そして今回はかなり長くなっています。
ほとんど妹紅視点です。
「……この辺りですね。近いです」
張り紙に書いてあった妖怪を追って山に入ってから約二時間が経ったころ、先頭を歩いていたシロがそう告げた。時刻はすでに夕暮れ時で、暗い森の中ということもあって周りが見づらいが、立ち止まって耳をすませると微かに物音が聞こえる。
「……これは、妖力のぶつかり合い? どうやらこの近くで妖怪同士が戦っているみたいですね」
「妖怪同士で? どうしてそんな……」
「まぁ妖怪も人間と同じで一括りにはできないからな。人間同士で争うことがあるように、妖怪同士争うこともあるだろう」
シロの報告を聞いた私は疑問に思い首を傾げた。妖怪同士で争うなんて、そんなことがあるのだろうか。
そんな私の様子を見たハクはあり得ないことではないと言っているのだが、人間を襲うはずの妖怪が争っている理由がわからない。
「どういう事情があるのかはわからないが、当人たちのところに行かなきゃ始まらないな」
「ですね。近づいてみましょうか」
「……あのね、妖怪に近づいているんだからもう少し危機感を持ちなよ、二人とも」
音のするほうへずんずん進んでいく二人を見て、本日何度目かわからないため息を吐く。どうしてこの二人は妖怪に対してまったく警戒心を持っていないのだろう。
二人を死なせないようにとついてきたのだが、ここまで無防備だと守るのは大変そうだ。目を離さないようにしないと。
「あ、見つけた。あれだろ」
「ほんとだ。戦ってますね」
少し屈みながらハクの視線の先を追うと、確かに妖力を使いながら戦っている二人が目に入った。
遠目なのではっきりとはわからないが、片方は張り紙に書いてあった特徴とほぼ一致している女性だ。違う点は頭にあるという二本の角が見当たらないことだけ。正直私には人間にしか見えないのだが、ここまで妖力を追ってきたシロが言うのだから妖怪で間違いないとは思う。
それとは対照的にもう片方は一目で妖怪とわかる。少し赤の混じった黒髪をした十ほどの少女の姿で、鋭い爪や動物の耳と尾が生えていることから、どうやら妖獣の類のようだ。
何故争っているのかはわからないが、ここは手を出さずに様子を見るのが正解だろう。お互い戦って消耗すれば退治するのも楽になるし、上手くいけば共倒れにも―――
「ちょっと止めてくるわ」
「はい」
「うん…………え? はぁ!?」
ハクが一言、まるで『散歩に行ってくる』並みの軽さでそう言いながら立ち上がる。そのあまりにも自然に言い放たれた言葉の意味を理解するのに時間がかかった私を誰が責められよう。というか何故シロは普通に見送っているんだ!?
「ちょ、ちょっと待って! ハク!」
「まぁまぁ妹紅さん。ここはハク様に任せましょう」
妖怪のほうへ向かって行ってしまったハクを連れ戻そうとすると、隣で屈んでいたシロに止められた。その表情は先程までと変わらず穏やかなままで、とても知り合いが死にに行っている状況だとは思えないものだった。
「任せましょうって……ハクは戦えないんでしょ!?」
「へ? どうしてですか?」
「どうしても何も、妖力の追跡を全部シロに任せてたじゃない!」
ここに来るまでの道案内はすべてシロによるものだ。彼女が妖怪の残した妖力を探知して追跡していたわけだが、ハクはそれを一切手伝っていない。いや、恐らく手伝えないのだ。
妖力の探知ができなければ戦えないのかといえばそんなことはないが、探知できる者のほうが力の扱いに精通しているのは確かだ。こう言っては何だが、戦闘においては妖力の探知ができないハクより、探知できるシロのほうが頼りになるはずだ。
そう思ってハクを止めようとしたのだが、そのことをシロに伝えると首を傾げてきょとんとした表情になった。だがすぐに得心が行ったような表情に変わり、ああと声を漏らした。
「なるほど、そういうことでしたか。でも大丈夫ですよ」
「一体何が大丈夫だって―――」
「……おーい。何が理由で喧嘩してるのかはわからんが、そこまでにしておけー」
「あぁぁ、言ってる間に!」
シロとの問答を繰り返しているうちにハクが妖怪の近くまで行ってしまった。友人に挨拶するくらいの気楽さで仲裁に入った彼を見て、張り紙に書かれていた銀髪の妖怪が困惑しているようだ。
「な、何しているんだお前! ここは危険だ、離れていろ!」
「離れていろって言われても、もう近づいちゃったからなぁ」
「だから離れろと言っているんだ! そこにいるのは妖怪だ! 町を襲うような危険なやつだ!」
「…………はー、なるほどね」
銀髪の妖怪が叫ぶようにハクに警告している。その状況を見ていた私は疑問を感じざるを得なかった。ハクを止めるため動かそうとしていた足は、今はピクリともせずその場に立ち尽くしてしまっている。
妖怪が人間に警告している。そこの妖怪は危ないと、妖怪が人間に言っているのだ。動けなくなってしまうほど混乱するのも無理はないと思う。
私がそれほど混乱しているというのに、ハクは銀髪の妖怪の言葉を聞き、何に納得したのか一人頷いていた。私とは別の理由でその場から動かないハクに、銀髪の妖怪は焦燥しているようだ。
「早く行け! ここは私が時間を稼ぐ!」
「まぁ落ち着け。そっちのお前も矛を……というか爪を収めてくれ」
「グウゥゥゥ……!」
焦る妖怪の言葉を流して黒髪の妖獣のほうを向き、同じように戦闘を止めようとするハク。だが黒髪の妖獣のほうは狼のような唸り声を上げるだけで、爪を隠そうともしていない。その様子はまさに獣そのもので、まるでハクの声など聞こえていないようだ。
「……言葉が通じないってことはないと思うんだがな。いや、千年前なら言葉が通じる妖怪のほうが珍しかったっけか。言葉が通じないことに疑問を持つようになるとは、時代ってのは常に変化するもんだなぁ」
「な、何を言って―――」
「ガアアアァァ!」
ぶつぶつと独り言を言っているハクに銀髪の妖怪が声をかけようとしたとき、それまで動きを見せなかった黒髪の妖獣が咆哮とともに二人に突進していった。鋭い爪を光らせ、獣じみた動きで目の前の獲物を切り裂こうとハクに肉薄している。
「お、おい、お前!」
「!」
銀髪の妖怪の叫びで突進してきている妖獣に気付いたハクは、妖獣の繰り出した爪の横薙ぎを上体を後ろに反らすことで何とかかわした。だが妖怪の動きは止まらず、バランスを崩したハクの右腕を掴むとその鋭利な牙を突き立てた。
「ガアウゥ!」
「っ、ハク!」
凄まじい勢いで咬みつかれたハクは思わず二、三歩後ずさる。鋭い牙で貫かれた皮膚から溢れる血を見た私はすぐに助けようとしたのだが、またもシロに腕を掴まれ止められた。
「っ! 何してるんだシロ! 今すぐ助けないと!」
「まぁまぁまぁ、落ち着いてください妹紅さん。ハク様なら大丈夫です」
「あんな状態で大丈夫なわけ! …………あれ?」
シロに向けていた視線をハクのほうへ戻す。先程までと変わらずハクは妖怪に咬みつかれ、そこから鮮血が流れ出しているわけなのだが、その光景にどうも違和感を感じる。
そしてその違和感の正体はすぐにわかった。ハクがまったく痛がっていないのだ。あれだけ深い傷を負えば泣き叫びパニックになってもおかしくないのに、ハクは悲鳴を上げるどころか網代笠の隙間からわずかに見える表情すら変わっていないようだった。
私がその不自然な光景に呆然としていると、ハクが中指を丸めて親指で押さえた左手を妖獣の額の前まで持っていった。中指には力が入っているようで、わずかに震えているのが見える。
「ふむ、妖力過多で暴走中ってとこか。ま、生まれて間もない妖怪ならよくあることだ。とりあえず今は眠っておけ」
ハクはそう言うと、押さえていた親指をはなした。必然、解き放たれた中指は勢いよく跳ね上がり、その進路の邪魔となっていた妖獣の額に大ダメージを与えた。小難しく説明してしまったが、要するにデコピンである。
こんなに細かく説明してしまったのは、そのデコピンを受けた妖獣のリアクションが異常だったからだ。
デコピンを受けた妖獣は身体を大きく仰け反らせてもなお勢いが止まらず、そのまま上半身を勢いよく地面に叩きつけて後頭部が埋まってしまった。空中だったら一回転していたかもしれない。
「…………」
「…………」
こうして脳内で状況を確認してはいるが、正直絶賛混乱中だ。それはハクの近くにいた銀髪の妖怪も同じようで、口を開けて唖然としている。恐らくだが、今の私も同じような表情をしているだろう。ちなみに、デコピンを受けて気絶している妖獣も同じように口を開けている。私たちと違い白目もむいているわけだが。
そしてその光景を作り出した当の本人はというと。
「やっべ、少しやり過ぎたかな?」
そう呟きながら傷一つない右腕でぽりぽりと頭をかいていた。
「と、とりあえず礼を言う。助かったよ、ありがとう」
「はいよ」
「その……腕は大丈夫なのか?」
「これが大丈夫に見えるか?」
「ああ、全然大丈夫に見える」
「じゃあ大丈夫だ」
咬まれたはずの右腕を銀髪の妖怪に見せるハク。横で気絶している黒髪の妖獣に咬まれ、出血までしていたはずのその腕には傷も傷跡もなく、辺りには血の一滴も見当たらない。そんな状態を見せられては大丈夫だと言うしかないだろう。何がどうなっているのかはわからないが、怪我がなくてよかった。
というかそんな風にハクを心配している様子を見せられると、目の前にいるこの人が人間か妖怪かわからなくなってしまう。
「私は
「え? 待って、自分からここに来たの?」
「そうだが?」
「退治人に追い払われてじゃなくて?」
「退治人……追い払われて? 何のことだ?」
張り紙には『退治人が追い払った』と書かれていたはずだ。だというのにこの妖怪―――慧音の反応からして、そもそも退治人には会ってさえいないようだ。というか慧音の話が本当なら、彼女が妖怪を追い払った退治人本人のような気がする。だがすぐに妖怪を追って行ったのなら張り紙を作れるわけがないし……。
どういうことかと疑問に思っていると、話を聞いて考えていたハクが一つため息を吐いて話し始めた。
「……そこで寝てる妖怪からも話を聞かないとわからないが……。どっちにしろ、いい話ではないと思う」
「一体何の話だ? 君ら三人はあの町から来たのか?」
「ああ。妖怪退治依頼の紙が貼ってあるのを見てな、はるばるここまで来たんだ」
「なるほど、その紙にこの妖獣のことが書かれていたんだな」
「いや、書かれていたのはお前だけ。あの町の中では襲撃したのは慧音ってことになってる。そこで伸びてる妖怪のことは一切書かれてない」
「な、何だと!?」
あの町での認識を知った慧音はかなり動揺しているようだ。まぁ彼女の言ったことが本当だとすれば、町を守るために妖怪と戦ったのに、その妖怪の起こした被害をすべて押し付けられたということになる。そんな話を聞けば動揺もするだろう。
「じゃ、じゃあ私は、あの町には……」
「帰らないほうがいいだろう。少なくとも数年はな」
「そ、そんな……」
慧音は絶望といった表情のまま、崩れ落ちるように両膝を突いてしまった。あの町をかなり大切にしていたようだ。やっぱり私には人間にしか見えないなぁ。
「くっ……! こんなことになったのも全部そこの妖怪のせいだ! 頭突き百回はしないと気が収まらない!」
前言撤回、やはり妖怪らしい。頭突き百回とか鬼畜過ぎる。
「落ち着け落ち着け。こいつにも事情があったんだよ」
「お前に何がわかるっていうんだ!」
「落ち着けっての」
「っ…………悪かった……」
「とりあえず今日はここで野宿だ、どうせ町には戻れないしな。準備するのを手伝ってくれ」
「ああ……手伝うよ」
憤慨していた慧音だったが、ハクの冷静さに引きずられる形で少し落ち着いたようだ。だが気分が落ち込んでいるのは変わらないようで、誰が見てもわかるくらいに元気がない。
「自己紹介が遅れたな。俺はハクという。白いって書いてハクだ」
「私はシロです」
「私は妹紅、藤原妹紅だ」
「ああ、よろしく。改めて、助けてくれてありがとう」
「はいはいここ軽く掃除して、これ敷いて、これ準備して、これ組み立てて、ちょっとそっち持ってて、そこの妖怪に毛布かけて」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
自己紹介もそこそこに、次々に野宿の準備の指示を出すハクに困惑する慧音。その様子を見た私は少し笑いながら準備を手伝った。
ところで、手ぶらに見えたけどどこからこんなたくさんの荷物を出したのだろう。
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そのあと、野宿の準備を終えた私は慧音と黒髪の妖獣に少しの警戒はしつつも大分落ち着くことができていた。それは妖怪がいても対処できる人間が近くにいたことも大きな理由だろう。シロのほうはいいとして、ハクが何故あんなに強いのかは疑問ではあるが。
だが、今ここにハクはいない。野宿の準備のあとでお茶を入れようとしたところで手持ちの水がなくなっていたことに気付き、川か何かを探してくると言って出て行ってしまったのだ。なので今ここにいるのは私とシロ、慧音、そしていまだ気絶したままの黒髪の妖獣だ。
シロ相手ならともかく、慧音とは自身の人見知りな性格と、彼女が妖怪であるという事実から距離がつかみにくい。人間らしいと感じてはいても、警戒を完全に解くのは難しいのだ。シロは相変わらず人懐っこそうなニコニコとした笑顔を浮かべているのだが。
「……二人はあの、ハクとかいう男とは長いのか?」
「へ? あ、いや……私は今日、会ったばかりだけど」
「私は話せるようになってから何年か経ちましたね。一緒にいた時間はもっと長いですが」
「? そ、そうか……?」
私のピリピリとした感じが伝わってしまったのか、それとも彼女も状況をつかみ切れておらず緊張しているのか、おずおずといった感じで質問をしてきた。内容自体はたわいもないもので、この気まずい空気を変えようとしただけのものだということがわかる。
私は言葉少なに無難な答えを返したが、シロの答えを聞いた慧音は疑問を持ったようで少し首を傾げている。確かに、長い間一緒にいたのに話し始めたのは最近、という答えには私も疑問を感じた。
「……彼は一体何者なんだ? 小柄とは言え人間サイズの妖怪を一撃で、それもデコピンで気絶させるなんて普通の人間ができることではない。だというのに、あのとき彼からは霊力も魔力も妖力すら感じなかった……あれは一体……」
慧音が右手で頭を抱えながら呟くように話している内容は、私がハクに対して感じていた疑問をさらに強めるものだった。いよいよもって普通の退治人どころか、普通の人間か怪しくなってきた。
わからないことだらけで少し疲れてきてしまい思わずため息を吐いたところで、それまでたき火に小枝を入れていたシロが話し始めた。
「力を感じなかったのは抑えていたからですよ。ハク様や私が持っている力は少し珍しいものなので、慧音さんみたいに力を感じることのできる人に会うと怖がられることがあるんです。なのでいつもは力を外に出さないようにしてるんですよ」
「だ、だが本当に何も感じなかったぞ。普通あれだけ威力のある攻撃をすれば、漏れ出る力はあるはずだろ?」
「普通ならそうですが、ハク様は力の扱いに関して右に出る者がいないほどの腕前です。使った力が一切外に漏れ出ないように操ることなんて朝飯前なのです!」
シロは胸を張りながら誇らしそうに説明しているのだが、それを聞いた慧音は目を丸くして驚いていた。私はあまり力の扱いに慣れているわけではないので実感はなかったが、慧音の反応からそれが信じられないほど難しいことだということは理解した。だがまだわからないことはたくさんある。
「そんなにすごいことができるのに、どうして力の探知はできないの?」
「いえ、ハク様も探知できますよ。というか私よりも速いし正確です」
「え? そうなの?」
「はい。その証拠に、私が町で妖力を探知したときに、ハク様が『距離もそんなに遠くないし』と言っていたでしょ? 私はおおよその方向を指さしただけなのに」
「……あ、言われてみれば」
確かに、あのときシロは距離については話していなかったのに、ハクはその場所が近いことを知っていた。つまりあの時点で妖力の追跡を済ませていたということだ。
ハクが力の探知ができることはわかった。だがそうなるとまた一つ疑問が出てくる。
「じゃあ何でわざわざシロにやらせてたんだ?」
「あれはただの訓練ですよ。私もそこそこ力は使えますが慣れているわけではないので、ああして経験を積んでるんです」
「な、なるほど……」
シロの答えを聞いた私は座ったまま体を後ろに反らして、すっかり暗くなった空を見ながら息を吐いた。
訓練のためにあえてシロにやらせていたということか。そうなるとシロが妖力を探知できたときのハクの反応にも納得できる。例えるなら娘の成長を喜ぶ父親といったところかな。まだ二人の関係などよくわからないことはあるが、一先ず納得することができた。
「私も少し聞きたいんだが、さっき言っていた君と彼の力が珍しいというのは一体―――」
「……う、うーん…………」
「!」
私からの質問が終わったことを察した慧音がシロに何かを聞こうとしたとき、今まで話していた三人以外の声が聞こえてきた。私がその声の主が誰かわかったときには、慧音は今まで座っていた場所から飛び退き、いつでも戦えるよう構えながらゆっくり起き始めた黒髪の妖獣を睨みつけていた。
「……う……ここは……? 私確か……」
「あ、起きましたね。体調はどうです? 痛いところとかありませんか?」
「え……? えっと……頭が少しズキズキするかな……?」
「しばらく気を失ったあとの頭痛はよくあることです。大丈夫ですよ」
「いや、何ていうか……物理的にというか、思いっきり叩かれたあとみたいな―――」
「あーそれもよくあることです全然大丈夫なので全然気にしなくていいですよいいですかいいですね?」
「あ、はい……」
目を覚ました妖獣は少し混乱しているようで、シロが話して落ち着かせようとしている。この場面だけならシロが怪我人を思いやる少女に見えるが、妖獣が気絶した原因を知っている私には洗脳で証拠隠滅しているように見えて少し怖い。
とりあえず納得した(というか納得させられた)妖獣は未だ意識がはっきりしていないようで辺りをきょろきょろと見回している。だがその目線がシロと私を通り過ぎて慧音のほうへ向いたとき、妖獣は今までのぼーっとした様子から一転して驚愕と警戒に満ちた表情に変わり、先程の慧音のように距離を取った。
「あ、あなたは! あのとき突然襲ってきた妖怪!」
「なっ!? それはこっちのセリフだ! お前のせいであの町に大きな被害が出たんだぞ!」
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて」
慧音と妖獣のお互いが今にも飛び掛かりそうな勢いで睨み合っている。私とシロが何とか落ち着けようとするが、険悪な空気が薄まることはない。
どうしたものかと考えていると不意にガサガサと草木をかき分ける音がした。反射的に音のするほうを見るとハク……と思われる男性が歩いてきていた。確信がなかったのは彼が網代笠を被っていなかったからだ。
「おう、ただいま。お、ケモミミのほう、目を覚ましたんだな」
「えーと……ハク、で合ってる?」
「ん? 如何にも俺はハク、白いって書いてハクだが、何を今更…………ああ、網代笠を取ったからか」
「……ハクも髪、白かったんだ?」
「白いって書いてハクだからな」
「おかえりなさいです、ハク様」
念のために聞いてみると、彼は当然だろといった感じに肯定した。ハクは少し首を傾げていたが、何故私がそんな質問をしたかはすぐにわかったようで、自分の髪を触りながらなるほどと言った。
網代笠を取ったハクの髪の毛は私やシロと同じ混じり気のない白髪だった。夜の森の中で光源はたき火だけだったのではっきりとは言えなかったが、本人が肯定したことから間違いないだろう。
それにしても、今日だけで自分と同じ髪色の人とこんなに会うとは……。
「ところで、これは何の騒ぎだ?」
「あ、そうだ。実は―――」
未だにいがみ合っている慧音と妖獣を見てハクが再び首を傾げているため、こうなった経緯を説明する。話を聞いたハクは右手を顎に当てながら小さくふむと呟くと、二人のもとへ向かって行った。
「慧音、ただいま」
「む、ハク。帰ってきていたのか。悪いが今は呑気に挨拶などできる状況じゃないんだ。念のためこいつを拘束するのを手伝ってくれ」
「いや、俺は拘束をするつもりはない。そんなことすればまともに話も聞けなくなるだろ?」
「妖怪の話など聞くだけ無駄だ! やつらは人間の敵なんだぞ!」
「お前も半分は妖怪だろ」
「なっ……」
ものすごい剣幕で怒鳴っていた慧音だったが、ハクの一言で先程までの怒気がすべて抜け落ち、呆然とした表情で固まってしまった。多分『半分妖怪』という部分に反応したと思うんだけど……。
「…………気付いていたのか」
「そりゃ俺は退治人だからな。それに相手が妖怪か人間かそれ以外かを調べるのは得意だ」
「……そうか」
「……はぁ。いいか? 俺が言いたいのは、たとえ人外でも人間と同じように誰かを大切に思うことができるって話だ。半分妖怪のお前が人間を大切に思っているようにな」
「…………」
「妖怪も人間と同じで一括りにはできない。ああ見えてシロも妖怪だぞ?」
「な……、それは本当か……!?」
ハクの言葉を聞いた私たちは横でニコニコしながらピースしているシロを見る。この人畜無害でちっこくてかわいい少女が妖怪って……にわかには信じられない話だ。反対に慧音が半分人間半分妖怪だということは意外にあっさり受け入れられた。理由は彼女自身がすでに人間らしかったからだろう。
ハクはすっかり勢いのなくなった慧音の頭をポンポンとなでると、何が何やらといった顔をしていた妖獣のほうを向いて肩をすくめた。
「初めまして、俺はハクという。白いって書いてハクだ。よろしく」
「え……あ、わ、私は
「早速で悪いが今回の出来事の経緯を聞きたい。二日前の夜から今にかけてまで何があったか聞いてもいいか?」
「う、うん。わかった……。覚えてることなら……」
「…………二人の話からして、多分こういうことだろう」
慧音と影狼と名乗った妖獣の二人の話を聞いたハクは、今回の出来事のあらましを説明してくれた。当の二人もずいぶん大人しくなり、ハクの話を静かに聞いていた。
内容はこうだ。まず町にあった張り紙には『町を襲った妖怪を退治人が追い払った』と書かれていた。ここでいう妖怪とは慧音のことで、退治人はあの町にいる誰かのことだ。だが実際には町を襲った妖怪は影狼で、追い払ったのが慧音だということが二人の話でわかった。シロが二つの妖力を感じたと言っていたのは正しかったというわけだ。
ここからはハクの推測らしい。あの町で二人が戦って影狼が逃げたあと、近くにいた退治人が騒ぎに気付いて現場に向かい、そこで見たのが破壊された建物と慧音だった。必然、その退治人はこの惨状を作ったのは慧音だと判断した、ということらしい。要するに勘違いしてしまったのだ。
「自分が追い払ったことにしたのは名声が欲しかったのか、単に混乱していただけか、はたまたそれ以外の理由か……。ま、何でもいいけどな」
話を一区切りつけたハクは大きく息をついて、話しながら入れていたお茶を飲んだ。一応私たちの手元にもお茶はあるが、ハクとシロ以外は話に集中しているせいでまったく手を付けていない。
「それで影狼のことだが、あの町を襲うつもりがなかったというのは本当だろうな」
「何故そう言えるんだ?」
「襲うつもりだったらもっと被害は大きかっただろうからだ。多分影狼は狼の妖怪だよな?」
「へ? そ、そうだけど」
「その事件があったのは満月の夜だ。狼と満月っていうのは関係が深い。狼の妖怪が満月の日に妖力が著しく高まったりするのは珍しくないが、被害は複数の建物が破壊される程度で済んでいる。その被害だって慧音と戦ったときの流れ弾でそうなっただけらしいしな」
慧音の疑問にハクが再び説明を始める。話を聞いていた影狼は申し訳なさそうな顔をしながら頬をかいていた。それにしてもハクはその被害を『その程度』で済ませるのか……。
「まとめると、影狼がたまたま町の近くに行ったときに慧音が襲撃と勘違いして交戦。もともと戦うつもりのなかった影狼は牽制しつつさっさと逃げたが、扱い慣れていない妖力を無理に使ったせいで軽く暴走。それでも何とか抑えていたけど、追ってきた慧音と再度交戦したときに完全に理性が飛んだんだろうな。俺がここで影狼を見たときはまさに獣って感じだったから」
「ああ、最初と雰囲気が大分違うと思ったがそういう理由か……。え、ちょっと待て。その説明だと今回の件は私が悪いような……」
「別にお前が悪いとは言わないが、運は悪かったかな」
「う……」
今度は慧音が申し訳なさそうな顔をして額を押さえた。まぁ今回の件は自分の早とちりのせいで大事になったということを知れば無理もない。
最初に会ったときの影狼があんな状態だった理由も納得できた。そういえばハクが影狼にデコピンする直前、『妖力過多で暴走中か』と言っていたなと思い出す。
「ふー……。一通り謎が解けてすっきりした。さっき釣ってきておいた魚でも焼こ」
「……すまない。迷惑をかけたな、ハク。シロと妹紅も面倒事に巻き込んでしまった。……それに影狼も、すまなかった」
「わ、私も迷惑かけてごめんなさい。あと妖怪だからってすぐ退治しないでくれてありがとう、です……」
「いえいえ、丸く収まって何よりです」
「うん、私も同感」
「……ありがとう」
どこからか出した下処理済みの魚を串にさして焼き始めたハクに変わって、二人の謝罪と感謝を受け取る。と言っても私はまったく何もしていないと言っても過言ではないのだが。
「妖怪を二人も目の前にして、手を出さず話を聞いて考えてくれただけで十分すぎるほどだ、妹紅」
「……ハクは心でも読めるの?」
「はは、まさか。俺は妖怪でも半妖でもない、ただの普通の人間だ」
「そうは思えないけどね」
考えていたことの返答を唐突にもらった私は驚きを通り越して呆れてしまう。ここまで万能な普通の人間がいてたまるかと突っ込むと、ハクは軽く肩をすくめながらそりゃそうだと言って小さく笑った。
「……さて、今日はもう疲れたと思うがこれだけは決めておかなきゃな。これから慧音と影狼はどうするんだ?」
「どうするって?」
「慧音はもうあの町には帰らないほうがいいだろう。少なくとも数年、数十年はな。影狼もそう力の扱いが不安定だと、次に同じことが起こったら退治されるかもしれない」
「それは……」
「うぅ……」
ハクの質問に二人は俯き黙ってしまった。でもそれは当然のことで、今の二人はあまりいい状況ではない。今後どうするかを慎重に決めなければならないのだ。
二人がこれからどうするかを悩んでいる中、悩む原因となった質問をしたハクは焼いている魚から目を離さずに二人にある提案をした。
「そこでだ。どうだ、予定が無かったら二人とも俺たちと一緒に来ないか?」
「「……へ?」」
ハクの提案に俯いていた二人は同時にふっと顔を上げた。その表情は魂が抜けてしまったのではないかと思うほどに呆然としてる。そんな二人の様子をまったく気にせずに相変わらず魚を焼きながらハクは言葉を続けた。
「妖怪はすべて危険だという認識が広まっているのは知っているが、せめて半分妖怪の慧音には妖怪にもいいやつがいることを知っておいてもらいたい。じゃないと俺の友人まで退治されかねないしな」
「友人って、もしかして妖怪のか?」
「ああ、面白いやつらだぞ。いい機会だから会いに行こうと思う、よかったらついてこいよ。影狼には道中、力の使い方を教える。目的地に着いてからはそこに残るのもいいだろう。強いやつらばかりだから人間も退治しに来ることはほとんどない。ほれ、魚焼けたぞ」
二人に自分の考えを話しながら焼きあがった魚に塩を振って全員に配るハク。慧音と影狼は受け取りながらも真剣にハクの案を考えているようだ。ちなみにシロは受け取ってすぐにパクついていた。
「はむ。…………ん、まぁ無理にとは言わないよ。でも考えてはみてくれ」
「……そうだな、わかった。私はハクの案に乗るよ」
「え、ちょっと決めるの早いんじゃない……?」
割とあっさりと決めてしまった慧音につい言葉が漏れる。彼女はもっと慎重も物事を決めるイメージがあったのだが、吹っ切れたのだろうか。もしくはいろいろあり過ぎて思考停止しているとか。
「ああ、そうかもな。でも投げやりになっているわけじゃないぞ、ちゃんと考えての答えだ。人間に害意のない妖怪が実際にいる以上、自分の固定観念を改めなくてはならないのは確かだ。それに……」
「それに?」
「ハクの言う通りだと思ったのさ。私も半分とは言え妖怪なんだ、いつまでも見て見ぬふりもできないだろう。現状を変えるにはいい機会だ。だからついていくよ」
「……」
強い人だ。純粋にそう思った。
自分が半妖だということを彼女自身が良く思っていないということは今までの反応でなんとなくわかっていた。だからこそそれを受け入れて前に進もうとしている彼女に対して尊敬に似た想いを抱いてしまってもおかしくはないだろう。
慧音の話を聞いたハクは一つ頷くと、影狼のほうへ視線を移した。
「影狼はどうする?」
「あ、わ、私も一緒に行きたい。私、他の妖怪ってまだ見たことなかったから、会ってみたい……です。でもちょっと聞きたいことが……」
「何だ?」
「ハクさんって…………強いの?」
「え」
影狼の疑問を聞いて浮かんだ「当然でしょ」という言葉を辛うじて飲み込む。そういえば彼女がハクと会ったときは暴走状態だったため、何があったのか覚えていないのだった。忘れている原因はあくまで妖力の暴走であって、あのデコピンではないはず。
その疑問を聞いたハクは立ち上がり、自信満々な様子で仁王立ちしながらもちろんと言った。
「そりゃもう、めちゃくちゃ強いぞ俺は。影狼が相手だとしたら、満月の日だったとしてもデコピン一つで倒せるぐらい強い」
「ええ? それはいくら何でも言い過ぎじゃ……」
疑い百パーセントといった感じに苦笑している影狼に、彼女以外の全員が返事をせずに目を逸らす。
影狼は完全に冗談だと思っているようだが、先程実際にそれをやってのけた人が目の前にいることを私たちは知っている。考えてみるとそんなに強い人が近くにいるというのは心強くもあるけど怖くもあるなぁ。
ていうか、最近私自身がこんな反応をされたような気が……。
「よし、とりあえず二人はどうするか決まったな。で、最後に……妹紅はどうする?」
「……へ、私?」
ハクからの急な質問に少し反応が遅れる。先程まで二人を真剣に……ではないけど、二人をほうをずっと見ていたハクの黒い瞳は、今はこちらを向いている。
「そう、妹紅。俺たちは早めに、できれば明日には出発しようと思っているが、妹紅はその……どうする?」
「どうするって?」
「あの町に戻るか、一緒に来るかだ。ついてきてもいいけど、普通の人間にはちょっと厳しい旅になるかもしれない。平穏無事に目的地に到着したとしても、それは何十年も先の話だ。妖怪ならそのくらいの年月は大したことないが、普通の人間には長すぎる時間だろう」
あ、そっか。私のことをただの人間だと思ってるなら、何年もかかる旅に連れて行こうとは考えないか。それに普通は家族とか友人もいるわけだしね。
と、そこまで考えてからごく自然にその時間のかかる旅をしようとしている人間が目の前にいることに気が付いた。
「それならハクもシロも……あ、シロは妖怪なんだっけ。でもハクは普通の人間なんでしょ?」
「あー……、寿命がものすごく長い普通の人間だ。たかが数十年や数百年じゃ寿命は来ない体質なんだ」
「えっ!? は、ハクも!?」
「……『も』?」
ハクから聞かされた事実に衝撃を受けた私は、驚きのあまりハクに詰め寄ってしまった。それでも未だ冷静なままのハクは私の言った言葉の一部に疑問を持ったようだが、今の私にそれを気にする余裕はない。「それのどこが普通だ」と突っ込むことも忘れていた。
「ど、どうして……もしかしてハクもあの薬を……? でもあの薬がいくつもあるなんて話は聞いてないし……」
「何がどうしたかわからんが落ち着け」
「で、でも本当に不老だとしたらそれ以外の方法なんかあり得ないし……。だとしたら……もしかして……」
「おい、こっち見ろ妹紅」
突然自分の顔を挟むように手が添えられたかと思うと、ぐいと向きを変えられた。急なことに驚いて真正面を見ると、視界いっぱいにハクの顔があった。
…………ていうか、ち、近っ!?
「少し落ち着け。驚くようなことを言ったのは悪かったが」
「う、わわ……わかったから、落ち着いたから」
ハクの言葉というより、ものすごく顔が近いという状況に思考を中断せざるを得なくなった。大丈夫だと伝えるとハクは両手をはなして頷きながら頭をぽんぽんとなでてきた。
「よしよし。で、今妹紅が言っていたことだが、『あの薬』が何を指しているのかはわからん。だけど俺の不老体質は少なくとも何かの薬によるものじゃないって医者が言っていたぞ」
「え……そ、そうなの?」
「ああ」
どうやらハクはあの薬を服用して不老不死になったわけではないらしい。ということは輝夜とは無関係ってことかな。
「……妹紅も不老体質みたいだな」
「う、うん。正確には不老不死だけど」
「なるほど」
ハクは私が不老不死だということを確認してふーっと息を吐いた。私の頭に乗せていた手をはなして、シロに「俺って今日、何回落ち着けって言った?」と聞いている。
私は薬を飲んで後天的に不老不死になったわけだけれども、目の前の彼はどういう理由でそうなったのだろう。気にはなったが、私自身の経緯があまり人に話したくないものだということを思い出し、開きかけた口は閉じたままにすることにした。
しばらくして、シロから「何回かは忘れましたが過去最多回数だと思います」という返事をもらったハクがこちらに手を伸ばしてきた。
「じゃ、妹紅も一緒に来るか?」
「……え?」
彼の言葉に思わず呆けてしまう。こちらに伸ばされている手をたどってハクを見ると、何というか……すべてを包み込むような柔らかく温かい笑顔を浮かべていた。その表情に私はますます呆然としてしまった。
「不老不死の先輩として、長い人生の歩み方を教えてやるよ。同じように寿命の長い妖怪との接し方もな」
「…………ついて行っていいの?」
「そりゃもちろん。みんなもいいだろ?」
「はい、もちろん」
「大丈夫、です」
「ああ、全然かまわない。まぁ私と影狼はとやかく言える立場ではないが」
「そ、そうでした」
伸ばされた手を見つめながら考える。
今日は本当にいろいろなことがあった。よくわからない退治人コンビについて行って妖怪同士の争いを見たと思ったら、二人とも人間に対して妙に友好的だったり。自分とよく似た容姿をした女の子が実は妖怪だったり。網代笠を被った怪しげな男が自分と同じ不老不死だったり。
これからどれだけの年月を旅したとしても、こんな風変わりな人たちと出会える気はしない。正直に言うと、少し楽しそうだと感じたのだ。
「……じゃあ、一緒に行くよ。これからよろしく」
「ああ、歓迎する」
ハクの手を取り握手をする。今日の朝起きたときは、まさか一日でこんなことが起こるとはまったく思っていなかった。人生何があるかわからないものなんだなぁ。
「さあ、明日に備えて食べろ食べろ。魚はまだまだあるぞ。妹紅なんか一口も食べてないじゃんか」
「そ、そうだった。いただきます」
「慧音と影狼も遠慮するなよ。あ、影狼は魚より肉のほうが好きか? 手持ちにイノシシ肉があったからついでに焼くか」
「あ、ありがとう……ござ、ます」
「わざわざ敬語を使わなくてもいいぞ、影狼。丁寧に話そうとしているのはいいことだけどな」
「……というかその肉とか魚は一体どこから出しているんだ?」
「ハク様の分は私が焼いておきますねー」
森の中だというのにがやがやと騒がしい。だが決してうるさいわけではなく、むしろ落ち着く不思議な感じだ。こんなに賑やかな食事は初めてで楽しい。
どこからか肉を取り出して焼き始めるハク。そのそばで恐らくハク用の魚を丁寧に焼いているシロ。ハクの焼く肉を今か今かと待っている影狼。まだ状況に慣れないながらも渡された魚を食べ始める慧音。
バラバラな種族のはずなのに妙な一体感を感じる。それが何だか面白く、同時に嬉しくもあった。『違和感もなく、ごく自然に受け入れられている』と、そう感じたからだ。
自分の表情が今までにないくらい穏やかなものになっていることを自覚しながら、持っている魚を食べるのだった。
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「不老不死の薬…………『蓬莱の薬』か」
よだれを垂らしながら待っていた影狼に焼きあがった肉を渡しながら小さく呟いた言葉は、誰にも聞こえることなく賑やかな森の中へ消えていった。
「ところでハク様。これからどこに行くんですか?」
焼きあがった魚を手渡してくれながらシロが俺に質問する。そういえばどこに行くかはまだ言っていなかったな。
もらった魚を一口食べたあと、シロの頭をなでながら次の目的地をここにいる全員に伝えることにした。
「今から俺たちが行くのは、妖怪の山だ」