とある日、昼を食べなかったため、少し早い夕飯としてラーメンを食べていた。その帰り道、なんとなく公園に寄った八幡は、強姦魔に襲われてる陽乃を見つける。
1話
『痛い!』
公園の奥の方から聞こえてくる女性の悲痛な叫び。
俺は、何故かその叫び声がした方へ向かっていた。誰か知らない女性なはずなのに。俺の足は言う事をきかず、公園の奥の方へと歩いていた。
『へへっ、大丈夫だって。痛いのは最初だけさ』
襲っているだろう男は下卑た笑みを女性に向けているのだろう。撮影じゃない限りは。まぁ、そんな可能性なんて全くと言っていいほどないのだが。
『ひっ……。助けて……。助けて、比企谷君!』
聞こえた俺を呼ぶ声に、思わず駆け出した。
冷静に考えろ。雪ノ下さんで適わなかった相手に俺が正攻法で勝てるわけが無い。
ならどうするか。最適解を探せ。
考えろ。俺ならどうするか。捨て身、雪ノ下さんが勝てなかったのに俺なんて秒殺だ。意味無い。助けを呼ぶ。間に合わない。……助け?
『へっ、こんなところに誰か来るわけねぇだろ!』
『大人しく俺らに使われとけ!』
……。これがここで導き出せる最適解。
これならなんとかなるはず……。
「おまわりさん!こっちです!」
あたかも警察が来たかのように叫んだ。
だが、それでもまだ足りないだろうと考え、走って足音を犯人に聞かせる。
『げ、警察。お前ら、逃げるぞ!』
『ちっ』
ボスだろう男が命令をくだし、それに反応したしたっぱは舌打ちをした。
「待て!」
一応声も貼っておく。もちろん声は変えたよ?ちょっと低くしました。
「怪我はないですか、雪ノ下さん」
「ひき、がや……君?」
「はい、そうです。とりあえず服は……破かれてますか。ならこのパーカー使ってください」
俺はすぐにパーカーを脱ぎ、雪ノ下さんに掛け、フードを被せる。しかし、雪ノ下さんは服だけでなく、スカートまで破かれている。本来ならズボンも渡したいところなのだが、予備のズボンなんて持ってきてるわけがない。つまり、ここでズボンを渡さたら露出狂扱いされてしまうのだ。だから……
そう考え事をしていると、胸にやや強めの衝撃が走った。
下を見ると、雪ノ下さんが俺に抱きついていた。
「怖かった……。怖かったよ……比企谷君」
いつもの強化外骨格が壊れ、涙を流していた。
適うと思っていた男に自分の力が通じなかったんだ。怖いと思わない方がおかしい。そんなやつはレイプ願望のあるやつだけだ。少なくとも雪ノ下さんはそんな性癖の持ち主でない。……はず。
「もう大丈夫ですから……」
左手を背中に回し、右手を頭にのせ、泣き止むまで、そっと撫で続けた。
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「比企谷君」
まだ声が震えているが、先ほどよりはまだいいだろう。
「ありがとね」
「たまたま通りかかっただけです」
手の届く範囲でしか助けられないから……。
「それでもありがと……」
「とりあえず家に行きますか」
「……まさか、こんな私を…襲う、の?」
いやいやいや、なんでそうなる?
えと、うん、うん。
「ならそのままの格好で帰りますか?襲われて、そのままの格好で」
「はい、お邪魔させていただきます」
「最初からそう言えばいいんですよ」
「比企谷君のくせに生意気な」
うっせ。
気を使えないから冗談で紛らわしてんだよ。
「おんぶ」
「はい?」
おんぶが何?しろと?
「お姫様抱っこでも可」
いやいや、それは俺の体力的に無理だわ。
でもパーカーを羽織って破かれたスカートを腰に巻いている姿を他人に見せるわけにはいかない。まぁでも俺の家に行くにはどうしても1回は大通りを通らなきゃいけないのだが。
「どうぞ乗ってください」
「うん、ありがと」
そう答えた雪ノ下さんの声は、再び震えていた。
この日、俺は怒りという感情が心の奥底で芽生えた気がした。
そしてこんな目に合わせた陽乃さんを絶対に守ると決めた。
短いですが。