美味しいわね」

 

「先輩ですからね!」

 

なんでお前が喜んでんだよ……。

 

「なんで一色さんが喜ぶのかしら」

 

「いつもの事だ。ほっとけ」

 

「そう」

 

それから沈黙が続く。さっきの客は今は勉強している。

一色は豆を炒っている。

 

「そろそろ帰るわ。次は由比ヶ浜さん達を連れてくるわね」

 

「これ以上知り合いを呼ばないでくれ……」

 

「ふふ、いやよ」

 

なんて笑顔だ……。いい笑顔のはずなのに凄く悲しい。

 

「今日は奢ってやろう」

 

「あら、ありがとう。珍しいわね」

 

「うっせ、さっさと帰れ」

 

「ご馳走様。また来るわ」

 

「またお越しください」

「また来てくださいねー、雪ノ下先輩」

 

**********************

 

「先輩、お疲れ様です」

 

「あぁ」

 

19時以降は客足が一気に少なくなるので、一色に先に上がらせている。俺は20時半までいるが。

 

一色はその間にお風呂に入り、ご飯を作ってくれる。

美味しいのだが、待たせるのも悪いと思ってしまう。

もう少し早めに終わらせようかね?

 

「先輩、ご飯にします?私にします?お風呂にします?私にします?それとも、私?」

 

「私率高くね?ご飯でお願いします」

 

「……ヘタレ」

 

聞こえてるんだよなぁ。鈍感難聴系主人公じゃないからなぁ。

それに週4でやってるじゃないですか……。忙しいから仕方ない。なんか結婚したけど〜って感じな言い訳だな。

 

「今日はシチューです!」

 

「いつもすまないねぇ」

 

「それは言わない約束ですよ、先輩っ」

 

「そうだったな。んじゃ、いただきます」

 

「どーぞっ♪」





ダメだ……。

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