かなり短いですが、どうぞ
「これはどうだ?」
そう言って差し出したワインに、雪ノ下は
「なっ、貴方、それは……」
とりあえずは驚かせることは出来たようだ。
「どこにでも売ってる市販品じゃない……」
「んな高いもん買わねぇよ。ただえさえここのマンション高いのに」
「なら、私と……住む?」
とんでもない爆弾を落としてきた。むしろ核爆弾。
しかも安物のワインを飲みながらなんてこともないように。ワイングラスを持った雪ノ下がすごく絵になってる。じゃなくて、
「いやいや、大人の男女が交際もしてないのに同棲とかアウトだろ……」
「私はそうは思ってないわよ?」
「や、そうじゃねぇだろ……」
きょとんと首を傾げる雪ノ下。24になってもこの可愛さとはいったい……
「だめ、かしら……?」
寂しそうに目に少しの涙を浮かべて俺を見上げてくる。だからといって同棲を認めるわけにはいかない。
「鍵渡したんだからいいじゃねぇか……」
「でもお金はかかるでしょう?」
ぐぬぬ、だからといって同棲するわけには……
「あ、ごめんなさい、貴方には将来を共にする人がいるかもしれなかったわね。鍵も返すわ……」
え?将来を共にする人?いたら社畜やってねぇよ。……はぁ。折れるか。
「……わぁったよ」
「え?」
「同棲、すればいいんだろ?」
寂しく曇った顔が一気にパァっと光るような笑顔にかわった。
「じゃあ荷物持ってくるわね!」
え、こっちに住むの?いや文句はないけど。
「ん、手伝う」
「比企谷君はもう寝なさい。明日も朝は早いのでしょう?」
「だからといってお前にやらせるわけにはいかねぇだろ。体力ねぇんだし」
体力がないことを指摘すると、雪ノ下はムッとした表情になる。
え?何、違うの?
「それは6年も前の話よ。今は違うわ」
でももう日付変わるぞ。はぁ。
「いいから今日は寝ろ。暇な日に手伝ってやるから」
暇な日、ないけど。
「暇な日なんてないでしょう?」
「今日はもう酒飲んでるんだ。やめとけ、じゃない、やめろ」
「…………わかったわよ」
しぶしぶ頷くと、さっきまで座っていた椅子に再び腰掛け、ワイングラスを手に取った。
若干顔赤くなってるけど大丈夫なのだろうか。酒に弱いならもう寝かせないと……。
「もう酔ってんだろ?帰ってねr……」
「すぅ……」
もう寝てた……。はぁ、床で寝るか。
椅子に座ったまま寝ている雪ノ下の膝の裏と背中に手を回し、そっと持ち上げる。所謂お姫様抱っこというやつだ。いや、言い訳をさせて貰うとこれ以外の持ち運び方が思いつかなかったんだよ。ていうか、誰に言い訳してるの?
それはおいといて、足で若干開いてた寝室の扉を開き、雪ノ下をそっとベッドに寝かせる。そして寝かせてから気付いた。
「毛布掛けられねぇじゃん」
はぁ、と一つため息をつき、クローゼットの中から予備の毛布を取り出し、それを雪ノ下に掛ける。
そして……
「俺の分ねぇじゃん」
今日の俺ダメダメじゃねぇか。まぁいいや。コートでも掛けて寝るか。暖房も付けときゃなんとかなるだろう。
っと、一つ忘れてた。アイツも寝てるんだしこれくらい許してくれるだろう。襲わないだけ感謝して欲しいくらいだ。
「おやすみ、雪ノ下」
そっと頬を撫で、寝室を後にした。
その寝室には少女のような寝顔で頬を赤く染めた雪ノ下が毛布に包まり、悶えてたという。