関東近郊の部活は遠征というより遠足気分です。
いろはとちょっと遠出した八幡の運命はいかに!?
つか、千葉以外はアウェーなはちまん。
3.11
この日は「絆」という言葉をよく聞く。
なにもしなくても、世界は空でつながっている。
忘れられがちだが、千葉も被災地だ。
津波もきたし、やんごとなき方々もお見舞いに来られた。
俺、「比企谷八幡」はそんな地域を食べて応援している。
そう。
千葉が誇る皇室献上品の坂本総本店の落花せんべいをかじりながら
3.11のこの日
なぜか、八時ちょうどのあずさ2号で中央本線を甲府に向かっていた。
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すまん。ちょっと盛った。
甲府に向かっているののは事実だがいろいろ訂正する。
まず、八時ちょうどのあずさ2号はない。
昔の国鉄の時代ならいざ知らず、今の時代、下りが奇数上りが偶数なので下りのあずさ2号は存在しない。
ああ、そういえば、総武本線の急行もいつの間にかなくなっていたな。
東海道線のオレンジと緑のカラーの車体で両国どまりだったのを憶えている。
それに8時ちょうどの特急に間に合うには、千葉を6時台にでなければならない。
そんな朝早くからこの比企谷八幡が行動するはずもない。
そして、学生である俺たちに特急を使う甲斐性はない。
総武線快速で東京まで、そして東京から中央特快で高尾まで
そして高尾からは中央本線でのんびり各駅停車の旅だ。
そう俺たち。
比企谷八幡と一色いろはは、朝倉大介の「甲府部活」のため中央本線をとことこと乗っているのだった。
「せーんぱい。はい。あーん。」
中央本線に乗り換えてから、座席がボックスシートになり、隣に座った一色いろはは、てづくりのお弁当を俺に差し出していた。
ちなみに俵おにぎりとから揚げと卵焼きにきゅうりのぬか漬けというシンプルなものだ。
「次はから揚げがいいですかー?」
「いや、自分で食えるから。弁当箱ごとくれ。」
土曜の電車の中は俺たちだけってわけじゃない。
はっきりいって周囲の視線が痛い。
「えー。そんなー。せっかく朝早く作ったのに、先輩は作った人の特典を奪うそんなヒドイ人なんですかー?」
なんだよ。その特典は。きいたことねぇぞ。
はっきりいって周囲の目を気にせずにそんなことできる鋼メンタルありません。
ちょっとふくれ気味になる一色もかわいいなと思って見ていると
「まあ。いいです。照れてる先輩も見れましたし。今日はこのへんでかんべんしてあげます。」
なんですか?それ?
一色はドS発言をさらりと言ってのけた後、「はい。先輩。」といって弁当箱をさしだしてきた。
容器は使い捨てのいたってシンプルなやつだ。
「ちょ。おま。俺をからかって楽しい?」
「たのしいです。」
「・・・・・・・」
1秒で肯定されては二の句が継げない。
おとなしく弁当を受け取って、もそもそと口に運ぶ。
くやしいけどうまい。
おにぎりの具は、おかか、鮭そしてこんぶ。卵焼きは甘く、から揚げはしょうが醤油がきっちり染み込んでいていい仕事をしている。そしてきゅうりのぬか漬けは、一色家お手製のものという。塩加減も優しい。
出発前に売店で買ったマッ缶とも非常にあう。
「おいしいですか?」
「・・・ん。ああ。うまい。小町には負けるけどな。」
「でたっ。シスコン。正直キモイです。ごめんなさい。」
うん。正直言うと小町にも負けてないんだけど。
わかっていたけど、キモイとか生理的に無理とかは男を傷つける一番のパワーワードだからね。
はちまん慣れてるから大丈夫だけど。
もくもくと箸を運ぶ。
いや、ほんとうまい。
あの・・・一色さん?こちらをじっと見るのはやめてくんない?
食べずらいんだけど。
「・・・・んだよ。」
「あ、いや。ちゃんと食べてくれてるなーって。」
「見られてると食べにくいからやめてくんない?大丈夫だから。うまいし。苦手なもんもないから全部たべるから。」
「・・・・・・・・はあ。せんぱいに女心を理解しろってのが間違いですよね。」
そういって、自分の分を口に運ぶ一色。
ごくり・・・・。
その仕草に俺は目をうばわれていた。
・・・・女の子がモノを食べる姿ってのもけっこうやらしいんじゃね?
・・・・・・・・・・っ!いかんいかん!
ヤバいなにかに目覚めそう!
気が付いたら一色がこっちをじと目で見ている。
「・・・・先輩。じっと見られるとキモイです。食べにくいです。」
うわ!きづかれた!
あわてて目をそらして視線を車窓の外へ見やる。
「今の今までお前がやってたじゃねえか。わかったろ。みられると食べにくいってのが。」
「わたしみたいなかわいい子がするのはいいんです。先輩みたいなひとがやるとただキモイかつ不審者です。」
うわっ。
ただしイケメン(美人)に限る法則を持ち出して一瞬にして論破してきましたよこの子。
言ってること雪ノ下とかわんねーよ。なに変なトコ影響されちゃってんの?
「ちょ、お前ひどくね?」
「ひどくないですー。」
ファミリー連れも多い週末の電車の中で甘々な空気をのせたまま、甲府駅へ近づいていくのだった。まる。
「で、こっからどうすんだ?」
「えっとですね。身延線に乗り換えて、国母で降りるってあります。」
甲府駅のホーム。
スマホで行先までの情報を確認しつつ歩いてく一色。
「おい。荷物かせよ。」
「ふわっ!?せんぱい?」
片手スマホ、片手荷物の見た目不安定な一色からバッグをなかば強引に受け取る。
ったく。なんでこんなに大荷物なんだか。
千葉の時はすんごく身軽だったのに、今回はまるで一泊でもするかのような荷物の量
まあその中にお弁当も入ってたんですけどね。
それにしても少し荷物多いんじゃね?
「意外と重いな。お前なんでこんなに大荷物なの?」
「あのその。女の子にはいろいろあるんです。それに今回のクラブ風林火山にはコインロッカーもクロークもあるし、備えあれば憂いなしってやつですよ。先輩」
「そんなもんなのかね?」
「そんなもんなんです。それより先輩。身延線まで時間もあるし、少し時間つぶしませんか?」
「まかせるわ。そうだな。甲府の駅ビルにサイゼもあるしそこで時間つぶすのもいいかもな。
「・・・・・・せんぱい。ホントはロボットでサイゼマップがインストールされているんじゃありませんか?」
「そんなわけあるか。それにロボットというな。ヒト型なんだからア・ン・ド・ロ・イ・ドと言え。」
「先輩なんかロボットで十分です。」
「ひで。」
甲府の駅を途中下車して、身延線の時間まで、駅ビルやその近辺を散策、物色していたりした。(サイゼは却下された。)
そして俺たちは、それぞれアイスを買って、身延線の2両編成の電車に乗り込んだ。
「やっぱりまた車内で食うのか。」
「まあ。落ち着いて食べられるところありませんしね。はい。先輩の分です。」
一色は桔梗信玄餅のアイスクレープそして俺は
「ルマンドアイスなんてはじめてみましたよ。」
「そっちの桔梗信玄餅のアイスクレープもクレープといいつつまるで棒みたいな形だな。」
そう。一色の桔梗信玄餅のアイスクレープは細いスティック形状で、俺のルマンドアイスは北陸限定だったのが長野山梨で解禁されたと聞いて、ひそかに楽しみにしていたのだ。
ふたりでならんでアイスを広げる。
「あ、それ見たことないんで一口もらえますか?」
「は?」
半分くらい食べたところで、隣からいきなり声がかかる。
「先輩さっき、新潟限定が長野山梨で解禁になったっていってましたよね?ご当地アイスすこしほしいです。」
「しかたねえな。ほらよ。」
すこし惜しいが、こうなった一色は絶対にひかないのでおとなしく口をつけていない1ブロックをくれてやる。
「へー。バニラモナカのなかにルマンドがはいっている感じですか。」
解説乙。
最中アイスなんで、関節キスとかいうときめきイベントは発生しない安心物件。
まあ250円は高いと思うが、限定アイスだからこんなもんだろう。
「はい。じゃあお返しです。」
そういって、一色はいままで食べていた桔梗信玄餅のアイスクレープを差し出してきた。
「は?」
「は?じゃないです。お返しです。わたしが先輩のアイスをすこしもらったんですから、わたしも先輩にかえさないとダメじゃないですか。えいっ。」
バレンタインイベントの時の勢いそのままに棒状のアイスクレープが口の中に押し込まれる。
「こういうの。どうですか?」
「・・・・・悪くねぇかも。」
「そうですか。」
そういって一色は俺からアイスクレープを引き抜くと。
ためらいなく続きを口にしやがりました。
えええええ?さすがビッチ。こっちは間接キスの事実にどきまぎしているのに。
「んー?せんぱい?なに考えてマス?」
・・・アイスよりも冷たい声で俺のドキドキは一気に鎮火されましたとさ。まる。
甲府から身延線で5つ目の国母で降りて、そこから歩くこと20分
俺たちは、目的の地。
クラブ風林火山へ到着した。
部活成分ないよ!
でも地方観光も部活の楽しみだよ!